やる夫ミュージアム
 
 


              _____
            /         \
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          /  /:::::::`ヽ   /´:::::::`ヽ  \
      /    (:::::::::::::・ l    l ・::::::::::::::)    \    【一つの味】
      |     ヽ::::::::::::ノ   ヽ:::::::::::ノ     |
      |    ''"⌒'(    i    )''⌒"'     |   やる夫は浪速の商人になるようです
       \       `┌,─'^ー,,-┤       /
        \     `ー -- -一'     /                    【一つの恋】
        /                 \
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       ヽ   ノ              i   |
       i´ ̄ ̄`i                 l   |



予告

第一章 仇討ち買い

第二章 商人の矜持

第三章 翠星石

第四章 同月同日の大火

第五章 再会

埋めネタ 配役解説

第六章 約束

第七章 さらなる試練

第八章 結実ひとつ

第九章 迷い道

第十章 興起の時

最終章 銀二貫 前編

最終章 銀二貫 後編

埋めネタ BAR追分


目次


546 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:06:44 wWDby2hg0

15レスほどお借りします。


547 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:07:19 wWDby2hg0






             どや、井川屋の丁稚になるか?


           侍を捨てて、商人になって生きるか?






.


548 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:08:24 wWDby2hg0


               -─-
            ´            ` 、
        /                丶
       /        \      /  .ヽ
                ;'べヽ、     ,/^ヽ.  :.
     ,'       l:l  ,リ     l:l  ,リ   :.
      i        `゙'‐‐"      `゙‐‐"    i       はい!
      !     __    (       )  _   !
     ',    (__)  `ー- ^ -‐ ' (__) ,'
      ヽ、                    /
       \                 イ
         >             <


.


549 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:09:11 wWDby2hg0


              _____
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      /    (:::::::::::::・ l    l ・::::::::::::::)    \    【一つの味】
      |     ヽ::::::::::::ノ   ヽ:::::::::::ノ     |
      |    ''"⌒'(    i    )''⌒"'     |   やる夫は浪速の商人になるようです
       \       `┌,─'^ー,,-┤       /
        \     `ー -- -一'     /                    【一つの恋】
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       / ̄ ̄ヽ;               ヽ
       (「    `rノ                |
       ヽ   ノ              i   |
       i´ ̄ ̄`i                 l   |


.


550 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:10:23 wWDby2hg0


    大坂天満の寒天問屋の主・ダディは、仇討ちで父を亡くした鶴之助を銀二貫で救う。


                   /\___/ヽ
                  /:::::::       \
                 |:::.   ''''''   ''''''  |
                 |::::.,(一),   、(一)|    お侍さんの仇討、
                 |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
                   \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /    わたいにこの銀二貫で
                 /   `一`ニニ´-,ー´
                 /  | |    / |        買わせて頂きとうおます。
                /   | |  / | |
                /   l | /  | |
            __/    | ⊥_ーー | ⊥_ ________
               |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
              (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
                `ー、、___/`"''-‐"


  i.:::::. /.: : /. : .:: ,.′.: : :/. . : : i: : : : : : : : : i: l
  l:::: /.::: : .::: .:: ./ :/. : :/. : . ://:}: : : :::. i: : : :| :l: |
  l:::::}:::::: ::::..:: / :/. /}. : : //}::ハ: :i: ::. :}: : : | :|: {
  |:::::|::::i::. !:::::/.:イ: / /: : イ:/ l::l  l: ト、::. |: : : | :|: l
  }i::::|::::i:::.{:::イ:/_i:/ /:::./// j::{ .」斗ヘ:::}:/ : }. ト、!
  イ:::ハ::|::::V十rfリミ」:::/// , //ィf≧=ヘ小/. :イ: :ハ:ト、    そこまでしてこの父子を助けたいのかい。
  }/  lハ:::::ヽ、近Zソ|/メV/7/ーヘ北シメ/. :/ }/ }{
 ノ′ |ヽト、:::ヽ    i{   ノ′       /. :/.ィ:!  `     大坂の商人は何でも商売にするって聞いたけど
   . |:::ハ:::ヽト\⌒´  ノ!      /: :イ: .イ:l
     |/ }::|::::\   、____.ノ イ: /i |/ リ        金で命まで買うとはね。
      }!  |ハ::::::i\  `二二´ /イ:!: ハ::{
         }从Li」 ヽ、   ∠_.」」:::{ }:l
          ト--T r‐`´─┐|‐‐イV .リ
          }_ハ_」 |: : : : : : :| L「!」
        __ノf7/,イ |: : : : : : :| ト斗ト、‐-、__


.


551 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:10:54 wWDby2hg0


          大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。


           / ⌒`"⌒`ヽ、
           /,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
          /,//:::::::::::::::::::::::::::::::::\         天神さんへの銀二貫、
         ;/⌒'":::..:::::::::::::::::::::::::::::::::|⌒ヽ
       /  /、:::::..:::::::::::::::::::::::::::::/ヽ_ \     何とか……何とか一日でも早うに……
     __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、:::::::/⌒`ー'⌒  )
    ━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"


               /\___/ヽ
              / ''''''    '''''' \
             │:::::::(ー),  、(ー) l
             │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │
              /‐:::  `-=ニ=- ' /       いく夫、
            _,,,l ;! |:::______/
         , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_       堪忍やで。
         l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、
        ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
        ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|


.


552 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:11:17 wWDby2hg0


      ダディに引き取られ、“やる夫”と名を改めた鶴之助。


      /`ー──一'\
     ,r(●)(、_, )、(●)\
  .   |  '"トニニニ┤'` .:::|      せや、やる夫や!
    |.   |    .:::|   .::::|
  .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|      やる夫がええわ!!
     \   `ニニ´ ..::::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      井川屋丁稚、やる夫!
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |     それがお前はんのこれからの名ぁやで!!
     >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       / ノ  ヽ_\
      /  ○ }liil{ ○ \
      | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|      ええっ?
      ヽ     |!i|!|   ィ’
           |ェェ|


.


553 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:20:25 wWDby2hg0


 やる夫を時に暖かく、時に厳しく導く、主のダディに番頭のいく夫。


                              _____
    /\___/ヽ                /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
   /''''''   '''''':::::::\               |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
.   |(●),   、(●)、.:|              |::::::::ゝ ―  ― |
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|               |::::::( ( ○) (○)|
.   |   ´トェェェイ`  .::::::|              (@  ::::⌒(__人__)⌒)
   \  `ニニ´  .:::::/               |     ` ⌒´  |
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、               \         /
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i            ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
    |  \/゙(__)\,|  i |           :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
    >   ヽ. ハ  |   ||              |  \/゙(__)\,|  i

                  / ̄ ̄\
                /   _ノ  \
                |    ( ⌒)(⌒)
                   |     (__人__)
                 |      ` ⌒´ノ
                   ,|         }
                / ヽ       }
              く  く ヽ     ノ
                \ `'     く
                 ヽ、      |
                     |       |


           生涯の友、丁稚仲間のやらない夫。


             井川屋の仲間たちに支えられ、

      やる夫は商人としての厳しい躾と生活に耐えていく。


.


554 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:20:44 wWDby2hg0







                     そして、運命の出会い。


                __,. -――- 、、_
               ,ィ'-'"´⌒^^⌒`丶丶、
              〃_r冖'⌒^^⌒'ー、_`ヾ'、
             /{ノ         ) ヽ、ぃ
            ノ /// / /  /  /}  i`、} 、
            \{ l i i,l+‐-/,ィ/‐リ-、 l | |l >
             | l |__l ィ=ミ´ノ ィ=ミ ノ/ , l イ
             从ト トi、::::  ,  :::: メ/ノ,イ lト、
             / ク、下ゝ、 ー一  彳彡イl l lトミ 、         高津さんの梅やの。
             / ノ/〈`ヽ``ニ=y=<ノ`l '、 l l l \ヽ、
          __/ノ / ,八、 ,'´  /  ヽ 入ヽヽ、l l \\
       , '´イン /r'´、,:'^"'-、_ {、  _l,.,.,._ `ト、ヽ、  \\
      / /ノ / ゝ、 /^'t、,_  `'}ー'"   }  } ヽ 'ー、  \\
    ,イ / ノイ/  l У   `'ー人-‐ ''"~´'、_ノi、丶、 `ヽ、.ヽ ヽ
   / /,r'  ノ /   ,ト/      /三、    ヽーt、 ヽ  ヽ ヽ ヽ
  / / /  ノイ   / ノ      / | | 、    ヽ  l   ヽ  ヽ ヽ ヽ
 l l {   }/   l        / | | | ヽ      ヽ .l   {   〉 ヽ l


.


555 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:21:18 wWDby2hg0


      やる夫は、町を襲う飢饉や大火にも負けず、商人としての修行を積んでいく。


 ̄〕

                                                   ィ
__      { ̄ ̄>''"\                                 //
、 ∠     >''",.. <\\                              / ./
.\  > '二,. <    L__\\ /^! .,                        /  ./  -‐  二 ̄
:.\\< }}>-、 廴_____廴_廴__l_ `  、                 /   /-==ニ二 ̄≧===
:.\\\ /,イ\\     { ̄ >'"〕   廴  ` 、     } ̄ ̄ ̄二ニ=-<   .イ   . 'イ>、. \\
.:\\\\/.{_.>、\   >''" ノ〉'    「 ̄}厂 ̄}/〉__r―ヘ'\/〉二.イ ̄ ̄ `T⌒L_/// /〉〉 ̄ ̄
:.\\\\\ / /\>''" ,. <//     l_{    //廴〕、 、\〈 ィ7    _辷'二二.. ==-‐''二__./
:.\\\\\\>''" ,. <_,r-//     从/  ./イ {!⌒ヾ=.-≦ヾ\二Z二Zニ=-==='⌒! ̄ ̄´    ./
:.\\\\\\\< .////_/⌒!_ //厶イ.   ____  .. イ\\ー---<〉7    .〉  ̄`¨7 ̄/
:.\\\\\\\\ 廴j .//  〉 _/ _/.   /      \  .廴___\\-‐'´//`ー-/__/ r/
::\\\\\\\\\二//二/二,、 /.   /  \   /  \  .   > >__//__f<__/_/j
:.\\\\\\\\r一.//Tー'-勹 ^~.   /.u (○) (○)  \  ._/ .//   /..:.:/_ノ }L 廴_
:.\\\\\\\\{ .// ,:Lr√二ヽ .   |      (__人__) u.   |  .--=ミ//  ./.......:/ __厶''"´ ̄
.:\\\\\\\\ゝ//__人 r'^⌒.   \  .u  `⌒´    ,/  . -―     ´ ̄_     -―
:.\\\\\\\\\\\\\ー-z.  /´⌒ヾ         `ー--- 、  .    ̄
.:\\\\\\\\\\\\\ .   /   ノ              ヽ  .
                   .  ./   ./             ヤ¨''ー、 ‘,  .
                   . (.   / |              }    .をノ  .
                   .  ^゙''" ....|               |  .
                       .   |               |  .


.


556 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:21:39 wWDby2hg0






         ≪原作 『銀二貫』(幻冬舎時代小説文庫) 著・高田郁≫





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557 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:21:59 wWDby2hg0







              2014年1月 公開予定








.


558 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:22:28 wWDby2hg0
















.


559 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:22:45 wWDby2hg0






         なあ……いく夫……


                          私は……ええ買い物……


                   した……なあ……







.


560 : ◆8epcM/V4rs:2013/12/11(水) 21:23:25 wWDby2hg0

以上です。

スレ立てしましたら、またご案内させていただきます。






ああ、重かった……


561 : 名無しのやる夫だお :2013/12/11(水) 21:24:12 yA2.3wRk0
銀二貫やるのか



562 : 名無しのやる夫だお :2013/12/11(水) 23:29:31 sfqvXAw60

おもしろそうだ
立てたらぜひURL貼ってくれ

目次


1 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/02(木) 18:29:13 bfCLa6cA0


              _____
            /         \
           /            \
         /     \,      ,/     \
          /  /:::::::`ヽ   /´:::::::`ヽ  \
      /    (:::::::::::::・ l    l ・::::::::::::::)    \    【一つの味】
      |     ヽ::::::::::::ノ   ヽ:::::::::::ノ     |
      |    ''"⌒'(    i    )''⌒"'     |   やる夫は浪速の商人になるようです
       \       `┌,─'^ー,,-┤       /
        \     `ー -- -一'     /                    【一つの恋】
        /                 \
       / ̄ ̄ヽ;               ヽ
       (「    `rノ                |
       ヽ   ノ              i   |
       i´ ̄ ̄`i                 l   |


.



2 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/02(木) 18:31:28 bfCLa6cA0


      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|            ・ 本スレは、高田郁『銀二貫』(幻冬舎時代小説文庫)を
      |´|             やる夫スレ化したものです。
      |´|
.     _,k|´|‐´`ー''7____      ・ 本作品は、江戸時代の大坂を舞台としておりますので、
   k'´: : |´|: : : : : : : :<__      やる夫たちがいつもの特徴的な語尾(~だお、~だろ)を用いず
   <´ : : :|´| : : : : : : : : : ,>     浪花言葉(大阪弁)を話しております。
  / : : : |´|: : : : : : : : : :,>
  `> : : : |´| : : : : : : :_: : `.、   ・ >1は関西文化圏の水を飲んで育ってはおりますが、
   `、 _,;,;,|´|;_: : : : :,/ .iイ ̄    生粋の大阪人ではございません。
.   ,f´  . ̄ `ヽi'´ `´ ,!      したがって、登場人物の話す浪花言葉が
  /      , '´:`.、-‐'       正しい浪花言葉ではない可能性もございます。
  ,!,,,,,,,,,,,,__  ',:.:.:.:.:ヽ
 f":::::::::::::: ̄`ヾ、:,;/,!      ・ ネタバレは何卒ご勘弁のほど、お願い申し上げます
 i::::::::::::::::::::::::::::::::i ̄
 ヽ,;__'、;;;;;;;;;;;____;イ
.  `ー'    `ー'


.


3 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/02(木) 18:34:20 bfCLa6cA0

1/3(金) 21:00より、第一章を投下いたします。


【宣言所予告】
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12973/1385197076/547-559


.


4 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/02(木) 22:31:22 1pwb/Rd20
期待!


5 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/02(木) 22:39:17 rnKrbSdk0
期待



6 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 11:03:09 5wfh8UKQ0
ずっと待ってた期待!


7 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:00:14 XDxaaqIE0

では、ぼちぼち時間となりましたので始めさせていただきます。

>>4-6
ありがとうございます。
ご期待に添えますよう、精いっぱい努めさせていただきます。


8 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:00:36 XDxaaqIE0










                         第一章


                        仇討ち買い









.


9 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:01:36 XDxaaqIE0



   。 o     ゜      .  。    ゚        o    。
 ○     ゚  。  ゜     o              o       o
            o          ○      。   .    ゜      ゚
 o   ゚   。    安永七年、睦月          o   。       。
             o     o     .   ゜    ゜       ○
  。             ゚     o      ○     o  ゚   o
    ゜    o   ゜            。                ○
゜    ○             o      o      o   ゜    。
 o ゜      .   ○    ゜          ゜             o
_\  _   ゜         。    。   ゜      o    _  ○ ̄ ̄
  ○ \    o    ゜               。       / /
 ̄ ̄|__ \\ 、     。     ゜     ゚     ○//。__| ̄ ̄ ̄ ̄
∃  |   |  | l l ゜           ゜    。 l l |  |   |○田 田
    |田 | 。| | l      ゜     ゜    。  ゜   l | |  | 田|    o
∃○|   |  | |。  ゜ . .. ... .. ... . ... ...゜ . .. .. ..    l |。|  |   | 田 田
    |田 |  | l‐    .....   ....     .....     -| |  | 田|
∃  |   |○― ....    o      ....   ○ ..... ―  |   | 田 田
   o.... 一      ....     ○    ...  o   ....  ー- | 。
―  ̄   o   ⌒                          ̄ ― -
  ....               ....        ⌒   o  ....      ....



.


10 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:02:12 XDxaaqIE0


      大坂 天満の寒天問屋井川屋の主であるダディは

       京都伏見から自らの店への帰りを急いでいた。


              /\___/ヽ
              /''''''   ''''''::::∪:\
            |(ー),   、(ー)、.::::|
            |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|
            | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|
              \  `ニニ´  .:::::/        ふぅ…ふぅ……
              /:: ::\  //::::: \
             /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\      さすがにこんだけ冷えると
            /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i
           f´:: ::i;;:: :: :: /:: :: :: :|;;;;;;;;:::|     膝にこたえるわ……
          __r''ヽ:::|;;;;::/:: :: :::;;;;;:::ヽ;;:: :ノ
         i"  )ノ:: ::と;;;;:___;;;;;;;;;;f゙;;ノ
         `l Tl::U:::/|;;;; ______:;;;;;{
          |. | |:: :丿|:: :: :: :: :: :: ;;;;;;;;:: |
          |. | `'''"l;;|:: :: :: :: :: :: ;;;;;;;;:: |
          | |    |;|:: :: :: ::;;;;;;; :: ::;;;;;│
          | |.   |;|:: :: :: :: ;;;;;;; :: :;;;;: |
          | |   |;;|;;:: :: :: ;;;;;;;:: :: ;;;;:: |
          | |   ー!、:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::;;;;;;;ノ
          l |     〉. !,    ノ  !、_
          !_|  、‐''゙ _)   (____ヽ

           寒天問屋 井川屋ダディ



      早朝から降り出した雨が雪へと変わり、

      ダディのほかに通行人の姿はなかった。


.


11 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:03:13 XDxaaqIE0


    ときおり足をとめ、懐に手を入れて中のものを確かめる。


              /\___/ヽ
              /''''''   ''''''::::∪:\
            |(ー),   、(○)、.::::|
            |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|
            | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|
              \  `ニニ´  .:::::/
              /:: ::\  //::::: \
             /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
            /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i     ……よっしゃ、ちゃんとある。
           f´:: ::i;;:: :: :: /:: :: :: :|;;;;;;;;:::|
          __r''ヽ:::|;;;;::/:: :: :::;;;;;:::ヽ;;:: :ノ     落としてへん、落としてへんで……
         i"  )ノ:: ::と;;;;:___;;;;;;;;;;f゙;;ノ
         `l Tl::U:::/|;;;; ______:;;;;;{
          |. | |:: :丿|:: :: :: :: :: :: ;;;;;;;;:: |
          |. | `'''"l;;|:: :: :: :: :: :: ;;;;;;;;:: |
          | |    |;|:: :: :: ::;;;;;;; :: ::;;;;;│
          | |.   |;|:: :: :: :: ;;;;;;; :: :;;;;: |
          | |   |;;|;;:: :: :: ;;;;;;;:: :: ;;;;:: |
          | |   ー!、:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::;;;;;;;ノ
          l |     〉. !,    ノ  !、_
          !_|  、‐''゙ _)   (____ヽ


        そのたびに、重い吐息をつくのだった。


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12 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:03:51 XDxaaqIE0


                               ,,.-──-,、        o     。
゜     o ||~'i                    ,.r'.:. :. . :. .. :.:ヽ  。 o  。
o      ||  .|    /⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒\ (,;.;: ,;: , ;: ,; ,; ,, ;ヾ     o  。   。  o  。
   o  。||茶.|  /丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶\;.:.:..:.;,;i.;:.;:.;:,;:..;:,;      o     。)
      . ||  .|//\丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶\.:.;:..i.:.:.:.:.:/.:ノ。 o  。
     o ||店.|/ 田 \丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶\人从ノ:::,)     o  。   。  o  。
o  o。 . ||  .| ̄ ̄ ̄ ̄|  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄ | |il .: .i;;i|,r'      o     。
     o ||   。 ̄ ̄|!| ハ__ハ        ∧∧!. | |il , ;illll|  。 o  。
。 o  。 ..||  .|!|___|!| ( ・ω・)ノ      (*゚∀゚) | |l.: . .illl|      o  。   。  o  。
    o  || . 。  o  。 ̄ ̄ ̄ ̄|  旦 ノ(  (ヽ-ooo- ill|
       l ̄i |__(,,゚ω゚).|____| |i ̄i|| ̄ > > ̄|i ̄l| ,,.;;,丶
      ""''''"  c(,,____,)


     γ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
     /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
   γ:::::::::人::::人::人::::人::::::::ヽ     ダン
   (:::::::::/ ─    ─ \:::::::)    旦那さん、
   \:/  (⌒)  (⌒)  \ノ
    |     (__人__)     |      井川屋の旦那さんやおへんか?
    \    ` ⌒´     /
    /            /
    \       (__ノ


         道筋にある茶店の女将が、めざとくダディを見つけて声をかける。


.


13 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:04:38 XDxaaqIE0


      γ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
      /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ      どうぞ寄っていっておくれやす。
    γ:::::::::人::::人::人::::人::::::::ヽ
    (:::::::::/ ⌒    ⌒ \:::::::)    旦那さんの好物の羊羹が、
    \:/  (⌒)  (⌒)  \ノ
     |   /// (__人__) ///.  |     丁度いま、蒸し上がったとこでっさかい。
     \     ` ⌒´    /


        /\___/ヽ
        /''''''   ''''''::::∪:\
      |(○),   、(ー)、.::::|      (羊羹か…)
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|
      | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|
        \  `ニニ´  .:::::/
        /:: ::\  //::::: \
       /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\


             ダディは竹の皮に包んで蒸した羊羹、

     それも蒸したてのぬくぬくと湯気の上がった羊羹に目がなかった。


.


14 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:05:24 XDxaaqIE0


     /\___/ヽ
    /''''''   ''''''::::∪:\
   |(●),   、(●)、.::::|     ほな、いただこかい。
   |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|
   | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|
    \  `ニニ´  .:::::/
     /:: ::\  //::::: \
    /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\


      γ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
      /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
    γ:::::::::人::::人::人::::人::::::::ヽ
    (:::::::::/ ─    ─ \:::::::)   へえ、おおきに。
    \:/  (⌒)  (⌒)  \ノ
     |     (__人__)     |     まいどありがとさんでございます。
     \    ` ⌒´     /
     /            /
     \       (__ノ


.


15 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:06:07 XDxaaqIE0


        _____
    γ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
    /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
  γ:::::::::::人::::人::人:::人::::::::ヽ      難儀な雪どすなあ。
  (:::::::::::/ /    \ \:::::::)
  \:/  (─)  (─)  \ノ      ほんに酷なこと。
   |   ::::::::(__人__):::::::::  |
   \    ` ∨´     /       あ、どうぞ、火ぃに近いところでお座りください。
   /       ー‐      \


       /\___/ヽ
      / '''''':::::     \
     |)  、(一 ).:::::::::+::::::::|
     |( _ ,)ヽ、,, .::::::::::::::::::::::|      おお、すまんなあ。
     `=ニ=- ' .::::::::::::::::::::::|+
       `ニ´ .:::::::::::::::::::+/      助かるわ。
      /`'ー‐---‐一'´\
     /         ::::i ヽ
     |  |        :::;;l  |


.



16 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:06:36 XDxaaqIE0


        _____
    γ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、       はい、羊羹お待たせしました。
    /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
  γ:::::::::::人::::人::人:::人::::::::ヽ     けんど、こんだけ冷えたら
  (:::::::::::/ ─    ─ \:::::::)
  \:/  (⌒)  (⌒)  \ノ     寒天の出来もよろしおすやろ。
   |   ///(__人__)///  |
   \    ` ⌒´     /      商売繁盛でよろしおすなあ。
   /       ー‐      \


           /\___/ヽ
           /''''''   ''''''::::∪:\
         |(ー),   、(ー)、.::::|
         |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|
         | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|   …せや…なぁ……
           \  `ニニ´  .:::::/
           /:: ::\  //::::: \
          /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\


               ダディの表情が曇る。


.


17 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:08:38 XDxaaqIE0


     ,. -‐―――‐-、
    γ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
   /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
  γ:::::::::人::::人::人::::人::::::::ヽ
  (:::::::::/( ○)  (○)\:::::::)     ほ、ほな、どうぞごゆっくり。
  \:/::::::⌒(__人__)⌒::::: \ノ
   |     |r┬-|     |
   \      `ー'´     /


     ダディの沈んだ表情に何かを感じとったか、

      逃げるように女将が奥へと引きかえす。


.


18 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:09:16 XDxaaqIE0


        ダディは、伏見の寒天製造元、美濃志摩屋に

        貸し付けてあった銭を取り立てた帰りであった。


      /\___/ヽ
      /''''''   ''''''::::∪:\
    |(ー),   、(ー)、.::::|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|    (美濃志摩屋さん……)
    | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|
      \  `ニニ´  .:::::/     (この銀二十貫を用立てんのに
      /:: ::\  //::::: \
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\     どんだけ苦労しはったことか…)
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


.


19 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:09:59 XDxaaqIE0


     美濃志摩屋はダディが若い時分に修行をさせてもらった恩義のある店であった。

   ダディが井川屋を立ち上げた後、幾度か借財を頼まれ言われるがままに融通してきた。


     .:/\___/ヽ: .
    :/         \:
   .: |:::.          | :
  . : |::::::.             | :     (親替わりの店に頼まれて用立てた銭や、
  . : |:::::::.          | :
    :\:,..-''ニニニニニニニ.V : .     もとより返してもらうつもりなんぞあらへん……)
  ,,....--'''':::..     ..    ゙-、. :
  :::::  ::.      i     ヽ i :   (それをいまさら取り立てるような真似をせんならんとは……)
  :::::  |::::      |:::.     i | :
  :::::  |:::::.     .(:::::     :||:


             その銭を、取り立てなければならない事情があった。


.


20 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:11:22 XDxaaqIE0


  ことは、およそひと月前に、大坂は天満で起きた大火に端を発する。



 
  人    从    ゴオオオオオオオ…
  ̄ ̄|\  /:人:丶
    |人(::( ):::ヽ人               从   /:人:丶
   丿::::::丿  レ、::::::)从       人    ヽ人(::( ):::ヽ人
  从(:::人::(    ):::::::::::人:ヽ从   /:人:丶 Yヽ::::::丿(:::::::::::::::\;".
 :::::::ノ      (ノ):/ 丿:::::::ヽ人(::( ):::ヽ人
 :::(            (::人_/Yヽ::::::丿(:::::::::::::::\;".
 人           从   /:人:丶       从   /:人:丶
  ̄ ̄|\  /:人:丶  ヽ人(::( ):::ヽ人       ヽ人(::( ):::ヽ人
    |人(::( ):::ヽ人 Yヽ::::::丿(:::::::::::::::\;".       Yヽ::::::丿(:::::::::::::::\;
   丿::::::丿  レ、::::::)从       人      从   /:人:丶
  从(:::人::(    ):::::::::::人:ヽ从   /:人:丶   ヽ人(::( ):::ヽ人
 :::::::ノ      (ノ):/ 丿:::::::ヽ人(::( ):::ヽ人  Yヽ::::::丿(:::::::::::::::\;".
 :::(            (::人_/Yヽ::::::丿(:::::::::::::::\;".



   天満焼け、と呼ばれたそれは五千六百もの人家を焼き払い……


.



21 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:11:45 XDxaaqIE0


                                    __
                                    /|: : :.:::|
                                l   | : : : :|
                                 |   |: : :. .:|
                                 |   |: : : :.:|
  iv'ヘ                                |  |:|l==|
  | ;`;|                            |  |:|》: ::::|        i'1
  | ;'l:|           i'`'i             、       /|  |:|\ : |  .      |;'|       ,、
  !:`l'|  ζ\     |;`;|             ∥       〕 .|  |:|  || | ./\   _.|;'|       /.:〉
-、_|_.;l:|   \';、\  :|':i;;|     .  i'1   ||/>  r┘.:|  |:|  ||::| |  ∥‐┘ .:|';|──へ./.:/_r‐
ー|_}:;|    \';、.\|;';;;|   ./〉 |;|_r//  /| ̄\:|  |:|   ̄ .:〃../>.::|;'|:::::::::::::::/.:/:::::::::::
-|_|`|_r:‐:‐:‐:‐\';、\;| r‐//┐_|:|::::::::;⊥、r/.::| .:::::::|/\/\   《// ..:::|;'|:::::[]::::/.:/]:::::::[]::
ー|_};|::::::::::: : :: : {二l\;i`!、::://:::::::::::::::::::r| .::| /.:::::<\/   〈:::.:... \ 》 ' .::::::::/|\_n::::::::::::::::::::
-|_| ̄/\:::::::/`|_{┬| |;、\::::::::i'|::::::r┴冂、 .:::::|::\\ _____:::::.:..〉″へ:::::/ .| |: : : |:|::::::::l`!へ、
ー|_}::/ 、';';〉.:/ /{_|┴lニニニニニl.r┴、_|_|_|:>:::::___|」__:l;_;_//..::. `〈 :| |: : : |:|::::::::| |: : :
-|_;l'_;_;_∠;/_/___l_,,:;;}┬┴┬┴┬┴┐::| .:::|_rェ┘__;!___;!__;|_;_;:::.:/ : :| |: : : |:|::::::::| | : :
~゛'' ┘⊥ 」_ |  |{_|┴┬┴┬┴┬┴┤ .:|_;!__;!__:l__;!__;|<___;_/\_;_;_;|;|-∠|_|;_;_;
         ~゛'''' ┴'::⊥Λ二\.:|  .:|ー:|__;!__;!__;!__:l__;l:::...\/<>::.  ∠二
 `     , '  .   `   ∨_,,,;;;;/. ~゛`┴ -'⊥ .」_;!__;!__;!__;!_;ト、 r─‐-、   ...:.:.:.::.:
             ,                 ~゛ ┴  ⊥. .,_..:::| ::/ ̄. ̄'"ヽ┴-、_;_;_;_;_;_;_
                     ,,       `            ~゛'' ‐-|\___ト--/.. ...:::::::./|
  `             .,     `    ,.            '     \|__;_;_;_;_;!─l二二二l/


   大坂町民の心のよりどころであった天満天神宮までも焼失させたのであった。


.


22 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:12:18 XDxaaqIE0


             井川屋自身は類焼を免れたが、

       周囲がそのような状況では商いの先行きは暗かった。


      /\___/ヽ
      /''''''   ''''''::::∪:\
    |(ー),   、(ー)、.::::|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::::|   (わたいの商いのことだけやったら美濃志摩屋さんに
    | ∪ `-=ニ=- ' .::::::::|
      \  `ニニ´  .:::::/    そんな無理強いるつもりもあらへなんだが……)
      /:: ::\  //::::: \
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


      /\___/\
    .  /        ::\
   . |               :|
   . |   ノ   ヽ、   :|    (美濃志摩屋のご先代に申し訳が立たん……)
   . | (●), 、 (●)、.:::|
      \ ,,ノ(、_, )ヽ、,, ::/
      `ー `ニニ´一''´ \
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


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23 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:13:00 XDxaaqIE0


  これまでは歳のことなど忘れて商いに精を出してきたのだが


         /\___/\
       /        ::\
     .  |               :|   (わたいも来年で還暦や)
     .  |   ノ   ヽ、   :|
     .  |  _(o)_, 、 _(o)_、.:::|   (火事の後始末やら終わる前に
       \ ,,ノ(、_, )ヽ、,, :/
        `ー `ニニ´一''´      命がのうなるやもしれんな……)
       /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
      /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


          老いた身が情けなく、心細かった。


.


24 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:13:35 XDxaaqIE0


         と、思い直したように顔を上げる。


      /\___/\
     / ⌒   ⌒ ::\
  .   | (●), 、 (●)、 .::|      あかん、あかん。
    |  ,,ノ(、_, )ヽ、,   .:::|
  .   |   ト‐=‐ァ'   .::::|      弱気は損気や、
     \  `ニニ´  .::/
      `ー‐--‐‐―´´        せめて気ぃだけでも張って生きんとな。
      /:: ::\  //::::: \
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


     背筋を伸ばし、冷え始めた蒸し羊羹に手をかけた。


.


25 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:14:22 XDxaaqIE0


            竹の皮の包みを開くと、

       べったりと小豆色の羊羹が張り付いている。

         ______
        `=、;;;;;,,,,,,,:::,,,,,;;;;;,,,,`""''';;;;,, 、__
         ,.-'゙''''',='";;;;;;;;",-,,;;;;;;゙;;;;;;;;;l;;;;`,、
       /   `ー-...,;;;;;;;;;;;;,-‐/;;;;;;';;;;;;;;;;;;
      ./             `''''''""i;;;;;;;;ヽ
      l                        |;;;;}
      |                       ノ;;;;}
      ヽ、                _,/;;;'゛
        `ヽ、_            ._,,.,;‐';;;;゛゛
          "'''=ー;‐---‐‐'';';"-''"゛
             ~~~~ ̄´



         口に含むと、竹の皮の芳香が鼻に抜け

            餡の甘さが舌の上で躍った。


.


26 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:15:56 XDxaaqIE0


       この茶店の蒸し羊羹は葛粉を用いているらしく、

           もちもちした食感が何とも好ましい。


         /\___/\
       / ―   ー ::\
        |  --、,   、ー-、  .|
        |  ,,ノ(o_o.)ヽ、,  .::|     こんな時かて、
        |   、___   .:::|
       \  `二二´  .::/     美味いもんは美味いんやなあ……
        `ー‐--‐‐一''´
        /:: ::\  //::::: \
       /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
      /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


             ダディが苦笑いしたその時。


.


27 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:16:34 XDxaaqIE0


      積雪を蹴散らしてこちらに向かってくる侍の姿が目に入った。


    -=三 =-=三             -=三 / ̄\
                           |    |
                  .         \_/ヽ
             .                   \
         -= =-=三=        -= =-=三=/  ̄  ̄ \
   -=三=                      /     ::\::::ノ\
                - -ヽ       /    < ●>:::< ●>ヽ
              /  (● ●|       |       (__人__)  |
-=三 =-=三  =-=三 `ゝ  (__人)   =-=三\       ` ⌒´  /
             (      |         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
         | ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
-=. =- =..-    |                                    |
       .二三 |                                    |
         |__ _____________________|
               ◎                       ◎

                 すぐ後ろを、その息子だろうか、

          九つか十ほどの袴姿の少年が小走りで追いかけていた。


.


28 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:17:21 XDxaaqIE0


 よほど急ぐ旅なのか、男は瞬く前にダディの前を通り過ぎる。


                          / ̄\
                          |    |
                          \_/
                            |
                        / ̄ ̄ ̄ \
                      /   :::::\:::/\
                   _ /    <○>:::::<○>
                 (((とヽ|      (__人__) .j
                   \ \、     ` ⌒´,;/
                ‐=≡ /ー-.l`‐-‐< ̄``ヽ(
                ‐=≡(   ⌒⌒ ̄ ̄`r::\ヽ
    (⌒;;;;,,.       =≡  (´ー-、_,. -‐'´/l  . ヾ_つ
    (⌒;;;;;⌒      ( ̄ ̄ ゝゝ    /
    ;;;; )(⌒;;ヽ;;`)⌒;;,, `゙´ \/    /
    ⌒;ソ⌒;;;;''')ヽ);;;;;;;,,,,,,   (   /
    ⌒;;;;!"''')ヽ);;;;;ソ;;,,,,,,)ソ;ソ \ J


.


29 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:17:59 XDxaaqIE0

     後を追う少年の目が、茶屋のダディを捉えた。

         ____
        /―   ―\
      /  ○   ○  \   …………
      |\⊃ (_,、_,) ⊂/|
      \|   `  J´  |./




                    _|\ _
                  /!l||l! u `ー、___
                 / u  `ー'ノ( u 。/
               / ゚、(●) u `ー'u i
              ( ゚ 。u r(、_, )(●) |
           ,、,r-'⌒ 、u ノr-、 (. 。 `゚ (    …………
         ,-'⌒`ー-'´ヾ,.ーr-、`。´u o ,ノ
         ヽ、_,,,、-、/ミ,ヽ  `''ー- イ-、
             ^~、 ̄r'´ ̄`''jヽ、  〃ヾ
               /  ヽ´{ミ,_   ̄`'''-ヽ
               /  / `'='´l  ̄i'-、_,,ン
             /  /   !。 l  l
   _ _ _ ____ヽ、__l ___ .!。 l__l__,-=-,___
           ,-=-, ∠ヾゞゝヽ ,-≡-,l  l-=二=-,
          └==┘   ̄ ̄ ̄ ヽ==ノヽ=ノ\__/


   否、ダディが口に運ぼうとしている蒸し羊羹を捉えた。


.


30 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:18:39 XDxaaqIE0


            少年は恥じるように顔をそむけると、

        不自然な姿勢のままダディの前を駆け抜けていく。


                                     ___
                                 =二三―  ―\
                                /  ○ :::::::: ○\
                             =二三  ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
                               , へ         |.| ィ‘
                              (  ,         U/ _
                               `' 〉      ノχ )
                             =二三     )/
                                 ゝ   / /
                                   /  / /
                         .    =二三 / /
                                 ' //
                                 〆


       __/ヽ_∠L_
      /:::::::     ''''\
     .|:::::::::    (●), |
     |::::::::      ,,イ_,`)    (可哀想に……)
   .   |:::::::::      ノ.-=ラ
      \:::::::      `フ     (腹が減ってたまらんのやろなぁ……)
       /`ー‐--‐‐一''´
       /:: ::\  //::::: \
      /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
     /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


        ダディは不憫に思って、その小さい背中を見送る。


.


31 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:19:59 XDxaaqIE0


            その矢先に異変が起きた。

  先を急ぐ父子の前に、抜刀した若者が立ちはだかったのである。


   。 o     ゜      .  。  /l ゚        o    。
 ○     ゚  。  ゜     o //          o       o
            o         _//      。   .    ゜      ゚
 o   ゚   。         _/ /          o   。       。
             o _/ _/     .   ゜    ゜       ○
  。         「 V^レ-'゚     o      ○     o  ゚   o
    ゜    o くf彡へ、          。                ○
゜    ○    ノ^Xへ._/   ..,   r‐^‐、   、     o   ゜    。
 o ゜      ×〆\    .( {   {l   l}   } ) ゜             o
_\  _   ゜/  \ノ\__\ ‐-ヽ=''-‐' /    o    _  ○ ̄ ̄
  ○ \    o    \_::::::::::::::::::::::ト┴┴''´  。       / /
 ̄ ̄|__ \\ 、     。 ̄ ̄入|:::|: : : : : `ー-ァ  ○//。__| ̄ ̄ ̄ ̄
∃  |   |  | l l ゜     /   |:::\: : : : : : /。 l l |  |   |○田 田
    |田 | 。| | l      ゜ /   i::::::::::\ : : : :\l | |  | 田|    o
∃○|   |  | |。  ゜ . .. .../    .〕::::::::::::..\: : : :.\。|  |   | 田 田
    |田 |  | l‐    .../     .ヽ::::::::::::::::./\:: : :\|  | 田|
∃  |   |○― ....    /       .〉::::::::::::::::i_  \: : :\  |   | 田 田
   o.... 一      ../       .//::::::::::::::::::\_ .\: :.\ー- | 。
―  ̄   o   ⌒  /      .//::::::::::::::::::::::::::::\ .\: :\   ̄ ― -
  ....         /     .//::::::::::/^\::::::::::::::::\. \: :\     ....


        小柄な身体全体に殺気がみなぎっていた。


.


32 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:20:47 XDxaaqIE0


  侍はとっさに息子を背後に庇い、立ちはだかる若者を問いただす。


                   / ̄\
                  |     |
                    \_/
                   _|___
                 /     \
                /  ::\:::::::/::\
              /    <◎>::::::<◎> \      貴様、何者だ!
               |   .u   (__人__)   |
                \      ` ⌒ ´  ,/
          .      /⌒~" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ
                |  ,___゙___、rヾイソ⊃
               |            `l ̄
          .      |



      /:::::::/::::::::::::::::/         \::::::::::::::::::.\::::ヽ
     N:::::::./:::::::::::::::/            \::::::::::::::::::ハ:::::V|
     |::ヽ::/:::::::::::::::/               V::::::::::::::::::i::::/::|
     .|::::Y::::::::::::::::i                V:::::::::::::::Y:::::i
     |:::::::::::::::::::::|                 |::::::::::::::::::::::.|
  __.|::::::::::::::::::::|                   |::::::::::::::::::::::|
  ̄   |.:::::::::、:::::::|                     |:::::::/:::::::::::i───
      V:::::::::ヽ:::::|               __∠||::::/:::::::::/     美濃国苗村藩藩士、
      ヽ:::::::::ヽ::::ヽ        _,-‐壬,ィ<ヽリ/:::::::::/
       ヽ:::::::ヽ:::::\        |//弋ノ_ノ /ノ/:::::::::/       彦坂オプーナに相違ないな。
        ヽ:::::ヽ\:::::`ー、__  .|ー、__...,イ´//:::::::/
         ヽ:::::\\_::::::::: ̄ ̄ ̄:::::_//:::::::/
           \::::: ̄フ::>::::::::::::::::::::::ヽ、 ̄::::::::::/
            \:::::::ヽ\:::::::::::::::::://:::::::::/
            ,-─iヽ:::::`ヽ:::::::::/:::::::,-/ヽ、        //
 \         ヽ ヽj_ `ー 、_, -‐   レ ノ      //
 \\       /く   Y ̄iン‐、__,へ/⌒ヽ/ ト     //
 ::::::\\    ∧ `ー、/  i/     |   V-‐' ゝ   //
 ::::::::::::\\,-‐ヘ ヽ  /   !     |   ヽ,-‐'ヽ //
 >:::::::::::::::\\  `ーニ/        ノ    V´ク//


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33 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:21:20 XDxaaqIE0


             答えを待つことなく、青年は太刀を振り下ろした。


                  、ェ、_
              yェテ  ,ク匁テ=、
             /iヲ'´ .ⅷ圭/::::::....::ヘ   、              __
          /圭ヤヽ-!ヨl:|ヤ::::::::,'::::,'   /i!           ., < > '.´
          i圭沁,: : :〉ヨ、心、:,':::,イ-,イヨ7       ., < > '.´   父の仇、
          ヽヨi',ヨ,: :ヾ圭ヾヲイテェ圭,イ       ., < > '.´
           /ヨ!ヘハ-'≠'7iテ圭圭ヨ!    ., < > '.´           覚悟っ!!
ニ三ニェェ、___,ェ7圭ヨ圭ヘ__, イ圭圭圭ヨi、., < ,>'.´
テテ≦圭圭圭圭圭≧テ圭圭圭圭圭テ< >'.´
: : : : : : : : >テ幵√天≦圭圭ilテ< >毟圭圭ェェェェェ、_      _, ...:ェェエ三三三三二ニェ:.、__
: : : : : : : : :/:.:.:.:./: : : : : : :, < >彡圭圭圭圭圭圭圭圭圭ヨ>ェ二三圭ヨ>テ'"´: : : : : : : : : : : >ー-
: : : : : : : /:.:.:.:.:./~: : :., < >'フ>、圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭>テ' ̄: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
___,ィ:.:.:.:./:;:,<  >':´::/.:.:i:ヤ:.:.:7テ≡三圭圭三≡テ'": : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
\ヤ i /≧二ヘ、_,>く:.:.:.>':i |:.:.i!:::ヤ:7: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:,:_:_: : : : : : : : : : : : : : :.
: :>ヽ〃≦三三三ヲ三三≧ェヤ:.':.:.:Ⅵ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :`゙''ー-、,_ : : : : : : : : :.
洲抂气圭圭ヤ:./: :_:_:ヘ:.:./:.//:.:.i:.:.i!: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :>、: : : : : : : : .
圭戓テ': : : : >-、__>三三7i==、i〉、ヘ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\ . : : : : : .


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34 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:22:00 XDxaaqIE0


                   侍の顔から鮮血が散る。


         ,,、                  、
         `'ミ'‐ ,,、            リ、
           \ `''ー ..,_   .゙ミ'ー ,,,、 .|.ヽ
             \    .`゙"''''''゛   `゛ ヽ      i、
              \                ヽ,    ,バ,
               ヽ                `'-  ‐゛ ..l,
        _______ゝ           _、         ヽ
            ̄'''''ー ,,_           ,i'´   . ´゙'''.ー      l,
               ___>     │         `''‐、.  ヽ
          -ニ二 ̄ ̄        !            `'‐ ヽ
     /       `''-、.        .l              `'' \
               `'-,       l,           \
              /  `┐      ゙'、    /       \
            /    、i|_      ゙'、:::: /::::::..       \
           /       _`''-、    .ヽ/:::::::::::.. _       \       ぐおっ!!
         /      /,..::::::::::.ヽ_,ゝ    \::::/,..::::::::::.ヽ\     \
        /      <  {:::::::::::::::::゙゙'ニr     .ヽ  {:::::::::::::::::}  >      \
       /       \_,,.. -‐''"゛        \ ヽ;;;;;;;;;//       \
      /              ゙゙゙゙゙̄"''''―- ..,,,_     \              ヽ
      |              /        `゙'' 'ー ..,、 .\             |
      |              {        / ヽ   `'-、 .\           |
      |              ヽ___/ __ \_ .,,....>  \            |
                                 `゙'''ー _. \
                                      `\ \
                                         \\
                                           \


            周辺の雪が見る間に真っ赤に染まっていく。


.


35 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 21:23:07 pIMtsJuU0
おっ、始まってた


36 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:23:30 XDxaaqIE0


  オプーナと呼ばれた侍は必死に背後の息子に呼び掛ける。




       .ノ-‐'、_\─○
       /_;:;:;ノ、●>|
      | ( _人_) /・,‘    鶴ノ助……逃げろ……
    ∴.'∴.'⌒´/
      / ヽノ ヽ
     /    /\ 〉
   / /| /
  l、_/ / )



                   ___
                  /ノ  `ヽ\
    父上っ!       / ○ }liil{ ○   \
                |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
                >   |!i|!|     ィ’
             .      |ェェ|


.


37 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:24:13 XDxaaqIE0


               弾かれたように、少年が父親の体にとりすがる。


        ____
       / ノ  ヽ_\
     / u ● 三 ● \
     | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|   父上っ、父上っ!!
     ヽ      |r┬|  ィ’
           `ー'´


            /.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
            ; /: .:.:.:./ ..:.:.:.:.:./:.:.:.:.: .i:. :.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
           ':.: .:.:./ .:./.:.:/:.:.: .:.l .:.l:.: .:',:.:.:.:.:.:.:.l ;
        ; ,'.:.| :.:.l. :.:.//:/:.:.,':.: .:|:.:.:!:.:. .|:..:.:.:.:.:.:|
            /:.: l:.:.:.|:.:.//:/:.:./.:.:. //∧'.:. !:.:.:.:.:.|:.l ;   そ、そこを退けっ
      ;  /イ.: .|:.:.:.l://l//:./.:.:.:./// _ヽ:l:.:.|:.:.:|'.!
          / /:.:.:.r':.:.|ド㍉、'/}.:.:.///_,∠zミ.|:.:l.:.!:{ ヽ ;    と、とどめを刺せないじゃないかっ!
         /´|:.,:.ヽハゞfェ'イト.|:.//廾ゝュ'イフ:./ }:.lヽ、
           |:.{ヽヽ:ヽ  ̄i!´リ ,'    ̄ //イ:.l'.!
           ヽ! ヽ:.l:ヽ.    i!    /':.:.ハ:.| ヽ
                l:.|:.:.\  !ニニ! /l:.:.| ',{
              リ.ソ}Fr>、`=´イ/ヲ.:.{  `
               ノl`=r ≧≦ヲ/f |`ヽ         _ -‐ ' ̄}
               / 艸 | |: : : : | | 圸`ー---‐´ ̄ ̄ ̄: : : : : : : /: : ̄¨}_


                     かすれた声で青年が言う。


.


38 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:24:51 XDxaaqIE0


          少年はガクガクふるえながら両の腕を広げ、

          自らの体を盾に刺客から父を守ろうとする。


                      γニヽ
               ,.r…、-_‐_ 、入_ノ
                (_ _,.ィ(   `ヽx_
           ,..┬-, L_: : : `l 、_  ) ヽ
          /_(。ノ゚~   ヽ、ノ     .i     鶴ノ助……鶴ノ助……
        ∠´ x ゙!      .ヘ      .l
   ,r= 、  .{llキ ,.rll|ヽ      .ト<ヽ   ノ
  .{   ヘil||||;||i|||llll|____    `ヽ-.'
   ヽ   }||||ll||; /\ u./\ ;  ,ィ 、
    ガク ….  / ●   ●  \ .ガクガク.
      /⌒ヽ|⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |/⌒i`¨ヽ
      \  ヘ         /  /¨ ''.’
          | ´   ̄  ヽ  |


.


39 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:25:37 XDxaaqIE0


             おそらくその手で人を斬ったのは初めてだったのだろう。


    |::.::.::|::.::.::.::.::.::/::.::./::.::.::.::.::/::.::.::.::.::.::.:|::.::.::.::.ヽ::.::.:|::.::|::.::ト、
    |::.::.::|::.::./::.: /::.::./::.:/::.::.:/::.::.::.::.::.::.::.:|::.::.::.::.::.::i::.::|::.::|::.::|八
    /!::. : |::.::i::.: /::.:::/::.:/::.::.:/::.::.::.::.::.::.::.:/::.::.::.ヽ: : |::. |::.::|::.:ム .\
.   /イ::.::.:|::.::|::.:i::.:::/::.:/::.::.:/::.::.::.::.::.::.::.:/∧::.::.::.::i::.:|::. |::.::|::.i八
  //!::.::.ハ : |::.:|::.::i:: /::/::/i::.::.::.::.::./://  ヽ::.:::.|:: |::.::!::.::!:リ   わ、我が父シャルルを斬殺して逃げた
. /   从::::::.Ⅵ:: |:::.::./::/!:/ .!::.::.::.::/:/ /  / ヾ:::Ⅳ:::/::.://,!
   /:人::.::.::∨ :!::.::iィ㍉ X_」::.::.::://ィ´,ィ≦ニ,スォⅣ::/::.://:/    許せぬ仇はオプーナ独り。
.  /   ∧::.::.:∨Ⅳム戈:歹≧!::.//〈く壬ィ≦戈:歹イ::/::.:/〉!/
.    / ヽ::.:: ∨{/´ ̄ ̄彡ィ/ィ⌒ミ=-ミ  ̄ ̄ /:/:.:://:/     こ、子どもまで斬るつもりはないんだっ。
    {   ヽ::.:Ⅵ\    / .::|      -=彡イ::/::.{
         )八ト.、ヽ      ::|       イ::.::.:/!::.|
       // |::.::.:::\     _`,_     /::.:::i:::{爪:|
.          |:::イ::.::.::}ト、 / , --.、 ヽ /!ハ:::::::|: |八j!
.          |/ !::.:イ !  ヽ     .,イ  //∧: |八
          / . レ' /\\  >-<  /イ/ .∧\
.          / /  .\>== ==</   ∧ \
.         /  !{    /  /  |  ヽ     〉  \


                 声はかすれ、構えた太刀は震えている。


.


40 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:26:23 XDxaaqIE0


                                                  ///
                                                ,r'、//
   し、しかし、邪魔をするつもりというなら……             ,、/`ヽ /;\ >'
                                         r〈 ヽrゝニ`ー <}!
                は、話は…べ、別だっ!          {ヽ \ノ´ーr   }
                                         >、)ー';;;//   |
              _. -‐:: ̄::¨::‐-.. _               Yヽ  /;;;;;;;;;, <_ r''´ ̄`ヽ
            _':.´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:``ヽ、          .ノ  ヽ<;;;;;;;;/   {!:::::::::::::::::\
           /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\       ,イ i! リ  ヾ,イ     ';:::::::::::::::::::::::',
          /:.:./:.:.:./:.:.:.:.:.:i .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ   /  |!/    ノ       ',:::::::::::::::::::::::',
         .,,':.:./.:.:.: /.:.:.:.:.:.,ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}ヽ /´ ̄`ヽ__/         ',:::::::::::::::::::::::',
       ,/l:.:/.:.:.:/i/ヾ.:.:/:i::ヘ::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. i/:::::::::::::/::::::::::: ̄`ー- ..,,_  ',::::::::::::::::::::::',
         .|/´|:./:/:i.:|:.:/::::\`ー- ..,,_\, 、.:.:.:.:./´:::::_,,..r''´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ j:::::::::::::::::::::::::',
         //:.:|'|/.:.:|:.|//\::::\:::|/::/<  }:::,r_,,..r''´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ノ|`ヾ:::::::::::::::::::}!
        .//.|':.:/.:|//  ノ,イ tリ.,,_:/i/ _ノ //::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j!
       ./´   i!/:.:.//ヽ ´   ̄´ /,イ /´ ̄::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ノ
           ///ヽ:./__  _  //´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨::::::::::::::::::_,,..-‐'´
            /   /::::::`ヽー `ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨_,,..-‐''´
              /:::_,,..-‐''"´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}!
             //::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_,,.. -‐'´i!


                       青年が太刀を構えなおす。


.


41 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:27:02 XDxaaqIE0


  それでも、鶴之助は退くことはもちろん、震える両腕を下ろそうともしない。


               ____
             ; /\ u./\ ;
    ガク ….  / ●   ●  \ .ガクガク.
       /⌒ヽ|⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |/⌒i
       \  ヘ         /  /


                   /.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
                   /: .:.:.:./ ..:.:.:.:.:./:.:.:.:.: .i:. :.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
                  ':.: .:.:./ .:./.:.:/:.:.: .:.l .:.l:.: .:',:.:.:.:.:.:.:.l
                  ,'.:.| :.:.l. :.:.//:/:.:.,':.: .:|:.:.:!:.:. .|:..:.:.:.:.:.:|
                 /:.: l:.:.:.|:.:.//:/:.:./.:.:. //∧'.:. !:.:.:.:.:.|:.l
 退けと言っているのが  /イ.: .|:.:.:.l://l//:./.:.:.:./// _ヽ:l:.:.|:.:.:|'.!
                / /:.:.:.r':.:.|ド㍉、'/}.:.:.///_,∠zミ.|:.:l.:.!:{ ヽ
  わからないのかっ!  /´|:.,:.ヽハゞfェ'イト.|:.//廾ゝュ'イフ:./ }:.lヽ、
                  |:.{ヽヽ:ヽ  ̄i!´リ ,'    ̄ //イ:.l'.!
                  ヽ! ヽ:.l:ヽ.    i!    /':.:.ハ:.| ヽ
                     l:.|:.:.\  !ニニ! /l:.:.| ',{
                     リ.ソ}Fr>、`=´イ/ヲ.:.{  `
                      ノl`=r ≧≦ヲ/f |`ヽ


     /\___/ヽ
   / -‐'  'ー-  \
  . | (●),(、_,)、(●) ::|
  |    /,.ー-‐、i  :::::|
  |    //⌒ヽヽ  .::|    (こ、こら…あかんっ)
  |    ヽー-‐ノ  :::::|
   \    ̄   ...::/
   /`ー‐--‐‐―´\


.


42 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:28:51 XDxaaqIE0


             ダディは思わず声を上げた。


                           /\___/ヽ
                          / ''''''    '''''' \
                         │:::::::(ー),  、(ー) l
                         │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │
  そこらで堪忍したっておくんなはれ    /‐:::  `-=ニ=- ' /
                        _,,,l ;! |:::______/
                     , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_  +
                     l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、
                    ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
                    ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|



    l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:/l:/:.:.:.:./.:/l.:l.:.:.:l.:.:.:.:l.:.:.:.l:.:.:.l
    j:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:/:.:.:.//.:/l.:.:/ .メ //:.:.:/:./ |:l.:.:.:|.:.:.:.:|.:.:.:.|.:.:.:l
    ノ.:.:.:.:.:.:.:.: .l.:./.:.:../ ./ノ /.:/.///.//.:.:/.:./   ヽ.:.:l.:.:.:.:.|.:.:.:.|.:.:.:l
    イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:l/.:.:.:./ーメ,,_//__ノ.:.://.:./.:.//,,-‐'''ヽ:l:.:.:.:.:l:.:.:.:l:.:.:.l
    l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|/.:/y=‐‐-/、  // l:.l.:./ l.:l  ,r‐''"ヽ`ヽ/:.::.:/リ.:`j  だ、誰だっ?
    .l.:.:.:.:.:.:.:.:.:l l/{   ,.-c、ヽ l/ l//   lノ/ r‐c、 .リ /.:.:.:/./ l/ヽ
     l.:.:.:.:.:..:.:.:ヾヘ`、 ゝ゚-' , ./  / .i ´イ 、 ゝ゚-'ノ ノ./.:.:/ l
     lヽヽ.:.\ヽヽ  ` ̄´     ノ . li    ` ̄´  ///.:./ /


.


43 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:29:25 XDxaaqIE0


      二人の間に割って入る形で積雪に両膝をつき、深々と頭を下げた。


             /\___/ヽ
           /:::::::       \
      .     |:::.   ''''''   ''''''  |   大坂は天満の寒天問屋、井川屋の主で
      .     |::::.,(一),   、(一)|
      .     |:::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |   ダディクールと申すもんでおます。
           \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /
           /   `一`ニニ´-,ー´     見るに見かねての差し出口でおました。
          /  | |   / |
          /   | |  / | |       何とぞご勘弁のほどを。
         /   l | /  | |
      __/    | ⊥_ーー | ⊥_ __
         |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
        (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
         `ー、、___/`"''-‐"


.


44 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:30:15 XDxaaqIE0


 年寄りの柔らかな浪花言葉と、その平伏した姿が青年の刺々しい怒りを和らげたらしい。

                青年は太刀を降ろしてダディに問いかける。


        /.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
       /: .:.:.:./ ..:.:.:.:.:./:.:.:.:.: .i:. :.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
       ':.: .:.:./ .:./.:.:/:.:.: .:.l .:.l:.: .:',:.:.:.:.:.:.:.l
      ,'.:.| :.:.l. :.:.//:/:.:.,':.: .:|:.:.:!:.:. .|:..:.:.:.:.:.:|
      /:.: l:.:.:.|:.:.//:/:.:./.:.:. //∧'.:. !:.:.:.:.:.|:.l   お前、商人かっ。
     /イ.: .|:.:.:.l://l//:./.:.:.:./// _ヽ:l:.:.|:.:.:|'.!
    / /:.:.:.r':.:.|ド㍉、'/}.:.:.///_,∠zミ.|:.:l.:.!:{ ヽ   だったらこんなことに首を突っ込まずに
     /´|:.,:.ヽハゞfェ'イト.|:.//廾ゝュ'イフ:./ }:.lヽ、
      |:.{ヽヽ:ヽ  ̄i!´リ ,'    ̄ //イ:.l'.!     商売に専念してたらいいじゃないかっ!
      ヽ! ヽ:.l:ヽ.    i!    /':.:.ハ:.| ヽ
         l:.|:.:.\  !ニニ! /l:.:.| ',{
         リ.ソ}Fr>、`=´イ/ヲ.:.{  `
           ノl`=r ≧≦ヲ/f |`ヽ


          /\___/ヽ
         /       :::::::\
         |             .::::|  へえ、ほんにありがとうさんでございます。
        |  /      \ .;:::||
        |  ー,   ー  ::::||  ほな、早速に商談に入らせて頂きとうおます。
         \ ,,ノ(、_, )ヽ、,,.::::/
         /``ーニ=-'"一´\


.


45 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:31:06 XDxaaqIE0


     l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:/l:/:.:.:.:./.:/l.:l.:.:.:l.:.:.:.:l.:.:.:.l:.:.:.l
.    j:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:/:.:.:.//.:/l.:.:/ .メ //:.:.:/:./ |:l.:.:.:|.:.:.:.:|.:.:.:.|.:.:.:l
    ノ.:.:.:.:.:.:.:.: .l.:./.:.:../ ./ノ /.:/.///.//.:.:/.:./   ヽ.:.:l.:.:.:.:.|.:.:.:.|.:.:.:l
    イ.:.:.:.:.:.:.:.:.:l/.:.:.:./ーメ,,_//__ノ.:.://.:./.:.//,,-‐'''ヽ:l:.:.:.:.:l:.:.:.:l:.:.:.l
    l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|/.:/y=‐‐-/、  // l:.l.:./ l.:l  ,r‐''"ヽ`ヽ/:.::.:/リ.:`j
    .l.:.:.:.:.:.:.:.:.:l l/{   ,.-c、ヽ l/ l//   lノ/ r‐c、 .リ /.:.:.:/./ l/ヽ    なに、商談?
     l.:.:.:.:.:..:.:.:ヾヘ`、 ゝ゚-' , ./  / .i ´イ 、 ゝ゚-'ノ ノ./.:.:/ l
.      lヽヽ.:.\ヽヽ  ` ̄´     ノ . li    ` ̄´  ///.:./ /
       ヘ.:.:ヘ.:ヘヽ\          |i        /.:/.::./



                                 ,ヘ           ,:ヘ.
                               /: : \       /::  !
                             /::::.....  \--―‐'.:.:::...  !
                             /::::::                 ',
                             ,'::::                    i
                            .i::::      '''''''        '''''''   !
                            !:::.      (● ),    、(● )、 !  +
                           |::::..         . ,,ノ(、_, )ヽ、,,    l
         へえ、商談でおます。      i;::::..         ノ     、 ゝ   !
                            ':;::::...       ー‐ ==イ    /.  +
                             .\:::::.....       ヽ--‐'   /     +
                              `ゝ:::::........      ....../
                               ,レ─── 、    /


             ダディはまっすぐに若侍の目を見る。

          齢六十の老年ながらその眼力は衰えがない。


.


46 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:32:13 XDxaaqIE0


     ダディは懐に手を入れ、厳重に巻いた銭袋を取りだした。


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |
     |::::.,(●),   、(●)|
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /
     /   `一`ニニ´-,ー´               __
     /  | |    / |               /'´r==v)
    /   | |  / | |               ll ||  8
    /   l | /  | |           ~~~7/  ハ
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ _______>=゛="<'__~~`
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}         ./ 田 田.ヘ
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ        /田 田 田'.、
    `ー、、___/`"''-‐"        .〈ー-------一〉
                       `ー-----一.'


      迷いもなく、銭袋を若侍に差し出す。


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47 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:32:52 XDxaaqIE0


          訝しげに中をのぞいた青年は、はっと息を飲んだ。


                         .        /.壱//万:/|
                                  |≡≡|__|≡≡|彡|____
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                                (映像はイメージです)




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/ハソ;;;;;:::::;;.|:: :: :: :: :::|;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;;.::: ::|:: ::.|
  i/ハ::;;;, 、.|:: :: :: :: ::|;;;;;;;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;:::: :|:: :::|
   ノ;;;;/ V |::::i::::::::|;;;;;;;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ハ;; ;; ;;:::;;;|i:::|::|    こ、これはっ
  /::::;:ヽ i::|::::|:: ;;;:|;;;;;;;; ;; ;; ;; ;; _,/;; ;/;; ;; ;; ;;/;; ;; ;; ;; ;/;; ./ |;; ;; ;; ;;||;;:|ヾ、
  ノ/;;;;;;;i. .|::|::::|::::;;;ヾ;;;;;.;;_x -''´////;; ;; //;;/;; ;; ;/;; ;/''´ |;; ;; ;; ;;|ヾ|ハゝ
  ´/::;;;;ハ::;;ヽヽi::;;;:::;;;;;`、/_><<_//;;;;;/ /;;://;;;;;;//;/ ィt /;;;;;;;;;;;;;;| レ´
  /;;;;;/ /;::;;;;;;;li;;i;;;i:::;;;;;;;;|;;|弋及-、|`//;;;/=、/;;//;;;;;///,xィ勿ト /;;;;;;;;;;i;;;;|
/|;;;/  |;;i;;;;;;;;|ヽ`ヾ;;;;;;;;|、;i廴::...::ン`''x、 /;//;;;;;//ィ冬z刻/;;;;;;;;;;ハ;; /
  |/   |;;|i;;;;;i、 ヽ`、ヾ;;;;ヽ`、` ̄ ´ /    / |;;/       /;;;;;;;;;/ |;;;|


   そこには彼が一生かかっても拝めないほどの銀貨が大小取り混ぜて入っていた。


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48 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:33:32 XDxaaqIE0


                 とまどった顔でダディを見る。


                                   _,. -- 、_
                              _ -‐: : : : : : : : : :`丶、
                            , . : .:.:.: : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ、
                         , : : .:.:.: .:. : : : .: : : : : : : : : : : : : : : :\
                        /: .:./:./:.:.///: / : : : : : : : : : : :ハ
                       /:.:./:./:.:./:.:.///: ://: :.: : : : : : : :. : :. い
                     /フ://:.:.':.:./:.;.:.:.;.:/: .:.:.//: : :.: :. : : : : :.: :.:.:. i: '、
                    ´/:.//:.://:/:./:.:/:, : .:.:/ィ:| |:.:.:.:.:i: : : .:.:. :i:.:.: ト、ト\
   こ、これは一体……     l/〃:.:.l:.l:/:./:〃/: :.ィ:/ l/!:|l:.:.:.:.|: : :.:./:/:.:.:. | 丶
                    { |l|:.l:.l:.l|:メl:///:.:/ナ=┼l小:.:.://: .:/:/:.:.:.:.!:!
                      lハ:.!:.!:|i小以!:./ノ‐ラ云=ミヘ//: .:/:/:.:.:.:.!:い
                      { ぃl:.い.:.l`Ⅳ  ノ匕zj_ ン//:.:.ィ ィ:.:.:.:.:.:|:.l、ヽ
                         ゝヘトV         //// //:{:.:.:.:、ヽミ 、
                         rf: : : : ヽ' _    ‐彡' / /イl:小:.、:.ヾ\:\
                        l:{: : : : : ノヘ` =‐- .イ  /|'! j八{:¬i : : : : \
                        ハ: : : : : ノィへ.. ィ入二二 く r=ノ气_): /: : : : : : : \


              /\___/ヽ
             /''''''   '''''':::::::\
            . |(●),   、(●)、.:| +
            |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
          .   |   `-=ニ=- ' .:::::::| +
             \  `ニニ´  .:::::/     全部で銀二貫、おます
              `ー‐--‐‐一''´
             /:: ::\  //::::: \
             /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
            /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


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49 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:34:26 XDxaaqIE0


          ダディは温和な口調で続けた。


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |
     |::::.,(一),   、(一)|    お侍さんの仇討、
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /    わたいにこの銀二貫で
     /   `一`ニニ´-,ー´
     /  | |    / |        買わせて頂きとうおます。
    /   | |  / | |
    /   l | /  | |
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ ________
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


.


50 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:35:21 XDxaaqIE0


     . /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
      /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.
      ,'.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!.:.:.:.:!..:.:.:.:.:l
     } .:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:. :.//.:./.:.:.:.:./i :.:.:. |:.:.:.:.l:.:.:.l:.|.|
     .':.l.:.:.:.| :.:.l:.:.:.:./:. :. :./:./:.:/ : :.: .:./.:.|:. .:. .|:.:.:.:.l:.:.:|:.l.:!
   . /:./'..:.:.| :.:.|.:.:./l:.: .:/:./:./ .: .:.: :.:./.:.:.:l:.'、: .l.:.:.:.:|.:.:.|:.|:l     な、なにを馬鹿な!
   /:./ l.:.:.| :.:.l.:./ l.: .:./:./:./:.: .:.:.: /:.:./l:.l:.:.\.|:.:.:.:l.:.:.l:.|:.l
   }/  l'..:.l :.:.|/ヽ|: ./|:/:./.: .:. :.:/.':./ |:.!ヽ:.:.} .:.:/:.:/|:|'.:{     仇討を金で買うだなんて、
   /   |ヽヽ :.', ミ|:/‐|{:./l:.:.:.:/ /:.∠-‐´ヽ_',ノ .:/ }.{.',{ ヽ
      l .:.ハ:ヽ:.{f㍉,爻イ、|:/ //,rz=伐升フ .:/ /:.:l ヽ      このルルーシュを馬鹿にするなっ!
      | ノ ',ヽヽ',¨冖┴-/´',  彡`ゝー┴‐7 ../ /:.:,'
      |/ ヽ:.\ヽ、     }        /:.:./_/ |/
      ノ´  ヽ:.:.ヽ ̄    i}        /:.ノ:.:.l /
          l:.|:.:. ヽ、  -‐- -、..  ,イ、/.:./リ


                          /\___/ヽ
                         / ''''''    '''''' \
                        │:::::::(ー),  、(ー) l
 (怒りながらも銭は手放さへん…)   │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │ +
                         /‐:::  `-=ニ=- ' /
  (こら、勝ったな……)        _,,,l ;! |:::______/     +
                    , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_  +
                    l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、
                   ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
                   ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|


              ダディは自らの勝利を確信した。


.


51 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:35:50 XDxaaqIE0


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |
     |::::.,(一),   、(一)|
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |   ほんの少しの間でよろしおます、
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /
     /   `一`ニニ´-,ー´      この老い耄れの話を聞いとくなはれ。
     /  | |    / |
    /   | |  / | |
    /   l | /  | |
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ ________
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


.


52 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:36:37 XDxaaqIE0


   『その銭はこの間の大火で焼けてしもうた

    天満宮の再建に用立てて頂く心づもりで、

    .        /.壱//万:/|
             |≡≡|__|≡≡|彡|____
    .. / ̄//|≡≡|__|≡≡|/.壱//万:/|
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     |≡≡|__|≡|≡≡|__|≡≡|≡≡|__|≡≡|/
        (映像はイメージです)

   これまで貸し付けてあった先に頭を下げて

   今日、ようやっと回収したもんでおます』


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53 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:37:10 XDxaaqIE0


                                    __
                                    /|: : :.:::|
                                l   | : : : :|
                                 |   |: : :. .:|
                                 |   |: : : :.:|
  iv'ヘ                                |  |:|l==|
  | ;`;|                            |  |:|》: ::::|        i'1
  | ;'l:|           i'`'i             、       /|  |:|\ : |  .      |;'|       ,、
  !:`l'|  ζ\     |;`;|             ∥       〕 .|  |:|  || | ./\   _.|;'|       /.:〉
-、_|_.;l:|   \';、\  :|':i;;|     .  i'1   ||/>  r┘.:|  |:|  ||::| |  ∥‐┘ .:|';|──へ./.:/_r‐
ー|_}:;|    \';、.\|;';;;|   ./〉 |;|_r//  /| ̄\:|  |:|   ̄ .:〃../>.::|;'|:::::::::::::::/.:/:::::::::::
-|_|`|_r:‐:‐:‐:‐\';、\;| r‐//┐_|:|::::::::;⊥、r/.::| .:::::::|/\/\   《// ..:::|;'|:::::[]::::/.:/]:::::::[]::
ー|_};|::::::::::: : :: : {二l\;i`!、::://:::::::::::::::::::r| .::| /.:::::<\/   〈:::.:... \ 》 ' .::::::::/|\_n::::::::::::::::::::
-|_| ̄/\:::::::/`|_{┬| |;、\::::::::i'|::::::r┴冂、 .:::::|::\\ _____:::::.:..〉″へ:::::/ .| |: : : |:|::::::::l`!へ、
ー|_}::/ 、';';〉.:/ /{_|┴lニニニニニl.r┴、_|_|_|:>:::::___|」__:l;_;_//..::. `〈 :| |: : : |:|::::::::| |: : :
-|_;l'_;_;_∠;/_/___l_,,:;;}┬┴┬┴┬┴┐::| .:::|_rェ┘__;!___;!__;|_;_;:::.:/ : :| |: : : |:|::::::::| | : :
~゛'' ┘⊥ 」_ |  |{_|┴┬┴┬┴┬┴┤ .:|_;!__;!__:l__;!__;|<___;_/\_;_;_;|;|-∠|_|;_;_;
         ~゛'''' ┴'::⊥Λ二\.:|  .:|ー:|__;!__;!__;!__:l__;l:::...\/<>::.  ∠二
 `     , '  .   `   ∨_,,,;;;;/. ~゛`┴ -'⊥ .」_;!__;!__;!__;!_;ト、 r─‐-、   ...:.:.:.::.:
             ,                 ~゛ ┴  ⊥. .,_..:::| ::/ ̄. ̄'"ヽ┴-、_;_;_;_;_;_;_
                     ,,       `            ~゛'' ‐-|\___ト--/.. ...:::::::./|
  `             .,     `    ,.            '     \|__;_;_;_;_;!─l二二二l/

         「天満の天神さん」が身をもって助けてくれはった、

          そう信じたダディは同じく類焼を免れた他の商店主とともに

          天満宮再建のために出来うる限りの寄進をしようと決めた。


.


54 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:37:43 XDxaaqIE0



        だが、世は不況の真っただ中。


      _::.;;;|_;:.._|__:._|____|_.| i ..|
      ;::_|___|√__:.:|:..__|__,;;'~   |   〉
      __|:::.__|__;:._|__;::|'___ i  '~ヽ/ ̄`::.
      ::._|__|_|;:;:::|_|__:|___,;'    |   ::.
      __|_::._.,|__::..|∧,,,,,∧〃   ,,/  :..
      _|__|;;;;;;;;;;;;;;;;|__彡o-o・,,ミ〃 i | :. ..
      ;._::.,|___|__と「;;<w[と).|i  .|    :..
       ̄ ̄|_|___|__/;;y;;;;;;ゞ\   |  ::...:
      ted!..|;;.__;;;|_::._|〆ノ `J\r' ̄|    ::.:
      o`》:::|_|;;;::::._:|__|\ \| ̄㌧  | :.
      ル。:::|_:.__::|__|\ \| ̄ ㌧ : :. |   :..
      __|_|__|\ \| ̄   .::    .. |     ::..
      _|__:;;;|\ \| ̄    ..: :.. .::. :. .|  :.
      ;;;,,,,_;|\ \| ̄'' 目 λλ     ;;. |  :.   ::.
      '    \| ̄  ;;./ ヽ_( 'ー`)y-~ : .  |   ∧∧
      ∩∩    ̄ ̄'''' |~|ノ( ヘヘ) ̄ ̄ ̄''\,~-∩゙*,)
      ;;;'д),, ;;     |__,,|   。  ゛   ,,\(_ソと)
        っっミ    ::.                ( , ノ ::.
      ;;,_)旦         l⌒i⌒l       .レ`J.、
      ,,,,,,,,,,,ミ     @

          ダディにしても、寄進できるのは

   大恩ある美濃志摩屋に大変な苦労を強いてまで調達した

           この銀二貫がやっとだった。


.


55 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:38:20 XDxaaqIE0


              . -‐.:.: ̄ ̄ ̄>x.
             /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
            /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
           /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
          /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ .:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l
         /.ィ.:.:.:| .:.:.:/:.:.〃.:.:/.:./..:.::.ィ.:.:.:.:!.:.:!     よくわからないな。
        ノ'´ l.:.:.:.| .:.:/.:∠|..:.:'.:./ .:::/ !.:! ..:|.:.:|
           |, .:.:| .:.l/rfュ心|::/.:/r―┤l ..::ト..:|     そこまでして手に入れたこの銀二貫を
          ノ|l.:∧ .:l上レt癶:{:/ ィfj升V.:.:∧ ヽ
           |l.:.`ヽ.:.',      { `¨¨7.:.:./       全部寄進するというのか。
           |イ/.:.::ド 、    ′  , ′:/
           从/ト'、 >   ´  イ:.:/
           /   ヽ辷 ≧-<リハ{
      , -―――‐〈`Y ヘ //   /// {__ __
  /        ナ K //   // {ト、    `丶


               /\___/ヽ
             / ''''''    '''''' \
            │:::::::(ー),  、(ー) l
            │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │ +   へえ、その通りでおます。
             /‐:::  `-=ニ=- ' /
            _,,,l ;! |:::______/     +
        , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_  +
        l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、


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56 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:38:52 XDxaaqIE0


      『天満の天神さんは私ら商人の気持ちの拠り所でおます』


        Π                                Π
        旦三l二二l二二l二二l¨/^\¨l二二l二二l二二l三旦
        /               //'^\\               ∧
       /             //`¨O¨´\\             ∧
      /            // 〔王l王l王〕 \\           ∧
      /          </=======\>.          ∧
     /    ,′                              `,   ∧
    /    /             γ´三三三ヽ           \   ∧
    /    乂ゞ 、        /゙/  ◎   ヾヽ         , 彡丿  ∧
   ≪亞亞亞`<三三三三三彡` ‐-((t))-‐ ´乂三三三三三彡´亞亞亞≫
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l=ll=(Y)=ll=l| |        | |
        | |        | |l=ll=GQ=ll=l| |        | |
        | |        | |l=ll=.从.=ll=l| |        | |
.   o   . | |        | |l=ll=ll=ll=l| |        | |   o
    ||=ll=ll=ll=ll=ll=ll=l┌―――‐┐f=ll=ll=ll=ll=ll=ll=||
    ||_||_||_||_||_||_||_||l_.奉納_.!.l|_||_||_||_||_||_||_||
   [二二二二二二二二二二二|l三三三三l|二二二二二二二二二二二]
     | .|:::::::::::::::::::::::| .|::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::| .|:::::::::::::::::::::::| .|
     凵:::::::::::::::::::::::凵::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::凵:::::::::::::::::::::::凵
                //_ _ _ _ _ _ \\
              //_ _ _ _ _ _ _ _\\
            //_ _ _ _ _ _ _ _ _ \\
           //_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _\\


  『焼けてしもた天神さんを何とかするんは、氏子として当たり前のことだす』


.


57 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:39:49 XDxaaqIE0


             _ - ‐───---、__
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`丶、
         /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.  .:.:.:.:..\
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: .:.:.:\:\
      /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: .:.:.:.:.:.:.:.:. :. :.:.:\:.`ニニ=ー
     /.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.: .:.:.:.:ヽ:.:ヽ ヽ :.:.:.: ..:. :.:.\:.`ー-、_
     /:.:.:./ .:..:.:. /:.:.:.:/:.:.:|、\ :.:.:.:.ヽ :ヽ ヽ :.: .:.:. :.:.:.:.\ ̄
    /.:.:./ .:.:.: /:.:.:.:/ .:.:.:| \:.\. :.:.l :.:| :.|: .:.:.:.:ヽ:.ヽヽ:.:\      だ、だったらなおさらじゃないか。
    /:.:.:.|l .:.:.:. /:.:.:.:/ .:.:./|  \:.\:l :.:|: .|r 、:.:.:.:l|:.:|:.|`ヽ、`ー、_
   ノ/|:.:.||: .:. /:.:.:.:/ :.:./|:.|  ∠弌ヽl .:.|:.:| ノ.:l:.:.|:.:.|:.|    ̄     そんな事情のある金で仇討ちを買うなんて
  /'´ |:.:.|l:. :.:.{:.:.:./ :.:./ .|:.|_//_j },ノ|:.:.|:.:|/|:.:.|:.:.|:.:.|.i|
     l:.:l ヽ:.:.|:.:./ :.:./、 |.l´彡>=´ |:.:l:./l }.:.|:.:.l:.:.l|リ         本末転倒もいいところだ!
     |:,'  ヽ:|、{:.:.:.{,孑ゝヽ、     /イ/// イ/ヽヽ:.`ー-、_
     {l   ヽ{ヽ ヽ¨´|      ´ //  /  ヽヽ ̄
     ヽ、   ヽ.{:.:.|ヽヽi!  _ ,__  ∠    //',
          |{ヽ{  |:.`> 、   /===Fイ´: : :ヘ
            `  }ノ ソ ン ` ‐´Ⅵ: : : : : : :||: : _∧ : :ヽ


                 /\___/ヽ
               / -‐'  'ー-  \
              . | (●),(、_,)、(●) ::|
              |    /,.ー-‐、i  :::::|
              |    //⌒ヽヽ  .::|   それは逆でおます。
              |    ヽー-‐ノ  :::::|
               \    ̄   ...::/
               /`ー‐--‐‐―´\


                      ダディは首を横に振る。


.


58 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:40:30 XDxaaqIE0


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |   ルルーシュさま、言わはりましたか、
     |::::.,(一),   、(一)|
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |   この銀二貫がわたいの懐にある折も折、
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /
     /   `一`ニニ´-,ー´     ルルーシュさまの仇討ちの場ぁに出くわしてしもたんだす。
     /  | |    / |
    /   | |  / | |
    /   l | /  | |
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ ________
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


.


59 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:41:03 XDxaaqIE0


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |   これもきっと天神さんが結ばれはったご縁、
     |::::.,(●),   、(●)|
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |   わたいには『その仇討ち、お前が買いなはれ』て
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /
     /   `一`ニニ´-,ー´     言うてはるように思えてなりまへんのや。
     /  | |    / |
    /   | |  / | |
    /   l | /  | |
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ ________
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


.


60 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:41:40 XDxaaqIE0


   ルルーシュは今しがた己が斬った男に目をやる。

                      γニヽ
           ヒュー . ,.r…、-_‐_ 、入_ノ
                (_ _,.ィ(   `ヽx_
           ,..┬-, L_: : : `l 、_  ) ヽ ヒュー
          /_(。ノ゚~   ヽ、ノ     .i
        ∠´ x ゙!      .ヘ      .l   ツル……ニゲ……ツル……
   ,r= 、  .{llキ ,.rll|ヽ      .ト<ヽ   ノ
  .{   ヘil||||;||i|||llll|||i,゙i       `ヽ-.'
   ヽ   }||||ll|||'゙   ゙l||i,    _    ,ィ 、
    ゝ _ノ''´  l   }||iゝ、/  ` '' 、!_r' `¨ヽ
          {   /'゙ `´        `¨ ''.’
          ゝ- '

           オプーナは最早虫の息で、

   わざわざ止めを刺すまでもない状態だと見て取れた。


.


61 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:42:08 XDxaaqIE0


   /. : /. : :/. : . / . : : : : . : : : : : : : : : : : : : : !
  i.:::::. /.: : /. : .:: ,.′.: : :/. . : : i: : : : : : : : : i: l
  l:::: /.::: : .::: .:: ./ :/. : :/. : . ://:}: : : :::. i: : : :| :l: |
  l:::::}:::::: ::::..:: / :/. /}. : : //}::ハ: :i: ::. :}: : : | :|: {
  |:::::|::::i::. !:::::/.:イ: / /: : イ:/ l::l  l: ト、::. |: : : | :|: l
  }i::::|::::i:::.{:::イ:/_i:/ /:::./// j::{ .」斗ヘ:::}:/ : }. ト、!
  イ:::ハ::|::::V十rfリミ」:::/// , //ィf≧=ヘ小/. :イ: :ハ:ト、    そこまでしてこの父子を助けたいのかい。
  }/  lハ:::::ヽ、近Zソ|/メV/7/ーヘ北シメ/. :/ }/ }{
 ノ′ |ヽト、:::ヽ    i{   ノ′       /. :/.ィ:!  `     大坂の商人は何でも商売にするって聞いたけど
   . |:::ハ:::ヽト\⌒´  ノ!      /: :イ: .イ:l
     |/ }::|::::\   、____.ノ イ: /i |/ リ        金で命まで買うとはね。
      }!  |ハ::::::i\  `二二´ /イ:!: ハ::{
         }从Li」 ヽ、   ∠_.」」:::{ }:l
          ト--T r‐`´─┐|‐‐イV .リ
          }_ハ_」 |: : : : : : :| L「!」
        __ノf7/,イ |: : : : : : :| ト斗ト、‐-、__


             __/ヽ_∠L_
            /:::::::     ''''\
           .|:::::::::    (●), |
           |::::::::      ,,イ_,`)
         .   |:::::::::      ノ.-=ラ        お言葉ですが、ルルーシュさま。
            \:::::::      `フ
         ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
         :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
             |  \/゙(__)\,|  i |
             >   ヽ. ハ  |   ||


62 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:42:54 XDxaaqIE0


                                        /\___/ヽ
  わたいが買わして頂くんは、命やおまへん。          / -‐'  'ー-  \
                                     . | (●),(、_,)、(●) ::|
                  仇討ちだけです。         .|    /,.ー-‐、i  ::::|
                               .      |    //⌒ヽヽ  .:|
  また、お父上を殺されたルルーシュさまの恨みの念まで . |    ヽー-‐ノ  :::::|
                                      \    ̄   ...::/
                   銭で消そうとも思てまへん。   /`ー‐--‐‐―´\


         /\___/ヽ
        / ''''''    '''''' \
       │:::::::(ー),  、(ー) l
       │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │ +  ただ、『仇討ち』いうもんを
        /‐:::  `-=ニ=- ' /
      _,,,l ;! |:::______/     + その銀二貫でわたいに譲って頂きたいだけでおます。
   , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_  +
   l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、
  ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
  ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|


.


63 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:44:17 XDxaaqIE0


                /::;:::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::/:::::::/:::/:::::::::::/::::/ マム V:::::::|:::!:::::::::::::::::!:::ハ
               .ノィ::::/::::::::::::::::::i:::::::/:::::::::/;:::::://:::/:::::::::::/}:::/  ヽム V:::::|:::!:::::::::::::::::!::::ハ
                 /|::::::::i::::::::::|::::/:::::://}// /:::/:::::::::::/ ,':/    ヽム.V:::!:リ::::::::::::::::|:::::トヽ
                  |::::::::!:::::::::{::/:::/__/.〃  .//!:::::::/./:/    ,,.. -‐. ';::|'::::::::::::::::/::::::| ヾ
  どういうことだい?     |::γ.::::::::::::,ィーtー- ,,`''ー-/.,, !::/ .〃 ,,..-‐''.,,-‐=''ヽヾ!::::::::::::; ィ:ハ:::!
                  |:::{ ';::::::::::ヽ. ト -'万i卞.   `}/ヽ /   ,.ィiチ__ノ心} / ,:::::::::::/ /::{ }::!
                  |:::ハ ':::::::::::{ヽ乂竺!,ソ ゝ    / i   '  乂竺沙. ' ./:::/::::::レ':::/ i::!
                  レ' |ヾ::::::::::::', ` ̄ ̄ ´       :|      `  ̄ ̄´ ./:::/::::::/ |::/ i:!
                     }!ヽ:::::::::::ム               |            /:;:'::::::::/ レ'


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
  . |(●),   、(●)、.:| +  へえ、今後、たとえ何処ぞでこのお武家さまとすれ違うことがあっても、
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::| +   言うてもこんな状態では万が一にもあらしまへんやろけど、
   \  `ニニ´  .:::::/     +
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.    仮にそうなっても仇討ちはせん。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


              __/ヽ_∠L_
             /:::::::     ''''\
            .|:::::::::    (●), |
            |::::::::      ,,イ_,`)    こちらの坊やに出くわすことがあっても
          .   |:::::::::      ノ.-=ラ
             \:::::::      `フ     仇討ち相手の息子ということは忘れる。
          ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
          :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i    ただそれだけでおます。
              |  \/゙(__)\,|  i |
              >   ヽ. ハ  |   ||


.


64 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:44:45 XDxaaqIE0


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |
     |::::.,(一),   、(一)|
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |  承知して頂けましたら
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /
     /   `一`ニニ´-,ー´    あとのことは一切、
     /  | |    / |
    /   | |  / | |      このわたいがあんじょうしますよって。
    /   l | /  | |
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ __
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


  i/ハ::;;;, 、.|:: :: :: :: ::|;;;;;;;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;:::: :|:: :::|
   ノ;;;;/ V |::::i::::::::|;;;;;;;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ;; ハ;; ;; ;;:::;;;|i:::|::|
  /::::;:ヽ i::|::::|:: ;;;:|;;;;;;;; ;; ;; ;; ;; _,/;; ;/;; ;; ;; ;;/;; ;; ;; ;; ;/;; ./ |;; ;; ;; ;;||;;:|ヾ、
  ノ/;;;;;;;i. .|::|::::|::::;;;ヾ;;;;;.;;_x -''´////;; ;; //;;/;; ;; ;/;; ;/''´ |;; ;; ;; ;;|ヾ|ハゝ
  ´/::;;;;ハ::;;ヽヽi::;;;:::;;;;;`、/_><<_//;;;;;/ /;;://;;;;;;//;/ ィt /;;;;;;;;;;;;;;| レ´
  /;;;;;/ /;::;;;;;;;li;;i;;;i:::;;;;;;;;|;;|弋及-、|`//;;;/=、/;;//;;;;;///,xィ勿ト /;;;;;;;;;;i;;;;|      むっ……
/|;;;/  |;;i;;;;;;;;|ヽ`ヾ;;;;;;;;|、;i廴::...::ン`''x、 /;//;;;;;//ィ冬z刻/;;;;;;;;;;ハ;; /
  |/   |;;|i;;;;;i、 ヽ`、ヾ;;;;ヽ`、` ̄ ´ /    / |;;/       /;;;;;;;;;/ |;;;|
     ヾ ヽ;|\ \ \;;;;ヽ、.         / |    /;;;;;;;;;/、_|/_
       i l\.\  、\;;;;\        ´  i   /;;;;;;;;;/  /  `i


               ダディの言葉を聞いてルルーシュが唸る。


.


65 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:45:40 XDxaaqIE0


                 本来、仇討ちは幕府に届け出て赦し状をもらい、

       たとえ仇を見つけたとしても、其の地の役人に届け、吟味を受けなければならない。


  /       l___l   \         ||i
  |      ●  |    |  ●  |         |||i
  |         ヽ  /     |          ||||i
  \         ヽ/     /           ||||i    ガッ
 /               \            |||||i
/                  |            ||||||i
|   /\ /       _    |            |||||||i
ヽ_/   Y      / /   /       ∧   ||||||||i
        ヽ    /__//  ノ        / 丶  ||||||||||i
        ヽ  .(_______ノ ヽ       /  丶||||||||||i
       /   / /    ノ      ノ    丶||||||ii
      /    / /    /     ノ      ヽ
     /    / /    /    <          >       /\         /"""ヾ
   /   / / /    ノ       \       /::.::.____/:::::::ヽ、        /;:;;:::'''  |
 /   / / / |    |    |||||||||iヽ       /::.   ______.:::::::::::::  __ヽ_    |      |
⊂__/  / /  |   ./  ||||||||||||||||||i\   / ::::::::/ __。\_ヽv // 。\   .|      |
       / /   ヽ_/  ||||||||||||||||||||||i ヽ // ̄ ̄√  ___丶  ̄ ̄\|  |      |
      / /      ||||||||||||||||||||||||||||iヽ  ∨| :::::::::  / / tーーー|ヽ   .::::: ::|   |      |
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 三三||||||||||||||||||||||||||||i  ヽ  | .:::::.  ..:  |    |ヽ   ..::::::| /       |
/          三三|||||||||||||||||||||||i     \ .| :::     | |ヽニ⊃| |   ..:::::|ノ      /
ヽ         三三||||||||||||ii \         | :     | | |:::::T:: | !.  ..::::/        /
 ヽ_____三三||||||iii      \       \:       ト--^^^^^┤   /       /


.


66 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:46:48 XDxaaqIE0


               _        _,.. -=、
______,r=}`| i`iー、_r-{ | j }'=、\__
――――――゙|_| .j j j .{=.、 ゝ.ヾ└‐'´  `}!::::::`゙'''ー-――--、
           `ー-、 .   ヽ ゝ-‐'ー-、_ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
                  'ゝ-‐':∧:::::::::::::`ヽー- ..,,_:::::::::::::::::::::::::::::::}
                   ,,..〉、:::::::::::ヽ:::::::::::::ハ:::::\i〃/l`ー- :::;;_ノ
                 /::::}!::::::::::::::\::::::::::}!::/∧  l/l::::::::::/
              ./:::::::::::';,:::::::::::::::::::',::::::///ー\/:::_,r'´
              /:::::::::::::::::::';,::::::::::::::::::}:::/::` ̄i!>''"´
             ./::::::::::::::::::::::::';,:::::::::::::::i!/:::::::o/
            /::::::::::::::::::::::::::::::';,:::::::::::ノ::::::/
           ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー‐':::o/
          /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}|:::::/
         ./::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::jjY´
        /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://


 だが、ルルーシュは若さのあまり正規の手続きを経ずに力任せに斬ったのだ

           ことが露見すれば、彼とて罪人となる。


.


67 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:47:55 XDxaaqIE0


                      f :: :: :: :: :: :: : /:: :: /::// :: :: :: :: :: :: :: i:: :: \
                      i: :: !:: :: :: :: ::/ : :: :: //: :: :: :: !::i :: :: :: !:: :: :: :!
                      |: i::l:: :: :: :: /:: :: ://:: :: :: :: :: :i: l:: :: :: :i: :: :: : i
                      .':: i::l:: :: :: :/:: :: /: :/:: :: :: ハ:! :: :: V:: :: :: :i :: :: i:: !
                     /: : ! !:: :: ::/:/: /: :/: :: :: :/ N: 、:: ::!:: :: ::/:: :: ::l:: i
               .      /7:!: l::i: :: :/:/!:/:N/:: :斗7-─十ヘ:: :!::l: :/: __:: :j:ハ1
                    /'/::1::l::|:: ::l:/7 /X/'7'゙//i  _,.斗zマノ:: :/: /' l::/! !l
  いいだろう、      .    / Ⅵ!: l::i :: 1i!f/ぅ/、/ノ/   イfュんt7 7:/::/) /: ! l i !
                     / ,::N:!:: :: '.弋tツi             //::/_,ノ: ::i/ .
  この仇討ち、君に売ろう。    /   Ⅵ下: :: '.  i !          /7ソイ:: :: :: !
                       ' 、 マ:: !::ト、  '、       /ノ ノ l: :: :: i1
                          \ト、1ヘ  下こニ=- ノ /  .!:: :: ::ハ
                            \ \\ ー‐   ./  / ,オ::ヘ:N
                               lN\_,.  '´   //71::! jリ
                                ! l Mi!    / /,. -──z - .,
                                 1人   / /:::::::::::::::::/:::::::`ヽ、


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
     |:::.   ''''''   ''''''  |
     |::::.,(一),   、(一)|
     |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
       \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /   へえ、確かに銀二貫でお売りいただきました。
     /   `一`ニニ´-,ー´
     /  | |    / |        おおきに、ありがとうさんでございました。
    /   | |  / | |
    /   l | /  | |
__/    | ⊥_ーー | ⊥_ ___
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


       青年はダディたちに背を向け、白銀の細道を遠ざかっていった。


.


68 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:48:32 XDxaaqIE0

                             ┃
                             ┃
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                             ┃
                                ・
                                ・
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                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


69 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:50:19 XDxaaqIE0


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_

           大坂 天満   井川屋


.


70 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:50:56 XDxaaqIE0


      帳場で主のダディから話を聞き終えた番頭のいく夫は、

           掠れた声をなんとか絞り出して尋ねた。


     _____
..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|          ダン
   |:::::::〉 ( ○) (○)|   …ほ、ほな旦那さん、
.  (@ ::::⌒(__人__)⌒)
    |  u   |r┬-|  |   そのお侍のお子を
    \    `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.   この井川屋に引き取りなはるおつもりで?
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||

  井川屋 番頭  いく夫




    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
  .|:::::::::    (●), |   あほ言いな、
  |::::::::      ,,イ_,`)
.   |:::::::::      ノ.-=ラ   侍の子を養うほど私かて酔狂ちゃいまっせ。
   \:::::::      `フ
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.  迎えるんやったら丁稚としてや。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


   忠実な番頭の両の拳が膝の上でぶるぶると震えているのを見てとると、

          ダディはわざとのんびりとした声で答える。


.


71 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:52:42 XDxaaqIE0


                    いく夫が大声を張り上げる。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \::::::::/i:::|
   |:::::::〉( ●)::( ●).|   丁稚やったら、
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
    |      ` ⌒´  |    今の井川屋にはこれ以上必要おまへん!
   \         ,/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \:三::/i:::|    番頭の私に、手代のドヤが夫、
   |:::::::〉( ○)::( ○).|
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)    丁稚のやらない夫とわる夫に女衆も一人いてますのや、
    |  u   |i|!i|!|  |
   \    `⌒´ ,/     人手は充分足りてます!
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i    ましてや何の役にも立たへんお武家さんやて、考えられへん!
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


   今年四十五になる番頭のいく夫は、ダディにとってはまさに右腕とも呼べる存在であり、

     長年苦楽を共にしてきた古女房にも似て、口煩くも上手く添いたい相手であった。


.


72 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:53:33 XDxaaqIE0


      /\___/ヽ
     / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
  .  |(○),   、(○)、 :|
  .  | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.::|
  .  |.u   (^・^>  。.:::::::|     役に立たんかどうか、
    \ ゚  ⌒´ u .::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.     まだわからんやないか。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \:三::/i:::|       立ってたまりまっかいな、んなもん!
   |:::::::〉( ○)::( ○).|
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       お武家が算盤入れられまんのか?
    |  u   |i|!i|!|  |
   \    `⌒´ ,/       お客はんに頭、下げられまんのか?
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      旦那さん、そら無茶だすで!
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


.


74 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 21:55:44 XDxaaqIE0


      /\___/ヽ
    /''''''   '''''':::::::\
  .  |(●),   、(●)、.:|     まあ、そないに怒りないな。
  .  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
 .   |  u `-=ニ=- ' .:::::::|     うちの丁稚にするかどうか、
    \  `ニニ´  .u:::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.    美濃志摩屋の仕込みしだいやがな。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


      _____
 ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
 ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
 ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|
    |:::::::〉 ( ○) (○)|
 .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)    美濃志摩屋はん?
     |  u   |r┬-|  |
     \    `ー'´ /
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


.


75 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:00:58 XDxaaqIE0


           __/ヽ_∠L_
          /:::::::     ''''\
         .|:::::::::    (●), |
         |::::::::      ,,イ_,`)
       .   |:::::::::      ノ.-=ラ   ああ、弔いをすませた後
          \:::::::      `フ
       ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.  伏見の天場 ― 寒天場に預けてきたんや。
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


   ┌─────────────────────────────────────┐
   └─────────────────────────────────────┘
   ┌───────────────┐
   └───────────────┘
   ┌───┐
   └───┘


.


76 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:01:50 XDxaaqIE0


          あの後、茶店に運び医者を呼んだが、

   時を置かずオプーナは息子鶴之助に看取られて事切れた。


                ./ ̄\
             __|    |__
           r'´. ̄ ̄ \_/  ̄ `、::.
          ヘ,___,____ .|_____./::._
           | |    / ̄ ̄\   |、:..
           | |  / ノ  \ \ |::..
           | | / <ー>::::::<ー> \|l、:::
          | | |    (__人__)   |l:::::
           | | \   ` ⌒´   /.ll::::
           | |,r'",´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、|l::::
           | |         ::::....  ..:::|l::::
           | |             |l::::


          /\___/ヽ
          /''''''   '''''':::::::\
        |(●),   、(●)、.:|
        |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
        |   `-=ニ=- ' .:::::::|+
          \  `ニニ´  .:::::/     , - -、’
          /:: ::\  //::::: \     / (● ●)ヽ
         /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\   ゝ (_人_) ノ
        /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i   /      \


   簡素な弔いをすませた後、ダディは美濃志摩屋に引き返し

            鶴之助を託したのである。


.


77 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:06:27 XDxaaqIE0

    □
   ┌──┐
   └──┘
   ┌──────┐
   └──────┘
   ┌───────────────────┐
   │                                      │
   └───────────────────┘
   ┌──────────────────────────────────────┐
   │                                                                            │
   │                                                                            │
   └──────────────────────────────────────┘


.


78 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:06:54 XDxaaqIE0


          /\___/ヽ
        /''''''   '''''':::::::\      父親が辻斬りで殺された、いうことにしたら
       . |(●),   、(●)、.:|
        |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      えろう同情してくれはってなぁ。
      .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
        \  `ニニ´  .:::::/      とりあえずひと月ほど預かってもらうことになってん。
      ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
      :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     客扱いやないで、天場に住み込んで寒天作りをひととおり
        |  \/゙(__)\,|  i |
        >   ヽ. ハ  |   ||    仕込んでもらうことになってる。


         _____
        /:::::::::::::::::::::::::::.\
       |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
       | ノ   \  i:::::::|
       |(─) (─ ) 〈::::::|       何や、
      (⌒(__人__)⌒:::: @)
       |  |r┬-|  u  |        それやったら気ぃ揉まんかてよろしおすわ。
       \ `ー'´    /
      ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
     イ / |.!、 _____ / ノ |   i
     | i  |,/(__)ヽ/   |   l


                 いく夫は安堵したように溜息を吐く。


.


79 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:09:05 XDxaaqIE0


            _____
          /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
          |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
          |::::::::/ ノ   ― |
          |:::::::〉 ( ●) (●)|
          (@ ::::⌒(__人__)⌒)      天場は大の大人でも辛いとこでっさかい、
           |     |r┬-|  |
           \    `ー'´ /      じきに逃げ出しますやろ。
       ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
          |  \/゙(__)\,|  i |
          >   ヽ. ハ  |   ||


           /\___/ヽ
          /''''''   '''''':::::::\
         . |(ー),  、(ー)、.::::::|
         |  ,,ノ(、_, )ヽ、,,,,, .::::|      ……さあて、それはどやろか。
       .   |  `-=ニ=- '  .:::::::|
          \  `ニニ´  .:::::/
       ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


.


80 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:09:35 XDxaaqIE0


   ルルーシュに刃を突き付けられても、父を守ろうとした鶴之助。

                    ____
                   / ヽ  ノ \
                 /  ●::::::::::● \
                 | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
                 ヽ     ⌒  ィ’


   弔いの場でも、拳を震わせながら涙をこらえていた鶴之助。

                     ____
                    / ヽ  ノ \
                  /   >::::::::::< \
                  | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
                  ヽ     ⌒  ィ’


     幼いながらも、土性骨が据わっているに違いなかった。


.


81 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:10:45 XDxaaqIE0


  寒天場でのひと月の労働は、世間での一年にも相当する。


ニニ             ーーーーーニニニニニ从        从
  从      r zzzzzzzzzz┐      从ミ     从 从从
 彡ミミ   /\\\\\\\ 爻乂 爻彡ミ 从 彡ミ 从 从
 爻乂ミ ∠ r‐┐;\\\\\\\r zzzz┐从 爻ミ 爻 彡ミ 彡ミ
 爻,彳爻 | ̄ ̄ ̄「「「「「「「「「「「「「 \\\\ミ 爻ミ 爻乂ミ 爻ミ
 爻 爻爻乂 田] ll l l l l l l l l l l l |  ̄「「「「「「从 从ミ 从爻从ミ
 爻 乂乂乂爻   ll l l l l l l l l l l l |三]l l l l l彡爻爻乂 乂ミ爻爻爻
 爻爻乂乂爻爻 ∧ ∧辷二 ≦三三三三三三三二二ニニニニ=
 三三三三三≧ (#゚Д゚)―  ̄ ̄
         ヽノつつ                  ∧ ∧, _ r''''
        ⊂(  Y             ,,,,,,,,,,,   (゚Д゚#)
           ヽ)    ,,,,_ 彡'''''''    ニ   と とヽノo
          ,,, rv┐  ゚              ゚ oY  )⊃
     ,,,o,, 彡 O   o            r、     (ノ   rv┐
  '''''   rv┐           ゚ 。      oo 8    r┐  o


           それほどまでに過酷なのだ。


.


82 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:11:53 XDxaaqIE0


    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
  .|:::::::::    (●), |  (たとえ、ひと月でも厳しい天場の暮らしに耐えられるんなら
  |::::::::      ,,イ_,`)
.   |:::::::::      ノ.-=ラ   アキンド
   \:::::::      `フ   商人として仕込む甲斐もあるかもしれへん……)
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


83 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:12:12 XDxaaqIE0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
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                             ┃
                             ┃
                                ・
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                             |
                             ¦
                                  !


84 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:13:11 XDxaaqIE0


            ―― それから一カ月 ――


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_


.


85 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:13:49 XDxaaqIE0


   その日は出来上がった寒天が天満の船着場に届けられることになっていた。


                /\___/ヽ
            /''''''   '''''':::::::\
             |(●),   、(●)、.:|
             |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .:::|
             |   `-=ニ=- ' .:::::::|        いく夫、今日の荷受けな、
            .\  `ニニ´  .:::::/
             /ゝ    "`   ィ `ヽ.       久しぶりに私が行ってくるよって。
            /                 \
  ,⊆ニ´⌒ ̄ ̄"  y           r、  ヽ
  ⊂二、 ,ノ──-‐'´|              | l"  |


                _____
               /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
               /.::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|        ダン
               |::::::::/ ⌒  ⌒ |       旦那さん、
               |:::::::〉 ( ●) (●)|
              (@ ::::⌒(__人__)⌒)      せやったらやらない夫でも
               |      |r┬-|  |
               \     `ー'´ /       連れて行っておくれやす。
           ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、..
           :   |  '; \_____ ノ.| ヽ \     べか車も使うてもろてかましまへんさかい。
               |  \/゙(__)\,|  i  |
               >   ヽ. ハ  |   | |

                                              【べか車】荷車のこと



.


86 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:14:39 XDxaaqIE0


        /\___/ヽ
       / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
      |(○),   、(○)、 :|
      | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.::|
      |.u   (^・^>  。.:::::::|     そないな大層な真似せんでもよろしわ。
      \ ゚  ⌒´ u .::::/
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


       _____
     /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
      |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
      |::::::::ゝ ―  ― |
     |::::::( ( ●) (●)|       なに言うてまんのや、
     (@  ::::⌒(__人__)⌒)
      |     ` ⌒´  |       膝の具合かてよろしないのに。
      \         /
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
       |  \/゙(__)\,|  i


.


87 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:16:41 XDxaaqIE0


           /\___/ヽ
         /''''''   '''''':::::::\
         |(●),   、(●)、.:|
         |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|        大丈夫や、寒ないさかいな、
         |   ´トェェェイ`  .::::::|
         \  |,r-r-|  .::::/         そこまで痛うないねん。
       ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
          |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、



           /`ー──一'\
          ,r(●)(、_, )、(●)\
         .|  '"トニニニ┤'` .:::|
         .|   |   .:::|  .::::::|
         .|   ヽ  .::::ノ .::::::::|        ほな、行てくるわ。
          \   `ニニ´ ..::::::/
       ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


                   ダディは言って杖を握る。

              早朝の船便が到着する刻限が迫っていた。


.


88 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:17:18 XDxaaqIE0


    井川屋を出て、大川にかかる天神橋を渡って船着き場へと向かう。


      /ロロロロロロ.\
ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
/ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
-ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
___| |______| |______| |______| |______| |_
|||| |||||||| |||||||| |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
====__=======(    )============== .∧,,∧====
     ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
       (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
     /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
      ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
      _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


    刻は明け六つ過ぎ、顔を出したばかりのお天道様に両の手を合わせ、

              一日の安全と商売繁盛を祈る。


                                         【明け六つ】午前六時


.


89 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:18:30 XDxaaqIE0


             ――― 天満 船着き場 ―――


  ____________.  |    /           |:.. _____________
  !\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ │    /__i __ヽ          |/:: :: :: :: :: :: ;:;:;:;:: :: ;;;;;;/
  | `ー'ー'ー'ー'ー'ー'┬' .|   /___;i___i_;ヽ       ィ'________;;イ、_,
  |  / /  ||      |  |   :./                 | i:':':':':':':':':':':':':':':':':':':i:
  |       ||      |_l:./          /___;i___i_;__ヽ|-------l::.  ::......
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄

tttttttttttttttttttttttttttttttttttttt            tttttttttttttttttttttttttttttt
''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"i二二二二二二二二!''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"''"
    ''"''              i二二二二二二二二!                ,″
   ,″    ''"''"         i二二二二二二二二!    ,″       ''"''"''
                  i二二二二二二二二!
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___________________________________
_i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_ _i_
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ノゝ~~ ノゝノゞ ~~ ノゞノゝ ~~ノゞノゝ ~~ ノゞゝ~ ~~ノゝノゞ ~~ノゝ~ノゞノゝ ~~ ノゝノゞ


.


90 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:18:54 XDxaaqIE0


                      馴染みの船頭から声が掛る。


                          ,'´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`',
                          ! 井川屋はん!                        l
    ___,,ノ""''(,_             ∩_∩   !                                 l
    ヽ( ´ー`)ゝ  ∧∧    (Д`  ) ∠ 伏見の美濃志摩屋はんから荷ぃ届いてまっせ!  l
     (  つφ  (,,゚Д゚)    と,   つ  \                              ./
  ┌┐| | /    ( cっ)    r'^(  〈       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | l ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(__) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    〉只ゝ
   ~~~~~~~~~~~~_________ ~;=;~~//
   ~~^  ~^^^^~~    ^~  //V\ ,_, _;:__.__/i| |ニ|ミ、_ノノ
      .:: . ...           /._(    )___;,._/i|..  ^~~::゙ー'´
                    /,,_(     )__.__/i|.    ... ....
                  /_;_ ,,_| |  |__;,_/i|..          _
"''""'''"''''"''''''""""''""'''"      (__)_)  ""''""'''''"'''''"""'"''"r';;;;;;,ヽ


.


91 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:19:45 XDxaaqIE0


                        ∧_∧     ┌┬┬┐
                 _ l~~)    (´∀` )     ├┼┼┤
  それと、預かりもんや。 !゙i~~    (     )    ├┼┼┤
                 l l゙ー-´- 、.,,| | |  /¨¨~j~ ̄--‐ |
                . l !       ~~¨'''' ー‐-‐'     7
                ─i、____________,/───


       __/ヽ_∠L_
      /:::::::     ''''\
     .|:::::::::    (●), |
     |::::::::      ,,イ_,`)     預かりもん?
   .   |:::::::::      ノ.-=ラ
      \:::::::      `フ
   ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


92 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:20:16 XDxaaqIE0


  荷の山に隠れるように、鶴之助が緊張した面持ちで立っていた。
            ___  ___
           /ノ  ヽ__ ≡u ノ \
         /●   ●      ●  \
         | (_,、_,) ⊂⊃  ⊂⊃ (_,、_,)|
         >u⌒     ≡    ⌒ ィ’




           彼はダディを認めると、
               ___
              /\  /\
            / ○    ○ \
            |⊂⊃ (_,.、_,) ⊂⊃|
            >           <




  両の手を膝の前で重ねて腰を落とし、深く一礼した。
               ___
             /     \
            / \ /   ヽ
            | 〓   〓   |
             >(_,、_,)⊂⊃ イ
           /  /ヽ/   ヽ
           /  /   /  /   )
          {  ij  /{  ij .. /
           ー'  _|  ー'   |
              (___ (___ノ


.


93 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:21:00 XDxaaqIE0


                  ダディは内心感嘆した。


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.  | (0),   、(0)、.:|
.  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|    (さすが美濃志摩屋の仕込みやなぁ)
.   |    `ー― '  .::::::::|
   \  ` ̄´  .::::::/     (所作が武家やのうて、商人のもんになってるわ)
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
  .|:::::::::    (●), |
  |::::::::      ,,イ_,`)
.   |:::::::::      ノ.-=ラ    お前はん、口上はどないしたんや?
   \:::::::      `フ
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


       それでもその思いを表情には出さず、わざと厳しい口調で問うた。


.


94 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:21:27 XDxaaqIE0


   鶴之助はしばしの間戸惑った後、おどおどと言葉を発した。


       ____
      /一  ー\
    / 〓   〓  \
    |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
    /⌒l       ィ’      父上のことではお世話になり…
   /  /        ヽ
    ヽ_ |       Y  |
     |       |  |
     |       ゛、ノ


       /\___/ヽ
     / -‐'  'ー-  \
    . | (●),(、_,)、(●) ::|
    |    /,.ー-‐、i  :::::|      そんなこと聞いてんのと違う。
    |    //⌒ヽヽ  .::|
    |    ヽー-‐ノ  :::::|
     \    ̄   ...::/
     /`ー‐--‐‐―´\


             ダディはきつい口調で遮る。


.


95 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:21:55 XDxaaqIE0


        /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
      |(●),   、(●)、.:|
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|     商人にとっての口上いうんは、
      |   `-=ニ=- ' .:::::::|
      \  `ニニ´  .:::::/     商い上の要件を要領よう先方に伝える
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i    挨拶のことや。
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


        __/ヽ_∠L_
       /:::::::     ''''\
      .|:::::::::    (●), |
      |::::::::      ,,イ_,`)    親の生き死にやら関係あらへん。
    .   |:::::::::      ノ.-=ラ
       \:::::::      `フ     どっから何をどんだけ持って来たんか、言うてみい。
    ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |
        >   ヽ. ハ  |   ||


.


96 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:22:22 XDxaaqIE0


        ____
      ; /\ u./\ ;     み、美濃志摩屋、からの
   .  / ●   ●  \ .    寒天、ですお
   ;: |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ | {    お、お手紙、
    r'⌒) {  }  (´ jイ ;     預かって、ますお
    | ´   ̄  ヽ  |


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
     . |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|     よっしゃ。
      \  `ニニ´  .:::::/
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


               ダディは満足げに頷く


.


97 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:23:06 XDxaaqIE0


 鶴之助は懐から書き付けを取り出すと、ダディに手渡した。


                    Y⌒ヽ_
                 Y⌒',   \`ヽ
               ,イ´',   ',  ヽ `ヽ`ヽ
                {  ', ; `   ;;  ` ハ
              ,イヽ  イ ヾ ::. ::     }
             ヽ  ヽ  :: :: ::      {
                \  ::  ::       ヽ
                 ヽ
                 `ー―‐-、


   書き付けを渡すその手は霜焼けで真っ赤に腫れあがり、

    ところどころあかぎれがぱっくりと口を開いている。


.


98 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:24:42 XDxaaqIE0


               ダディの目がふっ、と和んだ。


       /\___/\
     / ―   ー ::\
      |  --、,   、ー-、  .|
      |  ,,ノ(o_o.)ヽ、,  .::|      (大の大人でも音を上げる厳しい寒天場で
      |   、___   .:::|
     \  `二二´  .::/      この子はひと月立派にやりきりおったんや……)
      `ー‐--‐‐一''´
      /:: ::\  //::::: \
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


              ダディの胸に暖かい灯がともる。


.


99 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:25:11 XDxaaqIE0


     ダディは膝を屈めて鶴之助の顔を覗き込んで言った。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|     どや、井川屋の丁稚になるか?
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/     侍を捨てて、商人になって生きるか?
      `ー‐--‐‐―´
      /:: ::\  //::::: \
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


        そうする以外、彼に生きていく術は無いと、

          重々承知の上での問いかけだった。


.


100 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:25:50 XDxaaqIE0


     案の定、鶴之助は一瞬の迷いも見せず、頷いて見せた。


               ___
              /\  /\
            / ●    ● \   はい。
            |⊂⊃ (_,.、_,) ⊂⊃|
            >           <


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.  |(●),   、(●)、.:|        よっしゃ、
.  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.  |   ´トェェェイ`  .::::::|        ほなこの荷ぃ持ってついてきなはれ。
   \  |,r-r-|  .::::/
,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
    |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


.


101 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:26:27 XDxaaqIE0


  ダディは積荷の寒天を二つに分け、小さい方を鶴之助に背負わせた。

 自分も大きい荷を背中に背負うと、杖をつきながら先に立って歩き出した。


           /\___/ヽ
         /''''''   '''''':::::::\
         |(●),   、(●)、.:|
         |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
         |   `-=ニ=- ' .:::::::|+
         \  `ニニ´  .:::::/     , - -、’
          /:: ::\  //::::: \     / (● ●)ヽ
          /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\   ゝ (_人_) ノ
         /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i   /      \


    鶴之助は、主人からはぐれぬよう、必死の形相でついて行く。


.


102 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:27:14 XDxaaqIE0


      /ロロロロロロ.\
ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
/ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
-ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
___| |______| |______| |______| |______| |_
|||| |||||||| |||||||| |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
====__=======(    )============== .∧,,∧====
     ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
       (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
     /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
      ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
      _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


      道中、天神橋に差し掛かったところで、ダディは足を止めた。


.


103 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:27:49 XDxaaqIE0


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.   |(●),   、(●)、.:| +
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|            どや、
.   |   ´トェェェイ`  .::::::| +
   \  |,r-r-|  .::::/     +       長い橋やろ?
,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
    |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


           ____
          /⌒  ⌒\
        /  ●   ● \
        | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|    はいですお
        ヽ    (_.ノ   ィ’


              鶴之助は素直に頷く。


.


104 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:28:26 XDxaaqIE0


    鶴之助を東側の欄干まで連れて行き、北側を杖で指し示す。

    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
  .|:::::::::    (●), |
  |::::::::      ,,イ_,`)   あれが天満の青物市場や。
.   |:::::::::      ノ.-=ラ
   \:::::::      `フ    大坂中の美味い食材があつまる場所なんやで。
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
  . |(●),   、(●)、.:|
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|   そのままずっと東に行ったら橋があるやろ。
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
   \  `ニニ´  .:::::/   あれが天満橋。井川屋はあの辺りや。
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


105 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:29:02 XDxaaqIE0


          ___
         /ノ  ヽ_\
       / ●   ●  \   なんで、天満橋を通らないんですかお?
       |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
       >        ィ’


        /\___/\
      / ―   ー ::\
       |  --、,   、ー-、  .|
       |  ,,ノ(o_o.)ヽ、,  .::|    ……
       |   、___   .:::|
      \  `二二´  .::/
      /`ー‐--‐‐一''´\


               ダディは苦笑する。


.


106 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:29:39 XDxaaqIE0


            店には天満橋のほうが近いが、

       橋を渡り切ったところには東町奉行所が控え、

          そこから東には大坂城がそびえている。


.                  {}
                 ,r'A':、
               ,r:'"/\`':.、
.         、_____,、.‐',,、_'___n,n__`_、,,`-、,_____、
.         ゙l、,!_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l,!、l゙
           |:::::::::::::::::::::::::::::n::::::::::::::::::::::::::::::|,
          ';王王王王王八王王王王王ヨ
           ]*;;r--.、;*r;"へ`':.*;;、--.、*;[
        _、,,,,,f'''*;;;^r:'",r'"' へ:'`' 、`':、^;;;*、L,,,,,.、
        ゙、=┴'ァ゙'"r'"´.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:..`'-、`'=t┴=',゙
        ゙r:''",r'"..:.:.:.:.:.:lコ:lコ:lコ:lコ.:.:.:.:.:..`';;,、` ‐!、
    ゞェェtエ゙┼┬i┬┬┬┬rハ┬┬┬┬i┬┼┬t'ェェブ
     ゙,~~i~~~~~~~~~~~~~~~~~{n}~~~~~~~~~~~~~~~~~i~~゙;┐
     「;、.|  .冂 冂  冂l:''"..へ`' .l,冂  冂 冂  .|.. .|Ti
ゝ,、,,,,、、!‐''"┬┬┬┬;、‐'":'"::: ヘ:::`:.、`‐、┬┬┬┬┬`ーf-、、ィ,
ソ;゙、ニ┴┴┴┴┴ァ'"r:'´。 ......::.. .:....... 。'‐、`'t┴┴┴┴┴=゙7
ヽゞz、:|;ヘ「]「],r'"r'´、z、r、、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. `': 、`'-.「]「] .|_,'、
Y;;ゝヾi彡〉''"r''";ヾ;ゞ::::ゞヾヽ]「バヘ,'z]「:]:.:.:.:.:.:...`''‐`、':-.、,|l l l.゙i
ソ ヽ;; i;;ゝソ ヽ;;ゝ彡ソ ヽ;;ゝゞヽi;ゞ::::ゞヾ;ヘ――――,rz、;ヘz、`''ー-、;;ソゞヘ
ヽ;;;;ゝヾiヽ;;;;ゝヾゝヾ;ゞ::::ゞヾ;iゝヾ;ゞ::::ゞヾヘソ;ミ^ゝヾ;ゞ:::ゞヾミヘtz彡ヾ;ゞ;ゞ
ヽ;;;;ゝヾ;ヽ;;;;ゝヾ;ゞ::::ゞヾヽ;;;;ゝヾ;ヽ;;;;ゝヾ;ゞ::::ゞヾヽ;;;;ゝヾ;ヽ;;;;ゝヾ;ゞ::::ゞヾ
ゞヾ;;;ゝヽヾ ;;;;ゝヾ;;ゝヾ ヽゞヾ;;;ゝヽヾ ;;;;ゝヾ;;ソヾ ヽゞヾ;;;ゝヽヾソ;;;;ゝヾ
ヾ ;;;;ゝヾ;;ゝヾ ソゞヾ;;;ゝヽヾ ;;;;ゝヾ;;ゝヾ ヽゞヾ;;;ゝヽヾソ;;;;ゝヾ;;ゝヾ ヽゞ


           自然、天満橋には武士の往来も多く、

       面倒事を嫌う商人は天満橋を避けるのが常だった。


.


107 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:30:50 XDxaaqIE0


       鶴之助の問いには答えず、天神橋の先へと指を伸ばす。


    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\         ここを真っ直ぐ抜けた先に天満天神社があるんや。
.   |:::::::::    (●), |
  |::::::::      ,,イ_,`)        地元の人間は『天満の天神さん』て気安う呼ばしてもろてる。
.   |:::::::::      ノ.-=ラ
   \:::::::      `フ         この天神橋はな、元々は天神さんが管理してはった。
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       せやから『天神さんの橋』で、天神橋ちゅうわけや。
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.   |(●),   、(●)、.:|
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|         お前はんもな、
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
   \  `ニニ´  .:::::/         盛大にこの橋を渡らしてもらうんやで。
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


         そう言うと、また杖をつきながら歩きはじめたのだった。


.


108 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:31:23 XDxaaqIE0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


109 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:32:09 XDxaaqIE0


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
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.


110 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:32:34 XDxaaqIE0


      店に戻ったダディは、鶴之助を連れて朝餉の席に向かった。


==| l l||===||===||===||===| | |                . : : : : : : :
    | l l||      ||      ||      ||      | | |              . : : : : : : . . : : : :
==| l l||===||===||===||===| | |             . : : : : : .  . : : : :
    | l l||      ||      ||      ||      | | |           . : : : : .    . : : :
==| l l||===||===||===||===| | |          . : : : : .    . : :
    | l l||      ||      ||      ||      | | |        . : : : .      . : :
==| l l||===||===||===||===| | |
    | l l||      ||      ||      ||      | | |
==| l l||===||===||===||===| | |
    | l l||      ||      ||      ||      | | |
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    | l l||      ||      ||      ||      | | |
二二| l |||二二二二二二二二二二二二二:|| | |
.:.:.:..: | l |||.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.|| | |
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二二|_l_||l二二二二二二二二二二二二二二|/===================
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::               //
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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::          //
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::            //
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::                 //
------------- -- --- ---//----- ---- -
:::::::::::::::::::::::::::::::::::                  //


 井川屋では、主、奉公人ともどもが台所に並んで食事を取るのが習わしだった。


.


111 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:33:26 XDxaaqIE0


     今、各々の箱膳を前に、主のダディと番頭のいく夫、


                             _____
      /\___/ヽ             /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
     /''''''   '''''':::::::\           |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
  .   |(●),   、(●)、.:| +         |::::::::/ \::::::::/i:::|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|           |:::::::〉( ●)::( ●).|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::| +        .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
     \  `ニニ´  .:::::/     +      |      ` ⌒´  |
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、           \         ,/
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i        ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
     |  \/゙(__)\,|  i |       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     >   ヽ. ハ  |   ||          |  \/゙(__)\,|  i |
                            >   ヽ. ハ  |   ||


.


112 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:33:54 XDxaaqIE0


   手代のドヤが夫に、丁稚のわる夫とやらない夫が座り


         ____
       /_ノ '' ⌒\
     / ( ● ) (● )\               ____
    /:::::::⌒,  ゝ ⌒::::: \           /_) (_\
    |     `ー=-'     |          / 【●】| |【●】 \
    \            /         /    ._| |_,     \
    /     ∩ノ ⊃  ヽ          |     \/      |
    (  \ / _ノ |  |          \     -==-      /
    .\ “  /__|  |
      \ /___ /


          ──.
       /ノ ⌒ \
       |(●)(●)|                ____
   .     | (__人__) |               / ヽ  ノ \
        !  `⌒´ /              /   ○::::::::::○ \
        ヽ    ノ              | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
        /   ヽ、              ヽ     ⌒  ィ’
        |     ニつ


      末席には緊張した面持ちの鶴之助が座っていた。


.


113 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:34:33 XDxaaqIE0


             いく夫が不服そうに口を開く。


        _____
   ; /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    ; |.::::γ⌒ Yノ( ヽ::::::| ;
    ; |::::/  _ノ三ヽ、  |:::| ;     ……ほな、旦那さん。
   ; |:ノ(( 。 )三( ゚ )u::| ;
   ; (@ ⌒(__人__)⌒ @) ;    お引き合わせをお頼もうします。
    ; | u  |++++| ノ( | ;
    ; \   ` ⌒´⌒ / ;
    ; /           \ ;


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),    、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|      お、おう。
   .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
      \  `ニニ´ .u ::/       (なんや、まだ怒ってんのかいな)
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


            ダディは頷いて一同を見渡す。


.


114 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:35:30 XDxaaqIE0


        /\___/ヽ
       /''''''≡≡'''''':::::::\
.       |(●),   、(●)、.:|        今日からうちに奉公にあがった鶴之助や。
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.       |   `-=ニ=- ' .:::::::|        呼び名は、まあ、後で考えるよって。
       \  `ニニ´  .:::::/
        /:: ::\  //::::: \        皆、よろしゅう頼むで!!
       /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
      /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i
     f´:: ::i;;:: :: :: /:: :: :: :|;;;;;;;;:::|


           主の言葉に、全員が 『へえ』 と頭を下げる。


.


115 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:36:06 XDxaaqIE0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      やらない夫、
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/      お前はんは歳も近いよって、
      `ー‐--‐‐―´
      /:: ::\  //::::: \      色々と教えたんなはれ。
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


         .ノ 、 、
         ヘ) ヘ) .l
        (人__) |
        ヽ    ノ          へえ。
        /    ヽ
       ||    ||


        やらない夫は主に頭を下げたあと、

        鶴之助を見て、にっと歯を見せた


.


116 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:36:37 XDxaaqIE0


     ダディは満足げに頷いたのち、鶴之助へ視線を戻した。


       __/ヽ_∠L_
      /:::::::     ''''\
   .   |:::::::::    (●), |         鶴之助、お前はんは、
     |::::::::      ,,イ_,`)
   .   |:::::::::      ノ.-=ラ        店の掃除、使い走り、台所の手伝い一切、
      \:::::::      `フ
   ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、        とにかく言われたことは手ぇ抜かんと、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |       しっかり働くんやで。
       >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
        /⌒  ⌒\
      /  ●   ● \         はい。
      | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
       ヽ    (_.ノ   ィ’


            板敷に手をついて鶴之助は答えた。


.


117 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:37:20 XDxaaqIE0


            途端に、いく夫が目を吊り上げる。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ  」L
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|  7「
   |::::::::/ \::::::::/i:::|
   |:::::::〉( ●)::( ●).|
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       何だす、その返事の仕方は。
    |      ` ⌒´  |
   \         ,/       丁稚の返事は『へえ』だすで!
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


        ____
       / ノ  ヽ_\
     / u ● 三 ● \
     | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|     へ、へえ!
     ヽ      |r┬|  ィ’
           `ー'´


   口調の激しさに、新入りの丁稚は青ざめて震え上がった。


.


118 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:37:49 XDxaaqIE0


             いく夫がこうして声を荒げることは珍しかった。


      /\___/\
     /、-―' ゙、ー- :\
  .   | (○), 、 (○)、 .::|
    |  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   .::|     (いく夫はお武家を嫌てるからなぁ)
  .   |   ,゛-=-'、  .:::::|
     \    '´`.:::  .::::/     (わたいがお武家の子ぉに銀二貫つぎ込んだんが
      .`ー‐--‐‐―´´
      /:: ::\  //::::: \                     気に食わんのやろなぁ)
     /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
    /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i


.


119 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:38:26 XDxaaqIE0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


120 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:39:02 XDxaaqIE0


     午前中、新米丁稚の鶴之助は、やらない夫に掃除を習い、

       そのあと女衆を手伝って水廻りの仕事に精を出した。


      ,.:.:―:.:.、
     i:.:./⌒∞‐.:'´:.: ̄:.:`ヽ、
     ヽi ,/:.:.,:.:.l:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.\
        //,:.'/l:/ヽ:l/ヽハ,:.:.:.:、:.:.ヽ      あかんあかん!
        〃:.{_{ \  / リ|:.:.:.:.:.:.i|
        レ!小l=(//)=(//)从::.|、:i|      飯炊くのに井戸水使うあほが
        ヽ|l⊃ 、_,、_,  ⊂⊃jノ/
        |ヽ、  ヽ._)   /|.:.!       居てますかいな!
         ヽ::l>,、 __, イァ_i.:/
       r ヽヽ::::::|ヽ`ー'´,1ー:::::ヽ、
       {  V:::::::::∨yヽ/::::::::::/,1


          ____
         / ノ  ヽ_\          す、すいませんですお。
       / u ● 三 ● \
       | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|        (井戸水使わずに
       ヽ      |r┬|  ィ’
             `ー'´            どうやって飯炊くんだお?)


          .ノ 、 、
            ● ●) l            すんません、
          (人__) |
           /^)  .ノ            私がよう言うて聞かせまっさかい。
           ヽ   ヽ
          |   | |
          ゝl  lし'            ほら、こっちゃ来い。
            `(_ノ


          そう言って、やらない夫が鶴之助を引っ張っていく。


.


121 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:39:36 XDxaaqIE0


      やらない夫は井戸のところまで鶴之助を連れてくると、

            井戸水をくみ上げて差し出した。


          , ,.ノ  、
          l (● ●
          |  (__人)       ほら、飲んでみ。
         ヽ    ノ
          ハ   ヽ        そしたらわかるやろ。
          l l    ll
         ( |    |)
          し  .J


        ____
      /⌒  ⌒\
     /  ◎   ◎ \
    | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|           まっず!
    \   ゝ'゚  ≦三 ゚。 ゚
      。≧      三 ==-      なんだお、この水!!
       -ァ,       ≧=- 。
        イレ,、      >三  。゚ ・ ゚
       ≦`Vヾ     ヾ ≧
       。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。


.


122 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:40:21 XDxaaqIE0


          ,.ノ 、 、
          lヘ) ヘ) .l        ここらの井戸はどこも鉄気が強うて
          (人__) |
          ヽ    ノn       飲めたもんやないやろ。
          /      ,た)
         ||    「        洗いもんや洗濯くらいにしか
         .(|      |
         .し    J        使われへんのや。


        ___
       /ノ  ヽ_\
     / ●   ●  \      じゃあ、飲み水はどうするんだお?
     |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
     >        ィ’


.


123 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:41:20 XDxaaqIE0


         , ノ  、 、
         .l(へ へ)|      大川(淀川)の水を水売りから買ってる。
         .| (_人_) |
         .ヽ    ノ      あっこの水壺に入ってるのがそうや。
         /    ヽ
        ||    ||      水壺の水は金かかってるさかいな、
        .(|      |)
        .し    J      無駄につこたら、番頭はんが怖いでー。


           ____
         ; /\ u./\ ;
  ガク ….  / ●   ●  \ .ガクガク.    そ、それは
      ;: |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ | {
        r'⌒) {  }  (´ jイ ;        おっかないお……
        | ´   ̄  ヽ  |


.


124 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:42:01 XDxaaqIE0


                  , ノ  、 、
.                l(● ●)|
.                | (_人_) |     まだ名乗ってへんかったな。
.                 ヽ    ノn
                   /      ,た)   丁稚のやらない夫や。
              ||    「
.                 (|      |     よろしゅう頼むで。
              .し    J


             ____
            / ノ  ヽ_\
          /  ●   ● \
          | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|     彦坂鶴之助だお。
          ヽ     Lノ  ィ’
        c~、ノ        γーっ
         乂  ノ      i、_ノ’


.


125 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:42:29 XDxaaqIE0


                   , ,.ノ  、
                    l (● ●       その名前、忘れた方がええで。
                    |  (__人)
                ヽ    ノ       丁稚になったからには、
                 ハ   ヽ
                   l l    ll       旦那さんが新しい名前をくれはるさかい。
                  ( |    |)
                   し  .J


              ___
             /ノ  ヽ_\
           / ● 三 ●...u\
           |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |      そ、そうなのかお?
           >  .|r┬|    .ィ’
        .        `ー'´


.


126 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:42:51 XDxaaqIE0


               , ,ノ 、
                 l (● ●      ああ。
                 |  (__人)
                 ヽ    ノ      そもそも商人が姓を名乗ったりしたら
               ,イ ⊂ 二〕
                  /     /       奉行所に引っ張られんで。
                 (J  /ヽ \
                  Lノ  \__)


              ___
             /    ―\      商人…そっか。
           /      ● ヽ
           |     ⊂⊃ (_,、)    商人になったんだ。
           ヽ          ィ’


.


127 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:43:13 XDxaaqIE0


              ___
            / ―   \
           /  ●    \     新しい名前ってどんなんだお?
           (_,、_,) ⊂⊃   |
           >       ィ’


               .ノ 、 、
                  ● ●) l       旦那さんが決めはるこっちゃからなぁ。
               (人__) |
               ヽ    ノ       けど、最後に『夫』が付くのは
               /    ヽ
                 l|    | l      間違いない思うで。
                (|    |_)
                    し   .J


.


128 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:43:48 XDxaaqIE0


                ____
               /―  ―\
             /  ●   ● \
             | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|     『夫』?
             ヽ       i⌒ヽ
             /       λ  )


                  , ノ  、 、
.                l(● ●)|       せや。
.                | (_人_) |
.                 ヽ    ノn      ウチの奉公人はみんな、なんちゃら『夫』ちゅうねん。
                   /      ,た)
              ||    「       番頭のいく夫はん、手代のドヤが夫はん、丁稚のわる夫、
.                 (|      |
              .し    J       そういう決まりなんやな。


.


129 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:44:20 XDxaaqIE0


               ____
              /―  ―\
            / ●   ●  \     ふーん……
            |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
            >           ィ’


                  , ノ  、 、
.                l(● ●)|
.                | (_人_) |        ま、名前決まったら
.                 ヽ    (V)
                   /      ,た)      その名前で呼んだるさかい。
              ||    「
.                 (|      |        さっきの名前は胸の奥に大事にしもとき。
              .し    J


.


130 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:44:57 XDxaaqIE0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


131 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:46:37 XDxaaqIE0


            その頃、帳場ではダディといく夫が片づけをしていた。

           いく夫が美濃志摩屋からの文を見ながら溜息をつく。


             _____
            /:::::::::::::::::::::::::::.\
           |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
           | ノ   \  i:::::::|
           |(─) (─ ) 〈::::::|
          (⌒(__人__)⌒:::: @)        はぁ……
           |  |r┬-|  u  |
           \ `ー'´    /
          ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
         イ / |.!、 _____ / ノ |   i
         | i  |,/(__)ヽ/   |   l


           /\___/ヽ
          / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
       .   |(○),   、(○)、 :|
         | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
       .   |.u   (^・^>  。.:::::::|        いく夫、そう何遍も溜息つきないな。
          \ ゚  ⌒´ u .::::/
       ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       店の空気まで辛気臭うなるやないか。
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


.


132 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:47:06 XDxaaqIE0


          _____
        /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
        |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
        |::::::::/ \:三::/i:::|        旦那さん、私にはどうにもこうにも
        |:::::::〉( ○)::( ○).|
       .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)        得心がいけしまへんのだす。
         |  u   |i|!i|!|  |
        \    `⌒´ ,/        今、この井川屋に、
     ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      新しい丁稚を入れる余裕はおまへん。
        |  \/゙(__)\,|  i |
        >   ヽ. ハ  |   ||


          /\___/ヽ
         /''''''   '''''':::::::\
      .   |(●),    、(●)、.:|
        |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|       丁稚は賃銀なしのただ働きやで。
      .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
         \  `ニニ´ .u ::/       食べる量かて知れてる。
      ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
      :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      商いの余裕は関係ないやろ。
         |  \/゙(__)\,|  i |
         >   ヽ. ハ  |   ||


.


133 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:47:50 XDxaaqIE0


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
     |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
     |::::::::/ \::::::::/i:::|       美濃志摩屋の旦那さんも、あれが釜炊きの際、
     |:::::::〉( ●)::( ●).|
    .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       天草を煮る匂いを嗅いで戻した、と書いてはりますで。
      |      ` ⌒´  |
     \         ,/       天草の匂いを嗅いで戻すようなもんに
  ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      井川屋の丁稚が勤まりますやろか?
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


      __/ヽ_∠L_
     /:::::::     ''''\
  .   |:::::::::    (●), |
    |::::::::      ,,イ_,`)
  .   |:::::::::      ノ.-=ラ        井川屋は問屋やで。
     \:::::::      `フ
  ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、       もう天場に立つこともないやろ。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


134 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:48:21 XDxaaqIE0


       _____
      /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
     |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
     |::::::::/ \:三::/i:::|
     |:::::::〉( ○)::( ○).|
    .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)        私は、
      |  u   |i|!i|!|  |
      \    `⌒´ ,/         心がけのことを申してますのや!
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


        /\___/ヽ
       /ノ⌒'" `'ー-、::::\        いく夫、そら無理ないで。
    .   |  (●),、(●)、  .:|
      |   ,. (,、_,、)、_   .::::|        鶴之助は美濃の国の山育ち。
    .   |   {,`ト===イ ,}  .::::|
       \  ヾニノ  .:::::/        海藻を煮る匂いは初めてやったはずや。
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       天草を煮る匂いはお前はんもよう知ってるやろ。
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||      初めて嗅いだ人間が戻すのは当たり前やないか。


.


135 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 22:48:24 2z6MP7OE0
美濃志摩屋も我慢強い系のほめ言葉ばかり?


136 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:48:54 XDxaaqIE0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|       それよりも、や。
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|       美濃志摩屋の旦那さん、
     \  `ニニ´  .:::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       鶴之助が夜通しの凍て作業にも音を上げず、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |      身を粉にしてよう働いた、て書いてはる。
      >   ヽ. ハ  |   ||


       __/ヽ_∠L_
      /:::::::     ''''\       仕込みに厳しい美濃志摩屋でさえ、
   .   |:::::::::    (●), |
     |::::::::      ,,イ_,`)      『見所あり』ていうてくれてはるんや。
   .   |:::::::::      ノ.-=ラ
      \:::::::      `フ       あれはうちで育てる。
   ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      これは私の決めたことや。
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


           _____
      ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
      ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
      ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|
         |:::::::〉 ( ○) (○)|
      .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)   旦那さん……
          |  u   |r┬-|  |
          \    `ー'´ /
      ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
      :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
          |  \/゙(__)\,|  i |
          >   ヽ. ハ  |   ||


         主にそうまで言われては、番頭は黙るしかなかった。


.


137 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:49:47 XDxaaqIE0


                いく夫はしばらく俯き、やがて顔を上げると、

                     畳に両手をついて言った。


           _____.
          /:::::::::::::::::::::::::::::::\
        /,,| ::::γ⌒^Y⌒ヽヽ::::|
       /,/|:::::ゝ \   / |::|          そしたら旦那さん、
       /⌒(@::..( (●)  (●) |⌒ヽ
      /  /|::::.u⌒(__人__)⌒|/ヽ_ \      ひとつだけお頼もうします。
      ( ⌒ー-ィ⌒ヽ、   /⌒`ー'⌒  )
      `ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"




           / ⌒`"⌒`ヽ、
           /,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
          /,//:::::::::::::::::::::::::::::::::\         天神さんへの銀二貫、
         ;/⌒'":::..:::::::::::::::::::::::::::::::::|⌒ヽ
       /  /、:::::..:::::::::::::::::::::::::::::/ヽ_ \     何とか……何とか一日でも早うに……
     __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、:::::::/⌒`ー'⌒  )
    ━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"


                    そう言って、顔を畳に擦りつける。


.


138 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:50:39 XDxaaqIE0


        いく夫は天満宮に厚い信仰心を抱いていた。

      これまで幾度も大火に遭いながら命を長らえたこと、


        Π                                Π
        旦三l二二l二二l二二l¨/^\¨l二二l二二l二二l三旦
        /               //'^\\               ∧
       /             //`¨O¨´\\             ∧
      /            // 〔王l王l王〕 \\           ∧
      /          </=======\>.          ∧
     /    ,′                              `,   ∧
    /    /             γ´三三三ヽ           \   ∧
    /    乂ゞ 、        /゙/  ◎   ヾヽ         , 彡丿  ∧
   ≪亞亞亞`<三三三三三彡` ‐-((t))-‐ ´乂三三三三三彡´亞亞亞≫
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l=ll=(Y)=ll=l| |        | |
        | |        | |l=ll=GQ=ll=l| |        | |
        | |        | |l=ll=.从.=ll=l| |        | |
.   o   . | |        | |l=ll=ll=ll=l| |        | |   o
    ||=ll=ll=ll=ll=ll=ll=l┌―――‐┐f=ll=ll=ll=ll=ll=ll=||
    ||_||_||_||_||_||_||_||l_.奉納_.!.l|_||_||_||_||_||_||_||
   [二二二二二二二二二二二|l三三三三l|二二二二二二二二二二二]
     | .|:::::::::::::::::::::::| .|::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::| .|:::::::::::::::::::::::| .|
     凵:::::::::::::::::::::::凵::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::凵:::::::::::::::::::::::凵
                //_ _ _ _ _ _ \\
              //_ _ _ _ _ _ _ _\\
            //_ _ _ _ _ _ _ _ _ \\
           //_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _\\


          この度の天満焼けでも守られたことを、

      彼はひとえに天神さんのおかげと信じて疑わないのだ。


.


139 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:51:09 XDxaaqIE0


   だからこそ、寄進をふいにした主の短慮が許せないのだろう。


                / ⌒`"⌒`ヽ、
                /,, / ̄ ̄ ̄ ̄\
               /,//:::::::::::::::::::::::::::::::::\
              ;/⌒'":::..:::::::::::::::::::::::::::::::::|⌒ヽ
            /  /、:::::..:::::::::::::::::::::::::::::/ヽ_ \
          __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、:::::::/⌒`ー'⌒  )
         ━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"


          /\___/ヽ
         / ''''''    '''''' \
        │:::::::(ー),  、(ー) l
        │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │
         /‐:::  `-=ニ=- ' /       いく夫、
       _,,,l ;! |:::______/
    , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_       堪忍やで。
    l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、
   ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
   ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|


           ダディは十五歳下の番頭に詫びた。


.


140 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:51:33 XDxaaqIE0


           __/ヽ_∠L_
          /:::::::     ''''\
       .   |:::::::::    (●), |        お前はんの気持ち、私は忘れてへんからな。
         |::::::::      ,,イ_,`)
       .   |:::::::::      ノ.-=ラ        銀二貫を貯めるは容易ではないやろが、
          \:::::::      `フ
       ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、       これからまた商いに精出して、
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |      必ず、寄進させてもらうよってに。
           >   ヽ. ハ  |   ||


        /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
    .   |(●),   、(●)、.:| +
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|           せや、今から天神さんに
    .   |   ´トェェェイ`  .::::::| +
      \  |,r-r-|  .::::/     +      そう言うてくるさかい。
    ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
       |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


.


141 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:52:49 XDxaaqIE0


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ノ   ― |
   |:::::::〉 ( ○) (○)|       えっ?
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)
    |     |r┬-|  |       旦那さん、今からでっか?
    \    `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.       もう五つ半だすで?
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||                  【五つ半】午後九時


     /`ー──一'\
    ,r(●)(、_, )、(●)\
 .   |  '"トニニニ┤'` .:::|
   |.   |    .:::|   .::::|
 .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|      今からは今からや。
    \   `ニニ´ ..::::::/
 ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      せや、鶴之助も連れて行ったろ。
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


142 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:53:31 XDxaaqIE0


       寝入りばなを起こされた鶴之助は、

       朦朧とした様子で主人の前に座る。


         ____
        /―   ―\
      /  〓    〓 \    鶴之助、参りましたお。
      | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
      ヽ         ィ’


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   ´トェェェイ`  .::::::|     すまんな、鶴之助。
     \  `ニニ´  .:::::/
  ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、     ほな、ちょっと行てくるさかい、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |    後は頼むで。
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


143 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:53:58 XDxaaqIE0


            淡い月の夜だった。

 鶴之助が提灯で主人の足元を照らしながら、夜道を行く。


                         /\___/ヽ
                       /''''''≡≡'''''':::::::\
                 .       |(●),   、(●)、.:|
                       |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
                 .       |   `-=ニ=- ' .:::::::|
                       \  `ニニ´  .:::::/
                        /:: ::\  //::::: \
                        /:: :: ::ヽ\//;: ::i;:::::\
                       /:: :: :: :: ::\/:: : ::|;;;;;;;::::i
                      f´:: ::i;;:: :: :: /:: :: :: :|;;;;;;;;:::|
                     __r''ヽ:::|;;;;::/:: :: :::;;;;;:::ヽ;;:: :ノ
                    i"  )ノ:: ::と;;;;:___;;;;;;;;;;f゙;;ノ
      ___          `l Tl::U:::/|;;;; ______:;;;;;{
     /─  ─ \        |. | |:: :丿|:: :: :: :: :: :: ;;;;;;;;:: |
   / 〓  〓   \       |. | `'''"l;;|:: :: :: :: :: :: ;;;;;;;;:: |
   |⊃ (,_、,_) ⊂⊃ |      | |    |;|:: :: :: ::;;;;;;; :: ::;;;;;│
   \           /       | |.   |;|:: :: :: :: ;;;;;;; :: :;;;;: |
   ,.ノi        \       | |   |;;|;;:: :: :: ;;;;;;;:: :: ;;;;:: |
   ーイ       ├‐'       | |   ー!、:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::;;;;;;;ノ
     ヽ  ァ   ./         l |     〉. !,    ノ  !、_
      \〈_/         !_|  、‐''゙ _)   (____ヽ
        `ー′


.


144 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:54:37 XDxaaqIE0


  銀二貫を寄進し損ねた後ろめたさから、ダディはお参りの足が遠のいていた。


          iv'ヘ
          | ;`;|
 . . . . . . . | ;'l:|           i'`'i             、   、"''''"´ . . . . . . : : . :
. . . . .    _,;::!:`l'|  ζ\     |;`;|             ∥   . . . . . . . . . . .. . . . ,.,:::
     ._,. :.':"..._|_.;l:|   \';、\  :|':i;;|     .  i'1   ||/>     ,, ,.,.;,;::::,:::::;''" ..:.::;':;
  _.....:;;:;:;::';::':':'"|_}:;|    \';、.\|;';;;|   ./〉 |;|_r//:;:':''"゙"゙゙'..:::::.::;::;:::;:::;:;';';:::';'::'''"
 ` ´ ...:.,.._   |_|`|_r:‐:‐:‐:‐\';、\;| r‐//┐_|:|::::::::;⊥:';'"'''` .;:;'、;':'":'"  . .
,.,:'".,:::;:':;'' .   |_};|::::::::::: : :: : {二l\;i`!、::://:::::::::::::::::::r| .::| . . . . . : : . :
';'::'''"       |_| ̄/\:::::::/`|_{┬| |;、\::::::::i'|::::::r┴冂、、     , -─'゙7´ ̄ ̄ハ─r‐
    、v,..v、  |_}::/ 、';';〉.:/ /{_|┴lニニニニニl.r┴、_|_|_|:彡v、./ /.:: .::./....::/ ,::'.ソ;:::
─'ー;;ミ゙'爻爻ミ;.. |_;l'_;_;_∠;/_/___l_,,:;;}┬┴┬┴┬┴┐::| .:::|彡ミx;: -─: ッ淼w ー ywv、‐ー
゙':;ゞ;爻彡炎炎;ゞ~゛'' ┘⊥ 」_ |  |{_|┴┬┴┬┴┬┴┤ .:|彡ミメ゙';ヾ: ;:; ';: ;:; 'ヾ淡炎ミミx:;'
'' ;~ ;^::;”v:";y;''゚  ; ::;y  ; ::; : ~゛'''' ┴'::⊥Λ二\.:|  .:|ー:| ;~ ;y ::; : ;:; 'ミ゙': ;: ',;:; ;~'',;'':; ;
";: ;: ;: ;:  ; ::; : ;:; :; :  :: :; : ;:; ;~'',;' ' : ;:; ;~ ; ::; ;~'',;''  ; : ; ::; :;~'',;:; ,”v:": ;:; ';v:'';'' ;~'',;'
:  ;:; ;~ ;  :; ;~ ',;''   ; : ; ::  :; ~'' ,;: ; : ;: ;  : ;:; ; ~'',;'   ;:;   '゚ ":;;;: :  ;  : ;:
:;   . ;: ; ; '', ;' ' .;~' ', ;'  '゚ ".  .  ;;  :  ;   : ; : ;:   . ; :; ;~ ;  :; ;~  ',
 :  ; .'  :   ; .     ;  .  ; ' :  '  ;~  ',  . .  . '  :   '',  ; ' '  ;  '


               久々に見る天満宮の境内には、

       放置された本殿の跡が月明かりにぼうっと浮き上がっている。


.


145 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:54:55 XDxaaqIE0


          ダディは申し訳なさに胸が潰れそうになる。


       /\___/\
     /        ::\
   .  |               :|     (寄進も集まらへんから
   .  |   ノ   ヽ、   :|
   .  | (●), 、 (●)、.:::|          普請も進まんのやな……)
     \ ,,ノ(、_, )ヽ、,, :/
     /`ー `ニニ´一''´\


         .___
        ./ノ  ヽ_\
      / ●   ●  \      …………
      |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
      >        ィ’


     鶴之助は主に寄り添い、無言で荒れた境内を見つめていた。


.


146 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:55:19 XDxaaqIE0


      ダディは荒れた境内に向かって深く一礼し、無言で誓いを立てる。


    /\___/ヽ       (天神さん、このたびは相済まんことです)
   /       :::::::\
.  |          .::::|     (どんなに時間がかかろうと、
.  |          .::|
.  |  ー,   ー  :::::|      必ず銀二貫寄進させてもらいますさかいに
   \ ,,ノ(、_, )ヽ、,,.:::/
   /``ーニ=-'"一´\                  どうか勘弁したってください)



    /\___/\
   /         ::\       (それと、天神さんから預からしてもろたこの鶴之助)
.  |  ─   ─    |
.  | (ー), 、 (ー)、 |       (必ず、一人前の商人として育て上げて見せますさかい
.  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   \   r‐=‐、  .:::/                             見とってください)
   /`ー `ニニ´一''´\


      ____
     /―  ―\
   / 一   ー  \          …………
   |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
   >        ィ’


      主の祈る姿を見て、自然に鶴之助も頭を垂れて手を合わせる。


.


147 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:55:56 XDxaaqIE0


     長い祈りの時を終え、ダディが顔を上げる。


      /\___/\
     / /    ヽ ::\
  .   | (●), 、 (●)、 .::|      天神さんに、
    |  ,,ノ(、_, )ヽ、,   .:::|
  .   |   ,;‐=‐ヽ   .:::::|      ようお願いしたか?
     \  `ニニ´  .::/
     /`ー‐--‐‐―´´\


        ____
       /⌒  ⌒\
     / ●   ●  \       はい…いえ、
     |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
     >  ヽ._)    ィ’      へえ。


      /\___/\
     / ⌒   ⌒ ::\
  .   | (●), 、 (●)、 .::|      よっしゃ、
    |  ,,ノ(、_, )ヽ、,   .:::|
  .   |   ト‐=‐ァ'   .::::|      ほな行こか。
     \  `ニニ´  .::/
     /`ー‐--‐‐一''´\


  律儀に返事を言いなおす鶴之助に、ダディが笑みを返す。


.


148 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:56:16 XDxaaqIE0


      /\___/ヽ
    /''''''   '''''':::::::\            せや、お前はんに一遍、
  .   |(●),   、(●)、.:| +
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|            大坂の町を教えといたろ。
  .   |   ´トェェェイ`  .::::::| +
    \  |,r-r-|  .::::/     +      眠たいやろが、
  ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(    まあ辛抱してついて来なはれ。
     |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


        ___
       /ノ  ヽ_\        へ、へえ。
     / ●   ●  \
     |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |     (こんな夜中に歩いても、何もわからないお)
     >        ィ’


                不精不精、鶴之助はうなづく。


.


149 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:56:45 XDxaaqIE0


          天神橋を渡り、東横堀川に沿って南に下る。

         絶えず、擦れ違う者や追い越していく者が居た。


      /ロロロロロロ.\
ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
/ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
-ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
___| |______| |______| |______| |______| |_
|||| |||||||| |||||||| |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
====__=======(    )============== .∧,,∧==
     ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
       (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
     /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
      ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
      _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


.


150 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:57:08 XDxaaqIE0


           山育ちの鶴之助は、不思議に思えてならなかった。


       ___   ___
     /ノ  ヽ__ ≡u ノ \
   /●   ●      ●  \  (な、なんでこんな夜中に人通りがあるんだお?)
   | (_,、_,) ⊂⊃  ⊂⊃ (_,、_,)|
   >u⌒     ≡    ⌒ ィ’


           故郷ならば、とっくに皆が寝静まっている時刻である。


.


151 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:57:43 XDxaaqIE0


          いよいよ順慶町の通りに入ると、鶴之助は両目を剥いた。


                                    ,l ゞ:〃            ______
                                       ,l ゞ:〃 :::::::::::::::::::::::::::::::r" |∥∥∥∥∥
    ゚゙'ー、,,,                               ,l ゞ:〃        ,,,r'" l|  |∥∥∥∥∥
    ゚゙'ー、,, ゙゙`ー、,                         ,,l ゞ:〃:::::::::::::::::::::;r゙゙|::::::::::l|   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       ゙゙゙゙',ー、,. ゙゙'ー、_                         ,l ゞ,.〃      ,r''|::::::|;;;;;;;;;;l|
        .ll  .゙゙''ー,,, ''ー、,_ _              ,l゙ゞ;〃:::::::::::;;rl|::::::|;;;;;;|::::r''''l| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        .ll いら  ~~゙lー、、:i┿l|              l:ゞ〃 . ,,,r'" l|;;;;;;|::r''|;;;;;;;;;;l|
        .ll  しゃい   lミミl*li温l|ヽi:ー,、        彡~〃彡'"''',,r''' l|::r''|;;;;;;|::::::::::l|
        .l:──--、、、...lミミl*il丿l|__li゙゚態N、、 ,       l l㌍'''"、__r''__,、、l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l| :::::::::::::::::::::::::::::::
    , l l l llll|ミミミミミミミlミミl*ll泉l|~~トlー-i゙l~~冫     ~ |゚l、.丿彡彡彡l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
      lj,,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',lミミl*ll丿l| llヾヾiー ゚l゙~i:!』,,    l『』i゙゙゚゙:lヽ ̄ ̄l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l| ::::::::::::::::::::::::::::::::
      l|  l   .l    lミ.8 8 8 8 ∧∧,;"「」 []  λλ i~ll"|..| ̄~l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
      l|  l.∧∧  ,、,、 n n ∧∧(  ,,) (*´ロ`) (´v`*) ノリレ,, ノリルレ ,::::::|;;;;;;;;;;l|
      l| ...(*´ⅴ) (-^* )::::::::) ∧∧(∩_∩ (~ ノ-(  ノ (-・ (゚- ゚*ノリ.;;;;;|::::::::::l|
      ,-'" (   ヽ(゚*  ) )   ( `ー) (∀・,,) vvv 〉 ノ 〉   l i_)(Y ノ.|::::::|;;;;;;;;;;l|
   ,-"´   ノ  〉 (   )    (   ) (   ) (v` )         Y ノノ~~'ゝ ∩∩ .∧∧.:::::::::::::::::::::::::::::::
  ∧w∧  ▲,,,▲  (  (    (/`ヽ) 〈 ヽ (   )ノリルリ λλ (__) し`J (::::::::::).(:::::::::::)
  ( ・∀・)(∀`  )    ∧_∧  ∩_∩  し' Jノリ゚ ー゚(ー ` )   ∧∧ ∧_∧::::::::つ.:::::::::::::::::::::::::::::
  と    )(    )    (@Д@* )(´∀`*)     ( つ (v,と)   (   ´)(゚   ):::::::::| ______
   Y  人  Y  人    (つ<V>)と  <v>)    /~~~~ Y 人   と  | |   |∪∪.┌───┐
   (_)`J (_)`J    |  | |  人  Y     ^^Uヽ)(__)ヽJ   |   ~ |   ~.l  │∥∥∥│


                   一帯が、人、人、人、で溢れている。

  両側に明々と掲げられた提灯、その灯りの下ではありとあらゆる品が屋台見世で売られている。


.


152 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:58:13 XDxaaqIE0


       ____
      /―  ―\
    /.u ●   ● \     旦那さま、
    | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|
    \    n,っ  ィ’     今日は祭りか何かなのですかお?
     (  m/  ノi  )
     乂_  イ _ノ


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.   |(●),   、(●)、.:|
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|       違う違う、ここらはいっつもこうなんや。
.   |   ´トェェェイ`  .::::::|
   \  `ニニ´  .:::::/       けんどよう見てみ、どの店も繁盛してるようで、
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      実はそうでもないんや。
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


153 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 22:59:15 XDxaaqIE0


     ____
    /―  ―\
  /  ●   ● \
  | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|      言われてみれば……
  ヽ       i⌒ヽ
  /       λ  )


    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
.   |:::::::::    (●), |
  |::::::::      ,,イ_,`)
.   |:::::::::      ノ.-=ラ      大坂ではな、昼間はおのれの稼業に精を出し、
   \:::::::      `フ
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、      それが片付いた夜に、買いもんをするんや。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


154 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:01:13 XDxaaqIE0


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.   |(●),   、(●)、.:|      せやけど、そなに余裕のある
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::|      暮らししてないさかいな。
   \  `ニニ´  .:::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、      ホンマにいるもんしか買わへん。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |     皆冷やかしばっかりや。
    >   ヽ. ハ  |   ||


      ____
    ./―  ―\
   /  ●   ● \
   | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|      ふーん……
   ヽ       i⌒ヽ
   /       λ  )


.


155 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:01:46 XDxaaqIE0


 つまるところ大坂は、朝から夜まで終日が商いの町なのだ。


   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;::::. ::: .: ,======================
   ::::::::::::::::::::: :::: ::::: :::::;;: .:::. ::: ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   :::.. ::: .:: :: .: .:: ..: ..: :' ..: ..: ; ;; /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
            :: ..: ;;; ::.. ::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                : ;;,イ,,二二二二二ニニニニニニニニニニ
     ニニニニニニ@    ヽ||―――升――,;r┬―f ‐r ‐r ‐r
    :::::::::::::::::::::::, へ、   .:.::||二二二| |╋╋|==i===i==i==!==!
    ::::::::::::::::::/, へ ヽ、   .::||―――| |╋╋|^´l`^´l`^l´^!  l
    ::::::::::::/∠二二ゝ、ヽ : : ||―――| |╋╋}  i /ヽ_/ヽ、l  i'
    ::::::/∠二二二二ス  l二二二二二二二|  i!-‐ ー- l  l
      /|ニゝ--------孑 /;;:::;;;::::::::::::::::::::::::: l  ヽ、∀ ,ノ、 ヽ
        | |モ幵幵||幵幵l <元三三三三三三 ヽ、,_,x,_,x_,x,_,x,,_
        | |モ幵幵||幵幵 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::||
        | |モ幵幵||幵ホ ムニニニニニニニニニニニニニニニニ
      二二二二ニニニ |_|ニニニニニニニニニニニ:i! ト-‐|l| | ̄ ̄|| ̄
     _||__||__||_||_; | ||||||||||||||||||||||||||||||||∥|llii!:|l| |    ||
     _||__||__||_||_; | ||||||||||||||||||||||||||||||||∥|llii!:|l| |   Q||Q
     _||__||__||_||_; | ||||||||||||||||||||||||||||||||∥|llii!:|l{ |    ||
    ∧w∧  ▲,,,▲ ||_; | ||||||||||||||||||||||||||||||||∥|llii!:|l| |    ||
    ( ・∀・)(∀`  )._; | l二二二二二二二二l| |ニ´}.ノリルリ λλ
    と    )(    )  '| |.∧_∧  ∩_∩ . i! |, .ノリ゚ ー゚(ー ` )
     Y  人  Y  人   ...(@Д@* )(´∀`*)  ~  ...( つ (v,と)
     (_)`J (_)`J  ..(つ<V>)と  <v>)    ./~~~~ Y 人
                     |  | |  人  Y     .^^Uヽ)(__)ヽJ


         鶴之助は夢見心地で街並みを眺める。


.


156 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:02:20 XDxaaqIE0


    ダディは人込みから鶴之助を庇うように歩きながら、

             考えを巡らせていた。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(一),   、(一)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      (さぁて……)
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/      (こいつの名ぁ…)
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     (なんてつけたもんやろ……)
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),    、(●)、.:|        (鶴之助やから、つる夫……)
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
  .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|        (あかん、つる夫ちゅうたら、
     \  `ニニ´ .u ::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、        三年前に暇だしたあの役立たずと同じ名ぁや)
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |      (縁起悪すぎるわ)
      >   ヽ. ハ  |   ||


            考えはなかなかまとまらなかった。


.


157 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:03:02 XDxaaqIE0


        やがて、妙案を思いついたように声を上げた。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:| +
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|            せや、やる夫や!
  .   |   ´トェェェイ`  .::::::| +
     \  |,r-r-|  .::::/     +       やる夫がええわ!!
  ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
      |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


          ____
         /⌒  ⌒\
       /  ○   ○ \
       | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|         はっ!?
       ヽ    (_.ノ   ィ’


.


158 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:03:44 XDxaaqIE0


      /`ー──一'\
     ,r(●)(、_, )、(●)\
  .   |  '"トニニニ┤'` .:::|      ええか、鶴之助。
    |.   |    .:::|   .::::|
  .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|      お前の名ぁは今日からやる夫や。
     \   `ニニ´ ..::::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      井川屋丁稚、やる夫。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |     それがお前はんなんやで。
     >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       / ノ  ヽ_\
      /  ○ }liil{ ○ \
      | ⊂⊃ (_,、_,) ⊂|      ええっ?
      ヽ     |!i|!|   ィ’
           |ェェ|


.


159 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:04:32 XDxaaqIE0


     /\___/ヽ
    /''''''   '''''':::::::\
 .   |(●),   、(●)、.:|
   |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
 .   |   ´トェェェイ`  .::::::|         どや、やる夫。
    \  `ニニ´  .:::::/
 ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、         ええ名ぁやろ。
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


      ____
     /⌒   ⌒\
   /  ○   ○  \
   |⊂⊃ (_,、_,) ⊂⊃|        へ、へえ……
   \    |r┬|    /
        `ーJ


               否も応もなかった。


.


160 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:06:06 XDxaaqIE0


     こうして、その日を境に、十歳の彦坂鶴之助は

 「やる夫」という新しい名前で生きていくこととなったのである。


                  ____
                 /一  ー\
               / 〓   〓 u.\
               |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
               /⌒l       ィ’
              /  /        ヽ
              ヽ_ |       Y  |
                |       |  |
                |       ゛、ノ
                |     |    |
                |    | |   |
                (__ノ ヽ___)


 苗村藩士の子息としてではない、天満の寒天問屋の丁稚として。


.


161 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:06:44 XDxaaqIE0











                                           _________|\
                                          [|[||  次章へと続く…    >
                                            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/


.


162 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/03(金) 23:07:59 XDxaaqIE0

第一章は以上です。

第2章の投下は改めてお知らせしますが、

今月下旬とお考えください。

.


163 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 23:10:07 pIMtsJuU0
乙かれ様です。

時代小説というのは普段あまり読まないのですが、
非常に面白く拝見させていただきました。

しかし後からやる夫になるスレはとても珍しいのではないでしょうかw


164 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 23:10:55 iXVB.3Yw0
乙です。次回も期待してます。


165 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 23:12:45 koef8bjo0

一見華やかで実際は過酷な上方の雰囲気が良く出てました
 
しかし何をどう思い付いて「やる夫」になったんだw


166 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 23:14:40 bstynXgM0
面白かったです、続きが楽しみ


167 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 23:16:48 2z6MP7OE0
乙でした。
終わったら次はみおつくしですねw


168 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/03(金) 23:49:25 xHHYe69U0



169 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 01:30:28 V6as.amo0
原作の良さが出ていると思います。
ドラマ化も決定しているし、時期的にもちょうど良いですね。乙でした。


170 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 03:45:48 pygqHuuQ0


銀二貫の重みかぁ。


171 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 06:45:18 qEDdi4Kk0
乙でした
次回も楽しみや


172 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 08:59:28 B761FKQs0
台詞とかは小説のまんまが多いんですか?
台詞がこんな感じにラフなら買ってみたいかなと思ったので
あとてっきり一話完結の話かと思ってたけど長編?


173 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 11:01:10 8krh1X/s0
乙です


174 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/04(土) 11:16:28 YKxBGMA60
>>163
>>165
ありがとうございます。

>後から「やる夫」になる
原作ではそれなりに理由付けされてるんですけど、
なんかとってつけたみたいになっちゃいましたね。
反省、反省。

>>164
>>165
>>168
>>171
ありがとうございます。
ご期待に添えるよう精いっぱい努めさせていただきます。


175 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/04(土) 11:19:32 YKxBGMA60
>>167
ありがとうございます。

>次はみおつくし
勘弁して……orz
あれまだ原作完結してない…orz


>>169
ありがとうございます。

>ドラマ化
4月でしたよね?
今からすっごく楽しみにしてます。

ドラマ化を知ったので投下を前倒ししたのは内緒や……


176 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 11:25:21 kIr.mQyU0

こういう歴史もの嫌いなはずなのに見入ってしまった。面白い期待


177 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/04(土) 11:26:33 YKxBGMA60
>>170
ありがとうございます。

>銀二貫の重み
この辺のサイトが参考になるかもですね。
ttp://www.teiocollection.com/kakaku.htm

物価換算すると200万円くらい、となるんでしょうが、
「そない余裕のある暮らししてへん」のですね、この時代。

現代だと、衣食住以外に通信費やら娯楽費やら支払う余裕がある方が大半でしょうが
江戸時代だと、食べていくので精いっぱい、って暮らしだったのじゃないかと。
「宵越しの銭は持てない」時代だったんじゃないかなあ、と想像してます。


178 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/04(土) 11:32:35 YKxBGMA60
>>172
ありがとうございます。

>台詞とか
若干アレンジしてますけど、いまのところ基本原作まんまです。

原作者、元は漫画原作をされてた方らしいんで、
台詞回しも地の文も、小説を読みつけてない方にもとっつきやすいかと。
代表作は>>167の方が触れられてます「みおつくし料理帖」ですね。
こっちからはいるのもアリです。

>一話完結? 長編?
全十一章です。
章ごとに投下するつもりでしたけど、場合によっては前後篇に分けるかも。


179 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/04(土) 11:37:30 YKxBGMA60
>>173
ありがとうございます。

>>176
ありがとうございます。

>歴史もの嫌い
プレッシャーかかるわぁ……
ちょっとでも苦手意識の解消につながりましたら紹介者としてこれに勝る喜びはありません。
精いっぱい努めさせていただきます。


180 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/04(土) 12:03:58 B761FKQs0
ドラマの視聴率次第だけど、読みやすい時代小説(?)なら原作も売れるでしょうね
こういうゆったりした話は好きなので、こういうのは自分もスレを書きたくなりますね
みおつくしは、>>1さん次作品になるから触らないほうがいいかな?w


181 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/05(日) 14:00:20 4Ek/aa7c0
>>175
キリのいいところまででいいから、是非やって。


182 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/05(日) 14:59:53 eeVuPxlk0
これドラマも楽しみかも


183 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/06(月) 02:18:08 nsSnMYVo0
乙でした
こういう落ち着いた雰囲気の時代物は大好物なので楽しみにしています!


184 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/06(月) 02:19:34 nsSnMYVo0
っていま酉で検索したら百万ドルを取り返せの方だったんですね
前作も非常に楽しく読ませていただいておりました。
今作も楽しみにしています。
連投失礼いたしました


185 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/08(水) 23:08:58 9x.Hjd7Q0
>>181
余裕ができたら嘘予告でも挑戦してみますかね……

>>184
前作をご存じでしたか。
それはありがとうございました。
今作もご期待に添えるよう精いっぱい努めさせていただきます。


186 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/08(水) 23:12:04 9x.Hjd7Q0
前作について言及がありましたので、ちゃっかり宣伝。
【できる夫達は百万ドルを取り返すようです】


以下のまとめサイト様にてまとめられております。

『嗚呼! やる夫道』様。
ttp://gokumonan.blog87.fc2.com/blog-entry-4755.html


『やる夫叙事詩』様。
ttp://epicyaruo.blog.fc2.com/blog-category-10.html


『やるやら書庫』様。
ttp://yaruyalibrary.blog.fc2.com/blog-category-20.html


187 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/08(水) 23:16:14 9x.Hjd7Q0
また、『やるやら書庫』様には、今作についてもまとめてくださっております。

ttp://yaruyalibrary.blog.fc2.com/blog-category-91.html

この場を借りまして御礼申し上げます。


188 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/09(木) 07:11:39 TRNREx7s0
◆8epcM/V4rsさん乙です、かなり楽しみな作品ですので
頑張ってくださいね

>>2で
> 正しい浪花言葉ではない可能性もございます。

と書いてはりますが、現在の大阪人でも「正しい浪速言葉」はわからない人が
結構いると思いますので、かまわないと思いますよ。
まあ、お嬢さんをあらわす「いとさん、こいさん「とか「とうはん」みたいなのや
でっせ→だっせ、位は有名ですがこれが奥さんを表す「ごりょんさん・御寮人」になると
わかる人がかなり減っているような状態ですし、商人のイメージのある「さよでおます」とか
「そうだすか」とか「だんないがな」言い方をする人はまず居ませんので一般で言う関西弁
十分ですよ。


189 : アホのせいで大規模規制実施中 詳しくは管理スレ>>469で :2014/01/10(金) 18:57:21 KZIVEbjY0
>>1さん乙です

やる夫スレで時代劇って珍しいですね。とても面白いです!

天満宮再建を町人たちの自腹でってところで、今の通天閣も周辺住民の寄付で建設されたのを思い出した

目次


190 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/16(木) 21:40:32 Q9sIip5M0
第1章投下から間が空いてしまい、まことに申し訳ありません。

今週の土曜日に第2章の投下を行いたいと思います。
時間は改めてお知らせいたします。


191 : 名無しのやる夫だお :2014/01/16(木) 23:07:17 tAl6Vwxs0
楽しみにしてます


192 : 名無しのやる夫だお :2014/01/16(木) 23:09:49 XvIjUiCw0
期待~


193 : 名無しのやる夫だお :2014/01/17(金) 03:25:13 VKmynzmU0
把握
待ちついでに前作読んできたけど、すごく面白かったです
今作も期待してます


194 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 02:08:31 MuxeJ07Q0


                             _____
      /\___/ヽ              /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
     / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\               |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
  .   |(○),   、(○)、 :|            |::::::::ゝ \  / |
    | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|           |::::::( ( >) (<)|
  .   |.u   (^・^>  。.:::::::|           (@  ::::⌒(__人__)⌒)
     \ ゚  ⌒´ u .::::/            |     |r┬-|  |
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、               \      `ー'´/
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i           ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
      |  \/゙(__)\,|  i |         :   |  '; \_____ ノ.| ヽ    【一つの味】
      >   ヽ. ハ  |   ||             |  \/゙(__)\,|  i
                                          やる夫は浪速の商人になるようです
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \                                           【一つの恋】
     (●)(● )   |                ____
      (__人__)  U   |                   /      \
     l` ⌒´    |               /\    /  \
.     {         |             / (●)  (●)   \
      {       /               |    (__人__)      |
      ヽ     ノ             \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ              /             \
      |          |             |              |

                      本日13時より、第二章を投下いたします。


.


195 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 02:28:48 RKg.Hiqg0
全裸待機


197 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:00:49 MuxeJ07Q0

では、時間となりましたので始めさせていただきます。

.


198 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:01:30 MuxeJ07Q0










                         第二章


                        商人の矜持









.


199 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:01:55 MuxeJ07Q0


           やる夫が井川屋に来てから二年。


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_


.


200 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:02:42 MuxeJ07Q0


  客の出入りがあるたびに、やる夫が元気に声を上げる。


         ___
       / ⌒  ⌒\
      / (⌒)  (⌒)\
    /   ///(__人__)///
     |   u.   `Y⌒y'´    |      おいでやす!
      \       ゙ー ′  ,/
      /⌒ヽ   ー‐    ィヽ
      / rー'ゝ       〆ヽ
    /,ノヾ ,>      ヾ_ノ,|
    | ヽ〆        |´ |


                          ____
                         /_ノ ' ヽ_\
                       /(≡)   (≡)\
                      / /// (__人__) ///
.                      |     |r┬-|      |
    毎度おおきに          \    `ー'´   /
                       /   _ノ(ξ)、_ \
    ありがとさんでございます!  (___/  \___)
                        |         /
                        |       /
                        |   r   /
                         ヽ  ヽ_/
                          >__ノ;:::......


         浪花言葉もすっかり板につき、

      気持ちのこもった良い声を上げていた。


.


201 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:03:33 MuxeJ07Q0


      帳場からダディが目を細めて、やる夫の様子を眺める。


     /\___/\
   / ―   ー ::\
    |  --、,   、ー-、  .|    (思た通りや)
    |  ,,ノ(o_o.)ヽ、,  .::|
    |   、___   .:::|                     アキンド
   \  `二二´  .::/    (物覚えも早いし、あれはええ商人に育つで)
   /`ー‐--‐‐一''´\


.


202 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:04:04 MuxeJ07Q0


        その横で、いく夫が忌々しそうに舌打ちをする。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    |.::::::::::γ ⌒ Yノ(ヽ|    ほんになんでっしゃろ、あの黄色い声は。
    |:::::::::/  _ノ  ヽ|::!
   |::::::/ノ( ●━●〈:|    店に雀を飼うてるみたいですがな。
   (@  ⌒  (__人__) )
    |       ` ⌒´ .|     おまけにあの格好。
    \  ノ(    ./
    /  ⌒    \




       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
     |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
     |::::::::/ \::::::::/i:::|
     |:::::::〉( ●)::( ●).|      これ!
    .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
      |      ` ⌒´  |      これ、やる夫!
     \         ,/
  ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.     ちょっとこっちおいなはれ!
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


         独り言だけでは我慢ならなかったらしく、

           尖った声でやる夫を呼びつける。


.


203 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:04:43 MuxeJ07Q0


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ       やる夫、何遍言うたらわかりますのんや?
     |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
     |::::::::/ \:三::/i:::|       そないに背筋をぴんしゃんと
     |:::::::〉( ○)::( ○).|
    .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       伸ばすもんとちゃいまっせ!
      |  u   |i|!i|!|  |
     \    `⌒´ ,/       それはお侍の恰好や!
  ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      姿勢は低うに、前屈み!
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||     商人は猫背で丁度ええんだす!!


             ____
           /      \
         /           \      へ、へえ、
        /   _ノ ::::::: ゝ、  \
          |   (○)  (○)  u |     すんまへん……
        \   (__人__)   ,/
        /    `⌒´    \


       口煩い番頭に叱られて、やる夫はうなだれる。


.


204 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:05:26 MuxeJ07Q0


      が、叱られてしばらくすると、また元の良い姿勢にもどる。


         ____
        /⌒  ⌒\
      / (⌒) (⌒)\
     /  ::⌒(__人__)⌒::: \      おいでやす!
     |       |::::::|   ,---、
     \       `ー'   しE |     毎度ありがとさんでございます!
     /           l、E ノ
   /            | |
   (   丶- 、       ヽ_/
    `ー、_ノ


        _____
   ; /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    ; |.::::γ⌒ Yノ( ヽ::::::| ;
    ; |::::/  _ノ三ヽ、  |:::| ;
   ; |:ノ(( 。 )三( ゚ )u::| ;
   ; (@ ⌒(__人__)⌒ @) ;      あいとは何遍同じことを言わすつもりや……!
    ; | u  |++++| ノ( | ;
    ; \   ` ⌒´⌒ / ;
    ; /           \ ;


            その様子を見て、またいく夫が顔をしかめる。


.


205 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:05:56 MuxeJ07Q0


     /\___/\
    / /    ヽ ::\   (声が黄色いんは声変わり前やししゃあないやろ)
 .   | (●), 、 (●)、 .::|
   |  ,,ノ(、_, )ヽ、,   .:::|   (姿勢が良いんかて、悪いこっちゃない…)
 .   |   ,;‐=‐ヽ   .:::::|
    \  `ニニ´  .::/   (言うたかて、それ言うたらいく夫がまた怒るやろしなぁ……)
    /`ー‐--‐‐―´´\


    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
.   |:::::::::    (●), |
  |::::::::      ,,イ_,`)
.   |:::::::::      ノ.-=ラ      (せや!)
   \:::::::      `フ
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、           フジセイ        アンジョウ
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     いく夫、『藤誠』さんのほう、味様いってるか?
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


206 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:06:36 MuxeJ07Q0


    主にそう話しかけられた途端、いく夫はぱっと眉を開いた。

  そして、よくぞ聞いて下さった、と言わんばかりに身を乗り出した。


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
      |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|          ダン
      |::::::::/ ⌒  ⌒ |      へえ、旦那さん、よろこんでおくれやす!
     |:::::::〉 ( >) (<)|
     (@ ::::⌒(__人__)⌒)     藤誠はんに卸さしてもろてます品、
      |    /| | | | |  |
      \ (、 `ー―'´, /     評判も上々で、来月から注文
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ     増やして頂けるかも知れんのだす!
       |  \/゙(__)\,|  i


       /`ー──一'\
      ,r(●)(、_, )、(●)\
   .   |  '"トニニニ┤'` .:::|
     |.   |    .:::|   .::::|     ほう、そら目出度いこっちゃ。
   .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|
      \   `ニニ´ ..::::::/     (よっしゃ狙い通り、気ぃ逸らせた)
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


207 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:07:19 MuxeJ07Q0


               島之内にある老舗高級料理店「藤誠」から、

                今夏、新規に寒天の注文を受けたことが、

                   何よりも自慢のいく夫だった。


              _,,,..-.ー.─.-.-....、._
          二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`:..、
       /::::::::``:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::::ヽ
      /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::\:::::::::',
     /:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,、_:::::\::::\:::::',
      i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ\\\:::::::::\:::\::',
      l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l  >≧r、\::::::ヾ\_ r 、
      l::::::i!:::i::::l;/i ._,,\::::!、::::::l   辻ヾ〉 \:::ヾ) (ヽ、`\
     i:::::ハ::::|::::l:::i〈`(ヘ\! \:',   ゞ-′  ラ∨/\ \ \
.     l:::i l:::|::::lヾ、 弋i;) ヽ  \      ┌::ソノ   \ \ \_
      ∨ l::::l::::l:::\ "           ヘ::::/ r--‐-、>、    `ヽ
        \|\!\  ′          ∨   ` ‐-、 ``       `、
         ヾ ヾ 、    ー ´    ,   ヽ、    -\         `、   キラッ☆
          _, r ´:`  、      , ′ 、   |  !:.:ヽ : ヽ         ヽ
       _, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.....` ー <´    ヽ  |  |::.:.:ヽ: : ヘ       `、
    _, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| .ヽ   -、ー_'/   !::.:.:.:.:ヽ: : ` 、  _______i_
   /゙: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:./i!  | ヘ i. / 入  |\.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,, ..---┴‐,
   l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\/:.:.:.:!'! /ヽ、ヽrk'´:_,r、 イ:.:.:\/ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
   !:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.l ゙'   !   !  ヘ/|:.:.:.:.:.:\/::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
  l:.:.:.:.:.::i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヘ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!   ヘ__/    |:.:.:.:.:.:.:./!:::::::::::..:.:.:.:.:.:.:.:.:..::.:.:.:l
  /:.:.:.:.:.:.: !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ:.:.:.:.:.:.:.:.|    / ヽ    i:.:.:.:.:.:.:/ ヘ::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘ

                   「藤誠」主人   誠



.


208 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:08:02 MuxeJ07Q0


      _____
    /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|  +
+   |::::::::ゝ \  / |
    |::::::( ( >) (<)|   +     ほんに誉れなことだすなあ。
    (@  ::::⌒(__人__)⌒)
 +   |     |r┬-|  |         なんちゅうても『天下の藤誠』だすで、旦那さん。
     \      `ー'´/
   ,,.....イヽ、___ ーノ゙-、.  +      あのご城代さまかて、お忍びで行きはったと噂のある。
  /rー'ゝ|\ \_____ ノ.| 〆ヽ
 ./ノヾ ,>|  \/゙(__)\|ヾ_ノ|
 | ヽ〆 >  ヽ ハ   |´| .|


     /\___/ヽ
    /''''''   '''''':::::::\
 .   |(○),   、(○)、.:| +
   |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
 .   |   `トェェェイ '  .::::::| +        まったくやなあ。
    \  `ニニ´  .:::::/     +
 ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


        武家嫌いのはずが、こんな時にだけ大坂城代を引き合いに出す

              番頭が可笑しくて、ダディはにやにやと笑う。


.


209 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:08:32 MuxeJ07Q0


         しかし、ダディにとっても藤誠の話題は

       心がうきうきと浮き立つことに変わりが無かった。


                   /\___/\
                 / ⌒   ⌒  ::\
    ┏┓  ┏━━┓    | (>), 、 (<)、 :|
  ┏┛┗┓┃ ━ ┃┏━|///,ノ(、_, )ヽ、,/// :|━━┓ ┏┳┳┓
  ┣    ┫┃┏┓┃┗━|   ト‐=‐ァ'   :|━━┛ ┗┻┫┃
  ┗┓┏┛┗┛┃┃    |   |,r- r- |   .:::|      ┏━┛┃
    ┗┛      ┗┛   \  `ニニ´  .:/      ┗━━┛
                 /`ー‐--‐‐一''´\


       上質な寒天を良心的な値で商ってきたことが

       実を結んだ証のように思われて誇らしかった。


.


210 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:09:07 MuxeJ07Q0


              ダディは弾んだ声で番頭に提案する。


      /\___/ヽ              聞いた話によると、
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:| +          藤誠ではアワビの殻を皿に見立てて、
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   ´トェェェイ`  .::::::| +           そこにうちの寒天を薄切りにしたもんを
     \  |,r-r-|  .::::/     +
  ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)     アワビの肝と和えて出さはるそうやで。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
      |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、    一遍、私らも食べに行ってみよか。


.


211 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:09:50 MuxeJ07Q0


           しかし、いく夫はすっと居住まいを正して首を横に振る。


         _____
       /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
       |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
       |::::::::/ \::::::::/i:::|
       |:::::::〉( ●)::( ●).|           あきまへん、旦那さん。
      .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
        |      ` ⌒´  |           そないな贅沢は、天神さんへの約束の寄進を
       \         ,/
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.          済ませてからにしてしてもらいまひょ。
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


        /\___/ヽ
       /     ::::::::::::::::\
    .   |  __,,,,,.ノ  ヽ、,,,_.:::|         あいた!
      |  .゙ _"  |゙_ " .:::|
    .   |  ひ  ` '     .::|         かっちりしとんなぁ、
       \  /ヽニニ='ヽ::/
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、         うちの番頭は。
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |        息が詰まってかなわんわ。
        >   ヽ. ハ  |   ||


   しかし、いく夫のこうした性質が、創業から今日まで店を支えてくれていることを、

           ダディ自身が誰よりもよく知っているのだった。


.


212 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:10:20 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


213 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:11:17 MuxeJ07Q0


          水無月に入った。


           / ̄ ̄ ̄\
          /─    ─  \
         / (●)  (●)  ヽ
         |:::⌒(_人__)⌒::  |`ヽ
      ,ィTl'ヽ\  `ー´    /`ヽー;、
      kヒヒど, ((        (({⌒Yィ 、 ソ
        `´ ̄ヽ      ハヽ/`^ー′
            ヽ   ` /  '}
             >   /ごノ
          __,∠     /    キュムキュム
         〈、    /
          \、__ノ


 連日の猛暑のために、寒天の売れ行きは好調で、

    井川屋では手代から丁稚にいたるまで、

 風呂敷包みを背負って品を届けに行かされていた。


.


214 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:11:51 MuxeJ07Q0


       この頃では、夢の中まで浪花言葉になっているやる夫が

       背中でかさかさと音を立てている寒天に後ろ手で触れる。


         ____
        /     \
   .    /       \
   .  / /) ノ '  ヽ、 \
     | / .イ '=・=  =・= u|    (こないなもん、ほんまに美味いんやろか)
     /,'才.ミ) (__人__) /
   .   | ≧シ'  ` ⌒´   \
    /\ ヽ          ヽ


.


215 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:12:24 MuxeJ07Q0


        ____
       /      \
     /         \
    /           \     (番頭はんに『味覚え!』いうて喰わせられたけど、
    |     \   ,_   |
    /  u  ∩ノ ⊃―)/            正直、味やらせえへんかったし……)
    (  \ / _ノ |  |
    .\ “  /__|  |
      \ /___ /


        ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ      (二年前、伏見の寒天場におった時かて、
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |
    \     ` ⌒r'.二ヽ<       クソ  クソ
    /        i^Y゙ r─ ゝ、     臭うて臭うて、えずいてばっかりやったしなぁ…)
   /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
   {   {         \`7ー┘!


.


216 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:13:30 MuxeJ07Q0


  ..      ____
       / ―  -\
  .  . /  (●)  (●)        (あ……)
    /     (__人__) \
    |       ` ⌒´   |      (そういうたらあん時……)
  .  \           /
  .   ノ         \
   /´            ヽ


.


217 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:14:06 MuxeJ07Q0

              ┌───────────────┐
              │                        │
              │    ┌─────────┐    │
              └──┼─────────┼──┘
                    │  ┌─────┐  │
                    └─┼─────┼─┘
                  └─────┘
                   ┌───┐
                   └───┘
                     ┌─┐
                     └─┘
                      □


218 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:15:13 MuxeJ07Q0


  二年前、やる夫が伏見の寒天場で初めて天草を大鍋で煮る作業を行った時、

  その強烈な臭いに目を開けていることすらままならず、嘔吐するばかりだった。


            ___
           /ノ  `ヽ\        (クサい、クサいお!)
         / ○   ○  \
         |⊃||(_,、_,)||⊃ |      (こんなもん食い物の臭いじゃねーお!!)
         >   ヽ._)   ィ’






            ,. -‐-─-- 、
   .      /             `ー、
       〃                 i,
      r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
       !  :l      ,リ|}    |. }
   .   {.   |          ′    | }
       レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<
       !∩|.}. '"旬゙`   ./''旬 ` f^|
      l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄  |l.|       ははっ、臭くてタマらないって顔だな。
   .    ヽ.ヽ        {:.    lリ
   .    }.iーi       ^ r'    ,'
        !| ヽ.   ー_ ‐-‐ァ'  /
   .   /}   \   二"  ,イ
    __/ ∥  .  ヽ、_ __/:::|\
    /i   |!  i      :;::;:::::::ト、 ヽー-

       寒天場の先輩 高和


.


219 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:16:09 MuxeJ07Q0


             __
          ,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
       /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
      /;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
      ,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
      |;;;|      ノリ     ミ;;;|
     _ゞ;! r─-- 、  ,rェ--- 、ミ;リ
      !ヘl;| '____`  ,ィ '"世ン 「ヽ
     !(,ヘ!   ̄'"  |:::.`  ̄  ,ドリ        だけどな、こうやって煮ていくうちに臭みが抜けるんだ。
     ヾ、!      !;     ,レソ
       `|      ^'='^     ム'′        だから出来上がったものはまったく臭くはないんだぜ。
       ,rト、  ー_ ‐-‐ァ'   /|
    _../ i| \   二"   ,イ.:ト、
    /  i| ゙、\  ;   /リ.:;!:::\、_
       ゙!  ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
        ゙、      :::/::::::|::::::
    `ヽ、  ゙、     ./  .|  ,-、、


           ____
         ; /\ u./\ ;
  ガク ….  / ●   ●  \ .ガクガク.     本当ですかお?
      ;: |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ | {
        r'⌒) {  }  (´ jイ ;          (なんか、この人の前に来るとお尻がヒュッとするお)
        | ´   ̄  ヽ  |


.


220 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:17:11 MuxeJ07Q0


            ___ _
         -‐''"´ ̄ `  `''ヽ=、     本当だとも。
     ,.‐''"´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   r(:::::::::::::::::,、_ィ::::::::::::::::::::::::::::::::::     そうだ、もうひとつ教えておいてやろう。
   ゞ, rr~ヅ   ミ:::::::::::::::::::::::::::::::::
    フハ       ミ::::::::::::::::::::::::::::::    このどろどろになった天草を布で濾して、
.    l __,,. -─¬,〈::::::::::::::::::::::::::::::
     〉゙゙`'''Tjフ ̄   ヽ::::::,ィ ,、ヽ:::::::    しばらく置いておくと自然に固まる。
.    /   ,.‐'"      }:::/ /ヽ ハ:::::::
    /..             "´ 2ノ/ l:::::          トコロテン
.   ヽ.ニ,`           __/ :l::::     こいつが心太だ。
.     'ーr_‐;ァ       ィ    l:::
      〈..        /:{      ヽ    寒天は、この心太を寒空に干して乾燥させたものなのさ。
        `}     /:: ! i
        丶、,、. イ::::::    !        『寒晒しのところてん』だから、寒天っていうのさ。


.


221 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:17:41 MuxeJ07Q0

                  □
                ┌─┐
                └─┘
               ┌───┐
               └───┘
                    ┌─────┐
                  ┌┼─────┼──┐
                  │└─────┘    │
              ┌─┼─────────┼───┐
              │  └─────────┘      │
              │                        │
              └───────────────┘


222 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:18:19 MuxeJ07Q0


         ___
       /       \
      /          \      (高和はんやったら、教えてくれはるやろか?)
    /   ノ  ヽ、_    \
    |   ( ●) (● ).     |    (寒天の味て、なんやろ?)
    \ l^l^ln__人__)     /
     /ヽ   L⌒ ´
        ゝ  ノ


       やる夫は首を振り振り、青物市場を抜けていった。


.


223 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:19:23 MuxeJ07Q0


    小商いの乾物商、鈴三屋は通い慣れた店だった。


     ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
    ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
   ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
  @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
      |             ┌─────────┐
      |    ┌──┐ │   鈴  三  屋   |
      |    │  干│ └─────────┘
      |    │乾  │  :========:.:========:
      |    │  物│  |i.     l||i.     l|
      |    │物  │  |i.     l||i.     l|
      |    └──┘  |i_____l||i_____l|
    /|              |┬┬┬┬||┬┬┬┬|
  /  |              |┼┼┼┼||┼┼┼┼|
      |_________________|┼┼┼┼||┼┼┼┼|_______
                   ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄


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224 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:20:03 MuxeJ07Q0


                    ∩_
                   〈〈〈 ヽ
           ____   〈⊃  }
          /⌒  ⌒\   |   |
        /( ●)  (●)\  !   !      ごめんやす、井川屋だす!
       / :::::⌒(__人__)⌒:::::\|   l
       |     |r┬-|       |  /      ご注文の寒天、お届けにあがりました!
       \     ` ー'´     //
       / __        /
       (___)      /

              ___
         . ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.`:..、
        ./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
        /:.:.:.:.:./:.:.: / ニニニ 、:.:.:.:ヽ
      ':.匸__7:.:.:.//:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\r‐ヘ
     i//{__!:.:.:.:!:.:ハ:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:|:. V!
      Ⅳ://:.|:.:.:.廾ト、\:.:、:.:.:./:.l:.K ヽ
     |:.〈_lf Y:.:ィ=tiト、\ ヾlXミ} Vイ:!:∨
     |:.:.:八_l:.: 迅リ    }lリ yイl_l:.:.|
     |:l:.l:.:.:.:|:.:.:.|     '   /:.:|:.:.|:.:|
     lハ:l:.:.从:.:.:|、   '^  イ:.:/j:./!:リ       ああ、そこ置いといて。
     | ヾト:.:.\{ 〕iト r<:./:./:.:イ ′
       _ .イ: \{    ∨/イ〕ト.
     /==ミト: : : :ヽ>==ミ : : : i:i: ハ
    ,   ヽ:ヾト : : ゚, .--ヘ: : :i:i: ! ゚,
    |    、∨∧: : :V   │: :i:i/ !
    |  _}_∨∧: : ゚,  j: :/iイ__{__
    |/: 厂`ヾ: :∧: : Vm レ |======}
    {: /レルヘ \i:≧斗 ´   |/ ̄「:ノ
    l//、  ´ ̄     /-- 、 !
      ̄ \       イ     |

      鈴三屋女将  ハルヒ


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225 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:20:44 MuxeJ07Q0


                  __ _
              . ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`:..、
             /:.:.:.:/ ニニニ \:.:.:.:.:.\
             /:.:.:/:.//:.:.:.:.:.:.:.:.:\}:.:.:._:_:.:.ヽ
           〃':.:.イ:.:.:.:/!:.:.、:.:.:.:.:.:}:.:.|:.:.:V \:.゚,
        ─/‐|:.〈_|:.:.`ト、 lハ{\:.:厶斗:.:.:.!  /:.:!  ──‐ミ
       {   ヽ|:.:l:.ハ:.:.:y=z  \´ィ==v:.:.: |卞 ヽ|´        ゚,
.        ゚,   Ⅵ:l_|:.:V'以     以リ|:.:.:.:| ) Ⅵ=/      }     井川屋さん、えらい商売繁盛らしいな。
        ヽ /: :==|:.:.{   '__     |:.:.:.:|ハ /: :!       ′
         /: /i/: :∧:.:\   `     ,l:.:.:.从'|: i:i: |    /      あの天下の『藤誠』はんにも
.         /: :.:/i/:/  \{: 〕ト    .イ/:.:.:/:/ |: i:i:∧  ,.イ
       ヽ:./i/イ  //i/:ヽ:/ } /:.イ:/{:/  Vi:ハ: :\' : i        品物を卸してるんやて?
        \{  ,:'/i/: :/ ̄` /: : : /i/: /  .ハヾi:トx : У
             ヽ {:i:i' : :′  /: : : /i/: /    \:_:_/
           }. Vi: : i   ./ : : イ /: イ       /
           | }ム: :|m/: :/イ/       /
           ! ヾハ.j ./: 彡.:/   、  /


              ____
             /_ノ  ヽ_\           へえ、ありがとさんでございます!
           /。(⌒) (⌒)。\
          /::::::⌒(__人__)⌒::::::\        せやけど私、丁稚ですさかいに
          |     ヽr┬-/     |
          \      `ー'´     /        あまりよう知らへんのだす。


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226 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:21:22 MuxeJ07Q0


                __ ___
           __ ィ:´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:...、
         ..:.:.:./:.:.:.:.`:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
       /:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:./ .二二二 \:.:.\
      ./:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:/:.:.:.:./ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:丶!:.:.:.:.ヽ
      /:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:/:.:.:.:.:′:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\〉:.∧
     ':.:.:.:.:.:.:.:.:. ィl}:.:.:.:.:.:|:..:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.ヽ:.:.:.
    i:.:.:.:.:.:.:./ 7:.:.:.:.:.i:{:.:.:.:.:.:!:.ト :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:|:.:. Y.:.:.
    |:.:.:.:.:.:〈   /|:.:.:.:.:.:l:.!ヽ:.:.:.|、| \:.:.:.:.:.:/:.}:.:.: |:.:.:i      さよか。
    }:.:.:.:.:.:.:.`X !:.:.:.:.:_l_|_\! \  ';.:.:.:.ムイ:.:.:ヌ|ヾ:|
    |:.:.i:.:.:.:.:///゙|:.:.:.:.:.:N  ` ー一 ∨/ ノ}:.イ.!:! !!     ほな、帰ったら旦那さんによう言うといて。
    |:.:.|:.:.:.///ヽ|:.:.:.:.:.:|          ==彳:.レ|:| ||
    l:.: !:.:〈/八 「|:.:.:.:.:.:|\==≠’   、   从:| |:| リ      ちょっと水臭いんちゃう、て。
    l:从:.:.:.〈/:.:.:.|:.:.:.:.:i:|  }    ___,  /:.l:.:| |:|
    ){ l:.:.i:.:.:.:.:从:.:.:.:.l《 乂___ (_V イ:.:.l:.リ |′      長い付き合いの鈴三屋差し置いて、
      x=ヘ:.ト :.:.:.:.厶:.:.:|       `ヽ /:.:.l:.:ノ:′
     ′   \\:.:.:!:ヽ:ト--z====ミ }ヘ:.:.:∧ \         『藤誠』ばっかり大事にせんといてほしいわ。
   /      ヽ: Ⅵ: : :\| |i:i:i:i:i:i:i:i:i:i〉:ヾ{:¦ ハ
   .′   、  }: :i:i:i: : : /ゝ-----く: :.:i:i: | '  i
   {      \ ゚,i:i:i: :./         V:i:i: l′.∧
   ゚,     丶 ヽ:i:i: :}          V//!  .∧


               ____
              /   u \
            /  \    /\           な、なんぞお気に障ることでも
           /  し (○)  (○) \
           | ∪    (__人__)  J |          ありましたやろか?
           \  u   `⌒´   /


.


227 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:22:05 MuxeJ07Q0


                 剣呑な気配を感じ取って、鈴三屋の主が口を挟む。


         /   /  .|  /j  ./    ∧ ハ.....:.:.:|:.:ヽ.:.:ヽ.:.:.:.:スゝ
         /   /  ,|  / |.:.:.:/|.:.:.:.:./ |.:.:| `、.:.:::|、:.:|.:.::.:.:|.:.:.:.:`、
         j   | .:.:/|.::/ |.:./ |.:.:.:/  |,.:|  `、:.:|ヽ:ハ.:.:.:.:|:.:.:.:::.:i
         ソ|  .|.:::/| |;/  .|/  |.:/   |.:|   `;;| リ `、::.:|::::ヘ:.:|
         | ..:|.:|/|.:|"ナ'''^-、,,,__ .|ソ    ,リ__,_,,,,、--''''ヽj:..:|::..:ハ:.|
         |...:.:.|.::::|.:.| ,_________ `'''' y   ''"___________  /.:,j.:.:.:| ツ
    .     |..::ri..:::ヽ;,|  弋ツヌヲ`      、 代ヤオソ  j.:.:.:/y.:|
          リ |ィ、.:.:.:|ツ ` ̄  ̄     ,    ̄  ̄´   |:.::/| ;ソ
           | f.`、::,|.          |         j.:.:/ソ          おい、ハルヒ。
           \ `、|.         .i,、        ,i.:.:/´
            ヽ-リト.         j ,゙       ,/.:/             そない小さい子ぉに
             `ッ、ヽ.        ´        //リ
              ,リ`、`l、.      ,....,_____     /;/              つっかかることないやろ。
                ツ,|` 、    `'''''''''''´   ,/リツ
                r''j  ` 、   "  ,/|-,
               ,| i,     ` 、___ ,/  .| |、
              /::|  `、          .j h`::、
            /::::::.|   `、_        ./  i::::`、
         ,,,_ー/:::::::::::::|    ∧___      /、   |:::::::` 、__
     ,,,ーー"´:::::/::::::::::::::::|   / ヽ  ̄'i  ノ | ヽ  |:::::::::::::`、`ヽ、,,,
-"'' ̄::"::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::.|  /,,ヽ  C | |´ j /`、 |::::::::::::::::\:::::::` ̄:゛゛```ーー、___
::::|::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::.:|/、;,;;;;;;;;ヽ  | j   /;;;;ツヽ|:::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::\

                   鈴三屋の主 キョン


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228 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 13:22:15 uIVU2cac0
途中で、つまみ食いしない、エライ子


229 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:22:39 MuxeJ07Q0


                  _,ィ'´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.``丶、
                /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、
              ,.イ´:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ、
              r'´.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.,イ:.,イ:../i:.:.l:.:.:ヽ:.:ヽ:.:.:.:.:.ヽ、   すまんなぁ。
             /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!/ !:./.|:./ |:./ !:.:..ハ:.:.,|:.:.:.:.ト-、ゝ
            ,イ.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:/ !ナ-、_レ'  |ノ レ'ヽ:.ノ!:.!    ウチのんが言うてるのは
              !:.:.:r‐i:.:.il:.:.:..!  こヒr`i`´  _ュ=-.,リ .リ
            |,イ !i^)レ'l:.:.:./    ´    l´ヒr /:.:.ノ     井川屋はんは店によって
            ! !:ヤヽ、.ヽ/         ヽ .l:.:./
              k.l,`-ァi           '´  /∨      卸す品を変えてはるんやないか、ちゅうことや。
               k_N.l      ー─‐-  /
              _,イj  ヽ          ./         上店には質のええもんを、
            /´r'´\   \.      /
        _,.ィ=''7´;;;;;;;|   \   `ー-ェ-‐'´           うちとこみたいな小さい店には
    _,.ィ='''´;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;!    \   ノ \
-‐'''"´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;:;:;:;:;:;:;:;:!    /トュ  ヤ Zト、           そこそこのもんを出してるんやないか、てな。
;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:く;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!  /\ヽ! ノ _,,>!.ヾ.、
;:;:;:;:ヾ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\:;:;:;:;:;:;:;ト、/ `ー-、>--'''7 ト、|;:;:;:〉;\
:;:;:;:;:;:;:!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/;:;:;:;:;:;:;:;:!    ヽ、_,__ノ |;:;:;:;く:;:;:;:;:;:\


             ____
            /ノ   ヽ、_\    r ⌒j
          /( ○)}liil{(○)\  /   /
         /    (__人__)   \/   /   /  )
        |     |i|||||||i|     /  /  /  /         そ、そないなこと、
        \     |ェェェェ|     /   '` ´  /
          r´  (⌒'ー―- イ′     ´廴          しとりません!!
         /    > 、     ヽ      _  ̄ ̄ ̄)
        /        -、      }        (  ̄¨´
       /           ヽ._       __  \
                    `   --‐'´ `゙' 、_.)


.


230 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:23:30 MuxeJ07Q0


             // /  / : / /. : : : : l : `ヽ  ヽ: : l: : : : : : : : : :ハ
            / :/ / / /l / l : : : : : l : : : lヽ  !: :! : : : : : :l : : : :l
.             / . :i: l / / !/!: : l : : : : : : ! : : : l: :∨ : ト、: : : : :l : : l: l
           / . : l: :l !/`ヽ! l: : :l : : : : . . .l: : : :l: : l : : ト、 ヽ、|: : : !: !   どうだか。
.           ′: : l: :l !:.:.:.:/厶.: :lヽ : : : : : l: :: : !: : !: : l | ト、   ヽ、 l: !
.           l /. : : l//l. Ⅳ  \! . \: : : :ト、:/. :.__i.:. l:.: lヽ\/ /: : :::!   だいたいアンタ、
         l ! : : : :/ : 八,..z=≠≫=- ≧' -‐ "´ : : :l : :_!: ヽ、`>. :!
         l l : : :/. :/: : ハ ¨弋ツ ¨    -ァ=≠ァ¬.:..:.l. }: : :∨ : : :j    『丁稚やからよう知りまへん』て
.           ! !: : :l :/: : : : :}.           弋ツ′ リ!: :!ノ.: /:/ : : :/
.           l l:: : レ'.:. :. .:.八' ' '    ′   , , ,.    j: 」 : /:/..: : /     言うたやないの。
        /⌒ヽl /イ:.: {:.:.:::              /:. ノ:./:/.: : :/
.         /      Vム.: : : \ >    ー‐(    ,../ /:./i/.⌒y/      アンタが知らんだけやないの?
       /       Vム.:. :. .:.\   ア=.-- 爪: : (´:. :/i/  ./}{
.      {.        Vム : : : : :.ヽ        /: : : :i.:.:.:/i/   {
        Λ.       Vム: : : : : : : `ヽ   /.: : : :.i:.:./i/    \


                ..---. ...
             , -‐.': :_: :---` ー-.、
          ーァ´:, ‐ -ァ: :7 ̄l:.ヽヽ‐..\
           //イ: : /: ./.:イ: }::. :}:.}:ヽ:、:ヽ、
          ノ.: .: ./: : lハ:AL_}:/ }::.ハハ::.:}:.ト_--
         ´ 7:::::_|::. : | '┬ォミー'jム_ム}::ハ:「`
           |:.:{ r|{:.. :l   ̄´  {エオハ.ハ{
          ハ:ヽvヘ:リ u       〉 |:/
           Vl:.:T     , ---,  ハ!
            }::ハ、  ( __/ , ′                  .ヤ
          /フ´{  \  - /           おい、ハルヒ、止めえ!
      _ .. イ:::::::{  \  ` ┬‐′
      :::::::|   l    \,_ / \
         }    ヽ   ∧ 〉ヽ 〈| \
         ーァ-‐ ヘ_/ヽ.>‐くトj、 ヽ\
         「     l ー ヽ:.__..ハ ∨  `ヽ、
         ヽ     l   }  l| ヽ    ヽ
           \   l   |:  l |   l     l
            \  l l:.  !|   |     |


.


231 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:24:45 MuxeJ07Q0


                 -─一 ¨ ̄ ̄ ̄`ヽ
              /      `ヽ  \ \  \
         _ イ ./ .|      \. \ \   、
.           / イ /  .! .!        、   、  ヽ |
.             / / / / .| .|  |  |.   ヘ  |  .i |
           / / /  |l | .|  |  |\  | .|  .| !             まあ丁稚のお前はんに言うても知らんやろけど、
.          /イ |∧.:|∨\{\{\|  \从リ  .|l八
           | ハ _リ\  、_ -‐一  |  |/⌒!:!|              なんや “ 伊豆の天草 ” ちゅうのがあるんやて?
            Ⅳ ルt vuj    ィT斗´   ! .! `7{/{
            | |   /          Ⅳ゛_j/∧!              伊豆の海で採れる天草を使うて寒天をこさえたら
            | |   〈       u ∨ //jУ
               j八   、         ∨/\               味も腰も今までのもんとは別もんやて。
             \         /|´| : : \
                   }\「二二>  ./::::.′: : : :.:.|` ー 、         『藤誠』はんでは、それを出してはるそうや。
             /: :./\ -  _/:::::. / .| : : : : 、: : : : :.>
           -  ´: : : / : : }`丁::::::::::. ′ !: : : :.:∧: : : : : : : \      そないなもんがあるて、私らぜんぜん知らなんだわ。
         /: : : : : : :.:./ : : / _{     _/  ..|: : : : : :.:〉: : : : : : : : :\
       /{: : : : : : :.:.:.〈: :: :/ / ヽ 厂}\  |: :: :: :/ : : : : : : : : :/ :
.       |: : : : : : : : :.:\∧/\ Y// \∧: :/ : : : : : : : : : :/ / :
       、: : : : : : .:/ : : 〈 〈 ̄¨〉´ /  |: :∨: : : : : : : : : : : : :/
      i: : : ,:.:.:.:./: : : : :.:.|\廴./ ∠_ .!: : :\: : : : : : : : : : : |
      |: : : ! : : ヽ: : : : : :.:| /し{     .|: : : : :.ヽ: : : : : : : : : :!
.      : : : | : : : : \: : : :.|./   |   (  .|: : : : : : } : : : : : : : : :|


                    ___
                   /_ノ  ヽ\
                 / (○) (○) \
               / u   (__人__)   \
               |     |i!i!i!i!|   u  |
               \  u  |;;;;;;;;;|    /        ええっ!?
                /    `⌒´    \
               (<<<)        (>>>)
                |、 i、       ,i  /
                ヽ_/       ヽ__/
                 |          |


.


232 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:25:34 MuxeJ07Q0


        / : : ; : : /_..-───- ._: :\
.      / : ; : :/: : /´ ______\: ヽ       『藤誠』はんとこに寒天卸してんのは
     /: : _/: :/: : 厶 '´: : : : : : : : : : : : : :`ヽ: ヘ
     /:/ ,.'7: : :/: : : :|: : : : : : : : : : : : : : : : ヘ: ',     お前はんとこやろ。
    /' , '/ i: : : :|: : : ∧ : : : : : : : : |: : : |: : : : i: |
.     ハ厶i. |: : : :|: :.|:.l ',: : | : : : : : |: : : レ': : :|: |     そんなええ寒天扱うてんのやったら
    |:.7 /トr|: : : :∟」_|  \|\ : : : | x'´ハ: : : ;' ハ
    |:.' /: | r{ : : : |: ∧「`ヽ、.___,.\: イ__V_,|: :rf:/| |    こっちにも回してくれたらええやないの、
    |:| |: :.| | |: : : :N 'Tに叮    ヾ hィ}r〈 { 'j.ト'|
    |:ヽ: :.| |、|: : : :|   ゞ-‐’       ̄´l | | l': :!    長い付き合いやのに。
    l: : : └ : ヘ: : :|、         '   ノ } リ : |
    ∨: : : : : :|ヘ: :.l \     r─ャ _.  '´   l: ,l: |    せやから、水臭い、いうのや。
   ,.、ヘ\ : : | ト: l  `   ._  ,r´       イ、 j/
  ,〈 ', ', ヽ: } | ヽ     / 「|    ィ ´|||',
  / ',. ', ',  V  |          ム -‐ ´ } ||| |


        / ̄ ̄ ̄ \
       ノし ゙\, .,、,/"u\        そ、それはちゃいます!
     / ⌒ (◎)ヾ'(◎)u \
      | u  ⌒゙(__人__)"⌒ u |      伊豆の寒天やら、
       \ u   `ヾ,┬、/` ,/
.       /⌒/^ヽ、 )__( ,ィヽ、        井川屋にはおまへん!
      /  ,ゞ ,ノ ゙⌒" ,  ゝ、
     l /  /      ト/.\\     ホンマのことだす!!


.


233 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:26:16 MuxeJ07Q0


              やる夫は、必死に訴える。


          ___
        /      \           井川屋の寒天は、
     ,---、 u.\    /\―、
     .l   l  (○)  (○) \ |       京は伏見の美濃志摩屋はんに
     |    |    (__人__)  u. | |
     .|   |.u  |!!il|!|!l|   / /      作ってもろてるもんだけだす!
      ゝ     |ェェェェ|   ノ
      \         /         そこの寒天場では、
       /          |
      /          |         丹後で採れた天草を使てます!



         ____
       /     \            美濃志摩屋の旦那さんが、
      / \   / \
    /  (●)i!i!(●)  \         若い衆を丹後まで走らせて
    |  u , (__人__)    |
    \    .`⌒´    〆ヽ       運ばしてはりました!
     /          ヾ_ノ
    /rー、           |        私も、そうやって運ばれてきた天草を
   /,ノヾ ,>         | /
   ヽヽ〆|         .|          洗う事から仕込まれたんだす!


.


234 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:29:10 MuxeJ07Q0


        ___
       /_ノ  ヽ\
     / (○) (○) \         せやから、伊豆の天草を使た寒天て、
   / u   (__人__)   \
   |     |i!i!i!i!|   u  |       美濃志摩屋はんでも作ってはらしまへんし、
   \  u  |;;;;;;;;;|    /
    /    `⌒´    \       井川屋でも扱うてまへん!
   (<<<)        (>>>)
    |、 i、       ,i  /       ホンマだす!
    ヽ_/       ヽ__/
     |          |


             ィi〔:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:..、
           /:.:.:.:.:./……─=ミ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
         ,厶ィ:.:.:.:/____ __ 、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
       / ,イ:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:゚,
       }___//:.:.:.:,:.:.:.{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: :.:.:.:.:.:.:. 「`   、:.ハ
       /:.く/:.:.:.:ィ:.:.:ハ:.:.:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.:.:.:.| 、   ヽ:.:.
     /:.:.:/:.:.:.:.:.|:.:/  !:.l:.:.:.:.: ト 、:.:.: |:.:|:.:.:.:.:.:.:.:リ \/.:.:.:.
     ,:.:.:./:1:.:.:.:.l`ト--}ハ:.:.: ┼‐ヘ‐┼:l:.:.:.:.:.:. |′ / {:.:.:.:.:i
    .:.:.:〈_|:.l:.:.:.::.N=ミ   \:.:|  }:./ |:.l:.:.:.:.:.|-イi「:| {:.:.:.:.:|     アンタ、天場に……
     i:.:/:.:くハ:.:.:. 芹スト      .ィ笊芥`V:.:.:.:.:.:j- ! !:.lィ:.:.:.:.:.|
     l:.:i:.:.:.:.:.:.:.\:{.匕リ       !ji刈 /:.:.:.:.:.Y  | |:.:}!:.:.:.:.:.|     天場に居ったんか?
     |/|:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:|          ゞ ン.':.:.:.:.:.:.:′ | |:.:ム:.:.:.:.:|
     | 、:.:.|!:.:.:.:.:八   ′       ,:.:.:.:.:.:.:ム イ:.!_!:.:.:.:.:.:.:.ハ
     {!  Ⅵi:.:.:.:.:.:.:.:丶  --     i:.:.:.:.:.:.:{=ォ:.:.:.:.:./:.:.:.:i:.:.}
    ゝ  乂:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.\      ィ|:.i:.:.:.:./У }:.:.:.:.':.:.:.:/|:.:′
         }i:.:.:.:.:ハ:.:.:.:个 ─<   :|:.|:.:.:.'.イ: : ,:.:.:./l:.:.:/ ,l/
         ゚,:./ィi〔 : : |: : : : :|   jハ:.:|: : : /:.:.イ:\:′
         /)/: : : : : : :!: : : : :!  /: V : :イ才: : : : :\
         イ: : : : : : : : :.|: : : : :| /: : : : : : /: : : : : : : : :\


                          リョン
                        ご寮さんの表情が変わる。



                                 【ご寮さん】大坂で商家の女将のこと
.


235 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:29:42 MuxeJ07Q0


         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ         へ、へえ……
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |
    \     ` ⌒r'.二ヽ<         (ちゅうてもひと月だけやけど……)
    /        i^Y゙ r─ ゝ、
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!


            __ . ‐───ミ
           ..:´   ‐─\:.:.:.:.:.:.:.:.:`:..、
          /:.:.:.:/     ___.\:.:\:.:.:.:.:.\
       /:.:.:.:.:./   ´:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:、:.:.:.:.:.:\
        /:.:.:.:.:.//:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ ---ヘ、
       ':.:.:.:i:.:.|":.:.:.:.:.:.:.:.:.:}:.:.:l:ト :.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ \/\       そうか…
     i:.ィ才:.:!:.:{:.:.:.:.:.:.: ハ从l  }\:.:.:.:.:|:.:.゚, ハ:.:.:..、
     / ' !:.:.!:ハ:.:.:.:.:./   ー──く:.:.:|:.:.:.:.V  \:.:ヽ    私の亡うなった父親も、
    .〈  /  |:.:.Nーヽ:.:/     'ィ必及 ∨ヽ:.:.:.゚, 、ヽ〉:.ハ
     ∨廴 イ:..{ 芹必ト     匕ツ  } .ハ:.:.:.:.ト . ヽ/l::i }   昔、伏見の天場で働いとったんや……
     | |l |:.:.ト.。 匕ツ         小:.|:.:.:.:.l:.:.∨| |::!
     | |l |:.::|:.∧     ′     .イ:.:.:.:|:.:.:.:从:.:.:.| リ     アンタ、そんな小さなナリで
     | |l |:.:.|:.:.込、   ` ー    .イ:.l:.:.--彳/: :/⌒〕iト
      ヽ.!_∧:.ヾ:.:.:.:.:.〕iト  --     V: : : /i:i/: :/         よう頑張らはったなあ……
        }  ヽ:.:.\:.:.:.:.:.:./}     /: : : /i:i/: : ′
           \:.:.:._:.//__ -/: : : /i:i/: : l
          x≦/ : : /---- y’: : :/i:i/: : : | /
         .イ:/i/ : : /── v': : : /i:i/ : : : 从{
          / |:{i:i: : : :{    /: : : /i:i/: : :/ ヽ


.


236 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:31:06 MuxeJ07Q0


                   鈴三屋が感じいった口調で言う。


                   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
                 /:::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::i::::i:::::::::::::::ヽ
              /::::::::::/:::::::::/::::::::,:::::,イ:::::|:::::!:::::i:::ヽ:::::ヽ
           /::::::::::/:::::::,.イ:::::::,ィ:::,イ::::::/!:::::|::::::!:::::!:::::::ヽ
           ,'::::::/::::!:::/,イ::/ .!/ .|::::/ |:::::ハ:::::!::::::!::::::::::i
            !::::::l::::::レ',! ー-、    !/  !::/ !::ハ:,イ:::::::::::|
             !::::_」:::::::::! ..,,_`ヽ、_,.   ,リ  ´ _,..,_ !::::::::ハj    店で扱うてるもんを、
          !/f r.|::::::::!  弋エノ`    `'ィニ二_ /:::::::::!
               k.ヤ!:::::::!           ゞzソ,. /::::∧::|      丁稚がそこまでちゃんと説明でけるとは
           |∧`Y::リ           i      //|/  ヾ
              !Tヾ  u.     j       //ノ         さすが、井川屋はんや。
             ヤ. ヽ.            ,.イ:/
              r<´|.  \     -.-   / |/           きょうび、奉公人を
             !  `丶、.  \   ー  /
           _/     `'-、. `'ー-r<´                そないな風に仕込む店はそうないで。
       , -'" `ヽ、      `ヽ、 f`, \
     , -'´    ヽ `ヽ、      >く_Lr'´`ト、            ええ店に奉公してるわ、お前はんは。
   /        ヽ  \  /ヽO〉 |`r、.| `丶、
  /           \  \/\r‐=<. !`    `ヽ,
  /    _ --‐     ヽ    ヾ   ! ヽ      i
 /   /            !     `トー〈   !    /  |


               __
           ,  <:.:.:.:.:.:>ー 、
         , <:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ーx:.:.:\
       /:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:`ヽ:.:.:.:ヽ:.:.:.ヽ
      ./:.:.:./:.:.:.:/:./:.:.:.:i:.:.:.:.:.:':.:.:.:.∧:.:.:.:.
     イ:.:.:./:.:.:.:.:}:.:.|:.:.:.: |:.:.:.:.i:.:.V:/:.:|:.:.:.:.:.
      |:.:.:.:|:.:.:.:./|:.:.|、:.:.:|、:.:.:.ゝ、|':.:.:.|:.:.:.:.:.iゝ
     ∧:.:.:|:.:.:./ |ハ:| \:.| \:.:|__V:.:.:|、:.:.:∧         お前はんみたいな丁稚を育てる店が、
     }:./:.:.|:._:.{   |_  >- へ!  ∨|ハ:. ∧
     |/V:.|∧T  ̄     .ォ=≠ミオV| }:.ハ{         そない殺生な商いをするわけがない。
     /  jハ|VVォた示     `¨゚´}:.:.|iイ/
       / V{:∧ `゚´  i     .∧:.|ハ{          いや、いらん因縁をつけてもうたな。
       .. ∧|:ハ.     ′  u /|V!:.Y!
          Vへゝ、  ー-  / .|/Vイ           済まなんだ、この通りや。
          .  ヾ:>-.、_/  |!
              Y{l       K\            この話、どうか忘れてんか。
          , <|. \   /  {:.:\
        /-‐ ´:/:.:.:.:}   _ヽrく  ./l:.:.:.:.{`ー- ..
       .ハ:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.} /| Y ハ //:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.
     ..: /:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.ⅣV!ハ/∧ /.}:.:.:.:.:.:V:.:.:.i:.:.:.:.:.
    ..,イ:.!:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.;イ  |:::::::::〉 ' |:.:.:.:.:.:.:.∨:.|:.:.:.:.:


                       主人は深々と頭を下げる。


.


237 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:31:37 MuxeJ07Q0


       大の大人に頭を下げられて、やる夫がうろたえる。


            ___
       /      \
      /ノ  \   u. \         い、いえ、すんまへん、
    / (●)  (●)    \
     |   (__人__)    u.   |        生意気な事言うて……
     \ u.` ⌒´       /
    ノ            \        ほ、ほな、失礼します……
  /´               ヽ


      井川屋へと戻ったやる夫は、鈴三屋との約束通り、

          この一件を誰にも洩らさなかった。


.


238 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:32:09 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


239 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:32:57 MuxeJ07Q0


        事が起こったのは、大暑の翌日であった。


                        ∧
                     , -/ ',-、
                     / /  ', \
  .               ∧  /   ゝ==ィ   ',  ∧
               | ヽ__i __: :___  i__/ |
    _____       ヽ i .i |`--'i i`--´| i. i /
  /      / : : \   ≧ィ |  ̄ ̄. . ̄  | .i≦             / ̄
  .      // : : : :::\  / ̄∧_  : :    ∧ ̄ ',        /
        / : : : : : : ::::::\i   i   `ヽ .::    /i::.  .:ヽ        /
        . : : : : : : :::::::::::|   |   У_::___/  .i:.     ̄ ̄ ̄ ̄|
        . : : : /  ̄  ̄   ノ   ハ__i   ヽヽ           i
      . : ::::::/      .ゝ-i    lリ  ヽ、  ', `ヽ           i
      . : : :::/  ,、   `ヽ i   レ' , ' ,´ハ    ハ.        i
        .::/    };;ヽ ハ_ 彡ヽ   ヾ ノ /;;{  ',    i         .i
       .:/   ノ;;;;;;i_i  __レ,  i∠_ノ;;;;;ヽ ヽ  /         .i
     .::/    /;;;;;;;;;ヽ /;;;;;;;;;;;i  i /;;;;;;;;;;;;',  ヽ ,'        i
            !;;;;;;;;;;;;;} i;;;;;;;;;;;;;;;i / i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i  У           l
  .          \;;;;/ |;;;;;;;;;;;;;;;У. \;;;;;;;;;/              !
      i      /‐--,\;;;;;;;;;/ 、‐--\               !


  乾物商 松葉屋の主人がむっとした表情で井川屋にやって来た。


.


240 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:33:25 MuxeJ07Q0


                   番頭のいく夫が駆けよって挨拶する。


             _____
           /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
            |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
            |::::::::/ ⌒  ⌒ |
           |:::::::〉 ( ●) (●)|      これはこれは、
           (@ ::::⌒(__人__)⌒)
            | .u   |r┬-|  |      松葉屋の大旦那さん、ようお越しで。
            \    `ー'´ /
        ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.     さ、お座布団でもあてておくれやす。
        :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
            |  \/゙(__)\,|  i |
            >   ヽ. ハ  |   ||


                ___  ト、
  {、 __     . -‐ニ二二  三‐- ` ̄ >'  ̄ ̄ヽァ
  `ヽ ニ =≦_.   _ . -‐ ´∧ 三ニ/     / i、
       ..-`‐== .__/| . . /: .    /    ! ヽ          この暑いのに、
    . ´ , =ニ三ニ     .|  \i: : : .   i   ,'   !   / !
  /   _ -‐三‐‐== '´/\   ヽ : .     。‐。'   i./  /      座布団なんぞ要りますかいな。
  {  , ´      _ ̄`/  / i: :\ __ノ __ 。 。___ !  /
  }/   ヾー=三_彡'´   /  \: :i: :. /`ー'/ ./ /―'//‐ ´        それより、ダディはんを
      > ´  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ > \:_:_ ̄ ̄。/。  ̄ ' \
     / . : .       /    \ .〉 。/。  /: .   ヽ       ここへ呼んでもらいまひょか。
    /  . : : : : .               ∨== 、 /`ー=- 、 i
  / . : : : : : : : : .                ー=、 ヾ、\  <`│


       いつもはいかにも大店の主人らしく鷹揚な松葉屋が、不機嫌な表情を隠そうともしない。


.


241 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:33:58 MuxeJ07Q0


               間の悪いことに、ダディは店を空けていた。

                   いく夫は両手をついて詫びる。


       _____
      /:::::::::::::::::::::::::::.\
      |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
      | ノ   \  i:::::::|
      |(─) (─ ) 〈::::::|         ホンマ申し訳ございまへん。
     (⌒(__人__)⌒:::: @)
      |  |r┬-|  u  |         店主はあいにく、店を空けております。
      \ `ー'´    /
     ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
    イ / |.!、 _____ / ノ |   i
    | i  |,/(__)ヽ/   |   l


      /:::::::::\____ /    l
       /:::::::::::...    o  /   /
    ∧ .i:::::::..         o i    /、.   ∧
    i ヽ:::..        o `‐‐ ´o \/ i
    |   \   ___ o   o__',  |         はっ、さよか。
    |    ii   i:::ヽ__/i   i、_/i |  .!
   ∧     ||   |:::::::::::::::::i   |::::::::::| | /          さては『藤誠』にべんちゃらでも
.  /  \  /     ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ | /
 ̄\  ! ∨::::.         o   o     レ \         並べに行かはったんかいな。
    \ i \:::..        o   o   ∧   ヽ
     / ヽ  ヽ:::..           / ハ   〉 ̄ \
   /    リ\::::..           / / リ  /      \´ ̄
  /  /   ,'  \::..       /     / /         \
                                         【べんちゃら】お世辞



.


242 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:34:25 MuxeJ07Q0


               主はまさに、その藤誠に呼ばれて出ていた。

               それを気取られぬよう、番頭は話を続ける。


                _____
           ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
           ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
           ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|      大旦那さん、
              |:::::::〉 ( ○) (○)|
           .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)     番頭の私がご用の向きを伺わせて頂いても
              |  u   |r┬-|  |
              \    `ー'´ /      宜しゅうございますか?
           ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
           :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
              |  \/゙(__)\,|  i |
              >   ヽ. ハ  |   ||


                          ト、
              ,-、            ! ',
             /   \_∧__     /  ',
            /    ´  / i   \__/   !
            |      /   i   ・\   /
            | /   ,'    i    ・\/
            | /   i   ト、  ____ i
   _________レ   /i   │〉 |::::`‐‐| |          いや、
 /::: : : : : : : . .     ̄ \__i_//.   ̄ ̄ |
'´::::: : : : : : : : : . . .        \   ̄ ̄ ̄i   :|          あんさんでは埒が明かしまへん。
::::::::::: : : : : : : : : : . .        \    i-、__/-'ヽハ
::::::::::::::::: : : : : : : : : . . .        \   i   \‐-、`ー'ノ
::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : . . .       \ i_    ゝ \ノ
:::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : . . .             \   \  `ヽ,
:::::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : : . . .          \        )、
::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\. .         i  \   / ノ


                        しかし松葉屋はにべもない。


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243 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:34:55 MuxeJ07Q0


                _____
              /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
               |.::::γ⌒ Y ⌒ヽ::::::|
               |::::/ ⌒  ⌒  |:::|
              |:::〉 (○) (○) 〈:::|       でしたら、主、ダディが戻り次第、
              (@ ⌒(__人__)⌒ @)
               | .u |r┬-|   |        お店のほうへ伺わせて頂きます。
               \  `ー'´  /
           ,,.....イ.ヽヽ、___ーーノ゙-、.
           :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
               |  \/゙(__)\,|  i |
               >   ヽ. ハ  |   ||


                           ∧
                            /
                , ――、‐、    /  i
                 /       ̄ ̄ /    !.    ト、
             /       c i   / \  i
              ト  /:.        c ゝ--' c   _ヽ'   i
              | ∨::::..     /  ̄ \.   /ノ! i  !       ふん……
              |  \::_..   i::: ー‐‐'::!  ! !´::::|│
              l      ヽ  l::::::::::::::::::|  i |::/ !. /        ほんなら、
           ' ,    |     ̄ ̄ ̄ c ! c    i/ ____
              \   |___      c l c   i/   i i
     \      i> ´  i i      c c   /ー=ミ、 ! !―‐'
        \    /: : : .   | |___         /    `く ! !:.:.:.:.:
         \ i: : : : : .   | |    `ヽ.     /    .ゝУ ! !: : : :
            \:: : : : : .   | |     ハ---イ、   ヽ `ヽ


                 と、松葉屋が口を開きかけたまさにその時。


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244 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:35:24 MuxeJ07Q0


              暖簾をくぐって、藤誠の手代が現れた。


  __ /.:-.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:i.:.:.:.:_,,.:.:..:.:.:.:.:.:`ヽ
  ヽニ.:.:.:.:.:.:.:.:フ.:.:.:.:,_,_,,,_`yi/,_,,_,,,、_.:.:.:.:.:.:.:.:|
  ,,,>ー/.:.:.::/.:.:|~^`   `^~'´ ´ `~^|.:.::.:.:.:|
  ー- /_,.ィ´:.:.::|   ___,,   、_    ト、.:.:.::|、
  ;;;;;;;;;;''´ /,.:.:.:.::| r=‐''"'ヽ   `ン==、_.|::ヽ:.:.:ト
      ソ,rイ ,ェ| ,ィ‐=、    ;´r=-、 レ、;ィ|`i
     _,, r'´i|r;;;|       i      ト´.|       井川屋はん、ごめんやす。
   /    \{:| ..::::::...  ::|  ..::::::... .レ'/
  /       `ヽ          ./~         藤誠だす。
  ー,  __.     ヽ   ー --‐  ./
   ト'´ `''、_    `i 、     , イ
  i :i  ./   `''、_..r'|. ヽ、_,, ' .ト、
  i  i  /    / / `-、_  .__ /r |‐、
  :i  i ./   / /   / .V´、   / `i、
  :`  /   /   /i  / ~ー‐'ヽ  /   i ヽ、


               蒸し暑い店内の空気が凍りつく。


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245 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:35:57 MuxeJ07Q0


.   /:::_ /:::::::::::\:::::|:::::/::イ/   Z/⌒ :::::|
  // /:::::::::::::ハベⅣレ'^       ミ=-:::::::::|         おたくの旦那さん、
     /::::::::::::厂       ,ィ≦≠  ミヽ:::::::::ア
   / :::::::::::::|         〃 ,,_   ∨⌒V ´ ̄`ヽ     うちとこの主との話が弾んでおりましてな。
  <._::_;::::::::ハ -≠=- 、     '/托い    ∨^ l /こヽ│
      / ::::/| :',  /゙赱ハ    ¨¨     .!ハ | {(とノ)|     ちょっと帰りが遅くなる、いうことで。
.     |:::::/: |::∧  '¨  |          |ノ | `ー‐  |
.     l/  |/:::ヘ    |          |ィハ    ヘ    ほな、わたしはこれで。
         ∨  `、   \ r        ,∨ {     \
              ヽ      _, ィ1  / :|  ヽ    ___ヽ    _
             \ -<-‐~ / /  |_   }/´    ̄ ̄ ̄ \
               ヽ、  ̄ ̄ /'  /ヽ /            ヽ
                 `ト--‐< /_/   {
                    /| r< ̄      人_,,,  -―――――
                   / ∧ |   \    / {


               言うだけ言って、手代はさっと引き上げていく。


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246 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:37:20 MuxeJ07Q0


             いく夫は空気を変えようと口を開くが、言葉が出てこない。


                 _____
            ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
            ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
            ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|
               |:::::::〉 ( ○) (○)|
            .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)       あ、あの…………
                |  u   |r┬-|  |
                \    `ー'´ /
            ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
            :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
                |  \/゙(__)\,|  i |
                >   ヽ. ハ  |   ||


                     _/ ̄ヽ
                  ト-´-、     i‐‐'i
           ______r'  ̄ヽ‐'―‐、‐ '´`ヽ  ____
          / ヽ     ヽ         ヽ   i/   ヽ  ヽ
        /    ' ,      .  ' ,    i!  人    i
         i        .    iヽ、 `ヽ   i! /   iヽ.  l    i
         /  ̄ ̄ヽ i.     iヽ.\ i}   }ミ、  i i  |    !
        /  /   .i. !    | i /У、 /  ヾ i  !  .!     !
        i /    ./! i    | ヽ{  }ノ、 〃}/   l  ,'    /      ダディはんが戻らはっても、
        〉´  /  .! l     |      У     /     /.
        i     / ヽ ! l     |      i : .    /    ./ i      わざわざ松葉屋へお運び頂かんで結構。
        |   /   ! l     !       l : : .   /        .i
      /         /  !   /         ! : : : . /   /   │      もう、話すこともおまへん。
       i    _ ∧ _/__          i : : : : / /: .   __i
     /ヽ _////〉 ヽ,___/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ/ ヽ __i///i      取り引きも、これで仕舞い、ということに
    ////// /////i.  { ____/  ̄ ̄ ̄ ̄ヽ/   i////i///ii
    i///// //////   ヽ. ___/ 二二二ヽi     i////i///ii     してもらいましょ。
    |//// //////   ∠ ____ /: : : : : : :ヽニヽ  .!////`―' !
    |//// `―' /   / 7 7 7 7 i.:.: : : : : : : : : : : : ', . ∨///////
    | ////////    / 7 7 7 7 /: : : : : : : : : : : : :/ i i  .!//////
    | //////    / 7 7 7 7 /、 : : : : : : : : : : : /  i i   !/////
    /  ̄! ̄i    ./ 7 7 7 7 /: . \: : : : : : :.:./    ! ! / ̄ ̄i
   .i   i /、   / 7 7 7 7 /: : .  \: : : /       i i i¨i¨i7 !
    ヽ  ! .i i  ./ 7 7 7 7 /: .      i ̄ヽ      i/ ヽi__!ヽ/
     `ー='´  ∨7 7 7/: .        i : : : .     i     ̄
           ∨7/: .       /   ! : : : : .      i


                       そう言うと、松葉屋は背を向ける。


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247 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:37:45 MuxeJ07Q0


        いく夫は松葉屋の前へと回り込み、手をついて頭を下げる。


          _____
        /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ        ま、待っとくれやす!
         |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
         |::::::::ゝ :::::\:::/ |        いったい、どういうわけでおますのやろ!?
        |::::::(  。<一>:::::<ー>
        (@ :.::: 。゚~(__人__)~゚j       私どもになんぞ落ち度がおましたのなら
         | 、 u ;゜.` ⌒´,;/゜
        / ゚:j⌒ヽ゚  '"'"´(;゚       重々お詫び申します。
       / ,_ \ \/\ \
       と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;      どうぞ、わけを、わけを教えておくれやす!


                      ∧
                   , -/ ',-、
                   / /  ', \
.               ∧  /   ゝ==ィ   ',  ∧
             | ヽ__i __: :___  i__/ |
  _____       ヽ i .i |`--'i i`--´| i. i /
/      / : : \   ≧ィ |  ̄ ̄. . ̄  | .i≦             / ̄
.      // : : : :::\  / ̄∧_  : :    ∧ ̄ ',        /      ……井川屋はん、
      / : : : : : : ::::::\i   i   `ヽ .::    /i::.  .:ヽ        /
      . : : : : : : :::::::::::|   |   У_::___/  .i:.     ̄ ̄ ̄ ̄|       あんさんとこでは、藤誠に卸す寒天と
      . : : : /  ̄  ̄   ノ   ハ__i   ヽヽ           i
    . : ::::::/      .ゝ-i    lリ  ヽ、  ', `ヽ           i       他に卸す寒天とで、
    . : : :::/  ,、   `ヽ i   レ' , ' ,´ハ    ハ.        i
      .::/    };;ヽ ハ_ 彡ヽ   ヾ ノ /;;{  ',    i         .i       中身を分けてはるんやてなあ。
     .:/   ノ;;;;;;i_i  __レ,  i∠_ノ;;;;;ヽ ヽ  /         .i
   .::/    /;;;;;;;;;ヽ /;;;;;;;;;;;i  i /;;;;;;;;;;;;',  ヽ ,'        i
          !;;;;;;;;;;;;;} i;;;;;;;;;;;;;;;i / i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i  У           l
.          \;;;;/ |;;;;;;;;;;;;;;;У. \;;;;;;;;;/              !
    i      /‐--,\;;;;;;;;;/ 、‐--\               !


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248 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:38:12 MuxeJ07Q0


               いく夫はぽかんとした顔で松葉屋を見上げる。

              思いがけない物言いに、内容が理解できなかった。


               _____
          ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
          ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
          ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|
             |:::::::〉 ( ○) (○)|       …は?
          .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)
              |  u   |r┬-|  |       それはいったいなんの……
              \    `ー'´ /
          ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
          :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
             |  \/゙(__)\,|  i |
             >   ヽ. ハ  |   ||


                ,イ
               / i
            ,' . :',
             i/  ̄ ̄ ̄\    ハ
      ト、     /   . . : : : : : : :ヽ__/. :i          商人にとって、一番大事なんは信用 ―
      ! \__i   . . . : : : : : : : :i i . : /
      ヽ   . : i i . . : : : : :_:_:_:_:.:.l l_/           そんな当たり前のことさえ守れんのなら、
        \ . : l l. : : : : :/!  ヽヽ ̄ ̄ ̄',ミ
    ー=彡〉‐ '  ̄ ̄ ̄i  i    ! \ . : ::', }.        暖簾は下ろさはった方がよろしおます。
     ∠ i´     . : : : ::/          \ : : 〉´--
     У_|__ . . : : : : ハ    i         \__,: : :     主にそう言うときなはれ。
     /    ̄ \: : i  !  /     \     ン: : :
     i     . . : : :: ̄У   ハ     \    ヽ: :
     |    . . : : : : : : : i    i       ヽ   リ:


                そう言い捨てると、松葉屋は乱暴に暖簾を捲って出て行った。


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249 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:38:47 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
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                             ┃
                                ・
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                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


250 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:39:24 MuxeJ07Q0


       上機嫌のダディが店に戻ってきたのは夜更けになってからだった。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\            いく夫、喜んでや。
  .   |(●),   、(●)、.:| +
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|            藤誠の旦那さんに、
  .   |   ´トェェェイ`  .::::::| +
     \  |,r-r-|  .::::/     +      ウチの寒天をえろう褒めていただいたんや
  ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(     来月からは、また大きな商いになりそうや!
     |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


         _____
       /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
        |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
        |::::::::ゝ ―  ― |
       |::::::( ( ○) (○)|
       (@  ::::  (__人__) )        …………
        |.  ∪  `⌒´  |
        \     u   /
     ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
         |  \/゙(__)\,|  i


.


251 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:39:56 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|       どないしたんや、いく夫。
   .   |   ´トェェェイ`  .::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/       『天下の藤誠』やー、言うて
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      喜んでたやないか。
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


         :    :
        :/ ⌒`"⌒`ヽ、:
      :/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\:         旦那さん、
      /,//:::::::::::::::::::::::::::::::::\:
     :;/⌒'":::..:::::::::::::::::::::::::::::::::|⌒ヽ:     申し訳ございまへん!
   : /  /、:::::..:::::::::::::::::::::::::::::/ヽ_ \:
  __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、:::::::/⌒`ー'⌒  )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"━━


             いく夫が畳に額を擦り付ける。


.


252 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:40:30 MuxeJ07Q0


         _____
       /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
       |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
       |::::::::ゝ :::::\:::/ |        松葉屋はんに……
       |::::::(  。<一>:::::<ー>
       (@ :.::: 。゚~(__人__)~゚j       松葉屋はんに取引きを
        | 、 u ;゜.` ⌒´,;/゜
       / ゚:j⌒ヽ゚  '"'"´(;゚        切られてまいましてん…!
      / ,_ \ \/\ \
      と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;


         /\___/ヽ
        / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
     .   |(○),   、(○)、 :|
       | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
     .   |.u   (^・^>  。.:::::::|        な、なんやて!
        \ ゚  ⌒´ u .::::/
     ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       そ、そら、どういうこっちゃ!
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
         |  \/゙(__)\,|  i |
         >   ヽ. ハ  |   ||


.


253 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:41:03 MuxeJ07Q0


          _____
        /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
         |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
         |::::::::ゝ :::::\:::/ |       きょ、今日、旦那さんが藤誠に行かれてるとき、
        |::::::(  。<一>:::::<ー>
        (@ :.::: 。゚~(__人__)~゚j      松葉屋の大旦那さんが店にお出でになって、
         | 、 u ;゜.` ⌒´,;/゜
        / ゚:j⌒ヽ゚  '"'"´(;゚       「取り引きもこれで仕舞いや」言うて……
       / ,_ \ \/\ \
       と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;


        /\___/ヽ
       /''''''   '''''':::::::\
    .   |(○),   、(○)、.:|        な、なんでや!
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
    .   |   ,rエエェ、  .::::::|        なんで、そないなことに!
       \  ヽr-rヲ .:::::/
    ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、        なんぞ、松葉屋はんの
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |       機嫌を損ねることでもあったんか!?
        >   ヽ. ハ  |   ||


.


254 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:41:48 MuxeJ07Q0


         :    :
        :/ ⌒`"⌒`ヽ、:
      :/,, / ̄ ̄ ̄ ̄\:           そ、それが皆目見当が……
      /,//:::::::::::::::::::::::::::::::::\:
     :;/⌒'":::..:::::::::::::::::::::::::::::::::|⌒ヽ:       すんまへん、ホンマすんまへん…!
   : /  /、:::::..:::::::::::::::::::::::::::::/ヽ_ \:
  __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、:::::::/⌒`ー'⌒  )
━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"━━


         /\___/ヽ
        /''''''   '''''':::::::\
     .   |(●),    、(●)、.:|
       |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|         と、ともかく、どなんぞせんならん。
     .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
        \  `ニニ´ .u ::/         いく夫、奉公人みんな起こしてこい。
     ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i        誰ぞなんぞ知っとるかもしれん。
         |  \/゙(__)\,|  i |
         >   ヽ. ハ  |   ||


.


255 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:42:08 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


256 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:42:40 MuxeJ07Q0


     いく夫はダディに言われた通り、奉公人を呼び集めた。


          ___                    ____
         / ヽ '' ノ\                 /_) (_\
       / ( ○ ) (◯ )\             / 【○】| |【○】 \
     /;:::::⌒,   ゝ⌒:::::\          /    ._| |_,   u. \
     | ;  .u  ト==ィ'     |          |     \/      |
     \     `ー'    /          \     -==-      /


          __
         /ノ ヽ\
       /.(○)(○)\                  ____
       |. u. (__人__) |                /      \
      . |        |               /           \
        |        |              /   _ノ ::::::: ゝ、  \
      .  ヽ      ノ             |   (○)  (○)  u |
         ヽ     /              \   (__人__)   ,/
         /    ヽ              /    `⌒´    \
         |     |
         |    .   |


.


257 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:43:03 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\        皆、大体のところは知っとるな?
   .   |(●),    、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|        どんな小さいことでも構わん、
   .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
      \  `ニニ´ .u ::/        なんぞ知っとることや、
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       気のついたことはないか?
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


         _____
    ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
    ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|         みんな後生や、
       |:::::::〉 ( ○) (○)|
    .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)        井川屋存亡の危機なんや。
        |  u   |r┬-|  |
        \    `ー'´ /         なんぞ気のついたことは
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i        なんでも言うてくれ!
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


258 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:43:25 MuxeJ07Q0


       ____
     /_) (_\
   / 【○】| |【○】 \       い、いや、
  /    ._| |_,     \
  |     \/      |     そない言われたかて……
  \     -==-      /


       ___
     / ヽ '' ノ\
    / ( ○ ) (◯ )\        私ら、その時分は
  /;:::::⌒,   ゝ⌒:::::
  | ;     ト==ィ'     |      使いに出てましたさかい……
  \     `ー'    /


.


259 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:43:59 MuxeJ07Q0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),    、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|        やらない夫、
  .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
     \  `ニニ´ .u ::/        お前はんは店におったんやろ?
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       なんぞ気ぃ付いたことないか?
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


      / ̄ ̄\
     /  u  ノ \          い、いや、
     |    .u ( ●) |
.     |      (__人_)         松葉屋の大旦那さん、
     |      ` ⌒ノ
      |        }          店に入ってきはった時から
      ヽ u      }
       ヽ     ノ           えらい不機嫌やな、としか……
      ノ     \
     /´        ヽ


.


260 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:44:26 MuxeJ07Q0


       / ̄ ̄ ヽ
      /      ヽ
     /        ヽ          あ、そない言われたら、
     |     _,.ノ '(ゞ、_|
     .|    ( ー)ヽ ヽ          たしか藤誠はんのお使いが来られた後に
     .ノ| U   (___人_\\__
   /  |     `⌒(⌒_   \      一気にお怒りが増したような……
   {   .ヽ.       し「、    \
   {   ト `ヽ. ___´ノ  ヽ、    i
   .|   |       |  /   /


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   ,rエエェ、  .::::::|
     \  ヽr-rヲ .:::::/        藤誠はん?
  ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


261 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:44:56 MuxeJ07Q0


       / ̄ ̄\
      /   _,.ノ  ヽ、_
      |    ( ○) (○)        へ、へえ…
     | U  (___人__)
      .|       __ノ__        あ、あと番頭はん、松葉屋はん帰り際に
      |     _/ ___\ヽ_
       、    '-/____ヽ  |      なんや妙な事言うてはりませんでした?
       ノ 、 ._'-〈  、ヽ  |          チャ
      ,´         ヽノ}   |     寒天が違うとか、なんとか……
     /          {   /
    ./  /       /   {


        _____
      /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
      |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
      |::::::::/ \:三::/i:::|        せ、せやった!
      |:::::::〉( ○)::( ○).|
     .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       旦那さん、すんまへん!
      |  u   |i|!i|!|  |
      \    `⌒´ ,/        すっかり忘れてましたわ!
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


262 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:45:27 MuxeJ07Q0


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ        松葉屋の大旦那さん、
     |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
     |::::::::/ \::::::::/i:::|        ウチが藤誠と他とで
     |:::::::〉( ●)::( ●).|
    .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)        卸す寒天を分けてる、言うてはったんですわ!
      |      ` ⌒´  |
     \         ,/        何を阿呆な事を、思うて、
  ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      気にも留めてなかったんですが、
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||     確かにやらない夫の言う通り、これは妙ですわ!


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|        ふうむ、多分それやな。
      \  `ニニ´  .:::::/ 
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       松葉屋はん、それで怒ってはったんや。
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


263 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:46:07 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|       それにしても、どういうことや?
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   ,rエエェ、  .::::::|       あの松葉屋はんが、
      \  ヽr-rヲ .:::::/
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、      つまらん言いがかりをつけてはるとも
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |     思われへんしなぁ……
       >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       /   u \
      /  /    \\       (どないしよ……)
    /  し (○)  (○) \
    | ∪    (__人__)  J |      (鈴三屋はんで聞いた話のことや……)
    \  u   `⌒´   /


                やる夫は気が気ではなかった。

            己が交わした鈴三屋との約束が頭をよぎる。


.


264 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:46:44 MuxeJ07Q0


    途端に挙動があやしくなった丁稚にダディが目をとめる。


       /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|        やる夫、どないした?
   .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/        お前はん、なんぞ知ってなはるんか?
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


          ____
        /   u \
       /  \    /\         …………
     /  し (>)  (<) \
     | ∪    (__人__)  J |
     \  u   `⌒´   /


               しかし、ぐっと唇を結ぶ。

          脳裏には丁稚の自分に深々と頭を下げた

             鈴三屋の主の姿が浮かんでいた。


.


265 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:47:11 MuxeJ07Q0


            __
            /ノ ヽ\
          /(○)(○) \
          | (__人__) u|
         |        |
     .    |        |       (お、おい、やる夫)
     .    ヽ      /
           ヽ    /
            /    ヽ
            |      |
            |      |


              ____
            /   u \
           /  \    /\
         /  し (>)  (<) \     …………
          | ∪    (__人__)  J |
         \  u   `⌒´   /


  隣りに座っているやらない夫が、肘でやる夫の脇腹をつつくが

     やる夫は表情を変えず、口をつぐんだままだった。


.


266 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:47:47 MuxeJ07Q0


             いく夫が忌々しげに叱る。


        _____
   ; /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    ; |.::::γ⌒ Yノ( ヽ::::::| ;
    ; |::::/  _ノ三ヽ、  |:::| ;
   ; |:ノ(( 。 )三( ゚ )u::| ;      何を黙りこくってるんや!
   ; (@ ⌒(__人__)⌒ @) ;
    ; | u  |++++| ノ( | ;      ちゃっちゃと答えなはれ!!
    ; \   ` ⌒´⌒ / ;
    ; /           \ ;


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|       まあ待て、いく夫。
     \  `ニニ´  .:::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


267 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:48:12 MuxeJ07Q0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\      ええか、やる夫。
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|     商人にとって一番大事なんは、信用や。
  .   |   ,rエエェ、  .::::::|
     \  ヽr-rヲ .:::::/      お前はんが知ってるんは、
  ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     この井川屋の信用に係わることかも知れん。
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||    話してんか。


         ____
       /   u \
      /  \    /\
    /  し (○)  (○) \   ……
    | ∪    (__人__)  J |
    \  u   `⌒´   /


         主の言葉に、やる夫は意を決したように顔を上げる。


.


268 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:48:43 MuxeJ07Q0


      ____
     /     \        じ、実はこないだ鈴三屋はんにお使いに行った時に
   / \:::::::::::/ \
  /  (●):::::(●)  \     同じことを言うてはったんだす。
  |     (__人__) u   |
  \  . |┬-r|    /     ウチが藤誠はんに
   /   `ー´9mー )
          `ーー‐'゙      伊豆の天草から作った寒天を卸してる、て。


          ____
        /      \
      /           \      私が、伊豆の寒天やら井川屋にはない、て言うたら
     /   _ノ ::::::: ゝ、  \
     |   (○)  (○)  u |     鈴三屋はんはわかってくれはったんですけど…
     \   (__人__)   ,/
     /    `⌒´    \


.


269 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:50:34 MuxeJ07Q0


                   ダディは得心したように頷く。


           /\___/ヽ
          /''''''   '''''':::::::\
       .   |(●),    、(●)、.:|
         |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
       .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|       さよか、
          \  `ニニ´ .u ::/
       ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      鈴三屋はんでそないなことが……
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


             /\___/ヽ
            / ''''''    '''''' \
         │:::::::(ー),  、(ー) l       伊豆の天草……
         │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │
          /‐:::  `-=ニ=- ' /       確かに江戸では評判やと聞いてる。
        _,,,l ;! |:::______/
     , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_       将軍さんもご推奨やとか。
     l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、
    ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
    ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|


.


270 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:50:59 MuxeJ07Q0


      __/ヽ_∠L_
     /:::::::     ''''\
  .   |:::::::::    (●), |
    |::::::::      ,,イ_,`)      けどな、寒天作りは天草と水の相性が大事なんや。
  .   |:::::::::      ノ.-=ラ
     \:::::::      `フ       丹後の天草やからこそ、伏見の水との相性もええ。
  ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     せやさかい、美味い寒天になるんや。
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||


        _____
   ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
   ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
   ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|      それに、伊豆の天草を
      |:::::::〉 ( ○) (○)|
   .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)      はるばる伏見まで運んで寒天を作るとしたら、
       |  u   |r┬-|  |
       \    `ー'´ /       それこそ法外な値ぇを付けな、算盤に合わしまへん。
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     そないな高い寒天、どこが買うてくれますやろ。
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


271 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:51:40 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),    、(●)、.:|       ウチは美濃志摩屋の寒天場で作る
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
   .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|       寒天一手しか扱うてへんさかい、
      \  `ニニ´ .u ::/
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      お代はどれもいっしょ。
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |     せやのに、その材料が、片や丹後、片や伊豆て。
       >   ヽ. ハ  |   ||


       /\___/ヽ
      / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\       そらぁ、藤誠はんだけに
   .   |(○),   、(○)、 :|
     | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|       伊豆の天草で作った寒天を回してるとしたら、
   .   |.u   (^・^>  。.:::::::|
      \ ゚  ⌒´ u .::::/       他所が怒って当然や。
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i      松葉屋の大旦那さんが怒らはったのも、
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||     そこやろ。


.


272 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:52:12 MuxeJ07Q0


     _____
..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|        せやけど、旦那さん。
   |:::::::〉 ( ○) (○)|
.  (@ ::::⌒(__人__)⌒)       何処からそんな話が
    |  u   |r┬-|  |
    \    `ー'´ /        出て来たんですやろ?
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


    __/ヽ_∠L_
   /:::::::     ''''\
.   |:::::::::    (●), |
  |::::::::      ,,イ_,`)
.   |:::::::::      ノ.-=ラ
   \:::::::      `フ         ま、その話はあとや。
,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


            ダディは番頭の話を遮る。


.


273 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:52:45 MuxeJ07Q0


   そして、奉公人一同を見回すとねぎらいの言葉をかけた。


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
.   |(●),   、(●)、.:|      みんな、夜遅うまで済まなんだなあ。
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.   |   ,rエエェ、  .::::::|      これで大体のところはわかったし、
   \  ヽr-rヲ .:::::/
,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、      後は私らの仕事や。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |     お前はんらは、早よ、お休み。
    >   ヽ. ハ  |   ||


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \::::::::/i:::|
   |:::::::〉( ●)::( ●).|        やる夫、お前はんは残んなはれ。
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
    |      ` ⌒´  |        ちょっと言うとくことがある。
   \         ,/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


.


274 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:53:35 MuxeJ07Q0


             ____
           /      \
         /           \       あ、あの……
        /   _ノ ::::::: ゝ、  \
          |   (○)  (○)  u |      すんまへんでした……
        \   (__人__)   ,/
        /    `⌒´    \


            _____
          /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
          |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|        すんまへんでした、やない!
          |::::::::/ \:三::/i:::|
          |:::::::〉( ○)::( ○).|       鈴三屋はんでのことを、
         .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
           |  u   |i|!i|!|  |        何でその日のうちに言わんかったんや!
          \    `⌒´ ,/
       ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.       そしたら松葉屋はんのことかて、
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
          |  \/゙(__)\,|  i |     早めに手ぇ打てたはずやないか!
          >   ヽ. ハ  |   ||


            一人残らされたやる夫を番頭が怒鳴りつける。


.


275 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:54:04 MuxeJ07Q0


        _____
   ; /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    ; |.::::γ⌒ Yノ( ヽ::::::| ;
    ; |::::/  _ノ三ヽ、  |:::| ;      お前はんのお陰で、
   ; |:ノ(( 。 )三( ゚ )u::| ;
   ; (@ ⌒(__人__)⌒ @) ;     井川屋は大口の取引先を
    ; | u  |++++| ノ( | ;
    ; \   ` ⌒´⌒ / ;      無くしてしもたんだすで!!
    ; /           \ ;


      メ ,, -──- 、._\
    メ/ u    ゚ 。 \\
  / /    ノ  ヽ、   \\
   ! |  o゚((●)) ((●))゚o  |      …………
  \\    (__人__)   /く<
   ノ メ/   ` ⌒´   ヽヽヾ


        番頭の激しい怒りに、やる夫は震え上がる。


.


276 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:54:45 MuxeJ07Q0


            ダディがいく夫を止める。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   ,rエエェ、  .::::::|      いく夫、もうええ。
     \  ヽr-rヲ .:::::/
  ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、     そこまでにしとき。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      やる夫、言わんかったんは
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/      なんぞ理由があるんやろ?
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     何でや?
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


277 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:55:15 MuxeJ07Q0


        ____
       /      \        約束を…約束をしたからだす。
      /  _ノ  ヽ、_  \
    /  o゚⌒   ⌒゚o  \     鈴三屋の旦那さんと。
    |     (__人__)    |
    \     ` ⌒´     /      忘れる、言わへん、て。


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|       なるほど。
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   ´トェェェイ`  .::::::|       ほな、お前はんは鈴三屋はんとの約束を守るため、
      \  `ニニ´  .:::::/
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、       鈴三屋はんのお前はんに対する信用を守るために、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |      黙ってよと思たんやな。
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


278 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:55:39 MuxeJ07Q0


          ; ____;
         ;/      \;
        ;/   /   \\;
      ;/   o゚((○) ((○)゚o      へ、へえ。
      ;l        (__人__)   |;
      ;\     ` ⌒´   /;
      ;/             ヽ;


          /\___/ヽ
         /''''''   '''''':::::::\
      .   |(●),   、(●)、.:|
        |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      ほうか、なるほどなあ……
      .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
         \  `ニニ´  .:::::/
      ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、      なあ、やる夫。
      :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
          |  \/゙(__)\,|  i |
          >   ヽ. ハ  |   ||


.


279 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:56:43 MuxeJ07Q0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   ,rエエェ、  .::::::|       商人が何よりも大事にせなあかんのは、
     \  ヽr-rヲ .:::::/
  ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、       他人さんの自分に対する信用とは違うんや。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       /      \
     /  _ノ  ヽ、_  \
    / o゚((●)) ((●))゚o \       えっ……
    |     (__人__)     |
    \     ` ⌒´     /


.


280 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:57:11 MuxeJ07Q0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|        商人にとって一番大事なんは、暖簾や。
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|        暖簾に対する信用が何をおいても
     \  `ニニ´  .:::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、        大事にせんといかんもんなんや。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


        __/ヽ_∠L_
       /:::::::     ''''\        奉公人が己の信用を守るために
    .   |:::::::::    (●), |        実を通して暖簾に傷がつくのんと、
      |::::::::      ,,イ_,`)
    .   |:::::::::      ノ.-=ラ        己の信用は無うなっても
       \:::::::      `フ        暖簾に対する信用が揺るがんのんと、
    ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       どっちが商人として真っ当か、
        |  \/゙(__)\,|  i |      よう考えてみ。
        >   ヽ. ハ  |   ||


.


281 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:57:55 MuxeJ07Q0


        主の言葉は、丁稚の心に重く響いた。


         ____
       /      \
     /           \        ようわかりました……
    /   _ノ ::::::: ゝ、  \
    |   (○)  (○)  u |       すんまへんでした……
    \   (__人__)   ,/
    /    `⌒´    \


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|        よっしゃ、
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|        わかったんやったらもうええ。
     \  `ニニ´  .:::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       お前はんも早うお休み。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


282 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:58:37 MuxeJ07Q0


       やる夫が下がった座敷に、ダディといく夫が残った。


       _____
  ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
  ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
  ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|
     |:::::::〉 ( ○) (○)|      ほなら旦那さん、
  .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)
      |  u   |r┬-|  |      明日の朝一番に松葉屋はんへ行きはりますやろ?
      \    `ー'´ /
  ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.      私もご一緒させて頂きますよってに。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


      __/ヽ_∠L_
     /:::::::     ''''\
  .   |:::::::::    (●), |       いや、その前にちょっと
    |::::::::      ,,イ_,`)
  .   |:::::::::      ノ.-=ラ       調べてみなあかんことがある。
     \:::::::      `フ
  ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、      あ、済まんが明日、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |     やる夫を借りますで。
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


283 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:59:20 MuxeJ07Q0


     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ ―  ― |       やる夫を?
   |::::::( ( ●) (●)|
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)      そらかましまへんが、
    |     ` ⌒´  |
    \         /       一体なにをやらせるおつもりで?
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
     |  \/゙(__)\,|  i


    /\___/ヽ
   /ノ⌒'" `'ー-、::::\
.   |  (●),、(●)、  .:|        その話はまた明日や。
  |   ,. (,、_,、)、_   .::::|
.   |   {,`ト===イ ,}  .::::|        今日のところはもう寝よやないか、
   \  ヾニノ  .:::::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、        だいぶん夜更かししてもうたわ。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


.


284 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 13:59:53 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


285 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:00:44 MuxeJ07Q0


                         翌朝。

             ダディはやる夫を伴って、鈴三屋を訪れた。


          ..---. ...
       , -‐.': :_: :---` ー-.、
    ーァ´:, ‐ -ァ: :7 ̄l:.ヽヽ‐..\
     //イ: : /: ./.:イ: }::. :}:.}:ヽ:、:ヽ、
    ノ.: .: ./: : lハ:AL_}:/ }::.ハハ::.:}:.ト_--
   ´ 7:::::_|::. : | '┬ォミー'jム_ム}::ハ:「`
     |:.:{ r|{:.. :l   ̄´  {エオハ.ハ{      何だすて?
    ハ:ヽvヘ:リ u       〉 |:/
     Vl:.:T     , ---,  ハ!        私ら夫婦を藤誠に招待するて、
      }::ハ、  ( __/ , ′
    /フ´{  \  - /          井川屋はん、そらどういうことだすのや?
_ .. イ:::::::{  \  ` ┬‐′
:::::::|   l    \,_ / \
   }    ヽ   ∧ 〉ヽ 〈| \
   ーァ-‐ ヘ_/ヽ.>‐くトj、 ヽ\


        /\___/ヽ
       /''''''   '''''':::::::\            ショウコトナ
    .   |(●),   、(●)、.:|        こない仕様事無しなお願いも、
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
    .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|        鈴三屋はんを見込んでのことだす。
       \  `ニニ´  .:::::/
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       お二人だけで、藤誠の料理を
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |      食べに行って頂きたいんだす。
        >   ヽ. ハ  |   ||


.


286 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:01:31 MuxeJ07Q0

                  フクサ
  ダディは懐から銭の入った袱紗を取り出して、深く頭を下げる。


       /\___/ヽ
      /:::::::       \
.     |:::.   ''''''   ''''''  |
.     |::::.,(一),   、(一)|
.     |:::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
      \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /     費用のほうは一切、
     /   `一`ニニ´-,ー´
     /  | |   / |         うちで持たせてもらいますよって、
    /   | |  / | |
    /   l | /  | |         どうか、お頼もうします。
    /    | ⊥_ーー | ⊥_
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
    `ー、、___/`"''-‐"


       / ̄ ̄ ̄ \
     /       . \
    /  _ ノ   ヽ、_   \
   .|   (ー)  (ー) .  |
    \    (__人__) .  /
     /    `⌒´    ヽ
    ヽ、二⌒)   (⌒ニノ


         後ろで、やる夫も慌ててお辞儀をする。


.


287 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:02:03 MuxeJ07Q0


  ダディは鈴三屋を訪れると、天草の話をどういう経緯で耳にしたかを店主から聞き出した。


                /\___/ヽ
               /''''''   '''''':::::::\
            .   |(●),    、(●)、.:|
              |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|               ____
            .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|             /      \
               \  `ニニ´ .u ::/            /           \
            ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、          /   _ノ ::::::: ゝ、  \
            :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i         |   (○)  (○)  u |
                |  \/゙(__)\,|  i |         \   (__人__)   ,/
                >   ヽ. ハ  |   ||        /    `⌒´    \


              __. --─-- 、
            ∠        \
       .   /,r / /  ヽ ヘヽ  \     .             ,. --─‐‐-、
          /// , | |    | | ヘ  ヽ              .z∠二二二ヾ:.ヽ
       .  |/ l / | ∧ | | :| |、:||  ',    .          ,仏:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`尓
       .  | l | 、ト、.|. |ハ ハ |ヽ!ヽ'V  |          ./:.:.:.:.:._∧ィ:|ヽ|:.:,、:.:.〈\\
       .  lイ lヽ| _ム-- ` レニニT | N          .}ィ:.:.:.:./zzミ、| ニ二:.:.:i l}__}
          ∨| |´ 'モシ´   ゙ー' || |    .         |:}!:.:.{“ iり   に!”}.:.レリ.:|
           |ハ!            |//           :|イ}:.:.!   '    | }.:.|.:.|
            ヽト、    l    /      .         |.:|:.八  .r‐ ,u.イ:..:.:.:!.:.|
             ヽl\  -─  .イ       .        八レ.:.:.:>. 二 ィ:./|:.:.::|.:.|
                l`  ._  / ノ、      .        __ハ.zイリ    ト、 レ.从:ノ
               / |    ,rく. ヽ           rイ:| N..  ヒ --<} .\
       .       / ,ヘ   / ∧|        __f´   | N   |-ー‐-/  .〃`ー、
              | ハ ', / / ∧!        <.     } N   | ̄ ̄/ .〃   ヘ
                              ´.       l N   .|  / 〃     \


          それは、藤誠で食事をした客からの話が元になっているとのことだった。

       何でも、藤誠の寒天料理の美味さに感動した客の一人が寒天について尋ねたところ、

              伊豆の天草を使用したものだ、との返答を得たというのだ。


.


288 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:03:08 MuxeJ07Q0


    /\___/\
   /         ::\     藤誠はんに寒天を納めさせてもろてるんは、
.  |  ─   ─    |
.  | (●), 、 (●)、 |     うちとこだけと聞いてます。
.  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   \   r‐=‐、  .:::/     けんど、他で伊豆の寒天を仕入れてはるんやも知れまへん。
   /`ー `ニニ´一''´\


    /\___/\
   /        ::\     もし、うちとこの寒天やったとしても、
.  |               :|
.  |   ノ   ヽ、   :|     それを店側がほんまに伊豆のもんやと言わはったかどうか。
.  | (●), 、 (●)、.:::|
   \ ,,ノ(、_, )ヽ、,, :/      何より厄介なんは……
   /`ー `ニニ´一''´\



  /  /   ..::/.::/ .:::::: /.::::::/.:::::!::::::..!.. l  ::ヽ`ヽ
 i  /   .::::::!::/l ..::://.:::/!:::::/l::::::::l:::::l:::....l  !
 !   ! l .:::::::/l/__l/ //  l:::/.:::!::::/!:::::!:::::::!::!:l
 l /l/l .::::::/ __ `ヽ、    l/ .::::l::/.:l:::/l:::::::!::!::!
  V く l .:::/   ¨ 疋タ` ヽ、ノ .::::::_j/ -―l:::/.∧l
  ∨ー!::/    `¨       /fr芹、:::/l/.:/
  j/iヽl/           /.:::::┴'..:::/./ j/     藤誠はんが、わざとそう言わはったとしたら ――
.   l::∧              { ::::::::::::::/.:/
.  __/V ::ヽ         /..::::::::::/.:/         いうことでんな?
/i/  ! ::::::ヽ     _     .:::::/ j/
.三l :: l :::::::ヽ、   __‐-..::::/
.三 !.:::::.ヽ、:::::::::ヽ、 ....:::::/
三ニl:::::::::::::\::::::::::::::ー匕\


.


289 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:03:49 MuxeJ07Q0


            ____
          /   u \
         /  \    /\      (藤誠はんが、丹後産の天草で作った寒天を、
       /  し (○)  (○) \
        | ∪    (__人__)  J |      伊豆産ってウソついてる、ていうんか…?)
       \  u   `⌒´   /


     後ろに控えていたやる夫にも、ダディが何を一番気にかけているか、漸くわかった。


.


290 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:04:48 MuxeJ07Q0


           鈴三屋が確認するように妻の顔を伺う。


                   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
                 /:::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::i::::i:::::::::::::::ヽ
              /::::::::::/:::::::::/::::::::,:::::,イ:::::|:::::!:::::i:::ヽ:::::ヽ
           /::::::::::/:::::::,.イ:::::::,ィ:::,イ::::::/!:::::|::::::!:::::!:::::::ヽ
           ,'::::::/::::!:::/,イ::/ .!/ .|::::/ |:::::ハ:::::!::::::!::::::::::i
            !::::::l::::::レ',! ー-、    !/  !::/ !::ハ:,イ:::::::::::|
             !::::_」:::::::::! ..,,_`ヽ、_,.   ,リ  ´ _,..,_ !::::::::ハj
          !/f r.|::::::::!  弋エノ`    `'ィニ二_ /:::::::::!
               k.ヤ!:::::::!           ゞzソ,. /::::∧::|
           |∧`Y::リ           i      //|/  ヾ
              !Tヾ  u.     j       //ノ
             ヤ. ヽ.            ,.イ:/
              r<´|.  \     -.-   / |/
             !  `丶、.  \   ー  /
           _/     `'-、. `'ー-r<´
       , -'" `ヽ、      `ヽ、 f`, \
     , -'´    ヽ `ヽ、      >く_Lr'´`ト、


               /    //  /‐───- 、   \
              /r‐─‐ァーf/    /-────-、 \\ ヽ
               / ∨三/'¨7   /   / /      \厶 ハ ',
.              /  \/__,/   /  ,イ l  |       il V∧ハ
            /  _//〉‐/    /\/ |i |l | 丶    i|  l ト、 ',
             ,′ f⌒∨ /    /ハ {\! |l !{   \  i|  | トく l
            / ハ.  V    /ィfテミ、 ヽ八 ヽ    ヽ_|  l |/ |
             l l 〈_∧   ',   ハ{_f::j:リヾ    ヽ∧>七 j  ! |_  |
             | l   _ム _ ゝへ| V;之_        _ ヽハ ,' /  | \|
             | l  >'´     ヽ           ィ≡气 / /  l\/!
             | l  |   -ー―一ヘ   , 、__  ヽ    〃:/|   ∧ |
          j八 |       __}  {  `ア    ,ムイ /  ,イ__j│
         ,r≦三ヘ   ̄    ト、 ` ー'  ,. イl│ Ⅳ  / | jlリ
        /  /  ハ   _,  --‐〈. >‐r<  /l│ 〃  / j /
          // /   | ハ     , イ1  /   ヽ./ ∧/   / /'
.        〆 /    い \ -<  }}/ ̄ ̄`ヽ>ーイ 、 /
      〈  /     ∨ 代\   ハ、 , -―‐- 丶 //丁fヽ
      ∧/       ∨   `三彡' \    __ ∨´  |│ l
      l |        \==彳│  \/  ` |   |│ l
      l |          `ー‐ ´ |    \    l|   |│ l


                ご寮さんが夫に頷き返す。


.


291 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:05:36 MuxeJ07Q0


                   鈴三屋はダディに向きなおると口を開いた。


                  _,ィ'´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.``丶、
                /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、
              ,.イ´:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ、
              r'´.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.,イ:.,イ:../i:.:.l:.:.:ヽ:.:ヽ:.:.:.:.:.ヽ、   私は乾物屋で長年、
             /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!/ !:./.|:./ |:./ !:.:..ハ:.:.,|:.:.:.:.ト-、ゝ
            ,イ.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:/ !ナ-、_レ'  |ノ レ'ヽ:.ノ!:.!    井川屋の寒天を扱わさしてもろてます。
              !:.:.:r‐i:.:.il:.:.:..!  こヒr`i`´  _ュ=-.,リ .リ
            |,イ !i^)レ'l:.:.:./    ´    l´ヒr /:.:.ノ     それにうちの嫁はんは、
            ! !:ヤヽ、.ヽ/         ヽ .l:.:./
              k.l,`-ァi           '´  /∨      伏見の寒天場で働いてた男の娘だ。
               k_N.l      ー─‐-  /
              _,イj  ヽ          ./         寒天の味はようわかってます。
            /´r'´\   \.      /
        _,.ィ=''7´;;;;;;;|   \   `ー-ェ-‐'´            実際に藤誠で供されてる寒天が
    _,.ィ='''´;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;!    \   ノ \
-‐'''"´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;:;:;:;:;:;:;:;:!    /トュ  ヤ Zト、           どないなもんか確かめるんやったら、
;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:く;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!  /\ヽ! ノ _,,>!.ヾ.、
;:;:;:;:ヾ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\:;:;:;:;:;:;:;ト、/ `ー-、>--'''7 ト、|;:;:;:〉;\       私ら夫婦が適役でっしゃろな。
:;:;:;:;:;:;:!;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/;:;:;:;:;:;:;:;:!    ヽ、_,__ノ |;:;:;:;く:;:;:;:;:;:\


              /\___/ヽ
             /''''''   '''''':::::::\          さいだす。
          .   |(●),    、(●)、.:|
            |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|          顔の知れてる私が行って尋ねてみても、
          .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
             \  `ニニ´ .u ::/          ほんまのことはわかりまへんやろ。
          ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、
          :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i         どうでっしゃろ、お頼みしても?
              |  \/゙(__)\,|  i |
              >   ヽ. ハ  |   ||


.


292 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:06:25 MuxeJ07Q0


                    鈴三屋はぽんと胸を叩いて請け負う。


              __,,,、,,   ,,、- 、
           /´: : : : : `´: : : : :ヽ
        /: : : : : : : : : : : : : : : : : :\
        /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
       /: : : : : : :i: : : : :.∧: : :il: : i: : :ヾ: :',
      ,': : : : : : : l: : :/:./ ∨:ハ: :i!: :l: :::::::i
      l: l: i: : l /!/∨   |/ ∨∨!: :::::::l
      レ!: !: :l i´""'''ー-   ,、-ー'''` l: :::::ヘ!    よろしおます。
       ∨ヘ i | r==ァ   ., r≡=、/::∧|
        !ヘ∨ゝ       .i    ∧ソ      ほな早速、今日行って参じます。
        レヽi l       }    ∧ノ
           レヘ   ______  /ノ        なあに、夫婦二人のこっちゃ、
          ∨\ ヽ __ / / ′
         /i{  \  ` /i           隅でも何でも、無理言うて捻じ込んでもらいまひょ。
         /:::::l ヘ   ` ´ ∧\
      _,,-''/::::::::l  ` ー、 ,/ .i:::::\、,_
  _,..-.:":::::::/:::::::::::i   /;;ヘ__!入  l:::::::::\`::..、,,_


           /\___/ヽ
          /:::::::        \
         |:::.   ''''''    ''''''   |
         |::::.,(一),   、(一).|
         |::::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
           \:::::.ヽ`-=ニ=- ' /        おおきに、助かりますわ。
         /   `一`ニニ´-,ー´
         /  | |    / |            ほんま、無理聞いてもろてすまんことです。
        /   | |  / | |
        /   l | /  | |
       /    | ⊥_ーー | ⊥_
       |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}
      (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ
        `ー、、___/`"''-‐"


                        ダディが深々と一礼する。


.


293 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:07:17 MuxeJ07Q0


                         鈴三屋のご寮さんが嬉しそうに笑う。


               /:.:.:.:.:.:. -───\:.:.:.:.:.:.\
              ,:':.:.:.:.:.:/ -‐──‐ミ ∨:.:.:.:.:.:.ヽ
                /:.:.:.:.:':.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\}:.:.:.、:.:.:.:.:.゚,
            /:.//:.:.:./ハ:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.「 \.:.:.
             .':./ オ:.:.:/〕ト.、{:.:.、:.:\:.:.:.:._:i_l:.:.:.:.| 廴〕.:.i       井川屋はん、顔を上げておくれやす。
              i:.:∨{:.:.:.:' l:!_ \{\:.:.X´:.:ハ!:.:.:. |_」 《.:.:.:|
       , ^!   !:.:.Ⅵヌ:.:| 芹しミヽ   ヽ    |:.:.:.:.| ハ V:.:!       お礼を言うのは私らのほうだす。
       | |   |:.〈///:.:l 込ツ    x==ミy:.:.:.::|`Y∨:.:.|
    __ | |   l:.:.:〈/:.:.∧    ′      ':.:.:.:.:|ノ:.:.:.:.:.:|       こんなことでも無かったら、
   _rヘ Ⅵ |   |:.i:.:..:.:.::.:.:.:.、   「/ ̄}   /:.:.:.:.:.从:.:,:.:.:.:.|
  ハ ( ̄`ヽ   |:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.〕ト.、 一   イ:.:.:.:.:/:.:.:./:.:.i:.:′      私らみたいなもんが夫婦揃って
  {\)イ`ヽ  }  !ハ:.:.:.ト、:.:.:{:.:.:.:.:≧ー  /:!:.:.:.:/:.:.:./:.:.://
.   ゚,  {  ノ  |!  \!__.\!:.イ.ノ    /:/:.:. イ:.:.:.厶イ_′       あないな高い料理屋行くことできまへん。
   ゝ    {     .イ: イ: : : ヽ:厶===./.イ:/: |:/i:i:/: : :\
    庁、___ ノハ   ′|: i:i: : : : :/二二 ー /: : : {!: /i/: /⌒ ヽ、     おおきに、おおきに。
   ,f≧====彳./   |: i:i: : : : ′    ヽ/: : : : : /i/: /     ハ
. /\: : : : : :_K   l,|: i:i: : : :|       /: : : : : /i/: /     }   、
/      ̄ ̄´  }   / |: i:i: : : :|    ,:': : : : : /i/: / { /      \


                   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
                 /:::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::i::::i:::::::::::::::ヽ
              /::::::::::/:::::::::/::::::::,:::::,イ:::::|:::::!:::::i:::ヽ:::::ヽ
           /::::::::::/:::::::,.イ:::::::,ィ:::,イ::::::/!:::::|::::::!:::::!:::::::ヽ
           ,'::::::/::::!:::/,イ::/ .!/ .|::::/ |:::::ハ:::::!::::::!::::::::::i
            !::::::l::::::レ',! ー-、    !/  !::/ !::ハ:,イ:::::::::::|
             !::::_」:::::::::! ..,,_`ヽ、_,.   ,リ  ´ _,..,_ !::::::::ハj
          !/f r.|::::::::!  (◎)      `'ィニ二_ /:::::::::!
               k.ヤ!:::::::! u          (◎),. /::::∧::|
           |∧`Y::リ           i  u.   //|/  ヾ       こら、ハルヒ!!
              !Tヾ  u.  __j_     //ノ
             ヤ. ヽ.     |゚д゚ ) |   .,.イ:/            いらんこと言いな!!
              r<´|.  \   |( ゚д゚ | ./ |/
             !  `丶、.  \  ̄ ̄u./
           _/     `'-、. `'ー-r<´
       , -'" `ヽ、      `ヽ、 f`, \
     , -'´    ヽ `ヽ、      >く_Lr'´`ト、
   /        ヽ  \  /ヽO〉 |`r、.| `丶、


.


294 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:07:59 MuxeJ07Q0


      夫婦のやり取りにダディ主従が声を上げて笑う。


      /`ー──一'\
     ,r(●)(、_, )、(●)\
  .   |  '"トニニニ┤'` .:::|
    |.   |    .:::|   .::::|
  .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|              ____
     \   `ニニ´ ..::::::/             /⌒  ⌒\
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、           / ⌒   ⌒ \
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i         /:::::: " (__人__) ":::::
      |  \/゙(__)\,|  i |         |       |r┬-|     |
      >   ヽ. ハ  |   ||        \      `ー'´    /


    昨日からの重苦しい空気を払う、朗らかな笑いだった。


.


295 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:08:42 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


296 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:09:15 MuxeJ07Q0


               その夜のこと。


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_


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297 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:09:53 MuxeJ07Q0


  /  /   ..::/.::/ .:::::: /.::::::/.:::::!::::::..!.. l  ::ヽ`ヽ
 i  /   .::::::!::/l ..::://.:::/!:::::/l::::::::l:::::l:::....l  !
 !   ! l .:::::::/l/__l/ //  l:::/ !::::/!:::::!:::::::!::!:l
 l /l/l .::::::/ __`ヽ、    l/   l::/ l:::/l:::::::!::!::!
  V く l .:::/  ̄"'ヾミ ヽ       _j/ -―l /.∧l
  ∨ー!::/             / -=ミ ./l/.:/
  j/iヽl/               /     /./ j/     ごめんやす。
.   l::∧              {    ./.:/
.  __/V ::ヽ         /    /.:/        鈴三屋でおます。
/i/  ! ::::::ヽ               / j/
.三l :: l :::::::.ヽ、  ` __‐-  ./
.三 !.:::::.ヽ、:::::::::ヽ、    /
三ニl:::::::::::::\::::::::::::::ー匕\


     井川屋の面々が夕餉を済ませた頃に鈴三屋が訪れた。


.


298 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:12:33 MuxeJ07Q0


      いく夫が飛んで行って、店主を奥座敷へと案内する。


         _____
       /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
        |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
        |::::::::ゝ \  / |        これはこれは鈴三屋はん、
       |::::::( ( ●) (●)|
       (@ ::::⌒ノ(、_, )ヽ⌒)        お待ちしておりました。
        |    `-=ニ=-  |
        \     `ー'´ /        さ、おあがりください。
     ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
         |  \/゙(__)\,|  i


           __,,,、,,   ,,、- 、
        /´: : : : : `´: : : : :ヽ
     /: : : : : : : : : : : : : : : : : :\
     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
    /: : : : : : :i: : : : :.∧: : :il: : i: : :ヾ: :',
   ,': : : : : : : l: : :/:./ ∨:ハ: :i!: :l: :::::::i
   l: l: i: : l /!/∨   |/ ∨∨!: :::::::l
   レ!: !: :l i´""'''ー-   ,、-ー'''` l: :::::ヘ!    すんまへんな、夜分遅うに。
    ∨ヘ i | r==ァ   ., r≡=、/::∧|
     !ヘ∨ゝ       .i    ∧ソ      ほな、失礼さしてもらいます。
     レヽi l       }    ∧ノ
        レヘ   ______  /ノ
       ∨\ ヽ __ / / ′
      /i{  \  ` /i
      /:::::l ヘ   ` ´ ∧\
   _,,-''/::::::::l  ` ー、 ,/ .i:::::\、,_


.


299 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:12:55 MuxeJ07Q0


       __
       /ノ ヽ\
     /(○)(○) \
     | (__人__) u|
    |        |     お、おい、やる夫…
.    |        |
.    ヽ      /      あれって……
      ヽ    /
       /    ヽ
       |      |
       |      |


         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\      ああ、鈴三屋の旦那さんや。
    /   ( ―) (―) ヽ
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |     鈴三屋はん、早速報告に
    \     ` ⌒r'.二ヽ<
    /        i^Y゙ r─ ゝ、   来てくれはったんやろ……
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!


.


300 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:13:21 MuxeJ07Q0


     / ̄ ̄\
   /   _ノ  \
   |    ( ○)(○)
  . |  U  (__人__)
    |     |r┬-|       藤誠、
  .  | ι   `ー'´}
  .  ヽ     u  }       結局どないやってんやろ……
     ヽ     ノ
     /    く
     |     \
      |    |ヽ、二⌒)


       ____
     /      \
    /         \
  /           \     わからん……
  |     \   ,_   |
  /  u  ∩ノ ⊃―)/     でも、旦那さんの言う通りやったとしたら……
  (  \ / _ノ |  |
  .\ “  /__|  |
    \ /___ /


.


301 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:13:51 MuxeJ07Q0


     / ̄ ̄\
    /   _,.ノ  ヽ、_
   |    ( ○) (○)
   | U  (___人__)       言う通りやったとしたら、どうなるんや?
    .|       __ノ__
    |     _/ ___\ヽ_     松葉屋はんとの取り引き、
     、    '-/____ヽ  |
     ノ 、 ._'-〈  、ヽ  |    無うなってしまうんか?
    ,´         ヽノ}   |
   /          {   /
  ./  /       /   {


         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ     松葉屋の大旦那さんの
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |
    \     ` ⌒r'.二ヽ<     言う事が合うてた、いうことやからなあ…
    /        i^Y゙ r─ ゝ、
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!


.


302 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:14:13 MuxeJ07Q0


   奥座敷では、鈴三屋とダディ、それにいく夫の三人での密談が行われた。


           /\___/ヽ
          / ''''''    '''''' \
       │:::::::(ー),  、(ー) l
       │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │
        /‐:::  `-=ニ=- ' /       /イ::::::::::....          :::::::::::::::::
      _,,,l ;! |:::______/         /:::/::::::::::::::::::::::::.....    ...............................
   , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_      . /:::/{:::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
   l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、    ..|: / .|: ∧: /\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l     ..|/  |/{ .∨ /\}:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
  ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|         ヽ ィ=ミ_  ∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                               〉 }し'   ∨:::::::: ト、}⌒ヽ::::::::::::::::::
                             /      ∨:::::: }( `   }::::::::::::::::::
          _____            く           Ⅵ:::/ У /:::::::::::::::::::
        /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ           `)        ∨r一〈:::::::::::::::::::::::::
        |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|       .      `ーz       ./   〉::::::::: |\::::::
        |::::::::/ \:三::/i:::|             }        /   八:: ト、::{  У
        |:::::::〉( ○)::( ○).|       .       乂___        ∨ ∨/
       .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)                _厂 \ _ ィ´ ̄
         |  u   |i|!i|!|  |                〈  r一 ´        / /
        \    `⌒´ ,/
     ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |
        >   ヽ. ハ  |   ||


  それは、やる夫たちが丁稚部屋に引き上げる段になってもまだ続いていた。


.


303 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:14:35 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


304 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:15:16 MuxeJ07Q0


         翌朝、ダディは奉公人全員を店に集めた。


                    _____
                  /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
                  |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
                  |::::::::/ \::::::::/i:::|
                  |:::::::〉( ●)::( ●).|
                 .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
                   |      ` ⌒´  |
                  \         ,/
               ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
               :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i


          ___                    ____
         / ヽ '' ノ\                 /_) (_\
       / ( ○ ) (◯ )\             / 【○】| |【○】 \
     /;:::::⌒,   ゝ⌒:::::\          /    ._| |_,   u. \
     | ;  .u  ト==ィ'     |          |     \/      |
     \     `ー'    /          \     -==-      /


          __
         /ノ ヽ\
       /.(○)(○)\                  ____
       |. u. (__人__) |                /      \
      . |        |               /           \
        |        |              /   _ノ ::::::: ゝ、  \
      .  ヽ      ノ             |   (○)  (○)  u |
         ヽ     /              \   (__人__)   ,/
         /    ヽ              /    `⌒´    \
         |     |
         |    .   |


.


305 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:16:00 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\     皆、こないだの松葉屋はんとの件やけどな。
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   ,rエエェ、  .::::::|     色々調べたら、藤誠で、
      \  ヽr-rヲ .:::::/
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、     うちとこの納めてる寒天が
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |    “伊豆産や”て吹聴されてることがわかった。
       >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       /      \
     /           \
    /   _ノ ::::::: ゝ、  \
    |   (○)  (○)  u |     (やっぱり……せやったんか……)
    \   (__人__)   ,/
    /    `⌒´    \


.


306 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:16:26 MuxeJ07Q0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      皆も知っての通り、うちで扱うてる寒天は
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/      丹後の寒天と伏見の水で作ったもんや。
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     そしてそのことに誇りを持ってる。
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


       /\___/ヽ
      / -‐'  'ー-   \     せやさかい、お客はんから尋ねられたら、
     | (●),(、_,)、(●) :::|
     |     /,.ー-‐、i  :::::|     胸張ってそれを伝えるんや。
     |     //⌒ヽヽ  .::|
     |    ヽー-‐ノ  :::::|     てんごでも、伊豆の名ぁなんぞ出したらあきまへんで。
      \    ̄   ...::/
      /`ー‐--‐‐―´\     ええな!!

                                            【てんご】冗談


.


307 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:16:50 MuxeJ07Q0


   江戸の将軍様もご推奨の伊豆産の天草で作った寒天、ということになれば、

          大坂の客は珍しがるだろうし、料理にも箔がつく。


       ___
     /\:::::::::/\.
    /:::<◎>:::<◎>:::\
  /::::::::⌒(__人__)⌒::::::\    (せやけどそれって、客を騙してるてことやないか!)
  |     ` ー'´  u   |
  \  u   :::::     /
  /   :::::::::::::::::::  :巛 ̄ヽ
  /  ,        :〈⊃ ̄( .}:


         やる夫の小さな胸は怒りの炎で燃え立つようだった。


.


308 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:17:36 MuxeJ07Q0


   .     /\___/ヽ
   .   / '''''       \
      | 、( ●) ....::::::::::::::::|        さて、と。
      、_, )ヽ、,,   ....::::::.::::.|
      |=‐、'    ........:::::::::.|        この一件、しまいをつけなあかん。
   .   \:,..-''ニニニニニニニ.V
   ,,....--'''':::..     ..    ゙-、      やる夫、すまんけど
   :::::  ::.      i     ヽ i
   :::::  |::::      |:::.     i |    今日もついて来てもらうで。
   :::::  |:::::.     .(:::::     :||


          ___
        /     \
       /  _ノ '' 'ー \         へ?
     /  (●)  (●)  \
     |      (__人__)    |       へ、へえ。
     \      ` ⌒´   /


.


309 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:18:00 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


310 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:18:27 MuxeJ07Q0


    店主はいつものように右足を引きずりながら、黙って歩いていく。


      /ロロロロロロ.\
ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
/ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
-ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
___| |______| |______| |______| |______| |_
|||| |||||||| |||||||| |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
====__=======(    )============== .∧,,∧==
     ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
       (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
     /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
      ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
      _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


  天神橋を渡り、左手に久宝寺橋、安堂寺橋を見ながら、川に沿って進む。


.


311 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:18:35 34tGhxag0
井村屋をどこかが陥れようとしているのか


312 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:18:58 MuxeJ07Q0


         そこまで来て、やる夫は、はっとした。


         ___
        /_ノ  ヽ\
      / (○) (○) \
     / u   (__人__)   \
     |     |i!i!i!i!|   u  |    (この先は島之内……)
     \  u  |;;;;;;;;;|    /
     /    `⌒´    \     (旦那さん、ひょっとして……)
     (<<<)        (>>>)
     |、 i、       ,i  /
      ヽ_/       ヽ__/
      |          |


          主人の行き先がわかったのだ。


.


313 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:19:27 MuxeJ07Q0


  虫籠窓のある漆喰の白壁と、黒光りする出格子とが、その店の構えを清々しく見せている。


                       /\
                     //\\
                   .///.\\\
                  .///:|| || ||\\\
                .// .|_||_||_||_||_.||  \\
               .//    ̄ ̄ ̄ ̄´   .\\
_____________________________//:: : :: : : : ....         .\\____________________________________________
ソソソソソソソソソソソソソソ.//:::::: :::: ::: ::: :::: ::::: ::: ::: : . .. . . .  \\ソソソソソソソソソソソソソソソソソソソソソソソソ
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    |:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:|
__ __.  |:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:||_||_||_||_||_||_|:|
| || |......|:|| || || || || || |:|| || || || || || |:|| || || || || || |:|| || || || || || |:|| || || || || || |:|.........................................艸艸.
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.     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄               艸艸艸
\_________________________________________________________________________________________________________________________________ヾヽ
ソソ>=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l==l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l==l=l=l=l=l=l=l=l=l=l=l==l=l=l=l=l艸艸-、,、 艸艸艸
|""=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二= 艸艸艸⌒ヽヽ/
|=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二=二= 艸=彳艸艸    _ソ:’;;:
|((二二二二二((二二二二二二((二二二二二二((二二二二fnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn  (,!。:;;
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| |     |_|_____________|_|     | |:||_ _.i _ _;i _ _i _ _i.__,.i 艸艸艸艸  )::;;
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                   ノ,、,、,、
 ::::::::::::::::::::/=  =  =  = = = = \::::::::::::::::::::                ノ⌒´
                                                ⌒`´ ,.r''" ""


      本瓦葺きの屋根には、屋号を模った鬼瓦が誇らしげに乗っている。

             掲げられた看板には、『藤誠』と書かれていた。


.


314 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:19:48 MuxeJ07Q0


             庇の下で打ち水をしていた女衆が、ダディを認めて笑顔を向けた。


                           ,.. -―- 、
                  ,.......、,,._ /       `ヽ
               ,...:':´:.:.:.:.:.:;:.:.ァ‐|:ヽ、>、      \
            /:.:.:.:.:.:.;.:.'´:.:'´:.:.:.:.:.:∧:\:`:...、     '、
               /:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.\    }
.            /:.:.:.:/:.:.:./:.:.:/:.:.|:.:.:.:.:.:.:.∧:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ   '
.            /:.:.:./:.:.:.:.:/:.:.:.:/|:.:./!:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:ヽ
.            /:.ミ//:/:.:.i:,斗:七了≧:.:.:.:.:.:.i:.|i:.:.:∧:.:.:∧:∧
         /:.:.:.:|:|:.|:.:.:/l:.:/  .!:.:| V:.:i:.:.:.:≦ヽ:.:.:|:.|:.:.:.|ヽ:.!
         /:.:.:.:.:Ⅳ|:.:.| ,.ィfテ示゙':! ヾ |:.:.:/:/ .|:.:./: !:.:.:.|. V!
         /:.:.:.:.∧Ⅳ!:.! f,ノ;;刈    |:.f示ハ |:./:.:.|:.:.: | リ
         /:.:.:.:.:.{ { \:! 弋;炒     ノ'゙{,乃 /:.:.:./:.:.:./ ./
         /:.:.:.:.:./:.丶ニ_ヾ         弋ツ /:./i:.//    あら、井川屋の旦那さんやおまへんか。
.      /:.:.:.:.:./:.:.:.:.:./∧.      __  `   イ:l ,/;'"
.      /:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.//:.:.ト.、     {   /   /:.:|          おいでやす。
.       i:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.//:.:.:.!. \   ゝ‐'´ .イ |:.:|
.       |:.:.:. /:.:.:.:.:.//:_,|__. >,....<:./:/  !: |
        V:.:/:.:.:.:.:./-'´     >.、|:.:.:.:.:./:/   |:.:|


                /\___/ヽ
               /''''''   '''''':::::::\
            .   |(●),   、(●)、.:|         まいど。
              |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
            .   |   ´トェェェイ`  .::::::|         ちょっと、旦那さんと
               \  `ニニ´  .:::::/
            ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、         話をさしてもらいたいんやが。
            :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
                |  \/゙(__)\,|  i |
                >   ヽ. ハ  |   ||


                         ダディも愛想よく応える。


.


315 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:20:09 MuxeJ07Q0


              女衆は頷いて、奥へと声をかける。


               ,..-----、   ,、---、
          ,.ィ:´::,:、-::‐‐::':´ヾ    ヽ,
         /::::,、:'::::::::::::::::ノ::::::ハ:\     ',
          ,イ:ミ/:::::::::/::/:i::::::::::i::::ハヽ
        ./::::::/::::/::::,:'i:/i/!:::::::::::i::::::ハハ
     .,..'::::::,:イ:::://:::ィチ了iハ::i::::、ノi:::i:::i::i:ハ      へえ、ただ今、ご案内を。
    ./:,:イ::::::::::,イ::i:イんハ`  V:::/ヽ:::!::i::::i:リ
   ,'::::/:::::ノ:::::::i_.i弋;ソ     だハi:://!::リiリ
   ,'/::::/::::::,:'::::ハ     , ゞ' イ/:'.リ/ .'      ちょっと!
  .iハ::/::/::::/:::::,-‐iヘ.  し'   ,.イイ  '´
    弋ハ:::/::::::/. ` .、` ァチ:::::/リ          ちょっと誰ぞお願い!
      .ヽハ::::/     ` .、'、 >、
         i-‐-、     \  ヽ:、
        i::::::::::::\     ヽ   Vi、
         i´  `ヽ::ヽ.   ,ィ心x夂N.i


     呼びかけに応えて駆けだしてきた丁稚が、奥へと取次に走る。


.


316 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:21:03 MuxeJ07Q0


                 しばらく待つと、案内の手代が姿を見せた。


__ /.:-.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:i.:.:.:.:_,,.:.:..:.:.:.:.:.:`ヽ
ヽニ.:.:.:.:.:.:.:.:フ.:.:.:.:,_,_,,,_`yi/,_,,_,,,、_.:.:.:.:.:.:.:.:|
,,,>ー/.:.:.::/.:.:|~^`   `^~'´ ´ `~^|.:.::.:.:.:|
ー- /_,.ィ´:.:.::|   ___,,   、_    ト、.:.:.::|、
;;;;;;;;;;''´ /,.:.:.:.::| r=‐''"'ヽ   `ン==、_.|::ヽ:.:.:ト
    ソ,rイ ,ェ| ,ィ‐=、    ;´r=-、 レ、;ィ|`i      すんまへんな、井川屋の旦那さん。
   _,, r'´i|r;;;|       i      ト´.|
 /    \{:| ..::::::...  ::|  ..::::::... .レ'/        えろうお待たせしてしもうて。
/       `ヽ          ./~
ー,  __.     ヽ   ー --‐  ./           ほな、ご案内しますさかい。
  ト'´ `''、_    `i 、     , イ
i :i  ./   `''、_..r'|. ヽ、_,, ' .ト、
i  i  /    / / `-、_  .__ /r |‐、
:i  i ./   / /   / .V´、   / `i、
:`  /   /   /i  / ~ー‐'ヽ  /   i ヽ、


         /\___/ヽ
        /''''''   '''''':::::::\
     .   |(●),   、(●)、.:|
       |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|         いえいえ。
     .   |   ´トェェェイ`  .::::::|
        \  `ニニ´  .:::::/         さ、やる夫、
     ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i        お前はんもついておいで。
        |  \/゙(__)\,|  i |
        >   ヽ. ハ  |   ||


.


317 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:21:39 MuxeJ07Q0


                       やる夫は驚いた。


                  ____
                /_ノ  ヽ、\
              /( ●)  (●).\
             /   (__人__)  u. \          えっ?
             |ni 7   ` ⌒´    . |n
           l^l | | l ,/)      U  l^l.| | /)       いや、でも、それは……
           ', U ! レ' /      . . | U レ'//)
           {    〈         ノ    /
           ..i,    ."⊃    rニ     /
            ."'""⌒´       `''""''''


             /::::::::::::::::::::< ̄¨`  `'^゛^`ヽiヽ:::/::/:::::::::::::::::::::::::::::
          i:::::::::::::::::::∠´             V!/イフィ::::::::::::::::::::::
           i::::::::::::::::/                   ̄i::::::::::::::::::::
            i:::::::::::::::フ   -‐‐‐-- 、 _  .、       i:::::::::::::::ヽ:
         、__i::, =-、;7      __ `ヽニフノ  ,≠=-、 .i::::::::::::::::::::
        \::/ .ハ.i      <i::::゚/ ヾ`::     /::´    i::::!¨\::::::
          <i /⌒i        ̄¨      .::ィ-t‐、  /::::::!.  \::
          .∠i i  (|              /:::`‐' ´  ∧__::::\  `
           `ト.ヽ_,|                  i::       /    ̄¨`
              i:`>イ                 i:::    /
           i:::! !                 i::.    /
           i/: : : ',          ‐ ,_ノ:    /       …………
.        ┌-イ: : : : : ',                /
      ,;;、 ノ.`〈: : : : : : :\  ∠ニ_‐‐---,  /
     /;;;;く   \.: : : : : :.:ヽ     ̄ ̄ /
    /;;;;;;;;;;;;;ヽ   `゙ー-:,:,: : :\_      /
,.,:;;;;´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\.     ¨ヽ : : ¨7‐-‐'


                       藤誠の手代も怪訝な顔をする。

                  このような時、丁稚は外で主を待つものであり、

               丁稚を伴って座敷に上がるなど考えられないことであった。


.


318 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:22:09 MuxeJ07Q0


             手代に構わず、ダディはやる夫を促す。


         __/ヽ_∠L_
        /:::::::     ''''\
     .   |:::::::::    (●), |
       |::::::::      ,,イ_,`)
     .   |:::::::::      ノ.-=ラ       かまへん。
        \:::::::      `フ
     ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、      ええから、ついて来なはれ。
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
         |  \/゙(__)\,|  i |
         >   ヽ. ハ  |   ||


            ____
         :/    \:
        :/ _ノ iiiii \. \
       /  (○)  (○)  \
      : |    (__人__)    |:
        \   ` ⌒´   /         へ、へえ……
        / ⌒ /⌒Y⌒ヽ ヽ
       :|  \|  .i  イ |
        |\ /   人  .\!
        |  \___/  \__/:
         |        /
         |         /


          主に急かされ、やる夫もおどおどとついて上がった。


.


319 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:22:28 MuxeJ07Q0


                  二人は奥座敷へと通された。


l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l  ̄ ゙""'''''―-' 、 ,,, ___,、-''"
l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l
 ̄ ゙""'''''―- 、,,,, l l,_ l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l               _,,、-
 ̄ ゙""'''''―- 、,,,  _  ̄ ゙""'''''―- 、,,,, _l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l          _,,、-ー''"
              ̄ ゙""'''''―- 、 ,,,  _    ̄ ゙""'''''―- 、 ,,,, _l     _,,、-ー''"      _,,、-ー''"
_                            l  ̄''''' ―- 、 ,,, _l_,,、-ー''"      _,,、-ー''"
   ̄ ゙""''''ii―- 、,,,, _            _,、-''"l l   ̄ ゙""'''' ―- ェ. l i'''ー-、,,__,,、-ー''"
_       ll           ゙̄""'''''-ュ -''"     l l              l l i    l
:::::::Γ゙""''''''ll-- 、 ,,,, _         l      _, l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll  ̄   ―   ̄ ゙""''l  l__,,、-ー''"'゙ l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll             i l  l'" _,,、-ー'''l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll             i l  li''"    l l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll             i l  li,     l l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll    そ7ァ        i l  li /   l l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll     l l'         i l  li  /  l l l              l l i    l
''''''''l ''''''''''゙"ll     (__)         i l  li,  _ _l,_l l             0l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll========== i     i l  l'' ―― - l l              l l i    l
::::::::l::::::::::::::::ll  l ̄ ̄l.  i i l ̄ ̄l.!   l      l l              l l i    l
_,,」__ ,,,,,,,!!,iヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄"''‐、_      l l              l l i    l
;';';';i;';';';';';';';';'; i,,」ヽ__l ̄ ̄l__l ̄ ̄l_ "''-、,  ! !             .l l i―'''''''""''' ‐- 、,,_
';';';';'!';';';';';';';';';';';';';'i l  l    l    l    l   il l l l              l l i 「"''' ‐- 、,,,_    "''' ‐-  、,,_
';';';';';i';';';';';';';';';';';';';i_,」 tニ>_<ニ'ァ.tニ>_<ニァ il_,」 l l              l l i l         "'ii ‐- 、,,,_
';';';';';' i ―――― ―    ―' 、';';';';';';';';';';';';';';'l l              l l i l 0       ll     "''' ‐
';';';';';';';'l';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'ヽ';';';';';';';';';';' l l          _  l l i l_         ll
';';';';';';';' l';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'ヽ';';';';';'__,l l  ― __ ,,,,, , 、 ┴- 、"'''‐- 、,,,_  ll
___,,l,,,,,,  、、、、、、 -------――――  '''''''''''" "''-、_';';';';';';';';';';';';';';';';';';'; "'''‐- 、, "'''‐- 、,,,_
';';';';';';';';';';';';';';';';';'゙、';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';"''-、_';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'; "'''‐- 、  "'''‐-


              板場が近いのか、昆布出汁の良い香りが漂っていた。


.


320 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:22:48 MuxeJ07Q0


         ____
       /ヽ  /\
      /(●) (●)丶
     /::⌒(__人__)⌒:::uヽ      (ふえー)
     l    |r┬-|     l
     \   `ー'´   /      (さすが老舗料理屋ともなると、
     /         ヽ
     し、       ト、ノ        奥座敷も贅沢なもんやなぁ)
       |   _    l
       !___/´ ヽ___l


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   ,rエエェ、  .::::::|      これ、やる夫、行儀の悪い。
      \  ヽr-rヲ .:::::/
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、      しっかり口は閉じときなはれ。
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


321 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:23:09 MuxeJ07Q0


        /  ̄ ̄ \
       /ノ  ヽ__   \
     /(―)  (― )   \
     |.  (_人_)   u |
      \   `⌒ ´     ,/
      /         ヽ      あ、すんまへん……
     ./ l   ,/  /   i
     (_)   (__ ノ     l
     /  /   ___ ,ノ
     !、___!、_____つ


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|       うん、それでええ。
   .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
      \  `ニニ´  .:::::/       行儀良うにな。
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


322 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:23:46 MuxeJ07Q0


              襖が開いて、藤誠の主、誠が現れた。


     /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈 {}   |/  .レ {}  } |:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V     やあやあ、
      \_!      _ '     !
        ヽ   Tニー‐‐‐,‐''  /         えらいお待たせしてしもうて。
      ___,r| \  `二二´ /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


              亡くなった先代の跡を継いで三年、

        その商才で藤誠を益々の繁盛店にしたやり手である。


.


323 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:24:19 MuxeJ07Q0


    ダディは自分より遙かに歳若い店主に深々と頭を下げる。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\       旦那さん、先日は色々と
  .   |(○),   、(○)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|       おおきにありがとうさんでございました。
  .   |   `トェェェイ '  .::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、      また本日は突然に伺いまして
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |     えろうすんまへん。
      >   ヽ. ハ  |   ||


        / ̄ ̄ ̄ \
      /       . \  ペコ
     /  _ ノ   ヽ、_   \
    .|   (ー)  (ー) .  |
     \    (__人__) .  /
      /    `⌒´    ヽ
     ヽ、二⌒)   (⌒ニノ


      背後に控えたやる夫も主に倣って頭を下げる。


.


324 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:24:56 MuxeJ07Q0


          丁稚のやる夫が座敷に上がっているのを怪訝そうに見る。


.     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
     /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V       (なんで丁稚が座敷におんねや?)
  < : 」_: : / 〈  ゚ |/  レ  ゚ ..}|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|        ま、ま。
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V
      \_!      _ '     !            そないにかしこまらんと。
        ヽ    /   `t   /
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´               ほんでまた、今日はどないなご用件で?
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ  /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!


.


325 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:25:24 MuxeJ07Q0


              ダディは余計な前置きをせず、話を切り出した。


           /\___/ヽ
          /''''''   '''''':::::::\      旦那さん、
       .   |(●),   、(●)、.:|
         |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      井川屋がこちらに卸させてもろてます寒天は、
       .   |   ´トェェェイ`  .::::::|
          \  `ニニ´  .:::::/      丹波で採れた天草がもと、
       ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     というのはご存じでっしゃろ?
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


     /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : : :|: : /|: : : : :|: : |: : : : :',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /_ |: : :,/|: : /ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/´  |: :/ |:./ ̄`'V: |.: : : | V
  < : _: : : /.     |/  レ   }|:./ヽ: : :|
  <:: |. 小{   ≡≡    ≡≡ レ{: :|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、    {ハ,;' ((
      \_! U       '    ! ( ( ヽ) ホワ~ッ
        ヽ    ー==‐   /  ヽノζ
      ___,r| \         /   | ̄ ̄ ̄|(^)
    /:/::::| \  ヽ _ , ィ´    | ''..,,''::;;⊂ニヽ
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、  .| .,,:: ;;;;ン=- )
/:::::::::::/::::::::|    \  /  ! ,r-''⌒^ニ);;;;ヽニノ ヽ


                     途端、誠の表情に緊張が走る。


.


326 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:25:52 MuxeJ07Q0


     が、それはほんの一瞬のことで、すぐに穏やかな笑顔を見せる。


     /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈 {}   |/  .レ {}  } |:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V    何や、そないなことですかいな。
      \_!      _ '     !
        ヽ   Tニー‐‐‐,‐''  /        勿論、重々存じておりますがな。
      ___,r| \  `二二´ /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


           /\___/ヽ
          /''''''   '''''':::::::\
       .   |(○),   、(○)、.:|
         |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
       .   |   `‐=ニ=‐ ' .:::::::|          ほなら、何で、伊豆の天草で作った、と
          \  `ニニ´  .:::::/
       ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、         お客はんにふれ回ってはるんだすやろ?
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


.


327 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:26:15 MuxeJ07Q0


     一転、険しい目つきになった誠が、身を乗り出してダディを見据える。


    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ -=o=-| :/ .|:/  V: |.: : : | V
  < : _: : : /       |/  レ-=o=-|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{                   レ{: :|ヽ:|    何の話や?
   厶ヘ ハ         、       {ハ/ V
      \_!      _ '     !         誰が誰に、何を言うた、言わはるんや?
        ヽ    /  `t   /
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \ ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


            ____
         :/    \:
        :/ _ノ iiiii \. \
       /  (○)  (○)  \
      : |    (__人__)    |:
        \   ` ⌒´   /
        / ⌒ /⌒Y⌒ヽ ヽ         (こ、こわ……)
       :|  \|  .i  イ |
        |\ /   人  .\!
        |  \___/  \__/:
         |        /


              その目つきの悪さに、やる夫は僅かに身を震わせた。


.


328 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:26:40 MuxeJ07Q0


                ダディは誠をじっと見つめ返す。


           /\___/ヽ
          / ''''''    '''''' \        昨日、この店にお客として来やはったお人から伺いました。
       │:::::::(ー),  、(ー) l
       │/')   ,,ノ(、_, )ヽ、,,, │       藤誠の寒天料理の感想を直接、板場に伝えたい、と
        /‐:::  `-=ニ=- ' /
      _,,,l ;! |:::______/         無理言うて板長と話をさせてもろたそうです。
   , -‐'゙゛ i::..  | .ヽ/;ヽj! `‐-、_
   l     ノ::. .:|、 .ヽ,:ヽ|   <゛~ヽ、     その際、『伊豆の天草で作った寒天』と、
  ,:''`` ''"゙.|;;:‐''゙|.ヽ、 ヽ;::|   /  .|゙l
  ,:     ヽ::il;;!  ヽ、ヽ|  /   | :|      はっきり聞かはったそうでおます。


             ,..::.--.:.:.…..‐-.、   ,
           /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:≧≠-‐‐,
          , ':.::.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.i
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ハ
       _,/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..;.':.:/:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:リ
        ォi:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:/:.:.:.:./:.:.:.:.:;i:.:.:.:.:.:.i:.:i
        イ:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:./:.:.:.:./:.:.: /:.:l.i.:.:.:.:./V
        V:.:.:.:.:.:.:i:/ i :.:.:.:/ i:.:./:./:.:!.:.:.イ
          V:.:.:.:.:.:.:ヽi:.:.: / i:./l/l/i.く´     …………
         人/ヘ ̄´ i:./  .i;'    _〉
      /::::::::::ヽ \  '  \     /
    /::::::::::::::::::::ヽ. \_, -'´ ` ー'
   /:::::._:::::::::::::::::::ヘ  .>ハ
  /::´:::::::::::::`:::.、:::::::::ヽ/ ̄}


                    気まずそうに、誠が視線を外す。


.


329 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:27:01 MuxeJ07Q0


                  そして、苛立ったように大声を上げる。


.     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
     /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : 」_: : / 〈  {} |/  レ  {} }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V       おい、誰ぞ!
      \_!      _ '     !
        ヽ    /   `t   /          板長にすぐ奥座敷に来い、て言うてこい!
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ  /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::


.


330 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:27:24 MuxeJ07Q0


              板長は直ぐに姿を現した。

           歳の頃は三十半ば、思ったよりも若い。


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}        旦那さん、
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (        なんぞご用でっしゃろか?
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l        あ、これは井川屋の旦那さん、
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l        いつもお世話になっとります。
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


  襖の向こうでタスキを外し、素早く纏めてダディに向かって一礼する。

    折り目正しい所作は、見ていて気持ちの良いものだった。


.


331 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:28:14 MuxeJ07Q0


    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ -=o=-| :/ .|:/  V: |.: : : | V
  < : _: : : /       |/  レ-=o=-|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{                   レ{: :|ヽ:|      ジャギ、お前はんか?
   厶ヘ ハ         、       {ハ/ V
      \_!      _ '     !           うちの寒天が伊豆の天草で出来てる、て
        ヽ    /  `t   /
      ___,r| \  {    / /             吹聴してるんは?
    /:/::::| \ ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ        へっ?
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


.


332 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:29:04 MuxeJ07Q0


.     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
     /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V      ・ .・ ・ .・ .・ ・ .・ .・
  < : 」_: : / 〈  ゚ |/  レ  ゚ ..}|:./ヽ: : |       お前はんなんやな?
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V       伊豆産の天草の話をふれてまわったんは。
      \_!      _ '     !
        ヽ    /   `t   /           私は今、そのことでこの井川屋の旦那さんから
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´              えらい責められてるんやで。
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ  /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ て
        /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::} (
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ       !!
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


               板長のジャギは茫然と主を見、ダディを見た。

            そして、ふいに何かを悟ったように項垂れて畳に手をついた。


.


333 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:29:30 MuxeJ07Q0


             今まさに詫びようとするジャギより先に、ダディが口を開いた。


           __/ヽ_∠L_         旦那さん、私が耳にしたところによると、
          /:::::::     ''''\
       .   |:::::::::    (●), |        板長だけや無うて、お運びはんやら丁稚に至るまで、
         |::::::::      ,,イ_,`)
       .   |:::::::::      ノ.-=ラ       ここで料理に使てる寒天を
          \:::::::      `フ
       ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、       『伊豆産や』『将軍さんのお墨付きの天草や』て
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |      言うてはるそうだすなあ。
           >   ヽ. ハ  |   ||


    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ -=o=-| :/ .|:/  V: |.: : : | V
  < : _: : : /       |/  レ-=o=-|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{                   レ{: :|ヽ:|     知らん、知らん!
   厶ヘ ハ         、       {ハ/ V
      \_!      _ '     !         それは主の私のあずかり知らん話や!
        ヽ    /  `t   /
      ___,r| \  {    / /           奉公人が勝手に言うてますのやろ!
    /:/::::| \ ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


                    誠の声は驚くほど大きかった。


.


334 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:29:51 MuxeJ07Q0


                 老舗料理屋店主の嘘は、

        僅か十二歳の寒天問屋の丁稚にも見抜くことができた。


            ____
          /   ノ( \
        /  _ノ  ヽ、_ \       (奉公人が主人の指図無しに
       / ノ( ●━━●   \
       |  ⌒ (__人__) ノ(  |      そないなこと言うわけあるかい!)
       \     ` ⌒´   ⌒/
      /           \


       主でありながら、下の者に責任を擦り付けるその無様な姿に、

                やる夫は腹が立ってならない。


.


335 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:30:14 MuxeJ07Q0


   しかしダディは誠には目もくれず、板長のジャギの方に身体ごと向き直った。


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\      ジャギはん、この店に最初に寒天を卸させてもらう時に
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|     お話しさせてもらいましたなあ。
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/     うちとこの寒天は、丹後の天草と伏見の水とで
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i    風味と食感の良い寒天に仕上げてます、て。
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ    へ、へえ…
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


.


336 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:30:33 MuxeJ07Q0


    /\___/ヽ
   /:::::::       \     伊豆の天草の評判は、この私も聞いてます。
.   |::: .   ''''''    ''''''  |
  |::::.,(一),    、(一)|    大坂のもんは、平素は将軍さんに気ぃも払わんかて、
.   |::::: ノ ,,ノ(、_, )ヽ、,, |
   \:::.ヽ`-=ニ=- ' /     そのお墨付きがある、て聞いたら面白がりますやろ。
  /   `一`ニニ´-,ー´


    /\___/ヽ
   / -‐'  'ー-   \    けんど、寒天は天草だけで出来てるもんと違う。
  | (●),(、_,)、(●) :::|
  |     /,.ー-‐、i  :::::|    そこには水との出会いや、天場で働くもんの気概が係っているんだす。
  |     //⌒ヽヽ  .::|
  |    ヽー-‐ノ  :::::|    寒天作りに携わる者の誇りを踏みつけるんは
   \    ̄   ...::/
   /`ー‐--‐‐―´\    褒められたことやおまへんで。



                 ダディの視線はジャギに向けられているが、

  その言葉は、紛れもなく藤誠店主、誠に向けてのものだということが、やる夫にもわかった。


.


337 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:31:04 MuxeJ07Q0


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ト、:::::l
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::! ';:::::i
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::/ヘ|::::::::::::::::::::::::::! ';:::l
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ |:::::/    |:::::::::::::::::ト::::/   !:!
::::::::::{:/:::::::::/::::::/   !::/三三三|::::/レ:::::/ |/    リ
:::::::::::i:::::::::/ |:::/   i/       |:∧ |:/ ′
:::::::::::::::::::/ |/          ゙  ヽソ
:::::::::::::::::∧               \       (……ちっ)
:::::::∧:::/ `ー             /
:::::/ ∨           ∠二 7 /
/ヘ                  , '
\  \      _        /
  \  \    /  ` ー - ′
   \  \__ /
      ̄\ \


       :,.:::''::´:: ̄::`:::.、:
      :/:::::::::::::::::::::::::::::ヽ:
      : /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}:
    : l:::::::::::::ゝ---- ι:
     : |::::::::::::)  ◯  ○ (:
    :,l::::::::::::η U|||||||U ゝ:        申し訳……ございまへん……
    : ゝ---η.  |||||||  ゝ:
      : /≦ ヽ .|  | ≧:
       : { l  l |* *| | l:
        : { .l  l .|  * | .| l:
      :/  l  l | * | l l:
      :l ---l  l--  -l l:
      :|   `^^    `^:


    苦虫を噛み潰す誠とは対照的に、ジャギは畳に平伏し、そう声を絞った。


.


338 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:31:41 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ        いや、お前はんが謝らなあかん相手は、
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|      この寒天問屋とは違いますやろ。
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
   .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|      伊豆の天草、将軍さんのお墨付きの天草で作った寒天、て
      \  `ニニ´  .:::::/
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、      信じて料理を召し上がったお客はんやとおもいますで。
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||    なあ、旦那さん。


    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ -=o=-| :/ .|:/  V: |.: : : | V
  < : _: : : /       |/  レ-=o=-|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{                   レ{: :|ヽ:|
   厶ヘ ハ         、       {ハ/ V    ……ジャギ、もう下がってよろし。
      \_!      _ '     !
        ヽ    /  `t   /
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \ ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


      水を向けられた誠だが、それには応えず、忌々しげに奉公人に言った。


.


339 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:32:08 MuxeJ07Q0


       :,.:::''::´:: ̄::`:::.、:
      :/:::::::::::::::::::::::::::::ヽ:
      : /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}:
    : l:::::::::::::ゝ---- ι:
     : |::::::::::::)  ◯  ○ (:
    :,l::::::::::::η U|||||||U ゝ:      へ、へえ……
    : ゝ---η.  |||||||  ゝ:
      : /≦ ヽ .|  | ≧:       井川屋はん、ほんま申し訳ございまへんでした…
       : { l  l |* *| | l:
        : { .l  l .|  * | .| l:
      :/  l  l | * | l l:
      :l ---l  l--  -l l:
      :|   `^^    `^:


             項垂れた姿のまま、ジャギが板場へと下がる。


.


340 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:32:30 MuxeJ07Q0


          ジャギが下がるのを待って、ダディは改めて誠に向き直る。


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|     旦那さん、申し訳おまへんが、
   .   |   ,rエエェ、  .::::::|
      \  ヽr-rヲ .:::::/     今日この時を以て、
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i    井川屋は取り引きを打ち切らせて頂きとう存じます。
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


         / ̄ ̄ ̄\
       /  _ノ   ヽ_ \
      /   (>)  (<) \
      |  ::::::⌒(__人__)⌒:::::l
      \    |r┬-/   /     (や、やった!!)
.   グッ /⌒/^ヽ、`ー'´ ,ィヽ、
      /  ,ゞ ,ノ      ,  \
     l /  /       ト   >
       ヾ_,/          |/ /
       |          |/


             溜飲が下がる、とはこういうことを言うのだろうか。

      ダディの後ろでやる夫は思わず歓声を上げそうになるのを辛うじて堪えた。


.


341 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:32:54 MuxeJ07Q0


                         誠が嘲るように言う。


           -─ 、  , -──- 、
           , - ─`<::::::::::::::::::::::::ヽ
         /::::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::`- 、
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\          ふ、ふん、えらい鼻息だすな、井川屋はん。
         /:.:.:.:.:.::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
      /: : : : : : ::::i: ::::ハ:: :::::::: : :::ト:::::::: : i: : :::::::::::ヽ       寒天を扱う問屋なんざ、
       /: : /: /: ::::::|::::/ V::ト::::::: :::| \::: :V: : :::::::::::|
       |: :/: /: :/:::::|∠─ V| ヾ:::::::| ̄ V:::::i:::::::::::::::::}       この大坂に掃いて捨てるほどおます。
      レ.|:.::::|:::i:::::/:/  .、ハi \:::レィ--V::ト::::::::::::::::ヽ
        .|::::::|:::l::/|::レ'¨ ̄ヽ   ヾ| .ィァiュVハ::::::::::::::::ハ      それに、うちみたいな老舗料理屋と取り引きしたがるもんも
         |::::::|:::K .V ィTj.}       { J i ' ハ::::::::::::ト;;ゝ
       |::::∧:r-、. ┴‐┴      ̄ ̄ i .ヒ V:ハ::::i::>    仰山いてますのやで。
       |::/ |:|レヽ      i       レイ/'リ::::::>
       ヾ.  | ヽ∧        , ィ  r‐ム::ハ/       逃がした魚は大きい、いう言葉を
          V:::/ ヽ、  ヾ≡三彡'゙ /'´
           ヾi   }>     , イ              思い知らはったらよろしおます。
                 | ` - ´_ -┴┐
               r‐'V/ ̄    /::\
               / /:::::入     ./::::::::::|""\        さ、もう引き取ってもらいまひょか。
            /:/ /:::::::::::∧  /::::::::::::|::::::::::::" - 、
          //:::::|V∧::::::/  \/::::::::::::::|::::::::::::::::::::::     早う、早う、去ンなはれ!
         /:::/:::::::|  /:=:::i    /::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::
        /:::::::::|::::::::| /::/::::|   /:::::::::::::::::/::::/:::::::::::::::::


.


342 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:33:13 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


343 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:33:45 MuxeJ07Q0


         追い立てられるように藤誠を出ると、
       
       ダディはしばらく黙ったままゆっくりと歩いた。


           __/ヽ_∠L_
          /:::::::     ''''\
       .   |:::::::::    (●), |
         |::::::::      ,,イ_,`)
       .   |:::::::::      ノ.-=ラ        …………
          \:::::::      `フ
       ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
           |  \/゙(__)\,|  i |
           >   ヽ. ハ  |   ||


              ____
            /      \
          /   _ノ  ヽへ\
         /   ( ―) (―) ヽ
        .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |       …………
         \     ` ⌒r'.二ヽ<
         /        i^Y゙ r─ ゝ、
       /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
       {   {         \`7ー┘!


.


344 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:34:15 MuxeJ07Q0


         そして、長堀川が見えてきたあたりで、

        唐突に立ち止まってやる夫を振り返った。


         /\___/ヽ
        /ノ⌒'" `'ー-、::::\
     .   |  (●),、(●)、  .:|
       |   ,. (,、_,、)、_   .::::|     あーあ、やってしもた。
     .   |   {,`ト===イ ,}  .::::|
        \  ヾニノ  .:::::/     また、いく夫に怒られてしまうわ。
     ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
         |  \/゙(__)\,|  i |
         >   ヽ. ハ  |   ||


            ____
          /      \
        / ─    ─ \
       /   (∧)  (∧)  \
       |      (__人__)     |     旦那さん……
       \     `⌒´    ,/
       /     ー‐    \


        しかし口調は全く悔いのない、明るいものだった。


.


345 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:34:33 k48H3N8A0
これだけで絶対にただで済ませるわけがないよなー。

近年も食品偽装とかでブッ叩かれる店とか企業山盛りだし。


346 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:34:38 MuxeJ07Q0


       と、心斎橋の袂に一人の男が佇んでいるのを認めた。


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /::::::::::::::::::::U::::::ヽ
      /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
      |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l:::U:::::/   |||||||   ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ     井川屋の旦那さん…
        /≦ ヽ .|  | ≧
        { l  l |* *| | l
       { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^   


            先刻の藤誠の板長、ジャギであった。

  ジャギはダディに駆け寄ると、膝に額がつくほどに身体を折り曲げた。


.


347 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:35:05 MuxeJ07Q0


       :,.:::''::´:: ̄::`:::.、:
      :/:::::::::::::::::::::::::::::ヽ:
    : /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}:
    : l:::::::::::::ゝ---- ι:
    : |::::::::::::)  ◯  ○ (:
    :,l::::::::::::η U|||||||U ゝ:      この通りでおます。
    : ゝ---η.  |||||||  ゝ:
      : /≦ ヽ .|  | ≧:       ほんに、ほんに、
      : { l  l |* *| | l:
      : { .l  l .|  * | .| l:        お詫びの言葉もございまへん。
      :/  l  l | * | l l:
      :l ---l  l--  -l l:
      :|   `^^    `^:


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|        もうええ、もうええ。
   .   |   ´トェェェイ`  .::::::|
      \  `ニニ´  .:::::/        顔を上げなはれ。
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


             ダディは板長に優しく声をかける。


.


348 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:35:25 MuxeJ07Q0


        /\___/ヽ
       /''''''   '''''':::::::\
    .   |(●),   、(●)、.:|       大方、お前はんは私が承知の上でのことやと
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
    .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|       思てはったんやろ。
       \  `ニニ´  .:::::/
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、       ところでジャギはん、藤誠に入って
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |      どれくらいにならはる?
        >   ヽ. ハ  |   ||


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ       へ、へえ、
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧        かれこれ二十五年ほどになります。
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


.


349 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:35:54 MuxeJ07Q0


       __/ヽ_∠L_
      /:::::::     ''''\
   .   |:::::::::    (●), |
     |::::::::      ,,イ_,`)
   .   |:::::::::      ノ.-=ラ
      \:::::::      `フ      ほな、先代に仕込まれたんか?
   ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ      先々代と先代、
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧       お二人によう仕込んでもらいました。
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


.


350 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:36:31 MuxeJ07Q0


        /\___/ヽ
       /''''''   '''''':::::::\
    .   |(●),    、(●)、.:|      さよか、やっぱりなあ。
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
    .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|      先代がまだご存命やったら、
       \  `ニニ´ .u ::/
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      こないに不細工なことにはならんかったやろに。
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |     あんたも災難やった。
        >   ヽ. ハ  |   ||


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ       ……
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


       何もかも見通しているダディの言葉に、ジャギは唇を噛んで俯いた。


.


351 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:36:58 MuxeJ07Q0


       /\___/ヽ
      /''''''   '''''':::::::\
   .   |(●),   、(●)、.:|
     |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|      せやけどな、ジャギはん。
   .   |   ,rエエェ、  .::::::|
      \  ヽr-rヲ .:::::/      主人が間違うたことしてたら、
   ,,.....イ.ヽ`ー `ニ´ ―ノ゙-、
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i     それ諌めるんも奉公人の務めやで。
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /┛┗::::::::::::::::::::ヽ
        /:::::┓┏::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (      ……諌めても……
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ      …なんぼ諌めても、聞く耳持たん主やったら、
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l       どないしたらええのんか……
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


.


352 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:37:26 MuxeJ07Q0


   言ってしまって、ジャギは耳まで真っ赤になった。


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l:::U:::::///  ||||||| // ゝ     あい済みまへん、
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧      忘れてください。
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


    ダディの返事を待たず、ジャギはさっと一礼すると、

     島之内の町並みに逃げるように駆けて行った。


.


353 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:37:46 MuxeJ07Q0


           殿様の出来が悪いと、家臣が苦労する。

          店主の出来が悪いと、奉公人が苦労する。


        ____
       /    \
.    /          \
.  /    ―   ー  \    (武家も商家も、
  |    (●)  (●)  |
.  \    (__人__)  /     上次第で下が苦労するんは一緒なんやなあ)
.   ノ    ` ⌒´   \
 /´             ヽ


          ジャギの背中を見送りながら、やる夫は思った。


.


354 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:38:27 MuxeJ07Q0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


355 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:38:57 MuxeJ07Q0


 ダディはダディの、やる夫はやる夫の、それぞれの者思いに耽りながらの帰り道であった。


         /ロロロロロロ.\
   ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
   /ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
   、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
   ,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
   -ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
   ___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
   ___| |______| |______| |______| |______| |_
   |||| |||||||| |||||||| |||||||| |||||||| ||
   |||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
   |||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
   ====__=======(    )============== .∧,,∧==
        ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
          (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
        /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
         ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
         _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


       天神橋を渡り、青物市場を抜けて、漸く井川屋へと辿り着いた。


.


356 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:39:21 MuxeJ07Q0


 店の前に立ってそわそわとダディの到着を待っていたらしいやらない夫が、

           二人の姿を認めて、慌てて中へ駆け込む。


           __
          /ノ ヽ\
        /.(○)(○)\
        |. u. (__人__) |
       . |        |     番頭はん!
         |        |
       .  ヽ      ノ     旦那さん、お戻りになられました!!
          ヽ     /
          /    ヽ
          |     |
           |    .   |


.


357 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:39:51 MuxeJ07Q0


  入れ違いに、番頭が転がるように店から飛び出してきた。


        _____
      /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
      |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
      |::::::::/ \:三::/i:::|
      |:::::::〉( ○)::( ○).|
     .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       旦那さん!
       |  u   |i|!i|!|  |
      \    `⌒´ ,/       お帰りやす!
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


   :::::::::::::::/\___/ヽ
   :::::::::/    ::::::::::::::::\
   :::::::::| i|i|__,,,,,.ノ  ヽ、,,,_.::|
   :::::::::|  .゙  ̄"  |゙ ̄ " :::|
   :::::::::|     ` '     ::|       いく夫!
   ::::::::::\  /ヽニニ='ヽ::/
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.      すまん!
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


   機先を制するように、ダディは両手を合わせて番頭を拝む。


.


358 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:40:18 MuxeJ07Q0


      まるで子供が悪戯を親に詫びるように打ち明ける。


    /\___/ヽ
   /,,,,,,,,ノiヽ,,,,,,,,::::::\
.   | (>),ン < 、(<)、.:|
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|     堪忍や、いく夫。
.   |  r、_,ィェ、_,ゝ  .:::::|
   \   `ー'´   .::::/     私、藤誠との取り引きを断ってしもた。
   /`ー‐--‐‐―´\


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ⌒  ⌒ |
   |:::::::〉 ( >) (<)|      さすが、旦那さんだす!
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)
    |    /| | | | |  |
    \ (、 `ー―'´, /


  それを聞いたいく夫は、ぱん、と両手を打って誇らしげに声を上げる。


.


359 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:40:53 MuxeJ07Q0


     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ \  / |
   |::::::( ( >) (<)|
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)     それでこそ、この井川屋の旦那さんだす!
    |     |r┬-|  |
    \      `ー'´/       私の見込んだご主人だす!
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
     |  \/゙(__)\,|  i


    /\___/ヽ
   / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
.   |(●),.    、(●)、.:|      え、ええのんか?
  | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
.   |u    (^ー^>   。.::::|      また苦しいことになるんやで?
   \ ゚  ⌒´ u .:::/
,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、.


.


360 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:41:18 MuxeJ07Q0


       その時、一人の老人が井川屋の暖簾を捲って姿を現した。


            /:::::::::\____ /    l
             /:::::::::::...    o  /   /
          ∧ .i:::::::..         o i    /、.   ∧
          i ヽ:::..        o `‐‐ ´o \/ i
          |   \   ___ o   o__',  |
          |    ii   i:::ヽ__/i   i、_/i |  .!
         ∧     ||   |:::::::::::::::::i   |::::::::::| | /
      .  /  \  /     ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ | /
       ̄\  ! ∨::::.         o   o     レ \
          \ i \:::..        o   o   ∧   ヽ
           / ヽ  ヽ:::..           / ハ   〉 ̄ \
         /    リ\::::..           / / リ  /      \´ ̄
        /  /   ,'  \::..       /     / /         \


                 松葉屋の大旦那だった。


.


361 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:41:39 MuxeJ07Q0


     ダディは一瞬、大きく目を見張り、だがゆっくりと腰を落とすと丁寧に頭を下げた。


              /\___/ヽ
             /''''''   '''''':::::::\
          .   |(●),   、(●)、.:|     これはこれは、松葉屋の大旦那さん。
            |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
          .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|     お店の方へご挨拶にも伺わず、
             \  `ニニ´  .:::::/
          ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、     申し訳のないことでございます。
          :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
              |  \/゙(__)\,|  i |
              >   ヽ. ハ  |   ||


.       ∧
 / ̄≧-./ ',
./     /  /         _      r、
.    。〈_/。\  /i      i ',      i ',
  __。 。___ V i     i i     !_ i     ,-、
  |`‐‐'| i |‐‐'|  i i     |- ',    / ./   / !      井川屋はん、
   ̄ ̄。:|.。 ̄  .! /      .i   !_/  /   / /
      。:|.。   レ::\    i       〈__/ /       頼むさかいに、顔を上げてんか。
\    :!.     ∧:::::::\_/i            /\
  \      / i:::::::::/  /          i__ \      そうしてもらわんと、
   \___/! r‐‐‐、---'      / ̄     ̄二二ニl
    /  / i i `‐、__              / ̄/      私の方が恥ずかしいて消え入りたなるよってに。
   ___/| !   i   \__     /  /
    ̄ ̄   リ、   ヽ      i::::`-`―‐‐´ト、 /
        _\  ハ    \::::::::::::::::/ \


        来年古希を迎える松葉屋の大旦那は、ダディの手を取ってその顔を上げさせた。


.


362 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:42:03 MuxeJ07Q0


                               ト、
                  ,-、            ! ',
              /   \_∧__     /  ',
                /    ´  / i   \__/   !
            |      /   i   ・\   /
            | /   ,'    i    ・\/
            | /   i   ト、  ____ i          この番頭はんがな、
    _________レ   /i   │〉 |::::`‐‐| |
 /::: : : : : : : . .     ̄ \__i_//.   ̄ ̄ |          うちの店に来て、
'´::::: : : : : : : : : . . .        \   ̄ ̄ ̄i   :|
::::::::::: : : : : : : : : : . .        \    i-、__/-'ヽハ       何もかも全部教えてくれはった。
::::::::::::::::: : : : : : : : : . . .        \   i   \‐-、`ー'ノ
::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : . . .       \ i_    ゝ \ノ
:::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : . . .             \   \  `ヽ,
:::::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : : . . .          \        )、
::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\. .         i  \   / ノ


              ┌───────────────┐
              │                        │
              │    ┌─────────┐    │
              └──┼─────────┼──┘
                    │  ┌─────┐  │
                    └─┼─────┼─┘
                  └─────┘
                   ┌───┐
                   └───┘
                     ┌─┐
                     └─┘
                      □


363 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:42:27 MuxeJ07Q0


 今朝、ダディが店を出た後、いく夫はひとり松葉屋を尋ね、渋る大旦那に強引に面会、

             鈴三屋から聞いたことを洗いざらい話したのだ。


         _____
       /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
       |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|        井川屋の店主は筋の通らん商いはせんお人だす。
       |::::::::/ \::::::::/i:::|
       |:::::::〉( ●)::( ●).|        藤誠との縁もきっと自分で断ち切らはると存じます。
      .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
        |      ` ⌒´  |        せやさかい、大旦那さんがお疑いの件、
       \         ,/
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.       これでけじめとさしておくれやす!
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


             そして、取り引きの再開を懇願したのだった。


                  □
                ┌─┐
                └─┘
               ┌───┐
               └───┘
                    ┌─────┐
                  ┌┼─────┼──┐
                  │└─────┘    │
              ┌─┼─────────┼───┐
              │  └─────────┘      │
              │                        │
              └───────────────┘


364 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:42:43 MuxeJ07Q0


      /:::::::::\____ /    l
       /:::::::::::...    o  /   /
    ∧ .i:::::::..         o i    /、.   ∧       よもや、老舗の藤誠が
    i ヽ:::..        o `‐‐ ´o \/ i
    |   \   ___ o   o__',  |       あないな真似をするとは思わなんだ。
    |    ii   i:::ヽ__/i   i、_/i |  .!
   ∧     ||   |:::::::::::::::::i   |::::::::::| | /        いや、これも術無い言い訳やなあ。
.  /  \  /     ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ | /
 ̄\  ! ∨::::.         o   o     レ \       井川屋はん、どうぞ堪忍しておくんなはれ。
    \ i \:::..        o   o   ∧   ヽ
     / ヽ  ヽ:::..           / ハ   〉 ̄ \
   /    リ\::::..           / / リ  /      \´ ̄
  /  /   ,'  \::..       /     / /         \


               松葉屋は深々と頭を下げる。


.


365 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:43:02 MuxeJ07Q0


         ダディは困惑した顔で視線を天に向ける。


      /\___/ヽ
     / ,,,,,,,ノiヽ,,,,,,:::i|li:\
  .   |(○),   、(○)、 :|     いやいやいやいや大旦那さん、
    | ⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒ u.:::|
  .   |.u   (^・^>  。.:::::::|     どうか頭を上げておくんなはれ。
     \ ゚  ⌒´ u .::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i    (どないしよ、またいく夫に助けられてしもた)
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


        _____
      /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
       |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
       |::::::::ゝ \  / |
      |::::::( ( >) (<)|    いやぁ、さすがや!
      (@  ::::⌒(__人__)⌒)
       |     |r┬-|  |    さすがは、旦那さんや!!
       \      `ー'´/
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
        |  \/゙(__)\,|  i


      その横で、いく夫が誇らしげに笑みを浮かべる。


.


366 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:43:18 MuxeJ07Q0


 やる夫達は少し離れて、主と番頭の姿を眺める。


       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |         ____
      (__人__)  U   |          /      \
     l` ⌒´    |      /\    /  \
.     {         |      / (●)  (●)   \
      {       /      |    (__人__)      |
      ヽ     ノ      \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ       /             \
      |          |      |              |


 この光景を記憶に焼き付けておこう、と双眸を見開く。


.


367 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:43:35 MuxeJ07Q0


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_


         大川からの風が表通りを吹き抜けて、

        じっとりとした暑さを一時、持ち去ってくれた。


.


368 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:43:48 MuxeJ07Q0











                                           _________|\
                                          [|[||  次章へと続く…    >
                                            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/


.


369 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/18(土) 14:44:33 MuxeJ07Q0
第2章は以上です。

次章は来月初旬の投下を予定しております。
.


370 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:48:42 OMg6IwzI0
おつでした、いやー、面白かった


371 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:49:27 k48H3N8A0
乙でした。
藤誠、じりじり評判落ちそうですな。


372 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:51:13 d1L8QhNE0
乙です


373 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:52:06 34tGhxag0
おつおつ

誠のところがわざと井川屋を乏しめるために仕組んだ罠だったってことか・・


374 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 14:58:51 k48H3N8A0
>>373
深い考え無しに、「将軍家御用達」に飛びついただけじゃないかと。


375 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 15:02:18 pniXBEkQ0

ところで藤誠との話し合いの場にやる夫を連れて行った理由って何でしょう?
藤誠の主人が嘘を認めた事の証人としてかな
 
それにしても、大阪って豊家も帝も無い江戸なんて文化的にはゴミ屑ウンコ扱いだろうに、
嘘のリスクが合わないな…


376 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 18:05:52 uIVU2cac0



377 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 18:24:44 ZmgTGo1c0

おお、続きが気になるくらい面白い


378 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 23:38:20 RKg.Hiqg0

メインの登場人物たちが気持ちいい人物ばっかで見ていて面白いなぁ
いく夫がやる夫を認める日はいつごろになるのだろうか


379 : 名無しのやる夫だお :2014/01/18(土) 23:56:47 7fglie9M0

えらいおもろいでんな


380 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 10:24:54 Wh2alvsM0
>>373
そやないですやろ、いまかて食品偽装は履いて捨てるほどありまっしゃろ
代が変わって、俺の実力を見せたると意気込みはった藤誠の旦はんの
勇み足なんやろな、代が変わって目先の利潤しか考えへんボンクラが
商品の質落として儲けに走るて言うのんは、何ぼでもある話ですがな
しやさかいに、あの吉兆かて、先代はんの「商売と屏風は広げすぎたら倒れる」
という家訓をきれいさっぱり忘れてからに利潤と事業拡大に取り付かれた結果が
あのザマだすがな、それと一緒ですやろ。


381 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:16:41 VtAU4Trw0


        ヾ'''''''''-,へ
     ヾ ̄:ヾ: : : : : : : :ヘ_
   /: : : : : : : : : : : : : : : !     皆さまどうもありがとうございます。
   ~/: : !!/!/リ\!\!、:: : :!
    /!: / ノ    `ヽ  ヽ,/     1つ2つご質問的なものも頂きましたので
    レ!小●   ●  /~)
      |l⊃ 、_,、_,⊂⊃_ノ     >>1 の解釈を以下の方にご説明いただこうと思います。
      .ヘ        j
     /⌒l 、 -- _ 'イアヽ
    ./ヾ三},' ̄   ',:::::::::l     では、よろしくお願いします!
    .l:::::::::ノ     ',::::::::}


.


382 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:17:03 VtAU4Trw0


                      ∧
                   , -/ ',-、
                   / /  ', \
.               ∧  /   ゝ==ィ   ',  ∧
             | ヽ__i __: :___  i__/ |
  _____       ヽ i .i |`--'i i`--´| i. i /
/      / : : \   ≧ィ |  ̄ ̄. . ̄  | .i≦      ご紹介にあずかりました、
.      // : : : :::\  / ̄∧_  : :    ∧ ̄ ',
      / : : : : : : ::::::\i   i   `ヽ .::    /i::.  .:ヽ     山城屋の隠居でおます。
      . : : : : : : :::::::::::|   |   У_::___/  .i:.
      . : : : /  ̄  ̄   ノ   ハ__i   ヽヽ        拙い説明かと思いますが、
    . : ::::::/      .ゝ-i    lリ  ヽ、  ', `ヽ
    . : : :::/  ,、   `ヽ i   レ' , ' ,´ハ    ハ.      どうぞよろしゅうお頼もうします。
      .::/    };;ヽ ハ_ 彡ヽ   ヾ ノ /;;{  ',    i
     .:/   ノ;;;;;;i_i  __レ,  i∠_ノ;;;;;ヽ ヽ  /
   .::/    /;;;;;;;;;ヽ /;;;;;;;;;;;i  i /;;;;;;;;;;;;',  ヽ ,'
          !;;;;;;;;;;;;;} i;;;;;;;;;;;;;;;i / i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i  У
.          \;;;;/ |;;;;;;;;;;;;;;;У. \;;;;;;;;;/
    i      /‐--,\;;;;;;;;;/ 、‐--\


.


383 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:17:57 VtAU4Trw0


> 藤誠はなんであんなことをしたのか?


      /:::::::::\____ /    l
       /:::::::::::...    o  /   /            まあ、大方は>>380はんの言われてるとこだすやろな。
    ∧ .i:::::::..         o i    /、.   ∧
    i ヽ:::..        o `‐‐ ´o \/ i        商いやってる上で
    |   \   ___ o   o__',  |
    |    ii   i:::ヽ__/i   i、_/i |  .!        “掛かりをなるべく少のうしたい” 言うのは
   ∧     ||   |:::::::::::::::::i   |::::::::::| | /
.  /  \  /     ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ | /         商人にとって当然の想いだすが、
 ̄\  ! ∨::::.         o   o     レ \
    \ i \:::..        o   o   ∧   ヽ       ともすれば行きすぎてしまうもんだす。
     / ヽ  ヽ:::..           / ハ   〉 ̄ \
   /    リ\::::..           / / リ  /      \´ ̄
  /  /   ,'  \::..       /     / /         \


.


384 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:18:36 VtAU4Trw0


                               ト、
                  ,-、            ! ',
              /   \_∧__     /  ',
                /    ´  / i   \__/   !      今の世ぉでも“食品偽装”でしたか、
            |      /   i   ・\   /
            | /   ,'    i    ・\/        看板と品物が違うて騒ぎになったことあるらしいですが、
            | /   i   ト、  ____ i
    _________レ   /i   │〉 |::::`‐‐| |        この手の話は、残念ながら
 /::: : : : : : : . .     ̄ \__i_//.   ̄ ̄ |
'´::::: : : : : : : : : . . .        \   ̄ ̄ ̄i   :|        今も昔も絶えたことがござりまへん。
::::::::::: : : : : : : : : : . .        \    i-、__/-'ヽハ
::::::::::::::::: : : : : : : : : . . .        \   i   \‐-、`ー'ノ  商人にとっての“悪魔の囁き”っちゅうやつですわ。
::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : . . .       \ i_    ゝ \ノ
:::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : . . .             \   \  `ヽ,
:::::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : : . . .          \        )、
::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\. .         i  \   / ノ


.


385 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:19:21 VtAU4Trw0


.       ∧                          あと、井川屋はんを嵌める罠やろか、
 / ̄≧-./ ',
./     /  /         _      r、           ちゅう話がありましたけど、
.    。〈_/。\  /i      i ',      i ',
  __。 。___ V i     i i     !_ i     ,-、     それはたぶんないですやろ。
  |`‐‐'| i |‐‐'|  i i     |- ',    / ./   / !
   ̄ ̄。:|.。 ̄  .! /      .i   !_/  /   / /     言うたら気の毒やが、
      。:|.。   レ::\    i       〈__/ /
\    :!.     ∧:::::::\_/i            /\      井川屋はんは番頭一人に手代一人の小商いや。
  \      / i:::::::::/  /          i__ \
   \___/! r‐‐‐、---'      / ̄     ̄二二ニl  “天下の藤誠”にしてみたら、
    /  / i i `‐、__              / ̄/
   ___/| !   i   \__     /  /      象の前におる蟻みたいなもんや。
    ̄ ̄   リ、   ヽ      i::::`-`―‐‐´ト、 /
        _\  ハ    \::::::::::::::::/ \       わざわざ罠に嵌める必要もない。


.


386 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:19:46 VtAU4Trw0


                   _/ ̄ヽ
                ト-´-、     i‐‐'i
         ______r'  ̄ヽ‐'―‐、‐ '´`ヽ  ____
        / ヽ     ヽ         ヽ   i/   ヽ  ヽ
      /    ' ,      .  ' ,    i!  人    i
       i        .    iヽ、 `ヽ   i! /   iヽ.  l    i
       /  ̄ ̄ヽ i.     iヽ.\ i}   }ミ、  i i  |    !    まあ、このたびはその蟻が
      /  /   .i. !    | i /У、 /  ヾ i  !  .!     !
      i /    ./! i    | ヽ{  }ノ、 〃}/   l  ,'    /     象にひと泡食わせた訳やから、
      〉´  /  .! l     |      У     /     /.
      i     / ヽ ! l     |      i : .    /    ./ i     世の中っちゅうのは
      |   /   ! l     !       l : : .   /        .i
    /         /  !   /         ! : : : . /   /   │    わからんもんですな。
     i    _ ∧ _/__          i : : : : / /: .   __i
   /ヽ _////〉 ヽ,___/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ/ ヽ __i///i
  ////// /////i.  { ____/  ̄ ̄ ̄ ̄ヽ/   i////i///ii
  i///// //////   ヽ. ___/ 二二二ヽi     i////i///ii


.


387 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:20:13 VtAU4Trw0


> なぜダディは丁稚のやる夫を連れて対決の場に赴いたのか?


      /:::::::::\____ /    l
       /:::::::::::...    o  /   /
    ∧ .i:::::::..         o i    /、.   ∧
    i ヽ:::..        o `‐‐ ´o \/ i
    |   \   ___ o   o__',  |
    |    ii   i:::ヽ__/i   i、_/i |  .!       思うに、大人の始末のつけ方を
   ∧     ||   |:::::::::::::::::i   |::::::::::| | /
.  /  \  /     ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ | /       見せときかったんやないやろうか。
 ̄\  ! ∨::::.         o   o     レ \
    \ i \:::..        o   o   ∧   ヽ
     / ヽ  ヽ:::..           / ハ   〉 ̄ \
   /    リ\::::..           / / リ  /      \´ ̄
  /  /   ,'  \::..       /     / /         \


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388 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:20:40 VtAU4Trw0


                               ト、
                  ,-、            ! ',
              /   \_∧__     /  ',
                /    ´  / i   \__/   !
            |      /   i   ・\   /        人間、長う生きてたら、
            | /   ,'    i    ・\/
            | /   i   ト、  ____ i          いろんなことがあるもんだす。
    _________レ   /i   │〉 |::::`‐‐| |
 /::: : : : : : : . .     ̄ \__i_//.   ̄ ̄ |          喧嘩も揉め事も無い人生おくれたら
'´::::: : : : : : : : : . . .        \   ̄ ̄ ̄i   :|
::::::::::: : : : : : : : : : . .        \    i-、__/-'ヽハ       そら言う事ないけど、
::::::::::::::::: : : : : : : : : . . .        \   i   \‐-、`ー'ノ
::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : . . .       \ i_    ゝ \ノ    なかなかそういうわけには参りまへんわな。
:::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : . . .             \   \  `ヽ,
:::::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : : . . .          \        )、
::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\. .         i  \   / ノ


.


389 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:21:10 VtAU4Trw0


                      ∧
                   , -/ ',-、
                   / /  ', \
.               ∧  /   ゝ==ィ   ',  ∧
             | ヽ__i __: :___  i__/ |     いざ揉め事があった時、
  _____       ヽ i .i |`--'i i`--´| i. i /
/      / : : \   ≧ィ |  ̄ ̄. . ̄  | .i≦     どうしまいをつけるか、
.      // : : : :::\  / ̄∧_  : :    ∧ ̄ ',
      / : : : : : : ::::::\i   i   `ヽ .::    /i::.  .:ヽ    どう己と己の身内を守るか、
      . : : : : : : :::::::::::|   |   У_::___/  .i:.
      . : : : /  ̄  ̄   ノ   ハ__i   ヽヽ       これは実際にやってみんことには学べんもんだす。
    . : ::::::/      .ゝ-i    lリ  ヽ、  ', `ヽ
    . : : :::/  ,、   `ヽ i   レ' , ' ,´ハ    ハ.     ダディはんは、ええ機会や、て
      .::/    };;ヽ ハ_ 彡ヽ   ヾ ノ /;;{  ',    i
     .:/   ノ;;;;;;i_i  __レ,  i∠_ノ;;;;;ヽ ヽ  /     思わはったんやないかな。
   .::/    /;;;;;;;;;ヽ /;;;;;;;;;;;i  i /;;;;;;;;;;;;',  ヽ ,'
          !;;;;;;;;;;;;;} i;;;;;;;;;;;;;;;i / i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i  У
.          \;;;;/ |;;;;;;;;;;;;;;;У. \;;;;;;;;;/
    i      /‐--,\;;;;;;;;;/ 、‐--\


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390 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:21:43 VtAU4Trw0


  Ⅳ                 /⌒丶
  l Ⅴ              f      ヽ
  | Ⅴ               |      ::::',
  l::. ∨            }       ::
.   ':::.  \          ノ::::::::::::::::....  ::
   ’::    \   > '´ ̄ ̄ ̄  `ヽ::::. ::
、   ',::.  :::.'<             :::\:::
..l   ';:::::.......::::://         .: : : :. :.::::::/
..,...  ト、::::::://         .: : : :.::.  :/
 ',....../o 二 o′        .: : : :. :.:::.../
.  \/.   i              : : : :√ン
::.  ′ O.l O  -=≦二ヽ.  : : : :, ′
::::. ir ニ┐l o 「f、___/:l ’  : : :.i |   .::     とくにあの丁稚は武家の出ぇやと聞いてます。
\ |l|ゝ|.| |   l l::::::::::::::::」 _i  : : : :',',:::::::::::
  ヽ|{_l.|d O {_z≦ ― ´ .: : : :. :. :.、 \__/      なかなか、商人の流儀に馴染めんこともあるやろ。
   |  ̄´...,         .: : : :. :. :. :.ヽ 二
   l..  。l o        : : : : : : : : : : : : : :      なるべくいろんなことをやらせたろ、覚えさせたろ、ちゅう
  _j.     '        . : : : : : : : : : : : z≦
//∧   l       . : : : : : : : : : / /r≦7     ダディはんの親心やないやろうか。
___,ハ  0 ',O    . : : : : : : : : : : :}...i ∨//
> : : : ,   ,     . : : : : : 、zz≦⌒,∨///
  : : : : },.. o , o  . : : : : : : :/  .∧ ∨//
  . : : :.i::,  ',  . : : : : : : :/ィ´ .: : : :' ∨/
..: : : : : : l:::\:::::、__     / /ィ  .: : : : ', ∨
: : : : : : : ';: :i \'///≧==≦__/  : : : : : ’
: : : : : :/:ハ: :,: :ーr━━━':./   .: : : : : :;
: : :/}イ/::::l: :.、: :  :ヽ::::::::: : i ./ : : : : : : : :
/}/L |:::^::}  \   ': : : : i/Ⅳ : : : : : : : ハ_/
: :  、\: : :  : :ヽ : : : : :/: ::/  : : : : :.//´
    丶\.......::. ∨: : : /: : ::l.   .: : : : /′
       \ `:::}___z≦フi  . : : :./
          ヽ  「:/ | . : : : /


.


391 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 14:22:28 VtAU4Trw0
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|              以上が >>1 の解釈です。
      |´|
.     _,k|´|‐´`ー''7____
   k'´: : |´|: : : : : : : :<__       次章第3章ではメインヒロインが登場します。
   <´ : : :|´| : : : : : : : : : ,>
  / : : : |´|: : : : : : : : : :,>     既に申し上げております通り、
  `> : : : |´| : : : : : : :_: : `.、
   `、 _,;,;,|´|;_: : : : :,/ .iイ ̄     2月初旬の投下で考えております。
.   ,f´  . ̄ `ヽi'´ `´ ,!
  /      , '´:`.、-‐'        今しばらくお待ちいただきたくお願い申し上げます。
  ,!,,,,,,,,,,,,__  ',:.:.:.:.:ヽ
 f":::::::::::::: ̄`ヾ、:,;/,!
 i::::::::::::::::::::::::::::::::i ̄
 ヽ,;__'、;;;;;;;;;;;____;イ
.  `ー'    `ー'


.


392 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 14:35:21 f3hF.DYs0
乙でした。


393 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 14:37:35 suyN2Q5k0
乙様です。


394 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 15:41:38 uU9.tCgI0

すごく面白い


395 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 15:48:00 xwS1otC.0
乙!今回も面白かった
実際の地名が出て来ると、現代に残ってる地名と照らし合わせてしまうww
やる夫とダディが歩いていた頃より川も運河も大分減ったなあ・・・


396 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/19(日) 16:02:51 VtAU4Trw0
>>395
そんなあなたにこちらのサイトをご紹介。
ttp://onjweb.com/netbakumaz/oosakamap/oosakamap.html

江戸時代の大坂市内の古地図をPDFにしてくださってるサイト。
これ見ながら、「井川屋はここらへんで~」とかやってると、めっちゃ楽しい。


397 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 16:53:18 bUcZle3g0
乙です


398 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 17:16:32 LzHNXuNA0
乙です
切った張ったのない時代劇もまた、一種の迫力がある…


399 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 17:31:42 Wh2alvsM0
>>384
そない言うたら、思い出しましたけど、むかし大阪の商家ではあちこちに

[みてごさる]

と書いた紙が貼ったあったて聞いたことがありますわ、
「ちょっとくらい怠けてもええやろ」「これ位やったら誤魔化したかて客はわからんやろ」
たしかに、わからへんかも知らへんし、誰にも見られてへんかも知れん
せやけど、お天道さんが(もしくは神仏が)ちゃんと見てはりまっせ、気つけなはれや
という意味でその「悪魔の囁き」に、負けたらあかんで、ということやったて
なんぞで聞いたか読んだかしました。


400 : 名無しのやる夫だお :2014/01/19(日) 17:32:42 Wh2alvsM0
>>398
武士にとっては切った張ったが戦、商売人にとっては売った買ったが戦。


401 : 名無しのやる夫だお :2014/01/20(月) 02:31:14 /Qspql2g0
乙でした
昔に亡くなった祖父は船場の問屋の生まれだったらしく、俺が子どもの頃に聞いた話はこんなんだったなぁ
祖父が幼い頃に戦後の混乱で使用人に財産全部持ち逃げされて貧乏暮らしだったらしいけど、
金を持ってても持ってなくても人としての誠実さだけは持たなあかんってずっと言ってたわ
お天道さんが見てるからちゃんとしなあかんでってのは何回も言われたわ


402 : 名無しのやる夫だお :2014/01/20(月) 14:16:57 ecL8Etgg0

いい雰囲気の話で楽しんでます


403 : 名無しのやる夫だお :2014/01/20(月) 23:25:27 YpmLHVrI0
>>396
おお、作者さんありがとうございます。こうして古地図を見てみると
本町と船場の辺りは本当に運河だらけだったんだなあ・・・
御堂筋に沿って歩いてみても、オフィスビルばっかりでかつての名残は本願寺の別院(御堂)だけですからねえ。


404 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/30(木) 23:33:55 kx6jzo.Q0
ちょいとお知らせ。

この間、書店に立ち寄ったら、原作の文庫本に
『銀二貫 街歩きマップ』なるものがつけられておりまして。

原作者の方が自ら作成されたマップが付録となって販売されておりました。

ttp://www8.ocn.ne.jp/~obop2013/
少々画像は荒くなりますが、上記サイトでも確認可能です。

ご興味のある方は、最寄りの書店をチェックしてみるのもよろしいかと。
昨年の11月頃から配布していたらしいので、運次第ではありますが。


405 : 名無しのやる夫だお :2014/01/31(金) 18:52:55 DBxJSvJM0
コレ、漫画版を所々読んだことがあるな
たしか、ズボラ飯と同じ雑誌に載ってた
気になってたから、通しで読めるの楽しみだ

目次


406 : ◆8epcM/V4rs:2014/01/31(金) 20:36:34 0TiToU1I0
>>405
漫画版!そういうのもあるのか!!
(知らなかった)


2月2日の日曜日に第3章を投下したいと思います。
何事もなければ夕方ごろの予定。

.


407 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/01(土) 22:38:35 hKfefIY.0


                __,. -――- 、、_
               ,ィ'-'"´⌒^^⌒`丶丶、
              〃_r冖'⌒^^⌒'ー、_`ヾ'、
             /{ノ         ) ヽ、ぃ
            ノ /// / /  /  /}  i`、} 、
            \{ l i i,l+‐-/,ィ/‐リ-、 l | |l >
             | l |__l ィ=ミ´ノ ィ=ミ ノ/ , l イ         【一つの味】
             从ト トi、::::  ,  :::: メ/ノ,イ lト、
             / ク、下ゝ、 ー一  彳彡イl l lトミ 、      やる夫は浪速の商人になるようです
             / ノ/〈`ヽ``ニ=y=<ノ`l '、 l l l \ヽ、
          __/ノ / ,八、 ,'´  /  ヽ 入ヽヽ、l l \\                  【一つの恋】
       , '´イン /r'´、,:'^"'-、_ {、  _l,.,.,._ `ト、ヽ、  \\
      / /ノ / ゝ、 /^'t、,_  `'}ー'"   }  } ヽ 'ー、  \\
    ,イ / ノイ/  l У   `'ー人-‐ ''"~´'、_ノi、丶、 `ヽ、.ヽ ヽ
   / /,r'  ノ /   ,ト/      /三、    ヽーt、 ヽ  ヽ ヽ ヽ
  / / /  ノイ   / ノ      / | | 、    ヽ  l   ヽ  ヽ ヽ ヽ
 l l {   }/   l        / | | | ヽ      ヽ .l   {   〉 ヽ l


                             明日 日曜日17時より、第三章を投下いたします。


.


408 : 名無しのやる夫だお :2014/02/01(土) 22:41:53 NafwUUQI0
わーい


409 : 名無しのやる夫だお :2014/02/02(日) 02:32:03 DX01M4yU0
よっしゃー


410 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:02:44 i7D98ygY0

では時間となりましたので、ぼちぼち始めさせていただきます。


411 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:03:22 i7D98ygY0










                         第三章


                         翠星石









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412 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:03:56 i7D98ygY0


  藤誠の一件から、瞬く間に三年の歳月が流れ、天明三年(一七八三年)、睦月。


        /ロロロロロロ.\
  ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
  /ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
  、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
  ,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
  -ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
  ___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
  ___| |______| |______| |______| |______| |_
  |||| |||||||| |||||||| |||||||| |||||||| ||
  |||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
  |||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
  ====__=======(    )============== .∧,,∧==
       ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
         (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
       /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
        ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
        _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


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413 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:04:40 i7D98ygY0


 やる夫は初春の陽光に目を細めながら、天神橋を渡っていた。


         ____
       /⌒  ⌒\
     /( ●)  (●)\
    /::::::⌒(__人__)⌒::::: \/⌒)
    |     |r┬-|     | ノ
  __\      `ー'´     //
(⌒               |_,,,ノ
 ""''''''ヽ_         |         (ええ天気やなあ)
      |           |
      |         |
      i      ̄\ ./
      \_     |/
       _ノ \___)
      (    _/
       |_ノ''


   井川屋へ奉公に上がって五年、十五の春である。


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414 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:05:24 i7D98ygY0


 この三年で背はぐんと伸び、声も子供から大人のそれに変わった。


            ____
          /      \
        / ⌒    ⌒ \
       /   (●)  (<)  \
       |      (__人__)     |
       \     `⌒´    ,/     そうは見えんかもしれんけど、
      /_∩   ー‐    \
     (____)       |、 \    背ぇも伸びてるんやで!!
        |          |/  /
        |        ⊂ /
        |         し'
        \   、/  /
          \/  /
        _/  /``l
       (____/(_/


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415 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:06:29 i7D98ygY0


             何処からか、梅の香が流れてくる。


  ━┓
  ┏┛     ⌒
  ・      ___⌒
      / ― 乂____    ━┓
    /ノ  (●/   ― \   ┏┛
  . | (●)   |     (●) ヽ\ ・
  . |    (__ノl   (⌒  (●) |
  . │       〉     ̄ヽ__)   |    (こないな橋の上で、梅の香り?)
    \__/´      ___/
        /|          ヽ
         | |         |


      不思議に思ったやる夫はきょろきょろと視線を廻らせた。


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416 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:06:56 i7D98ygY0


   直ぐ前を歩く少女の髪に、簪代わりに梅の枝が挿さっていた。


                   _>   ̄ ` 丶  ___
               / 「          /   /
               /   v     / /::\  /
    .          /、          //::::::::::::::\'__
              /::::::::\    ',  /::::::::::::::::::::::::::::ヽ ⌒ー
            ′::::::::::::ヽ    . /::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ__
           |::::::::_,x┼::{     Y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
    .        ハ::::::ハ::ゝイ:ヽ   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    .         \:小ヽⅥ::i    {::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::
                  ノ''ノ:::}     }::::::::::::::::::::::::\::::::::::::::::
                 \ ̄!   /:::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::
                 `ゝ  .ハ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::
                ノ  , '-‐ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
                 /  /     \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
            /   /:\\    \:::::::::::::::::::::::::::::::::
            /  Y.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ     \::::::::::::::::::::::::::::
          {     ,{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.} }        \::::::::::::::::::::::


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417 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:07:29 i7D98ygY0


                   やる夫の頬が緩む。


          ____
        /      \
      / ─    ─ \             .イト
     /   (∧)  (∧)  \    (ああ、あの嬢さんの梅の香りやったんや)
     |      (__人__)     |
     \     `⌒´    ,/
     /     ー‐    \


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418 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:08:05 i7D98ygY0


 女衆などのお供が居ないところを見ると、商家の嬢さんではないのかもしれないが、

        上質な若草色の紬にさげ下結びの紅帯が良く似合っていた。


                           -- 、_
                             / /   \、
                            く  /  . ィ'|:|
                          |\/ : : : | lノ     ~~♪
                            /|: : |: : : : :.:|、\
                    |\_//|: : l: : : : : :「\  ̄ ̄ /
                   `ー― /7: : l|: : : : : ‘。::ヽ ̄ ̄
                (、\__,≫=7:/: : :.ハ: : : : : : ‘。::f≦))__   ノリ
                 \f:「__/;:'.: : :/^ヘ: : : : : : :‘。ヽ__ff⌒´ノ
           _rへ.__ ̄_/: /: /Ⅵ圦: : : : : : : :\ヽ}` ̄
        /\〈: : \: : : : : :_: :/ :/:::::::::::::ヽ: : : : : : : : :\             、
      rヘ { : : \、: : :  ̄ ̄ : : : : /::::::::::::::::::::::::\: \: : : : : `<ニニヽ  __/:⌒ヽ))
.       ヘ| : \: : : :_>、_ノ≦x ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::\: \: : : \: `:<ン ̄)-っ: :)ノ: :/
     ハ: : \ノ ̄ 《ヘ::::::::::::::::::ヾミx::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\: \: : : \: : _/ ̄´: : : /
    八ノノヽノ    \≧x:::::::::::::::ヾミニニニニ=x_____,>、: ̄ : : >――ァ´ ̄
      ̄          \ニニx:::::::::::::::::::::::::::::::`ー――――::::' ̄ ̄::__/ニニノ
                  \ニニx_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__ノ/=く
                  `マ二二二二ニニ=-x____ノ三ア_)   ノ
                       (_ヽ,_ |`マ二ニニ==― ´ ヽ,__/
                        |-、 |
                        人_j_)


    何が嬉しいのか、少女はぴょんぴょんと跳ねるように、長い橋を渡っていく。


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419 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:08:43 i7D98ygY0


          ____
        /       \
      /  ⌒   ⌒  \
     /  (●) (●)  \     あっ。
     l    ⌒(__人__)⌒    l
     \    lr┬‐ l    /
     /     `⌒´     \


    やる夫の口からおもわず声が漏れた。


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420 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:09:20 i7D98ygY0


 少女の髪から花簪がすとんと抜け落ちたのである。


               ∨∧
             ∨∧
                 ∨∧
               /⌒,二.´ ̄`ヽ、
                /  ̄∧ r'´ ̄ ̄`ヽ、
           ,. -ム‐=/ _」_!   /´ ̄`ヽ.
             / / / | { 〃x=ミ -- 、  }
          {  ∨ ,厶ィ't≠=ミX=ミ  Y
             '.   ヽ. | j川トミXミX __ノ
             ヽ.  ゙|  ,ハヾミXミX. Y´
            \__廴_/ 乂    ノ
               \__/` ̄´'.
                     ∨∧
                         ∨∧
                       ∨∧


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421 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:10:23 i7D98ygY0


                   慌てて拾い上げて、呼びかける。


                          ∩_
                         〈〈〈 ヽ
                 ____   〈⊃  }
                /⌒  ⌒\   |   |
              /( ●)  (●)\  !   !   もし。
             / :::::⌒(__人__)⌒:::::\|   l
             |     |r┬-|       |  /   梅の枝を落としはりましたで。
             \     ` ー'´     //
             / __        /
             (___)      /


                 ____
           ,、-‐ '´ _ヽノ__`ー-、`ヽ、,
          ,.ィ'´ __ ノ.lヽ    `ヽ、 `ヽ、
          /':´: ̄: : : : :  ̄`ヽ、,      ヽ   ヽ
       /: : : : : : : : : : : /: : : : : :ヽ _ヽlノ_丶   \
.      /:: :./: : /: : : : :./: :./: : : : : :ヽ/.lヽ i     \
.      ,': :.:/: /:///:/: :./: : :/: : : : l    l      ,ゝ
     l: : :l/_/////ヽ:l:.l: : :l: :.:l    l    ,ィ'´
.     l:l: :l!トモハ  /  ̄`'ヽ:l: : l!: : l    l   ,.ィ'´l
      l:、:ヽゞツ    イほハ'.、l: /: : l    l.,ィ'´:.: : l
.      ヽ!ー` '     弋:::ン.ノ`/: : / 、ル_ /: : :.: : :.:l        えっ?
       /ヘ 、 _          /: / ノハ./: : :.: : : : :l
      /. ヘ        //   ./: : : :.:/: : : :l
.      /_ヽレ./ー - ―、.' ´/   /: : : : : :./: : : : :l
     / ノ.ハ/     ヽ/   / |.: : : : : : :l:.: : : : :l
   /  /      /_、ル._/   l!: : : : : : :l: : : : : :l
  /  /     ./  ノ.i/ヽゝ,. l!: : :.: : : :.l: : : : : : l
/  /     ./   ./::::::::::ゝ ノ: : : : : : : l: :.: : : : :.l


                振り向いたのは、くっきりとした大きな目が印象的な、

                     雛人形のように愛らしい少女だった。

                     やる夫よりも、四つ五つ、幼く見えた。


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422 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:10:56 i7D98ygY0


: : : : : :|: : | : : : : : : : : : : : : : : : /: : : : : : / \: : : : : : ヽ : : : : : : : : l: :| {
: : : : : :|: : |: : : : : : : : : : : : : : :/l: : : : : : イ ´ ̄\ ̄`: :l: : :| : : : : : :l: :| {
: : : : : :|: : |: : : : : : : : : : : : / /: : : :/: :/     \: : :|: : |: : : : : : :|: :| {  ./
: : : : : :|: : l, -:‐ ̄`: :、 :/ ./ : : :〃.:/   ____\|: : |: : : : : : :|: :| {/.|: :
:.|: : : : :l/l: : : : : : : /ヽ /: : ://:/ /_z≠テ==ミ |: : |: : : : : : :|: :| {: : :|: :
: !: : : : :ヽ: l : : : :/___/_、-'´ //   彡て::ヘ\_ノ} !: :|: ,': : : : : |: :| {: : :.i :
: |: : : : : : `ヘ _,ィ≠テ=ミ   //     ヘっヽ::::::ソ/ |: /:/: : : : : :l :,'  { : : | :
: :',: : : : :ヽ: :ヘ"´{::ヘ\_ノl  /          ゝ─‐ "´ ,'/:/: : : : : :/:/  |: : : |:
: : :、: : : : : 、: ヘ ヽっ、:::ノj,             /////イ/: : : : : ://   {: : : i:      おおきに。
:ヽ: :ヽ: : : : :ヽ:ヘ  ゝ‐‐'´                / //: : : :/       {: : : |:
|: ヽ: :ヽ: : : : : ヽヘ//// 〈               / 〃 イ ´f _ヾ !! ノ_ !: : : |
ヽヘヽ: :ヽ: : : : : ヾ\                      / |:::::{  ノ li ヽ  {: : : :!
  \ \: \: : : : \        _ -'      /   l:::::i         |: : : :
      ̄{ ̄ ̄ ̄`丶、             /      l:::::{         { : : :
       f _ヾ!!ノ_ t::::::::>- _     /         |::::i _ヾ !! ノ_ | : : :
       |  ノ liヽ  {:::::::::::::::::::::|::::::::ア  ̄、          ゝ.{   ノ li ヽ {: : : :


                    言って、少女は手を差し伸べる。


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423 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:11:39 i7D98ygY0


                __,. -――- 、、_
               ,ィ'-'"´⌒^^⌒`丶丶、
              〃_r冖'⌒^^⌒'ー、_`ヾ'、
             /{ノ         ) ヽ、ぃ
            ノ /// / /  /  /}  i`、} 、
            \{ l i i,l+‐-/,ィ/‐リ-、 l | |l >
             | l |__l ィ=ミ´ノ ィ=ミ ノ/ , l イ
             从ト トi、::::  ,  :::: メ/ノ,イ lト、
             / ク、下ゝ、 ー一  彳彡イl l lトミ 、         高津さんの梅やの。
             / ノ/〈`ヽ``ニ=y=<ノ`l '、 l l l \ヽ、
          __/ノ / ,八、 ,'´  /  ヽ 入ヽヽ、l l \\
       , '´イン /r'´、,:'^"'-、_ {、  _l,.,.,._ `ト、ヽ、  \\
      / /ノ / ゝ、 /^'t、,_  `'}ー'"   }  } ヽ 'ー、  \\
    ,イ / ノイ/  l У   `'ー人-‐ ''"~´'、_ノi、丶、 `ヽ、.ヽ ヽ
   / /,r'  ノ /   ,ト/      /三、    ヽーt、 ヽ  ヽ ヽ ヽ
  / / /  ノイ   / ノ      / | | 、    ヽ  l   ヽ  ヽ ヽ ヽ
 l l {   }/   l        / | | | ヽ      ヽ .l   {   〉 ヽ l


                     ____
                    /⌒  ⌒\
                  / (⌒) (⌒)\
                 /  ::⌒(__人__)⌒:::
                 |       |::::::|   ,---、       そうだすか。
                 \       `ー'   しE |
                 /           l、E ノ       綺麗だすな。
               /            | |
               (   丶- 、       ヽ_/
                `ー、_ノ


                      高津社は梅の名所で知られていた。

                        誰からか一枝もらったらしい。


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424 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:12:43 i7D98ygY0


 やる夫から花枝を受け取ると、少女は左手で髪を探り、挿す位置を決める。


              /\    _,..-'ヽ、
             /, -‐''_>ュ<__,,.. .-+‐ー‐ー---┐
           /, ' '""~__      ``丶、      ,イ
          ∠イ'´"" ̄: :  ̄""'''‐-..,,_  ヽ    / |
        /: :/: :i : : i: : : : : :i: : : : : : : :`'ー、 `i   ./; ; 〉
       ./: : /: : ,' : : !: : : : : :!: :i|: : : : : : : : :i |  /; ; /
       l : : !: : .,' : : : : : : , : : ./i: : : : : : : : : :l |/ ; ; ,イ
       .l: : : : : :i : : : : : : ,ィ: : / .l ト、 : : : : : : l; ; ; ; ;/:.l
       l: : : : : :l: : : : : : / l: :/  _,l」ニ+-: : / : : |; ; ./: : |
      .|: : : : : :l| __,」ノ  | / '´ ヾ_,,ヾ.、_,': :l; ;/: : : :|
       |: : : : :‐|'´__ュ/  .l/   r'´i´;;;;;l 〉: : /イ: : : : .l    えっと……
       .i : : i: :./~rl;;;;i`  /    .' .ヤニソ ': :/※i: : : : : l
       ヾlヽ: :ヽ .!.kri         `´/ .イ   i: : : : : ::l
        ト: :ヽ: : `ー′      "" /イ ! ※.i: : : : : : l
        |::ヾ、ヽト ゝ   `     / ィ'i   i: : : : : : .l
        !: :i   ヽ、     _    , -'"トi※  i: : : : : : : l
        .l: : i ※ .i: :`:ー- ,,`_´,, - '  / i    i、: : : : : : l
        l: : .i   i r‐- ...,r'´ /  / ./i .※i〉7´ ̄`、_.l
       l : : i ※ iノ:.:.::.r'/  .!__/  ∠_i   .i >.:.:.:.:.:.`i
        l : : i   i:.:.:.:.:「/  __.|.|'      .i※ i 7:.:.:.:.:.:.i´
      /: : : :i  ※i:.:.:.:「/ /.ィl ト、     i   .i/:.:.:.:.:.:.:.:l
      /: : : : i   i:.:.:「/'´,イ i | | >     i ※.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..ト、
    / : : : : i ※  i:.「/ i 〈/./ト| |/     i   i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l


       一心に花簪を挿す少女の頬に、春の日が優しく降り注ぐ。


.


425 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:13:28 i7D98ygY0


       やる夫はつい、見とれてしまっていた。


          ___
        /      \
     /          \
    /   ⌒   ⌒   \     (可愛らしいなあ)
    |  /// (__人__) ///   |
  . (⌒)              (⌒)
  ./ i\            /i ヽ


.


426 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:13:53 i7D98ygY0


                   . __ ,. 二二 ___‐-=ミ
                  ,  ´/⌒^´___ ̄`⌒ヽ、`  .
.              /  / __r‐=彡'⌒⌒⌒ー=ミ、 \   \
.            /    /_ノ⌒′: : : : : : : : : : : : :ー=ミ ヽ   冫
.            \  /: : :.: : : :.: : : : :: :|{ : : : : : : : : : }}  /
                ∨.: : : :.: : : : :.:i : : :八 : : : : : : : : {{ |:´i
              .′ : : : : : : : : |: : / リ_\: : : : : : : :》 }}:.|
               i : : : : : : : : /|: / /´ x=ミx : : : |{{ {{.: :|
               |{: : 、_彡≧x.}/   〃fてハ}} : : 八 }}: |
            八: : : : :|{「fてハ      V::ツ: : :/》 《: : |      あっ。
.               / \: : |゛ 乂 ノ  ,    厶ィ〃   》 : |
.             /{{  \{ーヘ    、   イ: : : {{   {{.:.:.|
          /: : :リ    》 : : ≧=‐―rく,..-‐:=ミ}}   }}: :|
          /: : :.〃    《: rくこ/⌒\|__{::::::::::::〃  《:.: :|
       /: : : : 《       》し  {__/介|:::::::::::《    》.:.:|
.      / : : : : : }}    〃こ)   /}{ |,::::::::::::::》   {{: : :|
.       / : : : : : 〃     {{ し'   / {ノ /:::::::::::::{{     }}.:.:.|


     挿し方が甘いのか、簪はまた、いとも簡単に少女の足元に落ちた。


.


427 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:14:18 i7D98ygY0


 少女は急いで拾い上げると、少し考え、その梅の枝を帯の間に挟み込んだ。


         ,.ィ´  ※ _  ※ `ヽ`ヽ、
        ,ィ´/ , -‐'´ ̄: : : :`ー-、_   \ `ヽ
     , ‐'´ //: : : : : : : : : : : : : : : \.※ヽ \
    /   ./: : : /: : : : : : : : : : :.l: : : : \ ヘ  \
   \ /: : :/:./: : : : : : : : : : /:./l: : 、: : : ヘ ', /   \
.    ∨: : :.:/:./: : : : : : : /: : /:/:./: : :ヽ: : : :',. l   /
.    /: : : : l:/: : : : : : /:.//:/: : : : : l: : : : ',l  /
.   ,':/: : : :.l: _;,ム/‐''´///ヽ、:_: :.l: : : : :l/: :|
.   l:.l: : : : :l: l _,ムェュ、 / /' ,ィェュ、ヽ:`l: : : : :l: : : :.!
    l:ト、: : : ヘ'ヽ んハ  / ´ ん:ハ`7、!: : : : !: : : :.l
.    '! lヽ: : : \ ゞ-'       辷リ  /:/: : /!: : : : :!     うん。
      /: :`ー―`-    ,       //: ://: : : : :.l
.    /: : : ヘ  lヽ     _ ,,   /-'´ ./: : : : : :.l     これでええわ。
   /: : : : : 〉 ト、,>   , -、   , <: /  /: : : : : : : l
   /: : : :/::l  !´)`ー'/´ヽ_ヽ,´イヽーl ※ l:`V: : : : : :l
.  /: : : :/::::::::〉 l .,ィ=/ `ー、ノュ.    !  ./:::::ヘ: : : : : :l
 /: : : :/::::::::/ ヽノ《 ,'  _`ーノ、ヾヽ  l  l:::::::::ヘ: : : : :l
./: : :/:::::/※ 'l ゞ!ヽ ゝ'ノ   ノノ  .!  l::::::::::ヽ: : : :.l
':.:/:::::/   / r-'!`ー'`ーノ ゞ彳   !.※ !::::::::::::ヽ: : :.l
/::::::::/    / ゝ ゞ≠彳       .l   l:::::::::::::::ヽ: :.l
、::::::/  ※ / /´ゝ―、_,ノ       l   l:::::::::::::::::/: :l


.


428 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:14:46 i7D98ygY0


              少女はやる夫に、ほんのりとした笑顔を向けた。


            ', ,. イ.::; .:.:.,     .:.:.::::::::::.`ゝ、
            V/.::/.:.:/      .:.:l:! .:.:::::::::.`ヽ _」 _
          /. .,.ィ.:.::/    .:.:::::::.:.  .l:! 、 .:.:.:::::::::.`、下 .!
            /.:/ .::l:!.:./   .:.:.:.:::::::〃.:/::!::::.:.、 .:.:.:::::::.`、 /
          ./.:/ .::::l:|.:.:.  .:.:.:.:::::::::〃.:/.:::ト、::::.:.ヽ .:.:.::::::::Vヽ
         /.:/ .:.:::::l:|.:.:. .:.:.::::::::://.:/.::::ハト、.:.:::::', .:.:.:::::::!.::.',
        ./.:/ .:.:.::::::i:|.:.:'"´ ̄`>' /.:/.:::/ __  ヽ .:.l .:.:.:::::!::::::',
       l:::ハ .:.:.:::::::リ.:.:.:.:::::/ ノ.::/.:::/ ´  ̄` V:l .:.::::::j:::::::::
       |::| ',.:.:.:::::.ヽ`,≧三ミ、 /:/´ ¨`___   リ .:.:.:::/l.:::::::::
       |::|  ト、.:.::::::::.Y ´¨¨¨`     ,.ィヌ三ミx / .:.::/ リ::::::::::
       ヽ! {i \.:.::Λ ''''        ´"¨¨` /.:.::/ リ:::::::::::
          {i _」 _ハ .::ゝ    `       '''' /;:イ   リ.::::::::::::
         {i 下 j} 1.:::ト、   ` -ー      ノノ_」 _  リ.:::::::::i::::       おおきに。
         {i   j}. \.:.:::>.、        ノノ 下 ,.イi::::::::::|::::
         {i   j}  ,.'´   ``ニニニ"´ノノ   ,.イ:::i:l::::::::::|::::
            {i  jレ' -米‐ 「:に>介フノ_」_  ,..イ.:.:l::::l:l::::::::::|::::
           \〈    ノノl::,.ィイ.:/  下イ .i.::::|::::l:l::::::::::|::::
            ``~~´ ``フ.:::/ ,.'"´    .i.::::|::::l:l::::::::::|::::
                 /::/ ,.'´ ,r‐‐y‐─ ュ、::!::::l:l::::::::::!::::
                 /フ ^Y´ ,.r'".:.:.:.:::::::.:.:.`ヽ\:::l:l::::::::::!::::
              //シ'  j! ,〃.:.:.:::::::::::::::::::::::.:.\\!:::::::::!::::
                //シ'  j! 〃.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:\\.:::!::::


               そしてもう一度会釈をすると、くるりと前を向き、

               またぴょんぴょんと跳ねながら行ってしまった。


.


429 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:15:12 i7D98ygY0


           ____
         /⌒  ⌒\
       /( ―)  (―)\
      /::::::⌒(__人__)⌒:::::\    (髪に挿したったら良かった)
      |             |
      \              /


 やる夫は、少し悔いて、暫く、揺れながら遠ざかる紅帯を眺めていた。


.


430 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:15:37 i7D98ygY0


               と、大事な事を思い出す。


        ____
      /  ノ  ヽ\
     /  (○)}liil{(○)
   /     (__人__) ヽ
   |       |!!il|l|   |    (そや!)
   \        lェェェl /
    /         ヽ     (番頭はんが待ってはるんやった!)
    しヽ        ト、ノ
      |    __    |
      !___ノ´  ヽ__丿


              ____
      ―― [] ] /      三\
     | l ̄ | | . 三     \ 三/
     |_| 匚. | 三  .   ( ○) (○)'
        | |  三  u   (__人__)  |
         |_|   三    .  ` ⌒´ /
   [] [] ,-    r⌒ヽ  rヽ,  }
     //   三    i/ | ノヽ
   匚/     三   三   /    )≡
           三  三  /   /≡
         ニ三   ./   /
        二≡、__./    /、⌒)
        三          \  ̄
      三     /\    \
      三     /ニ ヽ 三   三
     三    /  ニ_二__/
     三  ./ .
   ≡  /  |
   ≡ /
  三_ノ

       天神橋をつんのめりそうになりながら駆け出した。



.


431 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:15:59 i7D98ygY0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


432 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:16:38 i7D98ygY0


   店に戻ると、いく夫が眉を吊り上げて待っていた。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \:三::/i:::|
   |:::::::〉( ○)::( ○).|      遅い!
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
    |  u   |i|!i|!|  |      何をのそのそしてるんや、
   \    `⌒´ ,/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.     日が暮れてしまいますで!
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


        ____
      /     \
     / _ノ  ヽ__  .\
   / (○)!i!i(○)   \
   |   (__人__)  u    |
   .\   )t-ツ     /    す、すんまへん!
    /   ⌒´      \
    \_(__)      i\(__)
     |          |


.


433 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:17:11 i7D98ygY0


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \::::::::/i:::|
   |:::::::〉( ●)::( ●).|
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)      お前はんの『すんまへん』は聞き飽いた。
    |      ` ⌒´  |
   \         ,/      早う、この荷ぃを負いなはれ。
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


            常にも増して、いく夫は苛立っていた。


.


434 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:17:46 i7D98ygY0


 昨年の暮れ、年長の丁稚が逃げ出した。


           ____
         /_) (_\
       / 【●】| |【●】\
      /      _| |_,.    \
      |      .\/     .| 。
      \     =ニ二ニ=  。;つ  ペッ


           ____
      .   /     \
        /   _ノ '' ⌒\
      /    (● ) (● ) \
      |    :::::⌒,  ゝ ⌒::::|
       \      `ー=-'  /
   ⊂⌒ヽ/           ヽ /⌒つ
     \ ヽ  /       ヽ    /
      \_,,ノ        |、_ノ


 次いで、手代が店を引いてしまったのである。


.


435 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:18:20 i7D98ygY0


 世は不況、扱うのは寒天という地味な食材、

      店主は還暦を過ぎた老人。


          /\___/ヽ
         /''''''   '''''':::::::\
      .   |(○),   、(○)、.:|
        |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
      .   |   `トェェェイ '  .::::::|
         \  `ニニ´  .:::::/
      ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
      :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
          |  \/゙(__)\,|  i |
          >   ヽ. ハ  |   ||


            _____
           /:::::::::::::::::::::::::::.\
          |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
          | ノ   \  i:::::::|
          |(─) (─ ) 〈::::::|
         (⌒(__人__)⌒:::: @)
          |  |r┬-|  u  |
          \ `ー'´    /
         ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
        イ / |.!、 _____ / ノ |   i
        | i  |,/(__)ヽ/   |   l


 おまけに壮年の番頭が暖簾分けもされずにいるのだ。


.


436 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:19:02 i7D98ygY0


          このまま奉公を続けても、

 先行きに何の楽しみも抱けない、と思ったが故らしかった。


      :::  ::: ::  :::  ::::  :::  :::
        ::::::  ::   ____  :::::  ::::  ::
        ::::::  :::::/.::::::::::::::::::::::::.ヽ :::   :::   ::
         :::  :::|.::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|::  :::  ::
         ::::  |::::::::/  ─  ─ | ::  ::
         ::  (@ ::  .(○) (○)|  :  ::::
          :  | :::::⌒(__人__)⌒) :  :::
          ::::  \    ` ⌒´ / :   :::
           ::  ノ        \ :   :::
            /´          ヽ  :::


  年月をかけて仕込んだ奉公人二人に去られたことが、

            いく夫には痛手だった。


.


437 : 名無しのやる夫だお :2014/02/02(日) 17:19:22 8GhMhXD.0
若い連中からみれば、上はとっとと隠居して俺らに場所を譲れ、か。

それがままならないからケツまくり…。


438 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:19:32 i7D98ygY0


     彼は、丁稚のやらない夫とやる夫に混じって、

 自分も雑用をこなさねばならない立場に戻ってしまったのだ。


.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_____
.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.::::::::::::::::::::::::::ヽ
.:.:.:.:.:.:.:/:.::::::::::::::::::::::::::::: ヘツ
.:.:.:.:.:.:.:|:::::::::::::::::::::::::::::/ ⌒|      この年で使い走りやと……
.:.:.:.:.:.:.:|::::::::::::::::::::::::::::〉 (O|
.:.:.:.:.:.:.:|:::::::::::::::::::::::.(@ ⌒ )     なんでこないなことに……
.:.:.:.:.:.:.:.|:::::::::::::::::::::ノ   i-|
.:.:.:.:.:.:.:.:.xア''ー'゙'ー''、.   `ノ
.:.:.:.:.:.:.:/ ー`¨`''''ーゝ─ ゙-、


.


439 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:20:11 i7D98ygY0


       _____
      /:::::::::::::::::::::::::::.\
     |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
     | ノ   \  i:::::::|        次は船越町や。
     |(─) (─ ) 〈::::::|
    (⌒(__人__)⌒:::: @)        まだ付き合いの浅い店やさかい、
     |  |r┬-|  u  |
     \ `ー'´    /         私も一緒に行かなあかん。
    ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
   イ / |.!、 _____ / ノ |   i
   | i  |,/(__)ヽ/   |   l


         ____
       /      \          へ、へえ。
      / ─    ─ \
    /   (○)  (○)  \       (今日は番頭はんと一緒か……)
    |     (__人__)    .|
     .\     ` ⌒┃   ,/       (気ぃ重いわ……)


                正直気が滅入る。


.


440 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:20:32 i7D98ygY0


            船越町は、井川屋からそう遠くはない。


      /ロロロロロロ.\
ノ从 (")  、| 日門日|ノ'、| i | ___,,,..........,,,__li___,,,..........,,,__   li レ|i i i| |.|
/ロロロロロロ.\,,ミ 彳ゞ 木 / ,~ ,~~  ,~~ ~~~\ i /ロロロロロロ.\
、| 日門日|`|li|  i i_,,,-ー~~ ̄    ~~    ~~~    \、| 日門日|
,,ノi|i Lノl__,,,,,-ー''"~  ~~    ~~~~ ~  ~~ ;;;;~\` 、 l /ロロロロロロ.\
-ー''"~   ~~     ~~ ;;;;;;  ~~ ;;;;;;  ~ 、| ~   \ ` 、| 日門日|
___.○______,○______,○___\_ __,○___\____,○__
___| |______| |______| |______| |______| |_
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|||| |||||||| || ∧_∧ || |||||||| |||||||| ||
|||| |||||||| ||( ´∀`) || ||||| || |||||||| ||
====__=======(    )============== .∧,,∧==
     ヽ|__ノ)    モォ ((  人 Y             ,ハ,,ハ       ノリノリハレリ
       (‘-‘ ハ   _)_, ―‐ 、し(_)    ∧,,∧     ( ゚ω゚ )     パー゚,ノリハ
     /(Y (ヽ_ /・ ヽ     ̄ヽ     彡・ー・ミ    ノ^ yヽ     リ( †リとリハ
      ノ___ゝ  ` ^ヽ ノ.::::::__( ノヽ    と @つ    ヽ,,ノ==l ノ   ハ/  '' ヽハリ
      _/ヽ      /ヽ ̄ ̄/ヽ        |  ,O     /  l |.,,   リ<ノ、ノ_,i_,ゝハ


      天神橋を渡り、松屋町筋を少し行けば直ぐの距離にある。


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441 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:20:54 i7D98ygY0


       いく夫は天神橋を渡る前に、

  天満宮の方へと向き直ると、深々と頭を下げる。

   いく夫が天神橋を渡るときの習慣であった。


              __
            ,.' ";;;;;;;;;;;;;;;;;,\.
         . /; ,;;;;;;;;;;;;;_;;_;;_;;_;;_ヽ
         /,; ;;;;;;;;;;;;;;/     ヾ
         ヾ、`/ ̄     \  ̄` 、
          ,/          \  ヾ \
         l::l ヽ、       ___、_,_\.\
         |::::l  \    /   ヽ  ` .、j
         l::::::|   ヽ、 /      i    |
         ヾ::::ヽ   \       .|    /
          `::::シ、_   三}  __.ノ、_ ./
              、ー-ー'"    ./   /
              |::|    ,  〈  , 〈
              |::|   /   l  '  l
              l::l      /   /
            __ ,l::|    __./__/
           (ヽ   `ー ' ".ii,|   ii |
             ̄ ̄


            ____
     .     /      \
     .   /         \
     .  /     ─    ─ \
     .  |     .(ー)  (ー)  |
       \     (__人__)  ,/
     .   / |   レ兮y′/ l
       〈  く   ∨ l/ ,イ |


   やる夫もいく夫と一緒の時はこれに倣って頭を下げる。


.


442 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:21:38 i7D98ygY0


   お辞儀が終わると、いく夫はいつも同じ話題を口にする。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    |.::::::::::γ ⌒ Yノ(ヽ|
    |:::::::::/  _ノ  ヽ|::!    やる夫、
   |::::::/ノ( ●━●〈:|
   (@  ⌒  (__人__) )    『曽根崎心中』て知ってるか?
    |       ` ⌒´ .|
    \  ノ(    ./
    /  ⌒    \


         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |    (うわ、またこの話や)
    \     ` ⌒r'.二ヽ<
    /        i^Y゙ r─ ゝ、  へえ。
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!


 やる夫はうんざりする気持ちを悟られぬよう、神妙な面持ちで頷く。


.


443 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:22:13 i7D98ygY0


              _____
           /:::::::::::::::::::::::::::.\
            |/⌒Yノ(⌒ヽ:::::::.|
             | _ノ  ヽ、  .i:::::::|
             | ●━● ノ( ::::::|
             .( (__人__) ⌒ :::@)
          .| `⌒´   ノ(   |    知ってんねやったら、言うてみい。
              .\     ⌒ /
           /       \
          /              ヽ
         ./ イ::      、    ',
         /   j::        i   i


             ____
           /      \
         /           \      近松門左衛門、いうお人が
        /   _ノ ::::::: ゝ、  \
          |   (○)  (○)  u |     作らはった浄瑠璃だす。
        \   (__人__)   ,/
        /    `⌒´    \


.


444 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:22:37 i7D98ygY0


           _____
         /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
          |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
          |::::::::ゝ ―  ― |
         |::::::( ( ─) (─)|       どんな筋や。
         (@  ::::⌒(__人__)⌒)
         l^l^ln    ` ⌒´ |       言うてみなはれ。
         ヽ   L       /
       ,,.... ゝ  ノ_、___ ーノ゙-、
      .i /  / '; \_____ ノ.| ヽ
      l /   /   \/゙(__)\,|   i


         ____
       /   u \        へえ。
      /  /    \\
    /  し (○)  (○) \     確か、借りた銭を返せんようになって、
     | ∪    (__人__)  J |
    \  u   `⌒´   /     男と女が心中する話だす。


     丁稚のやる夫が、人形浄瑠璃など見にいけるはずもない。

   ただ、この五年の間、折に触れていく夫が言って聞かせるために

             話の筋は骨身にしみていた。


.


445 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:23:03 i7D98ygY0


        _____
      /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
       |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
       |::::::::ゝ ノ^,  ^ヽ |      せや。
      |::::::( ((・) ((・) |
      (@  ::::⌒(__人__)⌒)     よう知ってるやないか。
       |     |r┬-|  |
       \      `ー'´ /      借りた銭は幾らやったんや?
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
        |  \/゙(__)\,|  i


          ____
        /   u \
       /  \    /\
     /  し (>)  (<) \        銀二貫……だす。
      | ∪    (__人__)  J |
     \  u   `⌒´   /


.


446 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:23:25 i7D98ygY0


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    |.::::::::::γ ⌒ Yノ(ヽ|     せや。
    |:::::::::/  _ノ  ヽ|::!
   |::::::/ノ( ●━●〈:|     銀二貫。
   (@  ⌒  (__人__) )
    |       ` ⌒´ .|      まさに銀二貫。
    \  ノ(    ./
    /  ⌒    \


           ____
         /:::     \
       /::::::::::     \
      /::::::::::         \
     |:::::::::::::::         |  …………
    /⌒:::::::::      ⌒ヽ/
  ;/::::::::::::            \;
  ;/::::::::::::::          \ ヽ;


.


447 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:23:53 i7D98ygY0


            _____
           /:::::::::::::::::::::::::::.\
           |/⌒Yノ(⌒ヽ:::::::.|       ええか、やる夫。
           | _ノ  ヽ、  .i:::::::|
           | ●━● ノ( ::::::|       『曽根崎心中』は、ただの絵空事や無うて、
           .( (__人__) ⌒ :::@)
          .| `⌒´   ノ(   |       ほんまにこの大坂であった心中事件をもとにしてるんやで。
           .\     ⌒ /
           /       \       銀二貫ちゅうのは、命かけなあかんほどの大金なんや。
          /              ヽ
         ./ イ::      、    ',     お前はん、それをわかってなはるのか?
         /   j::        i   i


           _-─―─- 、._
         ,-"´          \
        /              ヽ
         /       _/::::::\_ヽ
       |         ::::::::::::::  ヽ  へ、へえ……
        l  u    ( ●)::::::::::( ●)
       ` 、        (__人_)  /
         `ー,、_         /
         /  `''ー─‐─''"´\


                 番頭のきつい口調に、やる夫はしおしおと項垂れた。

             そんな丁稚をじろりとにらんで、いく夫はわざと大きく溜め息をつく。

                     これも、いつも必ずする仕草であった。


.


448 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:24:25 i7D98ygY0


       _____
      /:::::::::::::::::::::::::::.\
     |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
     | ノ   \  i:::::::|        ほんまに、何でうちの旦那さんは、
     |(─) (─ ) 〈::::::|
    (⌒(__人__)⌒:::: @)       あの時、大事な銀二貫、
     |  |r┬-|  u  |
     \ `ー'´    /        あないな使い方しやはったんか……
    ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
   イ / |.!、 _____ / ノ |   i
   | i  |,/(__)ヽ/   |   l


       _-―――- 、._
     ,-"´          \
    /              ヽ
    ./       ::::::::::::::::::::::::ヽ
   |      :::::::::::::::::::::::::::::::ヽ      ……
    l       :::::::::::::::::::::::::::::::::;l
   ` 、        (__人_) .;/
     `ー,、_         /
     /  `''ー─‐─''"´\


 番頭のぼやきが、彼に対する憎悪で胸が一杯になっていたやる夫を引きもどす。


.


449 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:25:11 i7D98ygY0


       /  ̄ ̄ ̄ \:
      ::/        ::::\:
     ;: |          :::::::| :
      \.....:::::::::    ::::, /
      r "     .r  /゚。     (せや、番頭はんが嘆くんもしゃあない)
    :|::|     ::::| :::i
    :|::|:     .::::| :::|:       (全部私のせいなんやから……)
    :`.|:     .::::| :::|_:
     :.,':     .::(  :::}:
     :i      `.-‐"


.


450 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:25:54 i7D98ygY0


 始末、才覚、神信心 ― この三つは、大坂の地で商いをする者にとって、

         日々の要となる大切な心がけであった。


        Π                                Π
        旦三l二二l二二l二二l¨/^\¨l二二l二二l二二l三旦
        /               //'^\\               ∧
       /             //`¨O¨´\\             ∧
      /            // 〔王l王l王〕 \\           ∧
      /          </=======\>.          ∧
     /    ,′                              `,   ∧
    /    /             γ´三三三ヽ           \   ∧
    /    乂ゞ 、        /゙/  ◎   ヾヽ         , 彡丿  ∧
   ≪亞亞亞`<三三三三三彡` ‐-((t))-‐ ´乂三三三三三彡´亞亞亞≫
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l〈〉ll=(Y)=ll〈〉l| |        | |
        | |        | |l=ll=(Y)=ll=l| |        | |
        | |        | |l=ll=GQ=ll=l| |        | |
        | |        | |l=ll=.从.=ll=l| |        | |
.   o   . | |        | |l=ll=ll=ll=l| |        | |   o
    ||=ll=ll=ll=ll=ll=ll=l┌―――‐┐f=ll=ll=ll=ll=ll=ll=||
    ||_||_||_||_||_||_||_||l_.奉納_.!.l|_||_||_||_||_||_||_||
   [二二二二二二二二二二二|l三三三三l|二二二二二二二二二二二]
     | .|:::::::::::::::::::::::| .|::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::| .|:::::::::::::::::::::::| .|
     凵:::::::::::::::::::::::凵::::::::::::::::::::::|l三三三三l|::::::::::::::::::::::凵:::::::::::::::::::::::凵
                //_ _ _ _ _ _ \\
              //_ _ _ _ _ _ _ _\\
            //_ _ _ _ _ _ _ _ _ \\
           //_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _\\


 収支を守って身を慎み、知恵を絞るだけでは、ひとかどの商人とは呼べない。

  神仏に感謝する気持ちがあって初めて、真の大坂商人と呼べるのである。


.


451 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:26:21 i7D98ygY0


  店が焼け残ったにも拘らず、天満宮再建のための寄進をしなかったダディは、

      仲間内でことあるごとに「恩知らず」と、陰口を叩かれていた。


                      ∧,,∧  ∧,,∧
                   ∧ (´`д´) (`Д´ ) ∧∧
                  ( `・Д) U) ( つと ノ(ヘ・´ )
                  | U (  `・) (・´  ) と ノ
                   u-u (l    ) (   ノu-u
                       `u-u'. `u-u'

        /\___/ヽ
       /''''''   '''''':::::::\
    .   |(●),    、(●)、.:|
      |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, u::|
    .   |  u `-=ニ=- ' .::::::|
       \  `ニニ´ .u ::/       :::  ::: ::  :::  ::::  :::  :::
    ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、        ::::::  ::   ____  :::::  ::::  ::
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       ::::::  :::::/.::::::::::::::::::::::::.ヽ :::   :::   ::
        |  \/゙(__)\,|  i |        :::  :::|.::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|::  :::  ::
        >   ヽ. ハ  |   ||        ::::  |::::::::/  ─  ─ | ::  ::
                            ::  (@ ::  .(○) (○)|  :  ::::
                             :  | :::::⌒(__人__)⌒) :  :::
                             ::::  \    ` ⌒´ / :   :::
                              ::  ノ        \ :   :::
                              /´          ヽ  :::


   そのことで一番、胸を痛めていたのは番頭のいく夫だったのである。

   何とか一日でも早く、とは思うものの、大店ではない井川屋にとって、

        銀二貫はそう容易く貯まる額ではなかった。


.


452 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:26:44 i7D98ygY0


             ____
           /      \
         /           \      (何とかせな……いうても、
        /   _ノ ::::::: ゝ、  \
          |   (○)  (○)  u |     丁稚の私にできることなんぞ無いしなあ……)
        \   (__人__)   ,/
        /    `⌒´    \


  やる夫にできるのは、愚痴を漏らして嘆く番頭に、ただ黙って頭を下げることだけだった。


.


453 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:27:11 i7D98ygY0


      気がつくと、昼八つ(午後二時)の鐘が鳴っている。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \::::::::/i:::|       あかんあかん、
   |:::::::〉( ●)::( ●).|
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       ぼちぼち行かな、それこそ日が暮れてまう。
    |      ` ⌒´  |
   \         ,/       ほれ、早よ、ついて来なはれ。
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |     へえ。
    \     ` ⌒r'.二ヽ<
    /        i^Y゙ r─ ゝ、
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!


      二人は松屋町筋を左に折れて、船越町に入る。

     その一角にある料理屋が、二人の訪ねる先だった。


.


454 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:27:43 i7D98ygY0


    老舗ではないが、美味い肴を出すことで酒好きの客の気を引き、

            そこそこに繁盛している店だった。


        ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
       ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
      ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
     @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
        |             ┌─────────┐
        |    ┌──┐ │  居酒屋  〈網婆〉  |
        |    │  酒│ └─────────┘
        |    │上  │  :========:.:========:  ┏┓
        |    │  盛│  |i.     l||i.     l|  (三三)
        |    │等  │  |i.     l||i.     l| .(三三三)
        |    └──┘  |i_____l||i_____l| .(三三三)
        |              |┬┬┬┬||┬┬┬┬|  (三三)
        |              |┼┼┼┼||┼┼┼┼|  ┗┛
        |_________________|┼┼┼┼||┼┼┼┼|_______
                     . ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄


.


455 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:28:09 i7D98ygY0


                 店の裏に回り、板場に声をかける。


              _____
            /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
             |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
             |::::::::/ ⌒  ⌒ |
            |:::::::〉 ( ●) (●)|
            (@ ::::⌒(__人__)⌒)         ごめんやす、井川屋だす!
             |     |r┬-|  |
             \    `ー'´ /          ご注文の寒天、お届けにあがりました!
         ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
         :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
             |  \/゙(__)\,|  i |
             >   ヽ. ハ  |   ||


               ____. __
             .,.‐´     '',,`',:::::::`‐、
           ./::::::::'゙゙,     ';'`、,;;:::::;;;;;\
           /:::::::::::::;;'゙´       `、 ;彡;;;;;:::\
          .{::::::::::::::::`::::',ッ'';;'';'';';';;;`、彡彡;';;;;;;i
            i';::::::::::::; .:::;:,_____、,__,::; ;::i
          ;‐,'-,;__;..::'::|゙          i::;; ;::i
          /::::`'‐,r':; ,::;;;}‐──────‐}: :, ;;゙i      ああ、すまんなあ、わざわざ。
          .i゙;::::` .::;´:::: ::::} ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}:';; .:゙i
          .゙i::::: ,::: .::::: _,;;l゙____,..、____|:;, '' ,;;i.
        .i゙:::`::::;;;`..;` ::|;;;;;`‐゜ー';;;;; i;`‐゜‐';l:;'::';,,゙i
        ,-゙:: ::;',:::::゙゙'゙ _;;;}         l::::::  i:::::; Y'
      .∠;;:`.::;`::::: ;;;;''゙::|          l:::::: i:;' ;;, ゙i
  ._、゙ィ;;::::`:::';::''`;;;;:: ,;|,.    、 ゙ィ,,,__}::: i:::;' ;;i'`
 ̄ ̄   ';;;;'''',,,'::::::::'::::;':::}:`、    ̄ニニ¨ /; ノー'´\
     ゙,,_ッ;;:::::::::.::;`:;;;;}::::::`、     '''  /:; ;i`、   \
        '''' ッ:;;;; .:;;''`:i  :::::::\,,   _/:::;i` i .`、    \
          ッ'''::::. ':::::::i   ::::::::::: ̄''';;ト' ゙  |  `、


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456 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:28:30 i7D98ygY0


         いく夫が店主と話をしている間に、やる夫は台の上で風呂敷の荷を解く。


                      / ̄ ̄ ̄ \
                    /       . \
                   /  _ ノ   ヽ、_   \
                  .|   (ー)  (ー) .  |     よいせっと。
                   \    (__人__) .  /
                    /    `⌒´    ヽ
                   ヽ、二⌒)   (⌒ニノ


            ノ.:ノ.:::::::::::::::⌒ヽY.::::::::::::.`ヽ::.ヽ
              〃〃.::::::〃〃⌒ヾVx≦、::.`ヽ:::::::ハ
            〃〃:〃.::::::{::{       }:::::ノ:}:::::::::}
            {{={{::::{{:::{:::八{二二二ニニミ/:ノ}.:::::::ハ
             {{:::{{ 〃八(__,ノ__ ,    〃:::X/.::ノ:} } }
  ― -- =ミ   八八{:::{.::::::て 。ユノ八≧=‐-v'.::〃ノノノ
.          `Y:: ハハ:Y:::::::厂 ̄ ̄{ {`ニ゚ニ:::::::::::〃/
.         ノ.: } :}:从::::/  .:::::r_、_}〉::..  `Y::::八{        あ、ちょっとその寒天、見せてんか。
       /.::: ノ ノ.::::}}::{  、___ヽノ___,  ,::::::{ { ハ-,
      〃.::: 〃〃.:::八{  トーーー-一'  /.:::::}} }::::} l
`ヽ.     {{::〃〃.::::::::/.:::ハ  K´   }/ /.::::::ノノノ:::{ l
  i   〃::{{:::{::::::::::i:{八{∧  `=‐--=′/{:::::〃〃.:ノ l
  li  _从::从八{:::::从 {  ヽ.::::( ̄   .イ }::::} } 八/⌒ヽ/⌒ヽ. _
 ⌒Y´ ' }ハ |i ヽ(ヽ ヽ!   ヽ=--=彳  ノ从八ノ' |_  .イ  /   \
 、_丿      |i    \\______/ /    し' ノ |し'丿/     `ヽ
 、__|      |i       {\ ー-      /|    | ̄  `T  |_  /
   ハ、    |i_     {  「厂 ̄「厂 ̄「{  ノ  __|_   ノヽ. し_ノ/
    \ / }ト ..    {i__|{__l{__|{/   (   `Y       / 、/


            店主がふいに手を伸ばし、無造作に中の一本を引き抜いた。


.


457 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:28:53 i7D98ygY0


                そして、端を千切ると口に含んで暫く咀嚼する。


            __ .____
          , ‐´:::::::,`',,''     `‐、
         /;;;;;:::::;;, /';'     ,゙゙'::::::::\
       /:::;;;;;ミミ; /      `゙';;:::::::::::ヽ
       /;;;;;';ミミミツ/;;;';';'';'';;''ヾ,'::::`::::::::::::::::}
      /:; ;::,__、,_____,:;:::. ;::::::::::::;'i
      i::; ;;::i          ゙|::'::. ;__;,-',‐;
      /;; ,: :{──────‐‐{;;;::, ;:ヽ‐'´::::ヽ
     /:. ;;':{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄{:::: ::::`;::. `::::;゙i
     i;;, '' ,;:|____,..、____゙l;;,_ :::::. :::, :::::i゙...
      /,,;'::';:l;`‐゜‐';i ;;;;;`ー゜‐';;;;;|:: `; `;;;::::`:::゙i      よっしゃ、いつもの寒天に間違いない。
      'Y ;:::::゙i  ::::::l        {;;;_ ゙'゙゙:::::,';:: ::゙-,
.      / ,;; ';:゙i ::::::l         |::゙'';;;;.:.::::`;::.`::;;ゝ
      `'i;; ';:::゙i :::{__,,,ゞ ,    ,|;, ::;;;;`''::;':::`::::;;ゞ、_
.     _,‐´`ー!、 ;゙i, ¨ニニ ̄   ,‐':{:::';::::'::::::::',,,'''';;;;'    ̄ ̄
.   /   /`i; ;::゙、 '''    _,‐'::::::{;;;;:`;::.:::::::::;;ヾ_,,゙
  /    / / `i;:::゙;,_  ,,/:::::::  /`'';;:. ;;;;:ヾ ''''
       /  |  ゙ ソ;;''' ̄:::::::::::   i゙::::::' .::::'''ヾ


                  _____
                /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
                |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
                |::::::::/ \:三::/i:::|
                |:::::::〉( ○)::( ○).|
               .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)       なっ……
                 |  u   |i|!i|!|  |
                \    `⌒´ ,/
             ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
             :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
                |  \/゙(__)\,|  i |
                >   ヽ. ハ  |   ||


                     その様に、いく夫が顔色を変える。


.


458 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:29:18 i7D98ygY0


               ____. __
             .,.‐´     '',,`',:::::::`‐、
           ./::::::::'゙゙,     ';'`、,;;:::::;;;;;\
           /:::::::::::::;;'゙´       `、 ;彡;;;;;:::\
          .{::::::::::::::::`::::',ッ'';;'';'';';';;;`、彡彡;';;;;;;i        そないに気ぃ悪うせんと。
            i';::::::::::::; .:::;:,_____、,__,::; ;::i
          ;‐,'-,;__;..::'::|゙          i::;; ;::i       このご時世、
          /::::`'‐,r':; ,::;;;}‐──────‐}: :, ;;゙i
          .i゙;::::` .::;´:::: ::::} ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}:';; .:゙i      中には粗悪品を混ぜて持ち込む問屋もいてんねや。
          .゙i::::: ,::: .::::: _,;;l゙____,..、____|:;, '' ,;;i.
        .i゙:::`::::;;;`..;` ::|;;;;;`‐゜ー';;;;; i;`‐゜‐';l:;'::';,,゙i       こないだ、酷い目に遭うてな、
        ,-゙:: ::;',:::::゙゙'゙ _;;;}         l::::::  i:::::; Y'
      .∠;;:`.::;`::::: ;;;;''゙::|          l:::::: i:;' ;;, ゙i       それからはこないして
  ._、゙ィ;;::::`:::';::''`;;;;:: ,;|,.    、 ゙ィ,,,__}::: i:::;' ;;i'`
 ̄ ̄   ';;;;'''',,,'::::::::'::::;':::}:`、    ̄ニニ¨ /; ノー'´\      抜き取りで調べさせてもらうことにしてる。
     ゙,,_ッ;;:::::::::.::;`:;;;;}::::::`、     '''  /:; ;i`、   \
        '''' ッ:;;;; .:;;''`:i  :::::::\,,   _/:::;i` i .`、    \
          ッ'''::::. ':::::::i   ::::::::::: ̄''';;ト' ゙  |  `、


                  _____
             ..   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
             ..   |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
             ..   |:::::::::/ ._ノ  ヽ  ..|
                |:::::::〉 ( ○) (○)|
             .  (@ ::::⌒(__人__)⌒)    そ、そら災難だしたなあ。
                 |  u   |r┬-|  |
                 \    `ー'´ /
             ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
             :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
                 |  \/゙(__)\,|  i |
                 >   ヽ. ハ  |   ||


.


459 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:29:58 i7D98ygY0


              _____
             /:::::::::::::::::::::::::::.\
            |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|          情けない世の中になったもんだすなあ。
            | ノ   \  i:::::::|
            |(─) (─ ) 〈::::::|          商人にとって一番大事なもんは、信用だす。
           (⌒(__人__)⌒:::: @)
            |  |r┬-|  u  |          それをそないな真似をするとは……。
            \ `ー'´    /
           ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、      一遍落とした信用は、なかなか取り戻せへんもんだす。
          イ / |.!、 _____ / ノ |   i
          | i  |,/(__)ヽ/   |   l       それを弁えてへん商人が増えましたあ。


            __ .____
          , ‐´:::::::,`',,''     `‐、
         /;;;;;:::::;;, /';'     ,゙゙'::::::::\
       /:::;;;;;ミミ; /      `゙';;:::::::::::ヽ
       /;;;;;';ミミミツ/;;;';';'';'';;''ヾ,'::::`::::::::::::::::}       何せこの不景気や。
      /:; ;::,__、,_____,:;:::. ;::::::::::::;'i
      i::; ;;::i          ゙|::'::. ;__;,-',‐;       道理を守るより、生き残るので
      /;; ,: :{──────‐‐{;;;::, ;:ヽ‐'´::::ヽ
     /:. ;;':{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄{:::: ::::`;::. `::::;゙i      精一杯の輩も多い、ちゅうことやろ。
     i;;, '' ,;:|____,..、____゙l;;,_ :::::. :::, :::::i゙
      /,,;'::';:l;`‐゜‐';i ;;;;;`ー゜‐';;;;;|:: `; `;;;::::`:::゙i      仕様のないことかも知れへん。
      'Y ;:::::゙i  ::::::l        {;;;_ ゙'゙゙:::::,';:: ::゙-,
.      / ,;; ';:゙i ::::::l         |::゙'';;;;.:.::::`;::.`::;;ゝ
      `'i;; ';:::゙i :::{__,,,ゞ ,    ,|;, ::;;;;`''::;':::`::::;;ゞ、_
.     _,‐´`ー!、 ;゙i, ¨ニニ ̄   ,‐':{:::';::::'::::::::',,,'''';;;;'    ̄ ̄
.   /   /`i; ;::゙、 '''    _,‐'::::::{;;;;:`;::.:::::::::;;ヾ_,,゙
  /    / / `i;:::゙;,_  ,,/:::::::  /`'';;:. ;;;;:ヾ ''''
       /  |  ゙ ソ;;''' ̄:::::::::::   i゙::::::' .::::'''ヾ


.


460 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:30:35 i7D98ygY0


                      暫し会話が途切れる。



                                           < カァン カァン

                   _____
                 /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
                  |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
                  |::::::::/ ⌒  ⌒ |
                 |:::::::〉 ( ●) (●)|
                 (@ ::::⌒(__人__)⌒)     どこぞ、ご普請だすか?
                  |     |r┬-|  |
                  \    `ー'´ /
              ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
              :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
                  |  \/゙(__)\,|  i |
                  >   ヽ. ハ  |   ||


               ____. __
             .,.‐´     '',,`',:::::::`‐、
           ./::::::::'゙゙,     ';'`、,;;:::::;;;;;\
           /:::::::::::::;;'゙´       `、 ;彡;;;;;:::\
          .{::::::::::::::::`::::',ッ'';;'';'';';';;;`、彡彡;';;;;;;i
            i';::::::::::::; .:::;:,_____、,__,::; ;::i
          ;‐,'-,;__;..::'::|゙          i::;; ;::i
          /::::`'‐,r':; ,::;;;}‐──────‐}: :, ;;゙i    いや、空き家やったとこに借り手がついてな。
          .i゙;::::` .::;´:::: ::::} ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}:';; .:゙i
          .゙i::::: ,::: .::::: _,;;l゙____,..、____|:;, '' ,;;i.    手ぇ入れて、こましな料理屋にするらしいわ。
        .i゙:::`::::;;;`..;` ::|;;;;;`‐゜ー';;;;; i;`‐゜‐';l:;'::';,,゙i
        ,-゙:: ::;',:::::゙゙'゙ _;;;}         l::::::  i:::::; Y'     この先、ちょっと行ったとこや。
      .∠;;:`.::;`::::: ;;;;''゙::|          l:::::: i:;' ;;, ゙i
  ._、゙ィ;;::::`:::';::''`;;;;:: ,;|,.    、 ゙ィ,,,__}::: i:::;' ;;i'`
 ̄ ̄   ';;;;'''',,,'::::::::'::::;':::}:`、    ̄ニニ¨ /; ノー'´\
     ゙,,_ッ;;:::::::::.::;`:;;;;}::::::`、     '''  /:; ;i`、   \
        '''' ッ:;;;; .:;;''`:i  :::::::\,,   _/:::;i` i .`、    \
          ッ'''::::. ':::::::i   ::::::::::: ̄''';;ト' ゙  |  `、


.


461 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:31:07 i7D98ygY0


"//三ミミll;//彡ー、;;;;;;从从从,,ll||lll;;;;;;、- ''",,、
// /;;;;ッッ从''""  |;;;l|;;;;;;;;;;ll;;;从l| ''",,、-,、 "ヽ
゙゙l|/;;;;r''"       |;;;;|l|;;;;;;;;|l;;;从| '";;;;;;;;;;;ヽ;;;;ヽ
 ||;;;;|       _,、-|;;|'l|;;;;;;;;;l|;;;;;;;;l|;;ヽ;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;ヽ
ll||ll|;;;', _,,,、- ''"  ,,,、|;;|"l|;;;;;;;;;l|;;;;;;;ヽ;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;ヽ;
ll l|l',;;;;',  _,,、 ー '"  |;;| l |;;;;;;;;ヽ、;;;;;;ヽ;;;;;;ヽ;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;ヽ
}ll| l|',;;;;l''"       ヽ;; ヽ;;彡;;;;;;゙';;;;ミ;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;ヽ;;从
| l| l||';;;ト、,    ミ、,,;;;;ィ=彡'"ノ´彡''"彡ヽヽ;;;;;;ヽ;;;;从从从;;      どこぞの大店の板場に居たんが、
リ|| l||;;;;tヽ=;夫,゙ミ'、:彡`'''"´::::-ーー 、彡彡;;;;;;ヽ; ;从从从从
.|从ll|;;;;;`'、゙'''"゙l  `゙''彡''"    ..::彡彡:::|ヽ;;;;;;从从从;从     自分の店を持つらしいわ。
.゙、从lヽ、; ;;',.  |          ゙'::彡彡/l;;;;;;;;llノノ从从从ヽ
 ヽ从ヽヽ;;;', j   ー 、      彡// |;;;;;;;;、ll、、゙゙゙从从从    けど、言うたら気の毒やけど、
    ゙|,,ll|;;;; j" _,,、 '""    ノ   ::::/ |;;;;;;;;;;| |||| l|;;|゙゙从l |
      ||| | ;;;;゙'、-::);;/_,,,...-;彡´      |;;;;;;;;;;;| ||リ||;;;;;lll 从     何もこないな不景気の時分になあ。
      | l| | ; ;;;ヽ"ー- ''''"´,、::     ll|l ::|;;;;l|;;;;;;l|ll|| |l;;;;;;;l| |||
    l゙lll从 ; ;;;;;;;'、 ー ''''"´彡    从:/|;;;|ll|;;;;;;| l| ||/||l|l|||,,
    ヽヽミ≧l ; ;;゙、 了´´     ..::/ ',;;| j;;;;;;l|从||l|从从;;
     ゙''''i゙jjjl|| ; ;;;;', l        /    ゙;| j;;;;;i;;;;;;从;;;;从;;;;
       | l||从;;;;;;;;l ヽ;;:    /      ',|l||;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
       ',从从;;;;;;;;`゙'''''''''''''"        |.||;;;;;;;/|;;;;;;;;;;;;从
       '、从从ミ、;;;;;;;;;;;;/ ノ`'' 、:::::""''::::: ヽ|、;;;;tヽ;;;/`''
        ヽ、ミミミー、;;;;イ   | `' 、     `゙ーミ/


      昨年からすでに米の価格は上昇を続け、市中は腹を空かせた庶民で溢れている。

             近々、この大坂でも打ちこわしが起きるのではないか、

              起きても仕方がないのではないか、という状況だった。


.


462 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:31:34 i7D98ygY0


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    |.::::γ⌒ Y ⌒ヽ::::::|
    |::::/ ⌒  ⌒  |:::|
   |:::〉 (●) (●) 〈:::|      と、すんまへん、えろう長居してしもうて。
   (@ ⌒(__人__)⌒ @)
    |   |r┬-|   |       ぼちぼち失礼させてもらいます。
    \  `ー'´  /
,,.....イ.ヽヽ、___ーーノ゙-、.       おおきにありがとうさんでございました。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


      ____
    /  ⌒  ^\
   /  ( ●)  (●)       ありがとうさんでございました。
 /  ::::::⌒(_人__)⌒ヽ
 |       |r┬-|   |      また、よろしゅうお頼もうします。
 \        `ー'´  /


             店主に暇を告げて外に出る。


.


463 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:32:04 i7D98ygY0


        いく夫は木槌の音のする方へ足を向ける。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ノ   ― |
   |:::::::〉 ( ●) (●)|
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)    新しい料理屋、か……
    |     |r┬-|  |
    \    `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


            ___    ━┓
         /   ― \   ┏┛
       |     (●) ヽ\ ・
       l   (⌒  (●) |
        〉    ̄ヽ__)  │   番頭はん、そっち道ちゃいまっせ?
.     /´     ___/
     |        ヽ
     |        |


.


464 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:32:27 i7D98ygY0


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
   |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
   |::::::::/ \::::::::/i:::|
   |:::::::〉( ●)::( ●).|       わかっとるわい!
  .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
    |      ` ⌒´  |       いらんこと言わんと、
   \         ,/
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.      黙って付いて来なはれ。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
   |  \/゙(__)\,|  i |
   >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |    へ、へえ、すんまへん。
    \     ` ⌒r'.二ヽ<
    /        i^Y゙ r─ ゝ、
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!


.


465 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:33:03 i7D98ygY0


          じきに、一軒の建物の前で、主らしい男が

      職人に看板を掲げる位置を指図しているのが目に入った。


        ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
       ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
      ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
     @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
        |             ┌─────────┐
        |    ┌──┐ │  小料理  〈翠家〉  |
        |    │  持│ └─────────┘
        |    │歓  │  :========:.:========:  ┏┓
        |    │  帰│  |i.     l||i.     l|  (三三)
        |    │迎  │  |i.     l||i.     l| .(三三三)
        |    └──┘  |i_____l||i_____l| .(三三三)
        |              |┬┬┬┬||┬┬┬┬|  (三三)
        |              |┼┼┼┼||┼┼┼┼|  ┗┛
        |_________________|┼┼┼┼||┼┼┼┼|_______
                     . ̄ ̄ ̄ ̄


                               .,. -─- 、
                              /,;:;:;;;;;:;:;:;:;:`ヽ
   もうちょい手前。                ,'.:..:.:.:.;;;;;;rrrr、:.:.:ヽ
                             l::;ィ'´;;;;' `ヽ。-、ヽ.::!
   もうちょい、もうちょい…           {ミレ'"´. ,.. ¨¨`,ィ;;彡
                            {ミ!. i i::i l.:::! l:l .l:! l;;彡
   …あかん、寄りすぎや、           iト、i i:::iノ:::l/::l/::!ノ:::|      /l /l
                       ト、     ヽ入.      `VⅥ    _../ レ' ..!
   ちょっと戻してんか。     ト、. ! Vl ,..ィノ::`1 ミヽニニ彡'´ L:爪Y´./l  `` ヽ
                    | ヽ| 〃/./:::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄:rl / .l.:.:.:.:. /ト
                    ィ´ヽ ノ/ /  :::人:::::::::::::::::::::::::::::::::!!::! ゝ ' /.ィ´
                    ト、, ´/ ./:::''  :::::Y:::::::::::::::::::::人:::::::::// .i!  !| イト、
                   r V.:.:.i  / ,::   |::::::::::::::::::::::::::::::Y::::::: !' ノイ  i  |l ク
                /: 三/.:::::::::>==7¨`!:::::::::::::::::::人:::  ((  /   ,| // ∧
               '::( ̄ ̄ ̄7{入 イ ヾノ人::::::::::::::::Y:::::::::::::::ノ /    /!  ノ ∧
             ..,'::::::/―――{ :| !´ .|  ヽ:::::::`ヽ、::::::::::::::::::::弋以>  /:::\  イノ〉
             (i::::::i     ∨´\ \  }ァ⌒ __〉::::::::::::::::::::::ー――ァミミニ) !  /∧
              代:::>     ヾ>‐ つ‐し':::::::::::::人:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ヾ `ミ! / ∧
              L_三≧=ニ三>‐' ̄´ヽ::::::::::::::::::Y:::::::::::::::::::::::::::::::/ `ヽニニ 爻   ト、
                           }:::::::::::::人:::::::::::::::::::::::::::::/    \ ニ刹ニ //!


.


466 : 名無しのやる夫だお :2014/02/02(日) 17:33:41 8GhMhXD.0
おお、独立したか


467 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:33:42 i7D98ygY0


  看板に書かれた屋号を見て、大きく頷く。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
    |.::::γ⌒ Y ⌒ヽ::::::|
    |::::/ ⌒  ⌒  |:::|
   |:::〉 (●) (●) 〈:::|
   (@ ⌒(__人__)⌒ @)       翠家、か。
    |   |r┬-|   |
    \  `ー'´  /         ええ名ぁや。
,,.....イ.ヽヽ、___ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


         ____
        /⌒  ⌒\
      / (⌒) (⌒)\
     /  ::⌒(__人__)⌒:::
     |       |::::::|   ,---、   ほんまでんなあ。
     \       `ー'   しE |
     /           l、E ノ
   /            | |
   (   丶- 、       ヽ_/
    `ー、_ノ


  春の日差しを浴びた木々が真っ直ぐに新芽を伸ばす。

      そんな光景が目に浮かぶようだった。


.


468 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:34:07 i7D98ygY0


           いく夫が男の方に歩き出す。


     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ノ   ― |
   |:::::::〉 ( ●) (●)|
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)     やる夫。
    |     |r┬-|  |
    \    `ー'´ /      お前はんはここで待っときなはれ。
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


       ____
     /      \        へえ。
    /  ─    ─\
  /    (●)  (●) \     (ああそうか)
  |       (__人__)    |
  ./     ∩ノ ⊃  /     (新しい料理屋やったら、
  (  \ / _ノ |  |
  .\ “  /__|  |        寒天の仕入れがあるかも知れんのや)
    \ /___ /


.


469 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:34:43 i7D98ygY0


           _____
         /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
          |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
          |::::::::ゝ ―  ― |
         |::::::( ( ●) (●)|           もうし。
         (@  ::::⌒(__人__)⌒)
          |     ` ⌒´  |          ちょっとよろしおますか?
          \         /
       ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
       :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
           |  \/゙(__)\,|  i


    ,/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
  /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
./::::::::::::::;ハ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
i::::::::::::;ヘl ヾ  ,,'ニ¨--¨ニ、‐-''´ヽ:::::::::::::::::!
!:::::::::::l ゙ ..:.:.:7"::;:::::_::、ヾ゙i:: :.: ,.ヾ、:::::::ハ
::::::::::::iゝ. .:.:.:.:.l::::k'_´_o__゙,!:::7  7;:::\゙¨" ,!        へ、なんでっしゃろ。
::::::::::::lゝ :.:.:.:.:゙ー───‐'.:.:.:.: k'^ヽ、゙i  ノ
::::::::::::ゝ  :.:.ァ''''"::: ̄ ̄::''ー'':::ヽ`゚'-゙_,! 丿
:::::::::::::::〉.:.:  ,n :.: rャ:.:.:: z、 :.:.:. .:.:ヾ、:.:.: ,ノ
l:::::::::::::i.:.:  |:::| .:.:.|::::| :.: i:::::|.:.:.:.;ヘ.:.:.:. ,ヾ }
|::::::::::::l:.:  _レヘ:.:.|:::::!:.:. !:::::|.:.:.:l:::;!.:.:./::i 〉
}::::::::::::!:.: ´  .: ,}:.:|:::::l:.:. !::::::!.:.:,!::;!.:.:,'.:.:,',!
!::::::::::::l.:.:......:.: /:l.::l::::::!:: l:::::::|:.:,!::;!:.:,'.:.:7.!    ,ハ
:::::::::/i :.:.:  ,/::::ゝl::::::し':::::::i.::,!::;!.:;',!:/ `ー‐'" }
:::/   `ー、"::::::::::::::::::::::::::::::`´:::レ':!;/:.:.:.:......:.: ,/
:::l :  :  :: ゞ、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ソゝ.;,;_,,,,/
:;' ;  :  ::  `ヽ、::::::::::::_::::::::/ l
; ,'  ; :  ::     ̄ ̄:::: ,'  ̄ ; i、


               いく夫の呼びかけに男が振り返る。


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470 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:35:04 i7D98ygY0


              振り返った男の顔を見て、やる夫が息を飲む。


                           |ヽ/|_
                           .\   /
                  ___       |__>
                /ヽ、 _ノ\
               / (○) (○)\
             /   (___人__)  ..\
             |  u  ノ   ヽ,   |         あっ!
             .\   (/⌒ノ´フ   ./
              . .>   . ̄ ̄´  <.


      /ニニニニニニニニニニニニニヽ
      ’ニニニニニニニニニニニニニニ ハ
     iニニニニニニニニニニ}ヽィニニニニi|
     |ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニニ|
.     ト.!ニニニニニニ==─…ミx 0 /》ニニニ│       うん?
    Ⅳ≧ー…ャ77//--。-ォ///l} 0 彳ニニニ|
     》 f77ハ  ∨/≧==彡//ノ   《ニニニl|      ト
     `7 V//}  ∨////厶イ==ミ   iニニニ|      |∧
       ⌒i ̄ __ ̄ ̄´   》//∧ lヽニニニl|      |/∧
   ト     ∨ .//| ト. {7∧ ∨///i| ∨\ニゝ __   |  ∧
   |∧    ∨//| |∧ ∨∧ ∨//l|  i}///777{厂三{  |  /∧
   |/∧    }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l|  リ  }////|∧三≧|    ∧.=
   |  ∧  、|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i|    三
   |  /∧  ≧彡. 》====≦///   l i '//三|  ∧三|    三
\ |    ∧イ三/三》 ∨////    j l //三 i|  /∧ .乂__ノ三
/∧.|    /∧./三 ィ/∧∨///    / '//三三|  //∧三三三三


 その気配を感じたのか、男の視線がいく夫を飛び越えて、やる夫に注がれる。


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471 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:35:32 i7D98ygY0


                   男は一瞬考え込んだ後、双眸を見開いた。


                               ,,、-ー ―- 、,
                              ,、 '"   つ     `゙' - 、
                            /       と      ヽ,
                             /    "" ー          ヽ           井川屋はん……
                           /     ,ィ  rニ             ',
                    ,,   ,'/lrレ"(゙("(                  l
                      /:|   ,'| (,,(゙,,r--ー―-==;z 、    r、r、    |
                      /.::|  ,'l゙ミo 〈" :,,、-ー 、;;Y /:|`゙''ー、ノ ノ .jY、  |          お前はん、もしや、
        |:',           / ::::|  l|゙ミo  ヽミ::゙' ゙゙ー-ノ :/ /::,、;;; 、`' 、ソ ノリr }
        |:: ',.       / :::::::|  lヽ(。/-yーー-ミニ;;"ノ', :}::゙ -穴,,゙i,l::::゙l"彡 リ          あの時の井川屋はんの
        |:::. ',      / ::::::::::|  ,':::| |::::: | 、:::| ,,、::〉:::::''ー゙'、''- 、;;彡'",,,/イ
        |;;;;;,,',     /::::,、- 、| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ァ":::`゙>ーーイ) ,, イ        /l   丁稚やないか?
        |;;;;;;. ', ,,''ーx三=、-\' ::::|ll| |;|.l |;;| l: |;;;/ / ./;;/ / /フ:::  ::イ:::/        /::,'
      _,,;;;:;:;:;,,,_彡"´ ̄  ヽ:ヽヽlレl |;|.l |;;| l |;;;/ / /;;/ / /// /〉 :::/ ::/      /::: ,'
  :::::,、-  ,'"V .N'''"/-ー-、"゙   } l|::|ヽ: ', |;|.l |;| l |;;/ / /;/ / /// // :: /::::/  /|   /::::: ,'
:::/´  ,,、ノ  _/::l :/ー '''''''゙ .::| ::ノ:/::リ:::ヽ:゙j;|.l |;j l |;/./ /;/ /,///:/;/  /::: / ./::|  /:::::: ,'
/   /ノ',/:::::::| {      .::j-彡"::ノ::l|:: l'':::ヽ|:ヽ;|;| l /;/ ,//::///|イl|::/ /::::|  /:::::::::,'
   j/ :::', ...::::| ::' 、,,,,,,,,,、-'===彡'"::/::: ',::::::::::'ー-、゙::::::゙''::∠/;;ィ'": //;;|ノ ./::::: | /:::::::::/   //
:::.........Y ..:::::l  ,,;;;| :: :::::::::::|~ヽ:::"/"" 三ミ ',::::::::}}::::::::::~''ー'''"´::::::::ヒノ:/ノ /::::::: | /::::::::::/  /:::/
::::::::イj:{::::::;r'Y'" | :::::::::::::ノミ: |:: /:::::..,、- '''ー、ヽ :}}、:::::::''",、 ''""彡 ::'" /`'、/::::::::: |/::::::::: / /:::: /
:::::::::j l|゙レ'" ',  ヒ-ー '''"   |:::l|:::/ィ-ー'  ',| }} ::: /彡  彡 ::" /   ヽ:`゙''ー、::::::::://::::::::/
           `'ー、  ,r':::,r'' '"´ ̄    | \〉"彡"   彡 ::'" /    〉    `゙'/:::::::::::/
                                彡"" ::  l|   /l|    /:::::::::::: /ー、


              男は、藤誠の板長だったジャギ、その人だったのである。


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472 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:35:53 i7D98ygY0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


473 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:36:22 i7D98ygY0


                  その夜。


   ワハハハハハハ >
                                 < ハハハハハハハハ

    ===================================================;;;|..│
   ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
  ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
   ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
  ==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
  ─────────‐|  井  川  屋.│─────────
  :: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
    | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
    | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
    | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
    | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
    | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
  | ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
  |    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
  |    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
  |__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_


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474 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:36:45 i7D98ygY0


       久々に井川屋の奥座敷に笑い声が響いた。


       /`ー──一'\
      ,r(●)(、_, )、(●)\
   .   |  '"トニニニ┤'` .:::|
     |.   |    .:::|   .::::|
   .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|
      \   `ニニ´ ..::::::/             ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
   ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、           /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i          /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::}
       |  \/゙(__)\,|  i |         l:::::::::::::ゝ---- ι
       >   ヽ. ハ  |   ||        |::::::::::::)  ◯  ○ (
                           ,l:::U:::::///  ||||||| //
                           ゝ---η.   |||||||  ゝ
        _____              /≦ ヽ .|  | ≧
      /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ             { l  l |* *| | l
       |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|            { .l  l .|  * | .| l
       |::::::::ゝ \  / |            /  l  l | * | l l
      |::::::( ( >) (<)|           l ---l  l--  -l l
      (@  ::::⌒(__人__)⌒)          |   `^^    `^
       |     |r┬-|  |
       \      `ー'´/
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
        |  \/゙(__)\,|  i


        店に挨拶に来たジャギをダディが引き留めて、

         開店祝いのささやかな宴を開いたのである。


.


475 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:37:46 i7D98ygY0


 丁稚部屋にも宴のにぎやかな声が漏れ聞こえていた。


       / ̄ ̄\
     /       \
     |    ⌒   ⌒
    . |     (__人__)       .ダン
      |     ` ⌒´ノ       旦那さんたち、
    .  |         }
    .  ヽ        }        盛り上がってるみたいやな。
       ヽ     ノ
       /    く
       |     \
        |    |ヽ、二⌒)


          ____
        /      \
      / ─    ─ \
     /   (∧)  (∧)  \
     |      (__人__)     |     せやな。
     \     `⌒´    ,/
     /     ー‐    \


.


476 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:38:25 i7D98ygY0

              ┌───────────────┐
              │                        │
              │    ┌─────────┐    │
              └──┼─────────┼──┘
                    │  ┌─────┐  │
                    └─┼─────┼─┘
                  └─────┘
                   ┌───┐
                   └───┘
                     ┌─┐
                     └─┘
                      □


                     あの一件の後。


    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ -=o=-| :/ .|:/  V: |.: : : | V
  < : _: : : /       |/  レ-=o=-|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{                   レ{: :|ヽ:|    井川屋に騙されたわ、
   厶ヘ ハ         、       {ハ/ V
      \_!      _ '     !        伊豆産の天草使うてる、て嘘ぉつきくさった。
        ヽ    /  `t   /
      ___,r| \  {    / /           せやさかい、取り引きを打ち切ったんや。
    /:/::::| \ ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、


        藤誠の店主は全ては井川屋の責任だと吹聴して回った。


.


477 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:38:51 i7D98ygY0


        真っ当な奉公人たちはそんな主人に愛想を尽かし、

               次々と店を引いていった。



            おい、どないする。

                       あの若造、けたくそわるいわ。

                 ∧,,∧  ∧,,∧
              ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
             ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
             | U (  ´・) (・`  ) と ノ
              u-u (l    ) (   ノu-u
                  `u-u'. `u-u'

            “ウソつけ”言うたん、あいつやないか。





         ワシやめさせてもらいます。

       ワシも。             ワタシも。

  パッ   パッ   パッ    パッ   パッ    パッ
   [退職]  [退職]  [退職]  [退職]  [退職]  [退職]
    ∥∧∧  ∥∧∧ ∥∧,,∧ ∥∧,,∧ ∥∧∧  ∥,∧∧
    ∩・ω・`)∩・ω・`)∩・ω・`)∩・ω・`)∩・ω・`)∩・ω・`)
     (    ). (    ). (    ) (    ) (    ) (    )
     `u-u´  `u-u´   `u-u´  `u-u´  `u-u´  `u-u


.


478 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:39:22 i7D98ygY0


         事の真相がそうした者の口から漏れて行き、


.     /: : : :u: : : : : : : : : : : : : : : : : : \
     /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : :u: : : ヽ
.    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ | :/. |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : 」_: : / 〈 (・) |/:::::::レ(・) }|:./ヽ : |
  <:: |. 小{   _,,.. - :::::::::::、-.,_  レ{: :.|ヽ:|
   厶ヘ ハ   ::::::::::::::::::::、::::::::::::::: {ハ/ V      げぇっ!
      \_! u     _ '     !
        ヽ    /   `t u /
      ___,r| \  {    / /
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´
  /::::::/::::::|  \u  ´ ∧>、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、
::::::::::::::/:::::::::∧    /二\ |::::::ヽ::::::::::::\
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ  /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!


        四代続いた老舗料理屋の信用は地に落ち、

   客足も戻ることが無かった ―― と、もっぱらの噂であった。


.


479 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:39:49 i7D98ygY0


                 藤誠の話が人の口にのぼる度、

            やる夫はジャギのことが案じられてならなかった。

=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=
        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /┛┗::::::::::::::::::::ヽ
        /:::::┓┏::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (      ……諌めても……
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ      …なんぼ諌めても、聞く耳持たん主やったら、
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l       どないしたらええのんか……
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^
=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=‐=


   あの日、心斎橋の袂で呻くように言ったジャギの声が耳について離れなかった。

                  □
                ┌─┐
                └─┘
               ┌───┐
               └───┘
                    ┌─────┐
                  ┌┼─────┼──┐
                  │└─────┘    │
              ┌─┼─────────┼───┐
              │  └─────────┘      │
              │                        │
              └───────────────┘

.


480 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:40:12 i7D98ygY0


             ____
           /   ― \
           /   (● )  ヘ\
        |   (⌒   (● ) |    (ジャギはんは、
         ヘ     ̄`、__)  |
           ヽ           |     どんな料理を作らはるんやろか?)
         , へ、      _/
            |          ^ヽ
            |      1   |


          思えば粗食に慣れ親しんでいるやる夫である。

       美味しい料理、というのがどのようなものかを知らなかった。


.


481 : 名無しのやる夫だお :2014/02/02(日) 17:40:29 8GhMhXD.0
先代からの古参従業員が造反したか。


482 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:40:44 i7D98ygY0


         ____
        /⌒  ⌒\           (いや、違う。)
      / (⌒) (⌒)\
     /  ::⌒(__人__)⌒::: \        (昔、母上が生きてなはった頃、
     |       |::::::|   ,---、
     \       `ー'   しE |        苗村の小豆でこさえてくれはった善哉)
     /           l、E ノ
   /            | |       (あれは、美味かった)
   (   丶- 、       ヽ_/
    `ー、_ノ


           ____
         /:::     \
       /::::::::::     \         (…それに、餡)
      /::::::::::         \
      |:::::::::::::::         |        (母上の餡を餅にからめて食べるのんが
      \::::::::::::::       /ヽ
       /:::::::::        くゝ  )               また美味うて美味うて……)
      ;|::::::::::::          / ;
      ;|::::::::::::::       イ ;


   久しく思い出さなかった苗村のことや、母のことが思い出されて目頭が熱くなる。


.


483 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:41:12 i7D98ygY0


           と、いきなり丁稚部屋の襖が勢いよく開いた。


    |┃
    |┃ 三
    |┃  ガラッ        _____
    |┃            /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |┃ 三         |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |┃            |::::::::ゝ \  / |
    |┃ .         |::::::( ( >) (<)|      やる夫、やらない夫、
    |┃ 三        (@  ::::⌒(__人__)⌒)
    |┃           |     |r┬-|  |      起きてるか!?
    |┃           \      `ー'´/
    |┃ 三        ,,.....イヽ、___ ーノ゙-、.
  ,⊆ニ´⌒ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄    \ \_____ ノ .〆ヽ
  ⊂二、 ,ノ-|_____    \/゙(__)\lヾ_ノ|
    |┠ '           ゝ    ヽ ハ  |´|  .|


        酒のせいだろう、常になく上機嫌のいく夫が入ってきた。


.


484 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:42:10 i7D98ygY0


     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ \  / |      翠家のご主人が帰らはる。
   |::::::( ( >) (<)|
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)     ほれ、お見送りや、
    |     |r┬-|  |
    \      `ー'´/      ちゃっちゃとせえ、ちゃっちゃと。
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
     |  \/゙(__)\,|  i


  .     / ̄ ̄\
  .   /        \
  .    |  _ノ  ヽ、. .|
  .   !. (一)(ー) |      へえーい。
     , っ (__人__)  |
  .  / ミ) `⌒´  /       ほれ、やる夫、行くで。
  .  / ノゝ     /
    i レ'´      ヽ
    | |/|     | |


           ____
         /:::     \
       /::::::::::     \
      /::::::::::         \
     |:::::::::::::::         |   ……おう。
    /⌒:::::::::      ⌒ヽ/
  ;/::::::::::::            \;
  ;/::::::::::::::          \ ヽ;


485 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:42:35 i7D98ygY0


                  ジャギは井川屋の四人に送られて外に出る。


    ,/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
  /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
./::::::::::::::;ハ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
i::::::::::::;ヘl ヾ  ,,'ニ¨--¨ニ、‐-''´ヽ:::::::::::::::::!
!:::::::::::l ヽ.   7"::;:::::_::、ヾ゙i    _ヾ、:::::::ハ
::::::::::::i丶.   l::::k'_´_o__゙,!:::7  7;:::\゙¨" ,l,        井川屋の旦那さん、
::::::::::::l丶   ゙ー───‐'   . k'^ヽ、゙i  ノ
::::::::::::ゝ    ,ァ''''" ̄ ̄ ̄''ー''¨ヽ`゚'-゙_,! 丿        今日はほんまにありがとうさんでございました。
:::::::::::::::〉 ,.'",n.  rャ   ,-、   ゙ヽ、   ,ノ
l:::::::::::::i   |:::|   |::::|  .i:::::|  ;ヘ   _ヽ.,!         番頭はん、今後ともどうぞよろしゅう。
|::::::::::::l   _,レヘ. |:::::!  !:::::l  ,l:::;!  i:.:i 〉
}::::::::::::! '´   ,} |:::::l  !::::::! ,!:::;! ;': 7,!
!::::::::::::l      ,/l. !:::::! l::::::l ,!:::;! 〃.7.l    ,ハ
:::::::::/i.   ,/::::ゝ.l::::::し'::::::i. ,!:::;!.〃,/ `ー‐'" ,}
:::/   `ー、":::::::::::::::::::::::::::::::¨:::::レ'!_/       ,/
:::l :  :  :: ゞ、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ゝ.,,,_,,,,/
:;' ;  :  ::  `ヽ、::::::::::::_::::::::/ l
; ,'  ; :  ::     ̄ ̄:::: ,'  ̄ ; i、


         /\___/ヽ
        /''''''   '''''':::::::\
     .   |(●),   、(●)、.:|
       |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|                すんまへんなあ、
     .   |   ´トェェェイ`  .::::::|
        \  |,r-r-|  .::::/                遅うまでお引き留めして。
     ,,.....イ.ヽヽ、`ニニ´ーノ゙-、.        /^)
     :   |  '; \_____ ノ.| ヽ iヽ __ ‐┘(
         |  \/゙(__)\,|  i |´⌒ )二  ト、


.


486 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:43:16 i7D98ygY0


                丁稚二人を労う事も忘れない。


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι      二人とも、眠たいのに済まなんだなあ。
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ      ウチには十になる娘が居ってなあ。
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧       お前はんらとは歳も近いし、
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l        店に来た時は遊び相手になったってな。
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


          / ̄ ̄\
        /  ヽ、_  \
       (⌒)(⌒ )    |
       (__人__)     |
       (,`⌒ ´      |         へえ!
        {         |,
        {        / \        (ええお人やなあ!)
         ヽ     / >  〉
           ン     ´ /
          |       /
          |       |


            ____
          /      \
        / ─    ─ \        旦那さん、今後ともよろしゅう。
       /   (∧)  (∧)  \
       |      (__人__)     |      (ええお人や!)
       \     `⌒´    ,/
       /     ー‐    \


.


487 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:44:07 i7D98ygY0


ジャギは改めて井川屋の面々に丁寧に礼を言って、夜道を帰って行った。


  ☆      。                    ・
     ゚           ゚     ☆      ・        ゚
゚          ☆      。         /    ☆       ゚
  。           ゚            /          。
☆       ゚               /    ゚
            。           /    ゚            ☆
  ゚    ☆                 /        。     ゚
                    ☆                   /
_                                         |
  \                                       |
    |                                     |
    |      /\                            /
    |   __|   |                    / ̄\  /
    |    |      |/\                   |    |  |
    |/\|         |r'´`ヽ     /  ̄ \  |    |/
               ||   |、    〔      〕 |
                   \   〕     〔 /
                     l  〔     .〕 |


  月の光に照らされ、天満の街並みがさっと掃き清められて見える。


.


488 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:44:56 i7D98ygY0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/        ……ええ門出や。
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
      |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
      |::::::::/ ⌒  ⌒ |
     |:::::::〉 ( >) (<)|        へえ。
     (@ ::::⌒(__人__)⌒)
      |    /| | | | |  |       きっと繁盛しはります。
      \ (、 `ー―'´, /
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ
       |  \/゙(__)\,|  i


.


489 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:45:13 i7D98ygY0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


490 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:45:43 i7D98ygY0


                     如月。

     不景気の真っただ中に翠屋を開いたジャギであったが、

   周囲の予想に反して、じわじわと確実に客をつかみつつあった。


        ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
       ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
      ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
     @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
        |             ┌─────────┐
        |    ┌──┐ │  小料理  〈翠家〉  |
        |    │  持│ └─────────┘
        |    │歓  │  :========:.:========:  ┏┓
        |    │  帰│  |i.     l||i.     l|  (三三)
        |    │迎  │  |i.     l||i.     l| .(三三三)
        |    └──┘  |i_____l||i_____l| .(三三三)
        |              |┬┬┬┬||┬┬┬┬|  (三三)
        |              |┼┼┼┼||┼┼┼┼|  ┗┛
        |_________________|┼┼┼┼||┼┼┼┼|_______
                     . ̄ ̄ ̄ ̄


.


491 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:46:59 i7D98ygY0


         藤誠が高級料理屋で名を売ったのに対し、

 ジャギは手ごろな値段でとびきり美味しいものを供することに腐心した。


                 _,,,,........,,,,,,_
              _..-''゙゙:::::::::::::::;;;;;   ゛''-...,
                 /:::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\
           /:::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`、
              /..::::::::::::::::::::: ;;;;;;;;.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
           /.:::::::::::::::::::::::: :;: ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;, l
           l..::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;:;._,,,,.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; |
         l.::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;::,r'|' .,r'. /.,、...;;;;;;;;;;;;;;.!
         | ::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;:l. V.;;;;ヘ,,/│;;;;;;;;;;;;;;;{
          | ::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;|`、', ,.:;....;;...,iii_゛ー ..,_.... ,.l
            l:::::::::::::::::::::::: :;;;;;;;;`、`゙..;モ..lニ.: :二=,,,,二.ノ'
        ./:::::::::::::::::::::::: :;;;;;;; `、┴.. .;`、゛L::::゛ー・ハ;i`、
         /::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;; ゝァ . ; .....''゛゙''''- -イィ. ゙l
  i゙i   ./.:::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヘ.._    _...-―''ニヘ!
  l .i,  \ _.____: ::: :  .:;;;;;;;;;;;;;:; ,.、i,.;;;;;; l ; i`l.'.;;.、i,. ;ナノ
  l,. i.     ,r'. ゙゙゙゙゙゙゙゙̄゛'''''''''''”゙/l`、;;;.|  l  |..::! ! l;l l.l
  l  i   ./            / /. `、.| ;│;; l :.i | |.l /
  .!  i ヘ...,,        / /..i.   l. :;.t,,_凵. -´/
  .l   i. : :`゛''- .._    ./.  /. .',.   `、 ;..:::. ,iナ/ .,./
   l  i. : : : : : : : : :"゙''‐-/  .l  .i,    ゛l''''''´  .//
_,, !゙.|   `、. : : : : : : : : : :/.   ヘ'- ..゙,,__.  !   -'゙ /


   値の張る食材には手を出さず、その代わりに手間を加えることで

      凡庸な食材を逸品へと変える努力を惜しまなかった。


.


492 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:48:04 i7D98ygY0


      そうした心意気が人々の口の端に上ったのだった。


               . -―- .      やったッ!! さすが翠家!
             /       ヽ
          //         ',      おれたちにできない調理を
            | { _____  |        平然とやってのけるッ!
        (⌒ヽ7´        ``ヒニ¨ヽ
        ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′     そこにシビれる!
        /´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {.  ヽ     _ _      あこがれるゥ!
         `r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ )  (  , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
         {(,| `'''7、,. 、 ⌒  |/ニY {               \
           ヾ|   ^'^ ′-、 ,ノr')リ  ,ゝ、ー`――-'- ∠,_  ノ
           |   「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
    , ヘー‐- 、 l  | /^''⌒|  | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
  -‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ  !‐}__,..ノ  || /-‐ヽ|   -イ,__,.>‐  ハ }
 ''"//ヽー、  ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿!  , -===- 、  }くー- ..._
  //^\  ヾ-、 :| ハ   ̄ / ノ |.  { {ハ.  V'二'二ソ  ノ| |    `ヽ
,ノ   ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<.  /  |.  ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/    <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ  \ `丶、  |、   \\'ー--‐''"//
\___,/|  !  ::::::l、  \  \| \   \ヽ   / ノ


.


493 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:49:02 i7D98ygY0


 やる夫はこの日、初めて翠家に寒天を届ける役を得た。


                   n
                   l^l.| | /)
                   | U レ'//)
      ___      ノ    /
    / ⌒  ⌒\  rニ     |
   / (⌒)  (⌒)\  ヽ   /
 /   ///(__人__)///\ / `   /       ごめんやす!
 |       `Y⌒y'´    |   /
 \.       ゙ー ′  ,/  /         井川屋だす!
  /⌒ヽ   ー‐   ィ  /
  / rー'ゝ        /
 /,ノヾ ,>         イ
 | ヽ〆          |


.


494 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:49:33 i7D98ygY0


             開店当初は、律儀者のジャギがわざわざ自分で

              井川屋まで荷を受け取りに来ていたのだが、


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ て
        /:::::U::::::::::::::::::::::::::::::} (
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (      ああ、忙し。
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ
      ゝ---η.   |||||||  ゝ      繁盛するんはええけど、
        /≦ ヽ .|  | ≧
         { l  l |* *| | l       休む間ぁもないっちゅうのは考えもんやなぁ。
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^


              そろそろ手が足りなくなってきたようだった。


.


495 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:50:02 i7D98ygY0


       やる夫は再度、裏口から板場に向かって声をかける。


               ∩_
              〈〈〈 ヽ
      ____   〈⊃  }
     /⌒  ⌒\   |   |     ごめんやす、井川屋だす!
   /( ●)  (●)\  !   !
  / :::::⌒(__人__)⌒:::::\|   l    寒天、お届けにあがりました!
  |     |r┬-|       |  /
  \     ` ー'´     //
  / __        /
  (___)      /                      > はぁい


            間延びした子供の返事が聞こえた。


.


496 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:50:32 i7D98ygY0


              現れたのは丁稚ではなく、少女だった。


   / /': : : : : : : : : : : : : : : : : : \    ヽ\
.   / / /: : : : : : : : : : l: : ト 、: : : : : : :ヽ  ∧. \
  /  { /: : : /: : : : : : :,'! : |  \: : : : : : ∨  ∧  \
.   〃 : : / : : : : : : /:|: / '⌒ \: : : : :.∨  |――
 i  〈|: : : :′: : : : : / |/      `ヽ、 : ∨  ヽ
 |  〈|: : : |: : : : : ,: '  ノ   ー==彡  l:|: |:.i   〈
 |  ノ|: : : |: : : /  /            从ノ:ノ   〉
 |  八 : 八: :.i| ー='″          イ: : |   {
 |/ヽ \: :ヽ⊥___,           人: : !  {       はいはい、聞こえてるで。
     \ `ー┬<     '⌒   /: : : : |   {!
     |ヽ  \ \__ __    ィ: : : : : : : :|   {!
      |:八    }ヽ ∨ ノ    |、__: : : : :.:〉  {|
      /: : 冫  ∨_|_ |≧=[/\ ): : : /   ノ|
.     /: : : {    /__ 寸 /|iⅥ ̄ `ー〈   〈: |
    /: :/:}〉  i ___ Уイ|{ヽヽ  /   {: |
  ,.: :/::::::圦   | __/ノ} { |} i}{  {    /\
/ : |::::::::::{ 人 |    } / }  {   }  〉    }:::::::ヽ


         ____
        /⌒  ⌒\
      / (⌒) (⌒)\
     /  ::⌒(__人__)⌒::: \      (そういやジャギはん、娘はんが居てる、て言うてはった)
     |       |::::::|   ,---、
     \       `ー'   しE |     毎度おおきにありがとうさんでございます、井川屋だす。
     /           l、E ノ
   /            | |     寒天をお持ちしました。
   (   丶- 、       ヽ_/
    `ー、_ノ


.


497 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:50:57 i7D98ygY0


             少女が、じっ、とやる夫の顔を見る。


       / / ※, = === = 、 ※ <   \
      / 〃>: : : : : : : : : : : : : : : : : : : <  \   ヽ
 .     /  i/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\※\  ',
 .    \/: : : : : : :___: ,ァ: : : : : : : : ,、 : : : : : :\ j  ',
       ,' : : : : : : :´ ̄/''|: ∧ : : : ≠=ヾ、: : : : : :ヽj  ノ
       !: : : : : : : : /=xレ  |: :,/__ ヽ! : : : : : : | /
       !: :/: : : i:/〃' _)沁, // ''于心 ! : : : : : : |        …………
       ∨.: : : :.| '' 乂:::ツ '´    kー':::| 》l: : : : : /yi}
        |\ : : \            `ー‐゚ ノ: : : :,/  i}
        |: :{i\.: : :ゝ    '     /.: : :/i  i}、
       /: :{i  iト´、    ◯       >- ´: :{i   i}:\
     ∧: :{i   i} : : > _    _ < : : : : : ; {i   i}: : :.ヽ
     /: :ヽ{i   i}: : / l_ニ ´ ,i : : :ヽ: : :/: {i   i}: : : : )
 .   /: : : : {i   i}》: :》´ ィ≧≦ァ 7《 ̄《气: : {i   i}: : : /:ヽ
   /: : : : /{i   i} 厶斗〈 r-ァ卞ミ彡   ヾ \:{i   i} : /: : : :


          ____
        /      \       え、えーと、井川屋だす。
       /  ─    ─\
     /    ⌒   ⌒  \    寒天届けに上がりました。
     |  U    ,ノ(、_, )ヽ    |
      \      トェェェイ   /    (なんや、この娘)
       /   _ ヽニソ,  く


.


498 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:51:18 i7D98ygY0


                ,厶XXXXXXXXXYXk_
             , '´ , '`^^⌒^^¬XXXXXXXk
           /  .:/ /.:'´/    `YXXXXXXL
          , '´   .:/;イ / ; /    `YXXXXX7
       / /:;  /::/ / /, '//   :;  } `YXXXハ
        / ,'::///::/ /:!/ .:/ '   .::/ .:/ 、 `YXノ ハ
      { l://;::;'::/ /:/l:|::/ :;'  / ::/:l .:|! |Xx)  `、
      ` {ハ:|:j::j丁7メ!|:l :/:/ .;:イ .:ハ ::j  lX「    ヽ
          乂V!| f「::`Y|l:l// .:/_7メ、j / .:/xr′   `、
          /XXX!| `='′リ〃´ イ::::`kl|:/ ::/Xx}个 、    l     ……覚えてへんの?
       / XXX八   ,    ゙=‐' グ ;:イX(   !  ` ー ┘
     /XXXXXxヽ、  、  ""‐=彡'´XXX} .:|
      /XXXXXX7^二\    ,. イXXX7⌒´ l: |
    /XXXXXX/ {r=‐う斤-、 jXXX{_| .:l| ::l |
.   /XXXXXX/  し冖イ/ ト、ヽYXXX/rヘ ::|l :l:|


             _____
           / ―   \
         /ノ  ( ●)   \
       . | ( ●)   ⌒)   |
       . |   (__ノ ̄    /          は?
       . |         /
         \_      _ノ\
           /´         |
       .    |  /      |


.


499 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:51:38 i7D98ygY0


                __,. -――- 、、_
               ,ィ'-'"´⌒^^⌒`丶丶、
              〃_r冖'⌒^^⌒'ー、_`ヾ'、
             /{ノ         ) ヽ、ぃ
            ノ /// / /  /  /}  i`、} 、
            \{ l i i,l+‐-/,ィ/‐リ-、 l | |l >
             | l |__l ィ=ミ´ノ ィ=ミ ノ/ , l イ
             从ト トi、::::  ,  :::: メ/ノ,イ lト、
             / ク、下ゝ、 ー一  彳彡イl l lトミ 、         高津さんの梅やの。
             / ノ/〈`ヽ``ニ=y=<ノ`l '、 l l l \ヽ、
          __/ノ / ,八、 ,'´  /  ヽ 入ヽヽ、l l \\
       , '´イン /r'´、,:'^"'-、_ {、  _l,.,.,._ `ト、ヽ、  \\
      / /ノ / ゝ、 /^'t、,_  `'}ー'"   }  } ヽ 'ー、  \\
    ,イ / ノイ/  l У   `'ー人-‐ ''"~´'、_ノi、丶、 `ヽ、.ヽ ヽ
   / /,r'  ノ /   ,ト/      /三、    ヽーt、 ヽ  ヽ ヽ ヽ
  / / /  ノイ   / ノ      / | | 、    ヽ  l   ヽ  ヽ ヽ ヽ
 l l {   }/   l        / | | | ヽ      ヽ .l   {   〉 ヽ l


                      |
                  \  __  /
                  _ () _
                     |ミ|
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                  /⌒  ⌒\
                /( ●)  (●)\             ああ!
               /::::::⌒(__人__)⌒:::::
               |     |r┬-|     |
               \      `ー'´     /


.


500 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:51:58 i7D98ygY0


          ____
        /⌒  ⌒\
      /( ●)  (●)\
     /::::::⌒(__人__)⌒:::::
     |     |r┬-|     |
     \      `ー'´     (⌒)         天神橋で梅を落とさはった。
      >          ノ ~.レ-r┐、
     /          ノ__  | .| | |
      |          〈 ̄   `-Lλ_レレ
      |          ̄`ー┬--‐‐´


       / ,.ィ´ ̄:  ̄`ー--、* \       \
        //: : : : : : : : l: : : : : :.\   ヽ     _>
      /: : : : : : : : : :l:..:l: : : : : : : :.:ヽ. ∧  /,.ィ´
      ,'/: : : : /: : : :.:l:.l:.l: : : ヽ: : : : : :',*! /´: :!
      /!: : :.l: :l: : : : ://l:,'、: : : :ヽ: : : : :.! l/: : :..:l
     ,' l: : : l:.:l:_:// / ,ム-、-、:l: : : : :l l':..: : : :',
     l '; : : l:.l:/`'/ / ´  ` `ー!: : : / l: : : : : :.',        へえ。
        ヽ: :ヘx=ュ、    x==ュ、/: :// /: : : : : : :ヘ
          \ヘ    ,     ///*/: : : : : : : : :ヘ       翠星石、申します。
        l `ヽ   r┐   '´/!   !__: : : : : : : : :.ヘ
           ! * l.>.`,  ,. <イ/  / `>ー、: : : : : : :
        ヽ   l: _,.ィ `´ィ'´   !   l (:::::::::ヽ: : : : : :
         l:l   ! 《´ 示ミ、ヾ/.*/ r‐':::::::::::::', : : : : :
        ,':::! / ゞイ/〈lミヾ,l.  l  〉::::::::::::::::l: : : : :
        ,':::(l /  // ( l l`''l   ! (::::::::::::::::::::! : : : :


.


501 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:53:08 i7D98ygY0


                    ___
               , 二¨-―-- 、`丶、
               /_ ..-――-.. 、十ヽ\
            //::.::,:.:.:./::/::.::.l::.::`ヽ、\ヽ
               〃::/:::/:.:.:/::/::.:/::|::.:、:.::.::ヽ ハ `、
           l::.:::l:: ,':l:::/::/::.:/::;小:::l::ト、::.:V l ヽ
            {::.:::|:::l::|::l::/::.:/::/:/:_j⊥l::ヽ:!}  \
.           ハ::.::l:::|┼く:/::/ /'´ノ ヽ:∨::.:l |  /
           〈 l::.:|:::l::|∠、ノ   , =≡V::.::/|/
           ヽヘ::ヽ::V⌒゙  ,   "゙ / :::,'  l〔            寒天問屋の丁稚はんやったんや。
           /rヘ::\ ゛゛ rーヘ  彡: /  /:::Y⌒i
            l冫/ }`ヽミヽ、ヽ、ノ, イ:`7十/::.::.:l |
           // /:::_rヘ_`二√ __〉/  レヘ::}  |
             //  ,'/夕r==、∨---/、/ f==ミフ  厂ト、
.        //  〃r7,イ|   >トマ ̄〉 7ヽ厶ィ {ヽ 」__/ / 〉
     , -‐'7/ /:.rク/ {ニ=彳/ ハ ∨,  / ̄:{八_‐-┴勹
   /   /  /: :/7/  /,イ/ / /、/_ /: : : :|:厶 `^´ 人
   ヽ冫< /   {: : :Y〈__ //〃 ,' / 7ヽ ,仆、: : :|| : :`¨¨´: :冫、
    \/   rヘ :`ヾ//__/> //V/ /」 ハ: : l|: :丶: : : ,': ヽヽ


                  ____
                 /⌒  ⌒\
               / (⌒) (⌒)\
              /  ::⌒(__人__)⌒:::
              |       |::::::|   ,---、         へえ。
              \       `ー'   しE |                      イト
              /           l、E ノ          あんさんは、こちらの嬢さんだったんだすなあ。
            /            | |
            (   丶- 、       ヽ_/
             `ー、_ノ


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502 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:53:39 i7D98ygY0


                 _,,,,、,_
            _,、-ニx´XxXxXx``ー-、_
          _/,ィXxXx _xXxXxXxXxヽ`ヽ、
        /´ / ̄: : : : : : : : : ̄:`ヽ、xXxXヽ\
.       / /: : : : : : :./: : : : : : : : : :ヽxXxXヽ \
      / ,ィ´: : : : : : /: : : : : : : : : : : : : ヽxXxXl! ヘ
       `ヽ: : : : :/: /: : : :/: : : /: :/:/!: : :i!xXxX!  ヘ
       /:./: : :/: /: : : /: /:/: : :/:/:l: : : :.lXxXxl  ヘ
.        i!:i!: : :./: /: :/: /:./: ://:/: :l: : l: : lxXxXl   ヘ
      i: i: : :/: /////:///:/.l: :.|: :.|: : lXxXi! ,ィi´ ̄       お父はんは、
.        〉!: : :l!//`//////-‐l: :|: : l: : lxXxlイ.: :i!
.      /:ト、: :i: /ャテ示、. /// __,l:.:l: : :l: :.lXxi!: : : :.l        『そないにお転婆な嬢さんがあるか』て、
.      /: :l ヽ: :l. 弋: :.ノ      ´ん:::ハヽ、:l: l: /X./: :l: : :.l
     /: : :.lX.`ー`-. ̄   ,    弋::::シ ´ /:/Xxi!: : :|: : : l        いっつも怒らはるんよ。
    /: : : :.lxXxヘ      r-、    ̄ /XxXxi!: : : :l: : : :l!
    /: : : : :.lx/`'´ヽ.    l   i    /lXxXxXx!: : : :.l: : : :ヘ
   /: : : : :.://.ゝi.フ.  > 、 `ー.'  , .ィ´ .|xXxXx./: :|: : :.l: : : :.ヘ
.  /: : : : /......ト j`j  ,ィ==≧≦==、  /xXxXxl.ヽ:.l: : : : : : : :.ヘ
./: :.,ィ'´...........i´ i.ト, .《   〃ijijヾ、  》 lXxXxXxl.....ヽ: : :\: : : : ヘ
: :/...................ゝ.j i´  ゞィ" .ij!.ij! ゞイ" |xXxXxX|........ヘ: : : :\: : : ヘ
/........................ト、.i `j     ij! ij!.     |XxXxXx|...........ヘ: :ヽ: :\: : ヘ


               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (∧)  (∧)  \         ははははは。
            |      (__人__)     |
          \     `⌒´    ,/
          /     ー‐    \


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503 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:54:00 i7D98ygY0


                             ___
                           / ―\
                         /ノ  (●)\
                       . | (●)   ⌒)\
                       . |   (__ノ ̄  |      あれ、翠星石? 翠家?
                         \        /
                           \     _ノ       ひょっとして?
                           /´     `\
                            |       |
                            |       |


     / ./.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ      ヘ
    く  ./.:.:.:.:.,′.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:./:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:i !     ヘ
      V.:.:.:.:.:.i.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: /.:.:〃-‐弋ー-:._ :.:.:!.:.:.:.:.:.:.:.:! !    /
       l.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.,'_::斗‐ヽ:-.:.: //:.://:.:/ `ヽ:.:.:.:`ヽ|.:.:.:.:.:.:.:.:| i   /
       l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:.:.:_.: // ://.:./ ,ィ=z、\:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:i ! /:i
.      !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:-‐ ""   ////   fr匀女ヾ:.|:.:.:.:.:.:.:.:.i l/:.:.:.:.|
      .ヘ.:.:.:.:.:.:.:.:.:|      /  /.    .{i..::f心:..j〉|.:.:.:.:.:.:.:.:! !.:.:.:.:.:.|
.       ヽ.:.:.:.:.:.:.:|      -           'う:^ーイ/ リ.:.:.:.:.:.:.:/ l.:.:.:.:.:.:|      へえ。
           ヘ.:.:.:.:.:.:' , アケ=≡ミ          `‐=ィ' /.:.:.:.:.:.:, '  .!.:.:.:.:.:.:|
         i.: ヽ_.:.:.:.:.:ヽ       ノ         / __.:.:/    l.:.:.:.:.:.:|      お父はん、私の名前から
          i.:.:.:|   ̄ ヽ      rx _  __,      ̄ .:.:.:.l    !.:.:.:.:.:.:|
          i:.:.:.!    | ゝ 、  | ヽ:: ´      ィ.:.:.:.:.:!    l.:.:.:.:.:. |      お店の名前をつけたんよ。
          l:.:.:.l    ! .:.:.:.:. >、j  }       ,.イ l.:.:.:.:.:.:.l    !.:.:.:.:.:.:.|
.        |.:.:.:!    l .:.:.:.:.:.:.:. リ   k__,  <   ハ .:.:.:.:.:.!     l.:.:.:.:.:.:.|
.         l:.:.:リ    !-‐―  V  /     __ /  `ヽ-,'    ,' :.:.:.:.:.:.|
     -'=ニ ̄/    l.    〃 /‐、,.イ./ j}     /     /厂 ̄:へ
   ,イ::::::::::::::/    ./     /   {,.ィ介,{  /      /     /ソ::::::::::::::::::\


.


504 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:54:26 i7D98ygY0


 翠星石は、やる夫が荷をほどいている間も離れずに、何やかやと話しかけてくる。


                   _ ......... __
               ,.ィ"/,. ィ'":.:.:.:\:.:`丶、
             / / ,:":.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.\
            / ./ /:.:./:.:.:.:.:.:.:.|:.:ト;.:.:l:.:.:.:.:.ヽヽ
          /  / /:.:./:.:.:.:.:.:.:.:/:.:| ',:.:ト、:.:.!:.:.l:.',
         く   ,'  l:.:.:.:l:.:.:./:.:.://_/ .l:/ー-ヽ:.:| ',|
           ヽ、.」  l:.:.:.:.l:.:.l_:/フ ' /' 、,,,,,.ノ:./ ′
             /:.:.{  !:.:.:.:.Vr   ,,ィ ′  ///イ}
            /:.:.:.:{   ヘ:.:.:.:\=''"//   _   ハ!
           /:.:.:.:.:.{   ,イ_ヽT rr‐',  <ノ  , ' }          ,、
          /:.:.:.:.:.:..{ r-,.‐-.、>、ヽヽヽ ..__/   }           //
         /:.:.:.:.:.:.:.:{ </: : : : :ヽ} ヽ、  ,ヽ,‐;.:.::{   }        //
        /:.:.:.:.:.:.::.:.{ {l: : : : : :.:.!{,〃゙Yニ - _ュく{.   }       //
.      , ':.:.:.:/:.:.:.:{ /:|:.: : : : : :ヾ,ヽ='ィ、ニ. r.イYヽ   }      _..rY、
    , ':.:.:./:.:.:.:.,イ/:.:.|:.:.',: : /: : : \/ !  / /{:ハ.  }.   /,_ィ_〉 〉
.  , ':.:.:/:.:.:.:.:./ /:.:.:.:!:.:.:.∨: :_:_: : / l   ' .,'イ: : :!  }. ,イ    'ー- ._
 , ':.:./:.:.:.:.:.:./ ./:.:.:.:.:.!:.:.:/: :/r =7     ,'.フ: :ヽl   }Y フ '´ ̄`二- '-'
,.':.:/:.:.:.:.:.:.:/ /:.:.:.:/ハ:/:.:.:.イ7/〈:、     !'.):.:. : : `ヽ/'、ヽ二-フ´
/:.:.:.:.:.:.:., '  /:.:./:./:./:.:.:.:/://:.:.:ヽ:\   |ヘ:r,.-.、、/  ゙ーァ'´
:.:.:.:.:.:.:./  ./://:.\:.:.:.:/:.V:.:.:.:. : :〉:/  l:.\ニ/Yl   /
:.:.:.:.:.:.:.{  /:':/_.. -‐'::::`7:.:.:.:.:.:.:.:.:./:/   /:.:.:.::|': :.ヽヽ/ヽ、


         ____
        /⌒  ⌒\
      / (⌒) (⌒)\        (え、えーと……)
     /  ::⌒(__人__)⌒:::
     |  u.    |::::::|   ,---、     (こ、困ったな……)
     \       `ー'   しE |
     /           l、E ノ      (あっちゃ行け、言うわけにもいかんし……)
   /            | |
   (   丶- 、       ヽ_/
    `ー、_ノ


      翠家の板場には、ジャギの他に料理人が一人と若い衆が一人、

         それにジャギの父親らしき老人が帳場に座っている。

        翠星石の話し相手になりそうなものは居ない様子だった。


.


505 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:55:08 i7D98ygY0


          板場で忙しく立ち働いていたジャギが、済まなさそうに言う。


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ       やる夫、済まんなあ。
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧        ちょっとの間、翠星石の相手したってくれへんか。
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `


          ____
        /⌒  ⌒\
      / ⌒   ⌒ \          へえ。
     /::::::   (__人__) :.u \
     |   u.   |r┬-|     |        (ちょっとの間、てどのくらいなんやろ)
     \      `ー'´    /


.


506 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:55:29 i7D98ygY0


         ____
       /  ⌒  ^\                リョン
      /  ( ●)  (●)          嬢さん、ご寮さんは?
    /  ::::::⌒(_人__)⌒ヽ
    |       |r┬-|   |        お出かけだすか?
    \        `ー'´  /


                 _,,,,、,_
            _,、-ニx´XxXxXx``ー-、_
          _/,ィXxXx _xXxXxXxXxヽ`ヽ、
        /´ / ̄: : : : : : : : : ̄:`ヽ、xXxXヽ\
.       / /: : : : : : :./: : : : : : : : : :ヽxXxXヽ \
      / ,ィ´: : : : : : /: : : : : : : : : : : : : ヽxXxXl! ヘ
       `ヽ: : : : :/: /: : : :/: : : /: :/:/!: : :i!xXxX!  ヘ
       /:./: : :/: /: : : /: /:/: : :/:/:l: : : :.lXxXxl  ヘ
.        i!:i!: : :./: /: :/: /:./: ://:/: :l: : l: : lxXxXl   ヘ
      i: i: : :/: /////:///:/.l: :.|: :.|: : lXxXi! ,ィi´ ̄
.        〉!: : :l!//`//////-‐l: :|: : l: : lxXxlイ.: :i!
.      /:ト、: :i: /ャテ示、. /// __,l:.:l: : :l: :.lXxi!: : : :.l       お母はん、いてへん。
.      /: :l ヽ: :l. 弋: :.ノ      ´ん:::ハヽ、:l: l: /X./: :l: : :.l
     /: : :.lX.`ー`-. ̄   ,    弋::::シ ´ /:/Xxi!: : :|: : : l      私が三つの時に亡うならはった。
    /: : : :.lxXxヘ      r-、    ̄ /XxXxi!: : : :l: : : :l!
    /: : : : :.lx/`'´ヽ.    l   i    /lXxXxXx!: : : :.l: : : :ヘ
   /: : : : :.://.ゝi.フ.  > 、 `ー.'  , .ィ´ .|xXxXx./: :|: : :.l: : : :.ヘ
.  /: : : : /......ト j`j  ,ィ==≧≦==、  /xXxXxl.ヽ:.l: : : : : : : :.ヘ
./: :.,ィ'´...........i´ i.ト, .《   〃ijijヾ、  》 lXxXxXxl.....ヽ: : :\: : : : ヘ
: :/...................ゝ.j i´  ゞィ" .ij!.ij! ゞイ" |xXxXxX|........ヘ: : : :\: : : ヘ
/........................ト、.i `j     ij! ij!.     |XxXxXx|...........ヘ: :ヽ: :\: : ヘ


.


507 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:55:55 i7D98ygY0


                    ____
                  /      \
                /   _ノ  ヽへ\
               /   ( ―) (―) ヽ       (しもた)
              .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |
               \     ` ⌒r'.二ヽ<       す、済んまへん……
               /        i^Y゙ r─ ゝ、
             /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
             {   {         \`7ー┘!


  /    _(       /´: : : : : : : : : : : : : : :\_
/     f   fj   /: : : : : : : : : : /: : : : : : : :ヽ丶、
  l    /´⊆※っ /: . : . : . : . : .:/ : : : : : : : :ハ: : :ヽ: :\
  ヽ  j    `   /: . : . : . : . :/: ; : ‐''´: : : :/ l : : : }: : : ヽ
 ̄丁ヽf      _/_:_:_:_:_:_:;;..≠、ニ -‐ フ´: :/  / : . : l: . : . ヽ
三/:.:.:.{  、h,.  l:.:.: : : : : : :/ _ ..``' ´‐< ,, _ ../::イ:.:../: . : . : .l
;;/:.:.:.:.:.} ⊂,. 、⊃{:.i:.: : : : : ´l `了''ゝ..、ー 、 _/ノ/: /:.:.:.: }: . : . !
: :.:.:.:.:.(   J   |:.l:.: : : : :l: |    { ノ:;;jハ ´   /:Xl l:.:.:.:.l : l. .:l    かめへんよ、顔も覚えてへんし、
:.:.:.:.:.:.:/     ヽl: : : : : |!:l    ヾ'ソ     ノ _`ヘ:.:.:.:./:.:.:l:./
:.:.:.:.:.:.ヽ  「!   トヽ: : : : lヽ ヾヽヽハ      が;、∨:.:.:.;jノ     気にしいな。
:.:.:.:.:.:.ハ ⊂,.、⊇ {  \: : '、             、 じ'/:/:.:.:.∧
:.:.:.:.:/:.:ヽ lJ   |: : :.丶、\            ///ノ:.:/        私にはお父はんも居ってやし、
:.:.:.:./:.:.:.:ム    ヽ: : : .  `    ヽ、 _   人/
:.:./-‐≦ヽヽ  r、 }:: : : : .        ..ィ:::::::}          お祖父はんかて居ってや。
´〃     { c X'' ヽ: : ヽ:.:__:_ .   , イ:.:.※:.:.:}
 ll       ヽ ヾゝ ト、 /:::::.:.:.: ̄丁::l ヽ: : : : ノ           寂しいことあらへん。
 l!      {    `ヽ Yハ:::::.:.:.:.:.:.l: : |/{: . 〈
 |       ヽ  fj  }Z´斤\:.:._:.:l: : .|  ヽn, |
 l        〉⊂, え ヽ〃|ハ ヾヘ)-、:.l  {f!〈
 ヽ   `丶、 {   lj  〈:/ |ハ  > 〉 ヾ、 |  |
 . .ヽ     ` 〉     ノ  |ヘ|//{    ヽ|  |
    ヽ     ヽ     )  |ヘ|"  l):.: . /|  |


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508 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:56:21 i7D98ygY0


            /      /  X´. :: :: :: :: :: : ` マハ   \
       /     / ※ メ .:: :: :: ::/: :: :: :ヽ. :: :ヽj    \
      〈 ` 、    /   メ. :: :: :: ::/: :: :: : :: i}. :: : ::ヽ     〉
         \ \   !※ メ. ::::/.::::/:: :: :: :: :::/!ト. :: : ::: Y   /
          ヽ  ! l|  jメ. ::::/. ::/:: :: :: :: :::/: |: :!: :: ::.:::i /
          ∨:\!※} !:::::l::.ィ升ト、: ::::/::::::!メ、: :: :::レ'       やる夫、あんたは?
          /::::::/|  |::!:::::|::.ィ云ト.: :: :/.::::/云:!:: ::!::リ
           /:::: /从 j!:!:: :ル {「以リ:/j:/j以!ハ::::ル'         お父はんとお母はんは
        /::: :/:/::人 从::〈  `≠'    . `=’ムイ !
         /:: ::/:/::/:: ::Xハ:::\""  「  ノ"". イ::l |          元気にしてんの?
       ./:: ::/:/::/::::/::::} トxr j>  .  _. イ※リ:::l:|
      . '. ::::/:/::/::::ム.斗く! Ⅵ\ __ jト、 メ  ノ.::从
    /. ::.::/:/::厂 ̄Ⅴハ j.※N    }! >-<::ム.::ヽ
  ./. :: :: ::/:/:/: : : : : :Vハj   V  /ハ\ 〈 Y 〉: :Y.:::\
 . '. :: :: :: ::/:/: j : : : : : : :Vハ ※ }}く / ∧  > } l {: : :.!. :: :::.\
./. :: :: :: :: :': '::::ハ : : : : : : }N |  jj  / /キ}イ  } l {: : :ハ. :: : :: :::\


                       ____
                     /⌒  ⌒\         居てまへん。
                    /( ●)  (●)\
                  /::::::⌒(__人__)⌒:::::\       母は私が七つの年に、
                  |     |r┬-|     |
                  \      `ー'´     /       父は十の年に亡うなりました。


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509 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:56:43 i7D98ygY0


                     ____
               , ィ ´ __,.、__ `>、
             / __.r‐┘   \ └‐t _ \
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         / /イ   //  /  l  |  \  ヽ!  \
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      /    /   l:.--―/ // イナ ― --l    !イ::/
       ̄ヾー-|l _ 斗匕三x' ´ / / x三:心j:.:  j l/
         \|:!:. :.:.liヽ ハノ:!    /  ハノ:i ノイ.:. /! l
          l|小、:.:.:.ヽ. ゞ='    /    ゞ=' /.:.: イ } l        姉さんか兄さんは?
           l| { ヽ、:.:.:.\     '       /ィ´_ {!_ l: l
            l|  } _{!_ 下T、    cっ   /i:.ハ. {! }:. ',
            ∥  { {!  }:::i::::>:..、    , ィ:::::::.:l:::.:}   {:.:.  ,
         /'   }   {::l.:.::::::l::::|   : :|::::l::::::::.:i:::.{'_{!_/:.:.:  ',
         / /  ト、 }!,jV.:.__/ ̄¨ Y ¨ ̄\_:r、} }!/ .:.:.:..  ',
        ,' /  {こ入 { イ ,.‐',二¨T¨二.'‐、  { j/¨ヽ:.:.:.:.. ヽ
       ,' .:'  / _r'_{! ノ { // / ,小.ヽ \ヽ r' |!」 i  l :.:.:.:..  ヽ


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                    /     ( ●) (          居てまへん。
                   /     :::⌒ (__ノ、__)
                   |         |┬‐、||
                   \        `ー‐'ノ


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510 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:57:06 i7D98ygY0


        ,    _.. -‐…‐-   _
.       (  , '´ , -―     、`ヽ、
         × _∠ニ -―‐  、 \  \
        く /. : : : : :; : : : ; : : : :\   ヽ、 \
       /: : : :// : : :;イ: : : : : : :丶  \ \
.     ,: : /: ::, '::;イ /: / /:::/ハ : : : : : ヽ  {   \
    /: :/: ::////  /: /  !|: : : : : : :.  ヽ   \
     {: /: : ,'´//  / , ′ !| i: : : : : :} ┼ } j _,ノ
     j/{: : :l://  ̄  /  ヽ、|l ト、 : : : ハ   | 厂
      八: : {/ x‐‐ 、     」≧ーi: ::,′{  レ{
        〉. :ヽ/{:::::リ      ´{::::::jヽj::/:} {十{ : !      ほな、妹か弟は?
      ハヽ: {xx~´   .     ー' ノイ:/( }  } : l
.         从八             Xx //: : ){Ⅹノl : l
        / /{ヽ \   っ     //: : /f′ j l :∥
.       / /ハ Xヽ > .. __   イ: メ、: {{ j×ノ l : l !
     / // ハ /   ,ィ个x、      \}j {: l : l :!
.    / //ノ /   〃 ∧  \     ヽ+} l : l :l


               -―─- 、
           /         \
         ′  ⌒    ⌒   ,
          i  ( ―)  (― )  i
          |     (__人__)    |        居てまへん。
          、           ノ
      ⊂⌒ヽ  >       <_/⌒つ     祖父も祖母も叔父も叔母も、
       \ 丶′             7
        \ ノ           ト、_/       私の他には、誰も居てしまへん。
.            ′           |
.          i           |
         乂         イ
            | /ー―一 、 |
           し′     、_j


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511 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:57:25 i7D98ygY0


              _  -‐    ̄ ̄ ̄ `丶
             / ̄* ̄⌒ … 、       \
         / ∠_ __ __   * ` ー 、_    ヽ
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           ヽ{ヽl!  ̄´      |i:::::::dハ/:.:/:.:.:./:{   {:.:.|
             }.ハ."" '      ` ーイフ:.:/:.:.:./:.ノ *}:.|       ひとりも?
         {  ヽ⌒ヽっ    """∠:.:イ:.:/:.:.{   {:.:.|
          ! 〈 ̄∠^Y⌒ヽ   .ィ:.:_/:|:.:.:.ノ   }:.:|
          .ノ*/ 「/:::厂}1\ ̄   |_:.:.:.:.:.|:.:{    {:.:.:.|
         イ    〉「{:::/:::/┐  ヽ___ V丶、l:.:.:} *{:.:.:.:|
       |::}   く 「∨イ   r‐┘ ├'    ー{    }:.:.:.:l
       |{ * } `ヽ、 __r‐┘  /l      丿   {:.:.:.:.:l
       l::}   { /,ニく  __ .ィ´ _〉    {  *  }:.:.:.:.:.l
       {   }〈〈  ∧ ̄ __r‐┘ ヘ     {     }、:.:.:.:l
         |}*{ ヽV/ハー'     ヘ   /::}     ハ:.:.:.:.:l


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               \      `ー'´     /


512 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:57:43 i7D98ygY0


     やる夫がそう言うと、翠星石は暫く黙ったまま、じいっとやる夫の顔を見た。



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 .l:..:.:::::::l.:.:.:.:::::::::::::::::l .:l  ,.-ヽヒ:;:;`´:;:〃ノノ     //      /´    7__.:.:.:.:.:.:.:`.:'-.,_       ヽ:::::::::
  l.:.:::::八:.:.:.:::::::::::::::::!.:l (    `ー''""゙゙ ''― 、     ′           {(  ヽ.:.:.:.:.:.:.:.「`'-_     |:::::::
   l.:.:{ {\.:.:::::::::::::::::::l .`ー~`´     `ー'´                   l.:.`~´ヽ.:.:.:.○.:}   >>   |:::::::
   l.:.:ヽ  \.::人:::::::::ヽ ////〃 ハ ヽ丶             ,'⌒ゝ‐-=こ.:〃_.:丿 //   ./.:.::::
    l.:.:l l (二\.:::\::::::::\      〃ハヽ丶             `''´   `( ""゙゙''='⌒ヽ   ./.:.:.::::
    l.:ヽ ヽ  / \.:\:::::::::\           〈       ////〃ヽ  ヽ       ) /.:.:.:::::::::
     l.:.〉   /   l lヘ ` ' - ,\                       // ハヽ` ' -‐'´,-'´.::::::::::::::::
      { l       ヽ′ヽ                                 _ - '´::::::::::::::::::::::::::
      ヽ ヽ       |\            __             _  -.:':´::::::::::_::_- ' ´ ̄`'-、
       〉        l:;:; \             ヽ        ー----―_,..,_フ,´{
       { l         l:;:;:;:;:\                        _-'´   Y   ヽ
 __    ヽ ヽ       _ .\:;:;:;:;\                  _,,..-‐y′     `-‐´,. --‐亠
´:;:;: \   .〉       ヽヽ \:;:;:;:;\             _,,, _//~/ 〈   ,.  /,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;:;:;:    \ { l   \   } }  / , :;:;`'‐、,_           /,. ,. ‐-、 /   )/-‐'´,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;



               その瞳に、みるみる涙が溜まり、一杯になった。


.


513 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:58:05 i7D98ygY0


 それが零れそうになった時、やる夫のそばを離れて、

  ぱたぱたと板場から庭の井戸へと抜けて行った。


                       _,__
                    . ィ´ ,ハ iヽ
                   /.イ`ヽ/:.| iノ
               ,. -=ニノ: : : : : :.人i'j´
              〃 _,ィ´: : : : : : / ` 、ヽ
             _, -‐'´: : :./: : : : / ./: : ヘ.',
          ,.ィ: ´: : : : : : :ノ: : : : 7イ,': : : ハ!
         〃: : : : : : : : /: : : : : 7::::::i: : : : : :.〉
           !: : : : : : , イ: : : : : : : :7::::::八: : : : /、
       〈~:.ヽ、: : :/: : : : : : : : : :ノj::::::::: :ヽ、: :ハ,〉
     〃`ヽ、i、ノ`ヽ、: : :. _,ニ彡'´ : : : : : : 7: : : i>!
        )ノヽ:ノ {、: : -、: ヽ: : : : : : : : : : : :.i: : : : :/
      '´   f_: 、: : :): ¨´: : : : : : : : : : :.八: : :./_,
        ヾ=彳: : ヾー、_,、: : : : : : : : : : : ヽ;/ハ
      ,イ´: : : : : : : : : : : : : ``ヽ、: : : : : : : : : : i
    ,.../: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ``ヽ、: : : : :ハ
    ∨::::::::::::::≧-、_: : : : : : : : : : : : : : : : ``ヽ、: :.ハ
     ヽ;:::::::::::::::::::::::::::``ヽ、: : : : : : : : : : : : : : : `ヽi.,_
       ヽ、:::::::::::::::::::::::::::::::::``ヽ、: : : : : : : : : : : : : :f


          ____
         ./     \
       /  u   ノ  \
     /      u (●)  \      嬢さん!?
     |         (__人__)|
      \    u   .` ⌒/      (あかん、泣かしてしもた)
     ノ           \
   /´               ヽ


        やる夫はおろおろと翠星石の後を追いかける。


.


514 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:58:28 i7D98ygY0


             翠星石は井戸端で顔を洗っていた。

              水音に、時々、嗚咽が混じる。


           , -―- 、
        ,.ィ ´  __  `ヽ、
.       /  ,.ィ ´    `ー-、 `ヽ、
.     く  / ※     ※ `ヽ/
      `/    _, -―‐-、_    l
      /:l, -‐:'´: : : : : : : : : `ー、l',
      /: :l: :l:: : : : : : : : l: : : : : : l: ',
      /: : :l: l: l: : : : : /:/!: : :l:l: :/:.∧       ひっく……ひっく……
      /: :ハ`ヽ∩「l「ln /.n「l「l∩ .`7:∧
.    /: : `iゝ!.rl ll ll ll l_'_l.ll.ll.l.l ln.ノ:l: :∧
   /: : : :l:::::l.ヽ__ノ ヽ__ノ.::::l: : ∧
   /: : : : l::::::l/:::::::::::ヽ×/::::::::::::ヽ.::l: : :.∧
.  /: : : : :/:::::/::::::::::::::::|. .|:::::::::::::::::ヽ.:!: : : ∧


           ___
       /      \
      /ノ  \   u. \        嬢さん、
    / (●)  (●)    \
     |   (__人__)    u.   |       すんまへん。
     \ u.` ⌒´       /
    ノ            \
  /´               ヽ


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515 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:58:52 i7D98ygY0


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-、,.ヘヽ:.:.:.:ヽヽ ヾ、_.tー'ノ /'´〃    弋ーj.っ '  /:.:.:.:.:.//、:.:r‐‐
 ヽ.-l \:.:.:\、  i:゚    /´        ヽ ;リ ./':.:.:.// ,.-J         あっちゃ行って!
./  .!   ヽ、:.ヽヽ{!      i        ‐,.'ィ":./   !/  `
ヽ、  ,!   l l`ヾ.=-          -‐"‐/l !   l )  / 〉
) .! へ!  //  ` i! 、   { ̄ )   .,.イj'´  l !  !< ,   く
  ヽ_ ̄l   l !       `丶、   _.. '"  .;:    !l   !  / -,.、ノ:
ヽ-、 ', !  !l      /::,二 `"´二、:\     ,イl  l  '  /: : : :
: :!: :} l  ! !l     /::/ //:「ト、\ \::\  / l.! l    〉: : : :


                   言いながら、翠星石はしゃくりあげた。


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516 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:59:14 i7D98ygY0


   この小さな少女が、やる夫の身の上を聞いて泣いている。

    それを思うと、やる夫はどうにも切なくてならなかった。


                /  ̄ ̄ ̄ \:
               ::/        ::::\:
              ;: |          :::::::| :
               \.....:::::::::    ::::, /
               r "     .r  /゚。
             :|::|     ::::| :::i
             :|::|:     .::::| :::|:
             :`.|:     .::::| :::|_:
              :.,':     .::(  :::}:
              :i      `.-‐"


  自分にこんな妹が居れば、身を賭しても守るだろう、とも思った。


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517 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 17:59:37 i7D98ygY0

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
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                                ・
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                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !


518 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:00:02 i7D98ygY0


              それから数十日後。


  ===================================================;;;|..│
 ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
 ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
==@==@==@==@==@==r─ー─‐-──ー┐@==@==@==@==@==@==
─────────‐|  井  川  屋.│─────────
:: : :| |;;| :::: :::: :____`ー─-─-‐ー─┘____:::::::::::::: :| |;;| :
  | |;;|   ::||三三三| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三|__|__,,ノ___,ノ___,,|三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|   ::||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三三||:    | |;;|
  | |;;|:::: /||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三 /:: :::::::::::::| |;;|:::::
| ̄ ̄| ̄ ̄|. ||三三三三||:::::: ::: :: :::::::: :::: ::||三三三|| ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|    |    |. ||三三三三||::::: :::::::: :: ::: ::::: ::||三三三||  |    |    |
|__|__|/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||_|__|__|_


.


519 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:00:19 i7D98ygY0


      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
  .   |(●),   、(●)、.:|
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
     \  `ニニ´  .:::::/         やる夫、やる夫は居てるか?
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


         _____
       /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
        |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
        |::::::::/ ノ   ― |
       |:::::::〉 ( ●) (●)|
       (@ ::::⌒(__人__)⌒)       旦那さん、
        |     |r┬-|  |
        \    `ー'´ /        何ぞおましたんか?
    ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
    :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
        |  \/゙(__)\,|  i |
        >   ヽ. ハ  |   ||


.


520 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:00:57 i7D98ygY0


      __/ヽ_∠L_
     /:::::::     ''''\
  .   |:::::::::    (●), |
    |::::::::      ,,イ_,`)       ああ、いく夫。
  .   |:::::::::      ノ.-=ラ
     \:::::::      `フ        いや、たいしたこっちゃない、
  ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i       ちょっと使いを頼もか、思てな。
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


      _____
     /:::::::::::::::::::::::::::.\
    |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|         岩おこしやったら、止めといておくれやす。
    | ノ   \  i:::::::|
    |(─) (─ ) 〈::::::|         あれは旦那さんの歯ぁには固すぎます。
   (⌒(__人__)⌒:::: @)
    |  |r┬-|  u  |          それに、そうそう甘いもんばっかり召し上がっては
    \ `ー'´    /
   ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、      お身体に障りますよって。
  イ / |.!、 _____ / ノ |   i
  | i  |,/(__)ヽ/   |   l


.


521 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:01:34 i7D98ygY0


      /\___/ヽ
     /ノ⌒'" `'ー-、::::\
  .   |  (●),、(●)、  .:|         まぁた怒られた。
    |   ,. (,、_,、)、_   .::::|
  .   |   {,`ト===イ ,}  .::::|         いく夫、お前はん、
     \  ヾニノ  .:::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ ーーノ゙-、        すっかり私の古女房みたいになってしもたなあ。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


       _____
     /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
      |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|         へえへえ、
      |::::::::ゝ ―  ― |
     |::::::( ( ●) (●)|         古女房でも何でもよろしおます。
     (@  ::::⌒(__人__)⌒)
      |     ` ⌒´  |
      \         /         おい、やらない夫。
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ        ちょっとこっちゃ来てんか。
       |  \/゙(__)\,|  i


.


522 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:01:54 i7D98ygY0


  .     / ̄ ̄\
  .   /        \
  .    |  _ノ  ヽ、. .|
  .   !. (一)(ー) |
     , っ (__人__)  |
  .  / ミ) `⌒´  /        へえ、なんでっしゃろ。
  .  / ノゝ     /
    i レ'´      ヽ
    | |/|     | |


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
      |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
      |::::::::/ ノ   ― |
     |:::::::〉 ( ●) (●)|
     (@ ::::⌒(__人__)⌒)
      |     |r┬-|  |       やる夫はまだ翠家はんから戻らんのか?
      \    `ー'´ /
  ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


523 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:02:17 i7D98ygY0


       __
     / ~\
   / ノ  (●)\
 . | (./)   ⌒)\
 . |   (__ノ ̄   \
   \          |         へえ、また向こうの嬢さんに
     \       /
 .      \  ⊂ヽ∩         捉まってんのと違いますやろか。
       /´    (,_ \.
        /       \. \
       ./   /       |. \ソ
     (  y'      .|


        _____
      /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ        ほんまにいつもいつもどななってんねん。
      |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
      |::::::::/ \:三::/i:::|        子守りにやってるんやないで、まったく。
      |:::::::〉( ○)::( ○).|
     .(@ ::::::⌒(__人__)⌒)
       |  u   |i|!i|!|  |        やらない夫、もうこの次から
      \    `⌒´ ,/
   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.       あんたが翠家はんに行きなはれ。
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |      こう毎度毎度では、こっちの商いが回らんわ。
      >   ヽ. ハ  |   ||


.


524 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:02:47 i7D98ygY0


         / ̄ ̄\
       / ヽ、_   \
     (⌒)(⌒ )    |     へえ、せやけど番頭はん。
      (__人__)  u    |
     | |┬‐|      |     私が行きましたら、いっつも嬢さん、がっかりしはるんだす。
     | || .|      |
      (`ー´     /      そらもう、慰める言葉も見つからんほど、
      ヽ      /
       〉    〈       何やこう、『世も末』みたいに両肩をがっくり落とさはって……。
       |     |
       |     |


         __
        /ノ ヽ\
      /.(○)(○)\
      |. u. (__人__) |     翠家の旦那さんも、
     . |        |
       |        |     何や当てが外れたみたいな顔をしはるし。
     .  ヽ      ノ                 ツロ
        ヽ     /      私、そんなん見るの辛ぉおます。
        /    ヽ
        |     |
         |    .   |


525 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:03:14 i7D98ygY0


      /`ー──一'\
     ,r(●)(、_, )、(●)\
  .   |  '"トニニニ┤'` .:::|
    |.   |    .:::|   .::::|
  .   |   ヽ  .::::ノ .::::::::|      はははっ。
     \   `ニニ´ ..::::::/
  ,,.....イ.ヽヽ、ニ__ーーノ゙ -、      そらええ、やる夫もえらい見込まれたもんや。
  :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
      |  \/゙(__)\,|  i |
      >   ヽ. ハ  |   ||


       _____
     /.::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
      |.::::::::::γ ⌒ Yノ(ヽ|
      |:::::::::/  _ノ  ヽ|::!
     |::::::/ノ( ●━●〈:|        旦那さん、笑い事やおまへん。
     (@  ⌒  (__人__) )
      |       ` ⌒´ .|
      \  ノ(    ./
      /  ⌒    \


       __/ヽ_∠L_
      /:::::::     ''''\
   .   |:::::::::    (●), |         まあええがな、いく夫。
     |::::::::      ,,イ_,`)
   .   |:::::::::      ノ.-=ラ        やる夫かてジャギはんには教わることも多いやろ。
      \:::::::      `フ
   ,,.....イ.ヽヽ::  、 -─'--、        子守りはその謝儀やと思たらよろし。
   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
       |  \/゙(__)\,|  i |
       >   ヽ. ハ  |   ||


.


526 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:03:35 i7D98ygY0


          井川屋でそんな会話が交わされて居た頃。


        ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
       ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
      ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
     @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
        |             ┌─────────┐
        |    ┌──┐ │  小料理  〈翠家〉  |
        |    │  持│ └─────────┘
        |    │歓  │  :========:.:========:  ┏┓
        |    │  帰│  |i.     l||i.     l|  (三三)
        |    │迎  │  |i.     l||i.     l| .(三三三)
        |    └──┘  |i_____l||i_____l| .(三三三)
        |              |┬┬┬┬||┬┬┬┬|  (三三)
        |              |┼┼┼┼||┼┼┼┼|  ┗┛
        |_________________|┼┼┼┼||┼┼┼┼|_______
                     . ̄ ̄ ̄ ̄


.


527 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:04:03 i7D98ygY0


 翠家の板場脇の部屋で、やる夫は翠星石のままごと遊びの相手をさせられていた。


                                    ___
                                /___    .
            ____              ∠ -‐    ‐-ミ 、 \      ♪
          /      \             ./: : : : : : : : : : : : : :ヽヽ  \ /
         /  ─    ─\          / : : /: :/|: : ∧: : ',: : :.i }__\
       /   (―)   (― )\         {: : :/:/  |/  \:}: :.:ノ/: : :|
       |  U    (__人__)    |        \:イ i⌒! _ i⌒! /ィ´.': : : :!
        \      ` ⌒´   ,/          .八wx ヽ_)  xwx.| i: : : :.|
      /´ ̄          ィヽ          i: :| ≧=‐- -‐=≦| |: : : :.|  ニコニコ
      〈    ̄  ‐- 、       i           .|: :! |;〃〈小._〉 ∧| |: : : :.|
      `ー,‐ -、_   ヽ       | l         l: :l_./:{{__/」_j_}}:::Ⅴ」 : : : l
       /   ヽ.て  〉     .| l          | : /::::/、_::レ__:::ヘ::::::Ⅴ : : : :,
       l    | 、彡イ   ヽ_⊥-‐ 、      .〈:.〈7´::::、::,:::::::::::::マニ〉、: : : :〉
       l    _,l       ̄/     l     /´:::::::::::/::::::::::::::::::`ー':::::\<
      γ    ト、_  / ̄ `l_-‐ ´   .../:::::::::::::::::::{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉
      (___〉    ̄ヽ --‐'         .`ー─ 、_,..--、_:>─‐'"


.


528 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:04:30 i7D98ygY0


.          ,、 -――‐--.、,
.        ,,ィ'´     *  ヽ、ヽ
      /´ *  _,、-―-、  ヽ `ー-、
..    // * ,、-'´: : : :./!: : `、.*.ヽ.   \
   / i  /: : l: : : ://-i!、: : :i   .l,、-‐'´
   \l.*.l: : : l:.ll:.: ://  .l!_ヽ:.:l * .l: :|
      .l .l: : :/i!.l//   '´ `/:.:l   l: :l!
      l.*.l:ll:イ ィ'´` ,    /.l: l *.l!: : l
    l l!、: :ヽ   、-‐'i  ,l:.l  ./:,-、:l        はい、やる夫。
    .l.*l ヽ: :.ゝ _ ゝ‐' /: :l *.l'´イ .l:.l
    l .l  .l: :l`'ー-`_' '´ィ'/´l  l.'´::::ヽ:l!       お饅頭あげまひょ。
     l *.l  l:/ゝ‐! / `´  l * .l:::::::::::i:.l!
.    l  l /:.l::::ゝ-、 ./\  l  .l:::::::::::l: l!
    l *.`、:ハ/ _ ヽ.iョョョヽィヘ, ,、!::ヘ::ハ_:.l!
.     i   ヽゝ,|三|_イ=‐'´ ノ ! j:::::::::::::ヽ
      ,ゝ-、-'ニ―――‐'二´ニイ´ノ > 、:::::::〉,
     /: : :ヽヽ´` 〉!     ̄ ̄ヽ,   ヽ:〈::ヘ
   ./: : : ::,イ:l、  l::|       .{{{{ヽ、_ ,イ:ヽ、:ヘ


                /  ̄ ̄ \
               /ノ  ヽ__   \
             /(―)  (― )   \
             |.  (_人_)   u |      へえ、おおきに。
                  \   `⌒ ´     ,/
              /         ヽ        (困ったなあ……)
             ./ l   ,/  /   i
             (_)   (__ ノ     l        (早よ帰らな、また番頭はんに叱られてまう)
             /  /   ___ ,ノ
             !、___!、_____つ


  いつもなら頃合いを見てジャギが助け舟を出してくれるはずが、今日はそれが無い。


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529 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:05:12 i7D98ygY0


                 翠星石が不服そうにままごと道具を取り上げる。


                  ___
                    ,.ィ_´-――‐-二_ ̄`ヽ、
             /イ´ ※    ※ `ヽ、 ヽ
               / ,.ィ´ ̄ ̄ ̄`ー-、.    ヘ  ヘ
               ,'/: : : : : : : : : : : l:l: :\   ヘ  ヘ
              ,'/: : : : : : :/: : : /://l: : : :ヽ ※ ヘ  ヘ
           //: : : : : :/: :./ // ',: : : : ヽ  ',.ィ'´
             / l: : : : __/l:/ //-‐冖!: : : : ',  l:.l
          l l!l: : : :/示 //イモ示l: : : : l:!   l:.l       もう。
          | l'l: :l: :l'乂リ    辷:リ '!: : : /l!※ !:.l
             l '; :l: :l xx '   xxx /: :/ /  /:.:l       何でもっと楽しい顔でけへんの?
          /  ヽ: :へ   -(     //   /: :..:l
          /  /: : `ヽ_:`'ー-‐ '´'´/   / : : : : l
         / ※ /: rrヘノ´,ィ=示=´ミ、`/ .※ /f',-、: : :l
.      /   /: /:::〉〈 .《 /ijjヾ、 /   ./ノ 〉::::l: : :!
    /   /: : /::::〈 .ノ ゞ' ijij ゞ"l   l〈 .ノ::::::l: : :l
  /   //: : /::::::::ノゝ,   ij.ij   l   lノ〈:::::::::l: : :l


                ____
              /      \
            /   _ノ  ヽへ\          あ、すんまへん。
           /   ( ―) (―) ヽ
          .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |
           \     ` ⌒r'.二ヽ<         …嬢さん、すんまへんけど、
           /        i^Y゙ r─ ゝ、
         /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|         私そろそろお暇を……
         {   {         \`7ー┘!


.


530 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:05:34 i7D98ygY0


           立ちあがりかけたやる夫に、翠星石が話しかける。


        , -=――‐- 、
      // ※ , -―:':´:`ヽ、
     /./ ,.ィ´: : : : : : : : : : : ヽ
    / /※/: :.l: : : : : :/: :.l: :ヽ: :.:ヘ
    /  ! /: : :.l: : /:/:/ !: :l'ヽ´ヽ: : ',
.   \ ', l: : : : l:./:/:/ l: :/ィテ!ヽ: :.ll:!
    l`ー! !: : : :l/'イ示' !/ ´ヒリ.!レ:/ l'       なあなあ、やる夫。
    l: : : '.rYY`r、ゞ‐' /   ,ィ /、
     l: :Yヽ! ' !. ' `ヽ、 r‐'7/ /ノ´l       寒天て心太から出来るて、ほんま?
     !:..:|::ゝ `ヽノ`ー'ヽ ̄´/ / 〉:::::l
    ,':..:.l:::::ゝ  ! ̄"lゞ》 l  !ノ:::::::::!
   ,: : :.l::::::::ゝ l    !lミlミ! l::::::::::::::ll


            ____
          /      \
        / ─    ─ \          へ?
       / -=・=-   -=・=- \
       |      (__人__)  U  |        へ、へえ、ほんまだす。
       \     ` ⌒´     /


.


531 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:05:57 i7D98ygY0


                ________
              /           \
             ∠r ⌒^⌒^⌒^⌒廴    \
            / _人__人__人__,ィ   `ヽ_  \
             y´: /: : : : : : ´: : ⌒廴   )_   ヽ
          /.: : : : : : :/. : : li : : : : 廴    )
           /. :/. : : : :/. : : : .:八: : : : : :.廴  )
         /. :/. : :_:/ /. : :.:/  ヽ: : : : : :|   )    }
          '. :/. : / `/ . :/ ___   !: : : : i:|   )イ  ̄      どないして作るん?
         |: .' : :イニミメ:/ ´ _ `ヽi: : : : l:|  ノ:リ
         八{l : /} ,,,, {/   ィヌ三ミ、 |: : : :ハ!  ) :/        最初にそれ見つけたんは誰?
         /. :{八  '     ,,,, `/: : : :/ノ ノ:/
         //.:\`ヽ` ー    ノ7´j´}/  ノ: i
      //.:::/i{7Yヽ.〉ー/  ̄ ̄ //,イ―ミ' : : |
    /.:/.:::/ └ししJ YYYYYj-―=彡:::::::::::} :八


                   (ヽ三/) ))
               __  ( i)))          へえ!
              /⌒  ⌒\ \
            /( ●)  (●)\ )        昔、京都は伏見の旅籠の旦那さんが、
          ./:::::: ⌒(__人__)⌒::::
          |    (⌒)|r┬-|     |       お客さんにお出しした後の心太を
          ,┌、-、!.~〈`ー´/    _/
          | | | |  __ヽ、    /          そのまま外に出して置いとかはったそうだす。
          レレ'、ノ‐´   ̄〉  |
          `ー---‐一' ̄              寒い寒い冬の夜のことで、心太は凍えてしもたんだす。


.


532 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:06:35 i7D98ygY0


         _∩
        / 〉〉〉                    そのまま更に置いとかはったら、
        {  ⊂〉     ____
         |   |    /⌒  ⌒ \         今度はお天道さまの力で溶けて乾いたそうだす。
         |   |  /(●)  (● ) \
         |   |/:::⌒(__人__.)⌒:::  \      そうやって、もとの心太から、
         ヽ   |     |,┬‐ |       |
          \.\   `ー ´     /       かさかさに乾いた寒天が出来上がったそうなんだす。
            \       __ ヽ
             ヽ      (____/      寒晒しのところてん、で寒天と名ぁがついたそうだす。


       ', ,. イ.::; .:.:.,     .:.:.::::::::::.`ゝ、
       V/.::/.:.:/      .:.:l:! .:.:::::::::.`ヽ _」 _
      /. .,.ィ.:.::/    .:.:::::::.:.  .l:! 、 .:.:.:::::::::.`、下 .!
      /.:/ .::l:!.:./   .:.:.:.:::::::〃.:/::!::::.:.、 .:.:.:::::::.`、 /
     ./.:/ .::::l:|.:.:.  .:.:.:.:::::::::〃.:/.:::ト、::::.:.ヽ .:.:.::::::::Vヽ
    /.:/ .:.:::::l:|.:.:. .:.:.::::::::://.:/.::::ハト、.:.:::::', .:.:.:::::::!.::.',
   ./.:/ .:.:.::::::i:|.:.:'"´ ̄`>' /.:/.:::/ __  ヽ .:.l .:.:.:::::!::::::',
   l:::ハ .:.:.:::::::リ.:.:.:.:::::/ ノ.::/.:::/ ´  ̄` V:l .:.::::::j:::::::::
   |::| ',.:.:.:::::.ヽ`,≧三ミ、 /:/´ ¨`___   リ .:.:.:::/l.:::::::::       ふうん。
   |::|  ト、.:.::::::::.Y ´¨¨¨`     ,.ィヌ三ミx / .:.::/ リ::::::::::
   ヽ! {i \.:.::Λ ''''        ´"¨¨` /.:.::/ リ:::::::::::      けどその旅籠の旦那さん、
      {i _」 _ハ .::ゝ    `       '''' /;:イ   リ.::::::::::::
     {i 下 j} 1.:::ト、   ` -ー      ノノ_」 _  リ.:::::::::i::::      口に入れるもんを外に放り出しとくて、
     {i   j}. \.:.:::>.、        ノノ 下 ,.イi::::::::::|::::
     {i   j}  ,.'´   ``ニニニ"´ノノ   ,.イ:::i:l::::::::::|::::      えらい罰当たりやなあ。
      {i  jレ' -米‐ 「:に>介フノ_」_  ,..イ.:.:l::::l:l::::::::::|::::
       \〈    ノノl::,.ィイ.:/  下イ .i.::::|::::l:l::::::::::|::::
        ``~~´ ``フ.:::/ ,.'"´    .i.::::|::::l:l::::::::::|::::
             /::/ ,.'´ ,r‐‐y‐─ ュ、::!::::l:l::::::::::!::::
            /フ ^Y´ ,.r'".:.:.:.:::::::.:.:.`ヽ\:::l:l::::::::::!::::
          //シ'  j! ,〃.:.:.:::::::::::::::::::::::.:.\\!:::::::::!::::
           //シ'  j! 〃.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:\\.:::!::::


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533 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:07:00 i7D98ygY0


              ____
             /⌒  ⌒\
           / (⌒) (⌒)\
          /  ::⌒(__人__)⌒::: \          けんど、そのお陰で私らの商いが生まれたんだす。
          |       |::::::|   ,---、
          \       `ー'   しE |          私ら寒天に係わる者にとっては恩人だす。
          /           l、E ノ
        /            | |
        (   丶- 、       ヽ_/
         `ー、_ノ


              , - ―‐‐‐ - 、
              / , - ―‐‐ - 、 \
         / / ※_,.-―-.._※ ヽ \
          /  /※/ : : : : : : : :`:、※',  \
        〈   i/: : 人: : : : :人: : : \i   〉
        ヽ、 /: : :/‐/-、/: :/,/-i : : : :i  /
.           V: : :〈:У __// リ__ ヽ:i: :/:∨         ほうか、やる夫が恩人や言うんやったら、
          |: :_:ハィ'⌒゙ , ´⌒ヽ ,ハ、:Ⅵ
.         ハ:{〈〈}/// 、  , ///{リ〉リ: i          私もそう思うことにする。
        /: :∧ \    ̄   / ∧:ヘ
         /: :// \  )ー--‐ '(  ,.イ 》 :ヽ         寒天て美味しいし、面白いしなあ。
.        /: :〈《 (Y⌒Y}ニ水ニ{Y⌒Y)/ } : ::ヽ
       ∧: : :∧./` チ/ノliヽ、乂 ´\.∧: : :∧
     /: :.ヽ://-=〈.ィ´辷||乃\ヽ.  \V.:/ : \
    ∧: : : :../´  ノ´__.||___∧ヽ `ヽ: : : : ∧
  ̄ ̄ ̄ ̄ {   /\'7      厂ソ人   } ̄ ̄ ̄ ̄
         `ー' `ー'      `ー '  `ー '


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534 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:07:24 i7D98ygY0


        翠星石の言葉に、やる夫は目を見張った。


            ___
       /      \
      /ノ  \   u. \
    / (●)  (●)    \
     |   (__人__)    u.   |       えっ?
     \ u.` ⌒´       /
    ノ            \
  /´               ヽ

         ____
        /     \          そうだすか?
      /  u   ノ  \
    /      u (●)  \       寒天、美味しおますか?
    |         (__人__)|
     \    u   .` ⌒/        面白おますか?
    ノ           \


.


535 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:07:43 i7D98ygY0


                     __
                 , ィ_´_     `  、
               /`´ ※ _ ` ー 、    `ヽ
               /ー- ‐― '´: :ヽ_ ※ ヽ     ヽ
           ,.イ: : : : : : : : : : : : : : :ヽ   ヽ     ヽ
           /:./: : : : l: : : : : : : : : : : :ヽ   ヽ     ヽ
            /イ: : l: : : :/!: : : : : : :/: : : : :ヽ ※ }      >
         / l: : :l: : :/`lヽ: : : /: : : :l: : : : ヽ  l    /
          /l: : :l: :}'示t: : /´:`ヽ/: : : : :.∧ ヽ  ,.ィ´       うん!
        / ヽ: ':ト八::リ∨/:// /l: : : : : : :.l ※ l´:..:l
       / ※ /ヽ:l ´`、 '´ ゝ=x ,': :/: :/: : ヽ   ヽ: :.        やる夫もそう思うやろ?
      /   / /r、ヽ  、 ,    //:/ : : : : {   } ∧
.   /   /   /: | |: : ヽ    , -/:./: : : : : : : l ※ l: :.∧
.  /   /  /: : l ゝ‐ヘ:` ´i、-‐' '´ ゝ‐- 、_:_: :ヽ  ヽ:..:∧
./ ※ /   /: : : :〈 ニミ} l´/ijミ;、        r'、/fハ: l   l: : ∧
   /  /: : : : :,.ィl くー'/イミ}ト、.》      ノ/ r'::∧:ヽ  ヽ: :.∧
 /   /: : : ; ィ´: :ィゝ'ヘリ ゞ〃} "     f / ノ:::::::∧: ヽ.※ ヽ: ヽ
.´   /: :, ィ´: : : : /~^`>' / }}      〈 ,'r':::::::::::::∧: : ヽ  ヽ: ヽ


                    _-─―─- 、._
                  ,-"´          \
                 /              ヽ
                  /       _/::::::\_ヽ
                |         ::::::::::::::  ヽ          …………
                 l  u    ( ●)::::::::::( ●)
                ` 、        (__人_)  /
                  `ー,、_         /
                  /  `''ー─‐─''"´\


                         やる夫は返事が出来なかった。


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536 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:08:15 i7D98ygY0


         確かに、初めて寒天が固まるのを見た時は、面白いとは思った。

           慣れてしまえばそんなことは当たり前で、特に感動はない。


         ____
        . '"   U    `丶、
      /  \         \
     /     `¨″  `'ー'" ̄`       (寒天、なんちゃ味せえへんしなあ)
     {  三三       三三   }
    '.                 J /     (どないしても、美味い、て思えへんねんなあ……)
      \ u  ゙'ー'^'ー'゙     /
       `¨7    ̄       ‘,
        /          ‘,


  そんな自分が寒天を扱って良いものか、という気持ちが時々首をもたげることもあったが、

            生きていくためだ、という現実がいつも勝った。


.


537 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:08:38 i7D98ygY0


            長い沈黙で、翠星石は答えを察したのだろう。

                   小さな声で呟いた。


               ____
          ,、-‐'´,、-―――‐`-'ヽ、
          // ̄ ※   ※   ※\
         //      _,、-――――-、___ヘ
      / /  .※ /: : : : : : : : : : : : : : : : \
.     / ./     /: : /: : : :/: : :/: : : : : : :l: :.:ヽ
.   /  /   /: : : :/: : : :/: : :/: : : : /: :./: : :∧、
.  /   ,' ※ l: :.:l:.:.l: : : :/: : :/: :/: :/: : /!:l: : l: :l \
.  \   l    l: : :l: :.l:ム斗孑/:/:/: 、/ l:.l: : l:.:.l  ノ
    \_.l    l: : :l: :l/://///: :/`'十: :.l: :l-'´
     /:.l ※ l: : :l: :lイセ'示 '′// イ示'!l!:..:l: ,'
     /: :l    l: :ヽ:ヽ!弋: ソ /   辷::リ l: : l:/
.   /: : :l    l: : :ヽ:l`  ̄       ̄ /!:.:/
   /: : : :l ※ l:\!\!         '     / l:/       ……しんどいな。
.  /: : : : :l     l: : :`i\     - ‐   / /l
 /,、-‐-、.l     l_/l. .> 、     , .<l .※. l
./:::::::::::ゝl ※ l   \    ノ><、:/,、-‐-、.l
:::::::::::::::::`j.l    l    ,ィ≧≦ミ、 ゝ ノ:::::::::::::ヘ!
::::::::::::::::i´ l    l  〃 .》《. ヾ、 i´ `j:::::::::::::∧
:::::::::::::::::ゝl ※ l  《 〃ij!ヾ、 》 `i ゝ,::::::::::::::::〉
:::::::::::::::::::::l    l   ゞ" .ij ヾ ゞ"  ノ (__:::::::::::/
::::::::::::::::::::,'   ,'     ij  ij     〉  ノ:::::::/


               ____
            / ノ  \\
           / (●)  (●)\
         / ∪  (__人__)  \           え?
         |      ` ⌒´    |
          \ /⌒)⌒)⌒)   //⌒)⌒)⌒)     嬢さん、しんどおますのか?
         ノ  | / / /   (⌒) ./ / /
       /´    | :::::::::::(⌒)  ゝ  ::::::::::/       具合わるおますのか?
      |    l  |     ノ  /  )  /
      ヽ    ヽ_ヽ    /'   /    /
       ヽ __     /   /   /


.


538 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:09:08 i7D98ygY0


           翠星石は首を横に振って、すっと立ち上がる。

        そして板場へ通じる襖をあけると、父のジャギを呼んだ。


             ___
           ,ィ'´ ./   ̄ヽ、
           /: l * /      \
        /: :l: :l  .l        \
        ,':.l:.:l: :.l * l            l
        l: l: :l: :.l  l_    __   l
      _,、、r、l:l!ヽ!ヽ:l * l`ー '´: : : : :  ̄l´
      `ヽ```i、 l リl  l: : : : : : : : : : : :l
        lィ-、ハ ゝ,. .l.*.l: : : : : : : : : : : :l        お父はん。
        ゞi.  ヘ   `l!,ィ'.l: : : : : l: : : : : :.l
          !  ,イ‐‐'´:::::::l: : : : : l: : : : : :.l
          l /::l:::::::::::::::::l: : : : : l: : : : : : l
.          〉'::::l!:::::::::::::::/; : :.: : :l: : :: : : : !
        ./::::::::`'ー、,/lll!: : : : :.l: :l: : : : :.ヘ
.          \::::::::::::::j三||: : : : : l: :l: : : : : :.ヘ
         〉、:::::l´:::: ̄l: : : : : l: :l: : : : : : :.ヘ
          /::::::`'´::::::::::::l: : : : : :l: :l: : :l: : : : : \


    ,/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
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./::::::::::::::;ハ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
i::::::::::::;ヘl ヾ  ,,'ニ¨--¨ニ、‐-''´ヽ:::::::::::::::::!
!:::::::::::l ヽ.   7"::;:::::_::、ヾ゙i    _ヾ、:::::::ハ
::::::::::::i丶.   l::::k'_´_o__゙,!:::7  7;:::\゙¨" ,l,
::::::::::::l丶   ゙ー───‐'   . k'^ヽ、゙i  ノ
::::::::::::ゝ    ,ァ''''" ̄ ̄ ̄''ー''¨ヽ`゚'-゙_,! 丿         おお、何や翠星石。
:::::::::::::::〉 ,.'",n.  rャ   ,-、   ゙ヽ、   ,ノ
l:::::::::::::i   |:::|   |::::|  .i:::::|  ;ヘ   _ヽ.,!          今、手ぇ離されへんのや。
|::::::::::::l   _,レヘ. |:::::!  !:::::l  ,l:::;!  i:.:i 〉
}::::::::::::! '´   ,} |:::::l  !::::::! ,!:::;! ;': 7,!
!::::::::::::l      ,/l. !:::::! l::::::l ,!:::;! 〃.7.l    ,ハ
:::::::::/i.   ,/::::ゝ.l::::::し'::::::i. ,!:::;!.〃,/ `ー‐'" ,}
:::/   `ー、":::::::::::::::::::::::::::::::¨:::::レ'!_/       ,/
:::l :  :  :: ゞ、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ゝ.,,,_,,,,/
:;' ;  :  ::  `ヽ、::::::::::::_::::::::/ l
; ,'  ; :  ::     ̄ ̄:::: ,'  ̄ ; i、


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539 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:09:27 i7D98ygY0


            翠星石は父の傍に駆け寄ると、精一杯に伸びをして、その耳元に囁く。


                            , ‐──‐- 、、
                         ,..´-====. 、 \`ヽ、
                          /. : : : : : : : : : : : :\ \ \
                         /: : : : : /:./.://:l:l、: : : l \ \ \
                      l: | : :l :/: /_// リムヽ.:.:.l: : : ヽ米l ノ
                      l: | : :l//ニl/ ′_ヽ\l: : : : }  K
                      l: | : :{ tテテヽ  行テヽ1: : ::/  j
                      Nト、: l 込ソ    込ソノ.:/.:.:/  ll
                        i.:.ヽ' ' ' ′ ' ' ' 'l/.:/.:.i米l:!
                        l 米 、  「_)   ,.イ l.:.l.:.:i  l.:!
                        i  i.:l `ー-- <.:.:l.:l.:.l.:.:l  l.:.!
                        l  l.:l.:.:l.:.L, .ィ´ \.l.::l.:.:i米l.:..!
                           ,′ /7´/介ヽ、\ `77ハ. !.:.:!
                       /  /7\Vノノlト、V ノ .//.:.:.:', い!


                 _,,,,........,,,,,,_
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           l..::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;:;._,,,,.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; |
         l.::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;::,r'|' .,r'. /.,、...;;;;;;;;;;;;;;.!
         | ::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;:l. V.;;;;ヘ,,/│;;;;;;;;;;;;;;;{
          | ::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;|`、', ,.:;....;;...,iii_゛ー ..,_.... ,.l       ええ?
            l:::::::::::::::::::::::: :;;;;;;;;`、`゙..;モ..lニ.: :二=,,,,二.ノ'
        ./:::::::::::::::::::::::: :;;;;;;; `、┴.. .;`、゛L::::゛ー・ハ;i`、       寒天のことでやる夫に
         /::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;; ゝァ . ; .....''゛゙''''- -イィ. ゙l
  i゙i   ./.:::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヘ.._    _...-―''ニヘ!      教えてやって欲しい、て?
  l .i,  \ _.____: ::: :  .:;;;;;;;;;;;;;:; ,.、i,.;;;;;; l ; i`l.'.;;.、i,. ;ナノ
  l,. i.     ,r'. ゙゙゙゙゙゙゙゙̄゛'''''''''''”゙/l`、;;;.|  l  |..::! ! l;l l.l
  l  i   ./            / /. `、.| ;│;; l :.i | |.l /
  .!  i ヘ...,,        / /..i.   l. :;.t,,_凵. -´/
  .l   i. : :`゛''- .._    ./.  /. .',.   `、 ;..:::. ,iナ/ .,./
   l  i. : : : : : : : : :"゙''‐-/  .l  .i,    ゛l''''''´  .//
_,, !゙.|   `、. : : : : : : : : : :/.   ヘ'- ..゙,,__.  !   -'゙ /


                      ジャギはちらりとやる夫を見やる。


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540 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:09:48 i7D98ygY0


   翠星石のひそひそ話はまだ続いている。


  /:/: : : : /: /: : : : : : /: /:/l: : : : :、: :ヘ ※ ',  ∧
. /イ: : : : :/: /: : : : :./:./// '; : : : : :l: : ヽ   l    ヽ
. l' l: : : : /:./'´ ̄メ-‐'´ゝ/-‐‐‐ゝ-、: :.l: : : :ヽ  l  /  ヽ
.  l: : : : l:.:l,イ:云    / イ兀ミュ、ヽ: : :!: : : : l.※l  / __ゝ
  ヽ: : :ヽl'弋 ノ       い:::リ /´ヽ/: : : : :l   !/!  ,.ィ'´
    \: ヽ ¨´  ,     ``´   /: : : : :/  /: : :l' ´
     l`i‐-`              //: : :/  l: : : :l
     l .ヘ    ´ `       イ/: : ;.イ ※ /: : : :.l
      l.  ヽ             イ -‐'i.´    /: : : : : l
.    /l ※. \          /l.     /: : : : : :.:l
   /:.:l    l: ヽ -、‐       !: / ※ /: : : : : : : :l
   /: : l     l: : : : : l    _, ┴l    /: : : : : : : : :.l
  /: : : l .※ /: : :;.ィjl , イ´   /   /: : : : : : : : : :.:l
  /: : : rl   /- '´,ィ三ミュ、     l ※ l`ーrヘ,-、: : : : : l
 /: : :r‐'l   l ,ィケィチ lミ!ヾッ、   !   .lー'´-‐‐'ゝ: : : :.:l


      /ニニニニニニニニニニニニニヽ
      ’ニニニニニニニニニニニニニニ ハ
     iニニニニニニニニニニ}ヽィニニニニi|
     |ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニニ|
.     ト.!ニニニニニニ==─…ミx 0 /》ニニニ│
    Ⅳ≧ー…ャ77//--。-ォ///l} 0 彳ニニニ|
     》 f77ハ  ∨/≧==彡//ノ   《ニニニl|      ト
     `7 V//}  ∨////厶イ==ミ   iニニニ|      |∧
       ⌒i ̄ __ ̄ ̄´   》//∧ lヽニニニl|      |/∧
   ト     ∨ .//| ト. {7∧ ∨///i| ∨\ニゝ __   |  ∧
   |∧    ∨//| |∧ ∨∧ ∨//l|  i}///777{厂三{  |  /∧
   |/∧    }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l|  リ  }////|∧三≧|    ∧.=
   |  ∧  、|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i|    三
   |  /∧  ≧彡. 》====≦///   l i '//三|  ∧三|    三
\ |    ∧イ三/三》 ∨////    j l //三 i|  /∧ .乂__ノ三
/∧.|    /∧./三 ィ/∧∨///    / '//三三|  //∧三三三三


 最初は面倒そうだったジャギの顔が、徐々に真剣になっていく。


.


541 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:10:16 i7D98ygY0


         ____
       /   u \        (ひょっとして、さっきの「しんどいな」言うんは、
      /  \    /\
    /  し (○)  (○) \      おのれの商う品を面白いとも美味しいとも思われへん私のことを
     | ∪    (__人__)  J |
    \  u   `⌒´   /      それでは辛かろう、しんどかろう、いう意味やったんやないか?)


         自分より五つも年下の少女にそんな風に思わせたことを情けなく思った。


.


542 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:10:48 i7D98ygY0


    否、それよりも、寒天問屋の丁稚が、自分の扱う寒天に対して

 そんな考えでいることを知られてしまった、その恥ずかしさが体中を巡る。


           ___
       /      \
      /ノ  \   u. \
    / (●)  (●)    \
     |   (__人__)    u.   |      (ジャギはん、きっと怒らはる……)
     \ u.` ⌒´       /
    ノ            \
  /´               ヽ


             やる夫はジャギの叱責を覚悟した。


.


543 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:11:10 i7D98ygY0


            ジャギが優しい声でやる夫を呼ぶ。


        ,.:::''::´:: ̄::`:::.、
       /:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
      l:::::::::::::ゝ---- ι
       |::::::::::::)  ◯  ○ (
     ,l::::::::::::η  |||||||  ゝ     やる夫、
      ゝ---η.   |||||||  ゝ
        /≦ ヽ .|  | ≧      手ぇ洗って、こっち来なはれ。
         { l  l |* *| | l
          { .l  l .|  * | .| l
       /  l  l | * | l l
       l ---l  l--  -l l
       |   `^^    `^


            ____
           /    \
.        /          \
.      /    ノ    \ \
      |    (●)  (●)  |      へ、へえ。
    .  \    (__人__)  /
       /     ` ⌒´   ヽヽ, ) )"
   "( ( ( ヽ        /./
        \ \   ゛ // |


            言われるまま、井戸端で手を洗う。


.


544 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:11:37 i7D98ygY0


   ジャギは、今日やる夫が届けたばかりの寒天を千切り、調理台に置いた。


                     .,. -─- 、
                /,;:;:;;;;;:;:;:;:;:`ヽ
                  ,'.:..:.:.:.;;;;;;rrrr、:.:.:ヽ
                l::;ィ'´;;;;' `ヽ。-、ヽ.::!        やる夫、翠星石。
              {ミレ'"´. ,.. ¨¨`,ィ;;彡
              {ミ!. i i::i l.:::! l:l .l:! l;;彡        食べてみ。
               iト、i i:::iノ:::l/::l/::!ノ:::|
               ヽ入     `VⅥ           /l /l
           ト、    `1 ミヽニニ彡'´ L、、、,,_   _./ レ' ..!
        ト、. ! Vl ,..ィ´.:j! ',::,,,,,/ ,::′ ,' `ヽ`ヽ`Y´.:./l  ``ヽ
        | ヽ| 〃/.:.:.:.j!...',;,,/ ,::′,,,,,........リ ノ.:::l / .l.:.:.:.:./ト、
      ,.ィ´ヽ ノ/ /  ;;;'''゙゙゙゙`,.''''゙゙゙´    {: :i i!.::! ゝ ' /.ィ´ `ヽ
     ト、/ ト、, ´/ ./:::''  .人 ..:;;′ .人   .:i: :.! i!:::!.:.;.ィ彡'´ ;;   .゙、
    l ハ  V.:.:.i  / ,::   `Y´.;;;′ `Y´   .!,..ィ"´`ヽ〃;;;:;:;:;:;:;;:;゙゙゙´: .
     l/.::',.:./.:.:.:j. /''"´   ....;;;;;   人    (,,、、`Y.. ):::V´     : : :
     {  V「88j/     ...;;;;;;; .:.:`Y´     (´ _ノ(.. )::::::',、、、,,,__....: : : :
      〉;; ぃ.::.i l..... ........:.:.:.;;;)。k、ミヽ      (´ _ノ(.. ).::::::!: : :.:.:.:.;;;;;;;``
     /;;  .い.::i l;;;;;;;;,、、 '''゙""´   ..`゙゙゙゙゙'''''''''´( _ノ(.. ).::::ノ: :.:.:.:;:;;;;;;;;;;;;;;;
    ,′ノ人 jりi ;: : : : :''''';;;;ゞ ::;;   ...:.:.:.: .: .: .;;:i1 i爪ツ"´.:.:.;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;

                     ,,iil&巛ミ豸}i)ミil,
                 Y´ 豸《《豸巛豸彡巛|!i)` Y
                 ゝ、`"'}豸《豸ミ彡|i豸l'゙´ノ
                   > ‐-  -‐ <´

                                       ., _<_二_>_ 、
          ____                        / /* ,、_※_,、 *ヘ \
        /     \                     .\//:::´::/ ̄::ト、:!ヘヽ/
       /  u   ノ  \                     //|:::≠トノ斗≠ 八}
     /      u (●)  \   へ、へえ。          .{ {人 |kリ` ´kリレ'::::}{   はぁい。
     |         (__人__)|                   {;} ::::`ト .( ̄). イ::::::{;}
      \    u   .` ⌒/                   .} {::::::::,{≧Ⅹ≦}::::::::} {:',
     ノ           \                  ./{;}:::<─= ̄ヾ「`>:{;}:‘,
   /´               ヽ                ,'::::::::::::::\ <三〈.../::::::::::::∧


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545 : ◆8epcM/V4rs:2014/02/02(日) 18:12:04 i7D98ygY0


                ___
            /      \
           /ノ  \   u. \
         / (●)  (●)    \   (やっぱり味やらせえへん……)
          |   (__人__)    u.   |
          \ u.` ⌒´       /
         ノ            \
       /´               ヽ


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!:::::::::::l ヽ.   7"::;:::::_::、ヾ゙i    _ヾ、:::::::ハ
::::::::::::i丶.   l::::k'_´_o__゙,!:::7  7;:::\゙¨" ,l,     ゆっくり噛んでみ。
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::::::::::::ゝ    ,ァ''''" ̄ ̄ ̄''ー''¨ヽ`゚'-゙_,! 丿